律「さぁ~て、授業も終わったことだし部室に行くか」

唯「あいよ~」

和「引退したのに相変わらず部室通いなのね」

澪「まぁ、一応は受験勉強ってことなんだけど」

唯「ムギちゃん、今日のおやつは?」

紬「ロールケーキよ」

唯「わ~い!」

和「勉強……ね」

澪「……うん」

律「甘いものには巻かれろって言うだろ?」

澪「長いものだろ」

律「いやいや、ロールケーキだけにってことだよ」

唯「りっちゃんうまいねぇ」

律「いやいや、それほどでも」

澪「面白くないし、甘いものの方が巻かれちゃってるし」

紬「今日のロールケーキは舌を巻く美味さよ!」

律「お! ムギも乗っかってくるなぁ」

唯「ムギちゃんのうまさに私も舌をふぁふぃふぁふ」

紬「いやいや、それほどでも~」

澪「本当に舌巻いたら途中で何言ってるのかわからなくなっちゃってるだろ」

唯「ふぉふぉふぁふぁんふぉふぃっふぉふぃふぉふぉ?」

澪「もういいからちゃんと喋れ」

和「お誘いは有難いけど、遠慮しとくわ」

澪「え?」

唯「ふぇふぃふぉふぁふぃ?」

和「いいえ、今日は生徒会の会議は無いけど、ちょっと待たせてる人がいるのよ
  だから、先に帰るわね」

唯「ふぉっふぁ~。ふぁんふぇふ」

和「また今度ね」

澪「なんで意志疎通できてるんだよ……」


和 キョロキョロ...

とみ「のんちゃん」

和「あ、おばあちゃん」

とみ「今日は3つ曲がり角間違えずに来れたねぇ」

和「うん、タイ記録」

とみ「じゃあこの4つ目の交差点を間違えずに行けたら新記録だねぇ
   いったいどっちだろうねぇ?」

和「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な」

和「て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り」

和「右」

とみ「残念、ここは真っ直ぐだよ」

和「ほら、私、無神論者だし、だから」

とみ「そうだねぇ、そういうことだねぇ、仕方ないねぇ」

和「おばあちゃんは優しすぎて調子が狂うから困るわ」

とみ「ごめんねぇ」

和「……」

とみ「じゃあ、そろそろ帰ろうねぇ」

和「うん、いつもごめんね、おばあちゃん」

とみ「いいんだよ、おばあちゃんが好きでこうやってのんちゃんのお迎えにきてるんだから」

和「でも……」

とみ「そういえば、商店街の和菓子屋さんが改装して新しくなったって聞いてね
   おばあちゃん、そこで好物のいちご大福買おうと思ってねぇ」

とみ「だけど、家で独りで食べてもなんだか寂しくてねぇ」

和「だったら、私がおばあちゃんの話相手になってあげる」

とみ「そうかい? 嬉しいねぇ」

 和菓子店

とみ「ここねぇ、息子さんがパリまで洋菓子の修行に行っててねぇ
   ちょうど今年その息子さんが修行を終えて帰ってきてねぇ
   本当はここのご主人さんは息子さんにも
   和菓子の職人さんになってほしかったらしいんだけど
   息子さんがどうしても洋菓子をやりたいって聞かなかったらしくてねぇ
   だから『ワシの代でこの店も終わりか』って気を落としていたんだけど
   『和菓子は親父から教わるんだ』って息子さんが言ったらしくて
   それがよっぽど嬉しかったのか、息子さんと一緒に店をやるために
   改装して洋菓子も扱うようになってねぇ
   ちなみにここのご主人が演芸大会でいつもマジックしてくれる
   シゲさんなんだけどねぇ、毎年マジックを披露するもんだから
   そろそろネタが尽きてきたってボヤいててねぇ
   おばあちゃんはシゲさんのマジック楽しみにしてるから
   続けて欲しいんんだけどねぇ」

