大学生の律梓、唯純がそれぞれアパートの一室で暮らしている
第1話 さむい
唯「寒いねー」
純「そっすねー」
唯「もー、こんな寒い日に買い物行こうなんて言ったのは誰だー!」
純「先輩です」
唯「まったく、すぐ人のせいにして、純ちゃんはー」
純「あー。そこのコンビニで肉まん買ってこうかと思ってたけど、やっぱりやめとこっかな」
唯「ああん、ごめんなさーい!……ううっ、さむさむー」
純「寒いっすねー」
唯「純ちゃんや」
純「はい?」
唯「ぴと」
純「手つめたっ。ちょっと、コラ! なにすんの!」
唯「わははー!くっつきあえば暖かろうなのだー!」ぎゅー
純「やめてください、コラ、ちょっと!」じたばた
唯「もこもこー!」
純「もこもこ言わんでくださいー!もおーっ」
梓「純……」
純「あ、あずさっ。いつからそこに!?」
律「往来でお熱いことですねー、あっついあっつい」
唯「りっちゃん!?」
純「あ、え、えっと、二人も買い物?」
梓「うん……行こっか、律先輩」
律「ほいよ。人前でいちゃつくのもほどほどになー」
唯純「……」
純「あー。肉まん、食べましょうか」
唯「うん、そうだねー」
純「先輩、やっぱり荷物ひとつくらいもちますよ」
唯「いいよべつにー」
第1話 師走 終わり
第2話 冷たい
律「しっかしさー、唯は相変わらずだなー」
梓「純はなんか変わった気がします」
律「でも仲良きことはいいことだよなー、うん」
梓「羨ましいんですか?」
律「いや、私はあそこまでする気にならん」
梓「ですよねー」
梓「だけど唯先輩もちょっとは変わったのかもしれませんよ」
律「唯が?」
梓「昔の唯先輩なら、あーいうとこ見られても照れてなかったと思うんです」
梓「やっぱり恋をすると変わるのかな」
律「え? 唯照れてたっけ?」
梓「明らかに照れてたじゃないですか。目が泳いで無口になって後頭部いじってたし」
律「……よく見てんなー」
梓「先輩、また焼き餅やいてる」
律「焼いてません。それよりさー、あずさー」
梓「はい?」
律「スーパーの袋、ひとつくらい持ってくんね?」
梓「いやですけど?」
律「ですよねー」
第2話 冷たい 終わり
第3話 楽しい大学軽音部―野球拳編
~軽音部室~
ガチャ
唯「やっほー、遅れてごめーん」
澪「唯、面倒なところに来たな」
梓「……」
律「……」
唯「どうしてりっちゃんを床に正座してるの? 修行?」
唯「どうしてあずにゃんはスカートで脚組んでるの? サービス?」
紬「それがね……」
澪「梓のいない飲み会で律が『野球拳』をしたことが問題になってるんだ」
唯「やきゅーけん? やきゅーけんって、あの『やーきゅーうーすーるーならー』……」
梓「……いかがわしいことをしたと言って怒ってるんじゃないです、分かってますか律先輩。」
梓「何故私がその場にいなかったのかと言ってるんです。」
梓「私なら先輩を生まれたままの姿にしてあげたのに……」
唯「なるほど、めんどくさいところに来ちゃったみたいだね」
澪「だろ?」
律「あのー、下着くらいは残してほしいなー、なんて……」
梓「誰が口を利いていいと言いました!」
律「はい……」
唯「んー、私ならりっちゃんより、晶ちゃんと野球拳やりたいなー」
晶「おいコラやめろ私をそっちの騒ぎに巻き込むな」
菖「ねーねー、あずにゃんちゃんさー、靴下は残したほうがよくない?」
梓「私もそう思ってたところです」
律「え、なに、なんなの? 私今からここで脱がされるわけ?」
梓「そうされたいですか?」ニッコリ
唯「あ、晶ちゃん、脱ぐのってロッカーぽくない?」
晶「私らのバンドはそういう方向性じゃねえよ!」
純(私って普通の人だよね)
幸「鈴木さん、よかったらお菓子どうぞ」
純「あ、ども」(あんまり話したことないけど、この人はまともそうだな……仲良くなれるかも)
幸「鈴木さん、ひとつ聞いてもいい?」
純「何ですか?」
幸「鈴木さんは脱ぐのと脱がすの、どっちが好きなの?」
純「アナタも連中の仲間か!」
第3話 楽しい大学軽音部―野球拳編 終わり
第4話 夜食を欲する先輩
唯「ねー、純ちゃんや。ピザって10回言ってみて?」
純「今Dr.スランプ読んでるんですけど」
純「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
唯「じゃあ、私がいま食べたいものは?」
純「……ピザ?」
唯「大正解! ぱんぱかぱーん!」
唯「見事正解した純ちゃんには、ピザを注文する権利をあげましょう。わーい」
純「えー」
唯「…だめ?」
純「先輩も私も今月厳しいって話したばかりじゃないですか。節約しないと……」
唯「そんなあー。そこをなんとかお願いできないでしょうか」
純「宅配ピザ一枚分のお金でお菓子山ほど買えますよ? 後でチョコかなにか買ってきますから」
唯「甘いものじゃないのー!ピザが食べたーい!」
純「えー……あ、そうだ。自分で作るのはどうです?」
唯「なんと! ピザって作れるんですか!」
純「小麦粉もチーズもあるし、たぶん大丈夫でしょ」
純「こないだ梓も家で作ったって言ってましたもん」
唯「そっかー、あずにゃんが作れるなら私たちでも大丈夫かなー」
純「そうですよ、梓が作れるんだし私たちでもできますよ」
唯「よーし、やっちゃいますか!」
純「私あれやってみたかったんですよねー、生地を回して延ばすやつ」
ピザはできませんでした。
第4話 終わり
第5話 指先からレッド・アイ
純「痛っ」
唯「どしたの純ちゃん」
純「紙包丁で指切っちゃいました。いてて」
唯「貸して、消毒しなきゃ」
純「消毒って……」
唯「ちゅ」
純「なにするんですか!? ばっちいですよ!」
唯「純ちゃんにばっちいとこなんてないよ。それに大事な純ちゃんの指に傷が残ったらたいへんだからね」キリッ
純「……きゅん」
純「ってなるかー!ほら、洗って絆創膏巻くから放してください」
唯「ぶー、恋人になったらこういうことするの夢だったのにー」
純「はいはい」
純「……っていうことがあったんだけどね」
梓「なんだそれ」
純「あのときはああ言っちゃったけど、正直唯先輩に指なめてもらえてドキってしたんだ……」
純「あ、ごめ、やっぱ今のなし///」
梓(なにこの子)
純「梓はそういう話ないの?」
梓「えー…」
梓「っていうことがあったんですけど、律先輩は私の血を舐めれますか」
律「なに言ってんのこの子」
律「まー、普通に消毒した方がいいと思うけど……梓がそうして欲