和「ねぇ、おばあちゃん」

とみ「なんだい?」

和「なんで年寄りって別に聞きたくもない話を長々と話しちゃうのかしら」

とみ「なんでだろうねぇ。おばあちゃんちょっと難しいことはわからないねぇ……」

和「そう……」

とみ「難しいって言ったら
   シゲさんも毎年演芸大会でマジックするもんだから
   だんだんネタに困ってきたらしくてねぇ
   やっぱりマジックっていうのも中々難しいらしくてねぇ
   あと、ここの息子さんがパリまで洋菓子の修行に行っててねぇ
   本当は息子さんにも和菓子の職人さんになってこの店を継いで欲しかったらしいけど
   やっぱり和菓子っていうのも経営的には難しいらしくてねぇ
   でも、その息子さんも今年帰ってきて一緒に店をやるために
   改装して洋菓子も始めてねぇ
   息子さんも洋菓子を作って売る場を用意してもらって嬉しそうでねぇ」

和(そろそろボケが始まっちゃったのかしら……。心配ね……)

とみ「まぁ、同じようなことを2回話しても面白くもなんともないねぇ」

和(なんだ、よかった。ただの嫌がらせだわ)

とみ「あった、あった。おばあちゃんこのいちご大福に目がなくてねぇ」

とみ「中に入ってる苺も大きくてねぇ」

和「本当、美味しそう」

とみ「じゃあ、おばあちゃんとのんちゃんのと2つ買って帰ろうね」

和「う~ん……」

とみ「どうしたんだい? のんちゃんいちご大福嫌いかい?」

和「そうじゃないんだけど」

とみ「?」

和「ねぇ、おばあちゃん。もし、私と唯に何かお菓子のお土産を
  買って帰るって状況になったらどんなものを買う?」

とみ「そうだねぇ、唯ちゃんにはきっと見た目も可愛いケーキを買ってあげるだろうねぇ
   のんちゃんには、羊羹とかどら焼きとかそういう和物の渋いものを買ってあげたいねぇ」

和「やっぱりそうなんだ……」

とみ「のんちゃんは小学生の頃からどこかババ臭いところがあったからねぇ」

和「そこはせめて大人っぽいと表現してほしかった」

とみ「ごめんねぇ。おばあちゃんのんちゃんを見てると
   なんだか一緒にゲートボールがしたくなるんだよぉ!」

和「わかってる……名前からも連想されるように
  どこか和風なイメージを周りに抱かれやすいっていうのは」

和「でも、私だっていつまでも大和撫子を気取るつもりはないの」

和「そうやって縛り付けられちゃ私の可能性が削がれてしまう!」

和「だからここはその着物が似合う風の和服美人的なイメージを覆すために
  あえて私はそのパリで修行したという息子さんのハイカラな洋菓子をいただくわ」

とみ「和風というよりも、ババ臭いってことなんだけどねぇ」

和「店員さん!」

「いらっしゃいませ」

和「この右側のショーケースに並んでいるものが
  パリで修行したという噂のパティシエの作品ね」

「はい、どれにいたしましょう」

和「そうねぇ……」

和「じゃあこの『モンマルトルの丘羊羹・セーヌ川のほとりのオープンカフェ風』で!」

「ありがとうございます」

とみ「それも美味しそうだねぇ。じゃあそろそろ帰ろうかねぇ」

和(あれだけ言って結局羊羹かい! とかツッコんでほしかったわ……)

 とみさんの家

とみ「じゃあ、お茶淹れてこようねぇ」

和「あ、おばあちゃん私がやる」

とみ「そうかい? ありがとうねぇ」

和「はい、どうぞ」

とみ「あ~、なんだか娘が出来たみたいで嬉しいねぇ」

和「やだ、おばあちゃん、孫って言ってよ」

とみ「恐ろしいことだねぇ」

和(何が恐ろしいのかしら……?)

とみ「やっぱり独りよりも誰かと一緒に居るほうが楽しいねぇ」

和「それにしても、本当に大きないちご大福」

とみ「そうだねぇ、おばあちゃんも歳だからさすがに全部は食べ切れないねぇ」

とみ「よかったらのんちゃん半分食べるかい?」

和「いいの?」

とみ「もちろんだよ、お食べ」

和「じゃあ、いただきます」

 平沢家

 プルルルルルルルル!!

憂「はいは~い!」

憂「はい、平沢で……」

とみ『憂ちゃんかい!?』

憂「ど、どちら様ですか!?」

とみ『一文字ですけども~』

憂「あ、隣のおばあちゃん」

とみ『今ねぇ、のんちゃんが家に来てるんだけどねぇ』

憂「のんちゃん? あ、和ちゃんか」

とみ『のんちゃんがねぇ、おばあちゃんのいちご大福の苺だけを
   どういう訳か器用に食べちゃってねぇ』

和『だって、おばあちゃんが半分食べてもいいって』

和『だから、外の餅だけを剥いで食べるのはちょっとどうかと思って
  私のテクを駆使して苺だけを綺麗に取りだして』

とみ『半分って言ったら縦に割るなりなんなりして半分こするのが普通だけどねぇ』

和『その発想はなかった』

とみ『のんちゃんは頭が良いけど、時々恐ろしく馬鹿になっちゃうねぇ』

憂「あの……今、夕食の準備してて……」

とみ『ああ、ごめんねぇ。じゃあ今度またイナゴの佃煮作ったら持って行くからねぇ』

憂「いや、まだこの前貰ったざざむしの佃煮も大量に残って……」

   ガチャ ツーッ ツーッ

憂「……」

とみ「はぁ~……」

和「あの……おばあちゃんごめんね」

とみ「いいんだよ、この外側の餅だって美味しいからねぇ」

とみ「ああ、苺の甘酸っぱさが恋しいねぇ……」モキュモキュ

和「……」

和「私、この前も唯のケーキの苺取って怒られちゃったの」

とみ「おばあちゃんのいちご大福の苺の方が大きいし絶対美味しいはずだよ!」

和「うん、別にその苺の優劣を言ってるんじゃなくてね」

とみ「そうなのかい」

和「私ってば、すごく方向音痴だったりちょっと思いやりが欠けていたりするし」

とみ「あとババ臭いってのもあるねぇ」

和「それに比べて唯はどこか抜けていても皆から愛されてるし
  憂はシスコンだけどしっかり者でご両親からも家の家事を全て任されているくらい信頼されてるし」

和「そう考えたら私なんて……」

とみ「そんなことないよ」

和「……くすん」

とみ「欠点があるから人は他人を頼ることが出来るし、許すことが出来るんだよ」

とみ「完璧な人間は他人にも完璧さを強要しちゃいがちだからねぇ」

とみ「のんちゃんは一見完璧人間だけど、そういう欠点があるからこそ愛を受けたり
   その受けた愛情を他に振りまいたりすることが出来るんだよ」

とみ「唯ちゃんも憂ちゃんものんちゃんも
   3人みんな違うけど、3人みんな同じようにおばあちゃんは大好きだよ」

和「……うん。私もおばあちゃん大好き」

和「私、学校では生徒会長だし、しっかり者だって思われてるから
  こんな弱音なんてなかなか恥ずかしくて言えないけど」

和「どういう訳だかおばあちゃんには安心して聞いてもらえる」

とみ「のんちゃんの役に立てておばあちゃんも嬉しいねぇ」

和「ありがとう、おばあちゃん」

とみ「おばあちゃんは何もしてないよ。
   のんちゃんとお話できて楽しかったねぇ
   また今度もお茶しようねぇ」

和「今度はちゃんといちご大福の苺の部分をおばあちゃんに食べてもらうわ」

とみ「そうだねぇ、また楽しみが出来て嬉しいねぇ」

和「うん。じゃあ、私そろそろ帰るね」

和「って、言っても家までおばあちゃんに送ってもらわないといけないけど」

とみ「いいんだよ、気にしちゃだめだよ」

和(本当におばあちゃんが居てくれてよかった)

とみ「あ、そうだ。のんちゃん」

和「ん?」

とみ「のんちゃんあれだけ和風なイメージを覆すって言っといて
   結局買ったのは羊羹だったねぇ」

和「そのツッコミはとっくに旬を過ぎてるわ、おばあちゃん」

とみ「そうかい。残念だねぇ」

 真鍋家 和自室

和「うふふ、今度また苺全部食べたらどんな顔するかしら」

和「なんだかワクワクしちゃうわ」

和「……」

和「いや、さすがに1回目でも相当悲しそうな顔してたし
  これ以上はいくらなんでもヤバいわね」

和「それになんだかおばあちゃんに励まされちゃったし」

和「欠点も魅力の一つか……」

和「でも、私はやっぱり方向音痴を治したい」

和「……」

和「ちょっと、頑張ってみようかしら……」

 翌日 学校

澪「この前の校内模試の結果が貼り出されてるな」

律「どれどれ? おっ、和が1位だ!」

紬「本当、すごいわ!」

唯「いや~、きっとこの真鍋和という子はよっぽど周りに恵まれているんだろうね
  とりわけ幼馴染が優秀だからこんな良い成績ってわけだよ!」

和「その理論でいくと、この下位でくすぶっている平沢唯って子は
  よっぽど周りの環境が悪くて
  とりわけ幼馴染が残念な出来だから落ちぶれちゃってるのね」

唯「じゃあ理論的には私の方が和ちゃんよりも優秀ってことに!?」

和「でも、実際には私のほうが唯よりも成績が良いのよね」

唯「……あれ? なぜそのような事になってしまったのか」

和「この理論を証明することが出来たらノーベル賞ものよ」

唯「もはや理論的に理解できない」

紬「この2人はいったい何を言ってるのかしら?」

律「やべぇな、理論的とか口にしたら唯もなんだか頭がよく見えちゃうな」

澪「言ってることは馬鹿丸出しだけどな」

律「それにしても和はすごいよな、欠点なんて見当たらない」

和「そんなことないわ、私なんて欠点だらけよ」

律「またまたご謙遜を」

和「とくに方向音痴だし」

澪「そういえば、そうだっけ」

和「でもね、そういう欠点があるから他人にも優しくできるのよ」

紬「さすが生徒会長さんは言うことが違うわね」

和「受け売りだけどね」

唯「その理論でいくと私はものすごく優しい」

澪「もういいって。てか、それ自分で言ってて悲しくならないのか?」

唯「え? なんで?」

澪「……いや。唯がいいならいいんだ」

和「じゃあ、私もう帰るね。あなた達は相変わらず軽音部の部室で受験勉強?」

律「いや~、梓がどうしても先輩たちと一緒に居たいって言うもんでさぁ~」

和「あんまり可愛い後輩の練習を邪魔しないようにね」

紬「たまには和ちゃんも一緒にお茶していかない?」

唯「和ちゃん昨日は無理だったけど、今日は大丈夫でしょ?」

澪(あの昨日のふぁふぁ言ってたのは和を誘ってたのか……)

和「ごめんなさい、悪いけど今日も私やらなきゃいけないことがあるのよ」

唯「えぇ~。せっかく勉強も教えてもらおうと思ったのにぃ~」

律「うぅ~、校内一位の実力者を囲い込むことはできなかったか……」

和「また今度ね」

 軽音部 部室

律「前は練習なんてダルくてやる気もなかったけど」

唯「どういう訳か今やる気が溢れてくるんだよね」

澪「勉強から逃げたい一心でな」

唯「下手したらここで試験勉強始めてからの方がギターが劇的に上達してる気がする」

梓「本当に受験大丈夫なんですか?」

紬「うん、まぁ……」

唯「いざとなれば私には最終兵器和ちゃんがいるし」

律「なんだよそれ。まさか替え玉受験でもしようって魂胆じゃないだろうな」

唯「違うよ~。ちゃんと正攻法で勉強見てもらうの」

紬「和ちゃんって教えるのも上手そうよね」

唯「私がこの高校受かったのも和ちゃんが勉強教えてくれたおかげのようなもんだし」

唯「中学の先生からは絶対受からないぞって言われてたんだけど」

律「今だって常に成績はブービー争ってるもんな」

梓「そんなんでよく受かりましたね」

唯「だって、どうしても和ちゃんと一緒の学校がよかったんだもん」

澪「和も幼稚園、小学校、中学校ときて高校に入ってまで唯の世話をするとは
  思わなかったんじゃないか?」

唯「逆だよ、逆」

律「どう逆なんだよ」

唯「私の方が和ちゃんのことが心配だったんだよ」

梓「理解不能です」

唯「理論的に言うとだね」

澪「だから、それはもういいって」

唯「和ちゃんの方向音痴は免許皆伝レベルで一人で学校から家まで帰れないんだよ」

紬「さすがにそれは冗談でしょ?」

唯「いや、幼稚園のときはバスのお迎えがあったからよかったんだけど
  小学校、中学校と私が和ちゃんを家まで送り迎えしてたんだ」

梓「本当ですか!?」

唯「はじめてのおつかいってTV番組あるじゃない?」

律「あの小さい子がおつかいに行くやつな」

唯「和ちゃんあれに出演依頼が来てね」

澪「まぁ、小さい頃なんて誰しも方向音痴みたいなもんだろ」

唯「それが中学2年の時にオファーがあってさ」

律「嘘つけ、おつかいなんて年頃じゃねーだろうが」

紬「もはやただのショッピングね」

唯「いやいや、和ちゃんを舐めてはいけないよ
  その方向音痴っぷりがTV業界の人に知れて
  ちょっと面白そうだからって撮ってみようってなってさ」

梓「そんな回ありましたっけ?」

唯「結論から言うと、その回はお蔵入りになったんだよ」

唯「予想だにできぬ和ちゃんの斜め上の方向音痴っぷりに
  撮影クルーも和ちゃんを見失っちゃってさ」

律「相当だな、おい」

唯「1週間ほど行方不明になっちゃって」

澪「事件じゃないか」

唯「その後ローマで無事保護されたんだ」

梓「なんと海外」

唯「和ちゃん言ってたよ
  『すべての道はローマに通ずって本当だったわ』って」

紬「なんだかカッコイイわね」

澪「迷子だけどな」

梓「だけど、どうやって海外まで……」

唯「和ちゃんのお父さんお母さんが何があってもいいようにって
  常にパスポートとクレジットカードを持たせて外出させてるんだよ」

律「むしろパスポート持ってない方が海外へ行けなくなるから安全だろ」

唯「親の愛ってやつだね」

澪「和も和で、これ以上行ったら私海外行っちゃうんじゃないかしら?
  とか考えたりしないのかな」

唯「和ちゃんは常に自分が正しいという自信の元に行動してるからね」

梓「結構難儀な人ですね」

紬「ねぇ、唯ちゃんの言ってることが本当なら
  唯ちゃんは和ちゃんを送り迎えするために桜高へ来たってことよね」

唯「そだよ~」

紬「でも、唯ちゃん軽音部始めてから和ちゃんと一緒に帰るって目的が
  達成できてない気がするんだけど」

唯「……あれ? そう言えばそうだね」

澪「和が生徒会の会議がある日は帰る時間も一緒になるから和と下校したりしてるけど」

梓「和先輩が一人で帰る時はいったいどうしてるんですか?」

律「そうそう、今日なんて和一人じゃん」

唯「世の中には理論的に説明できないことが沢山あって……」

澪「今なら謝れば嘘ついたこと許すぞ」

梓「そうですよ、和先輩に対しても失礼です」

唯「本当なんだって」

律「さすがに信じることはできないなぁ」

紬「唯ちゃん! 嘘つく子にはお菓子あげませんよ!」

唯「うわ~ん! だって本当なんだも~ん!」

梓「あれ? お菓子取り上げるって言ったら素直に白状すると思ってたのに」

律「意外と本当のことなのかも……」

澪「お菓子ごときでそう判断される唯もどうかと思う」

唯「うぅ……くすん」

   ブーッ!! ブーッ!!

唯「あ、電話。憂からだ」

梓「ま、まさか唯先輩の泣き声にいち早く憂が反応した!?」

澪「て、テレパシーってやつか!?」

律「まさに携帯いらず!」

紬「り、理論的にお願いできないかしら!?」

唯「もしもし、なに?」

唯「……え」

澪「どうした?」

唯「和ちゃんが……迷子になったって……」



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最終更新:2014年09月08日 07:52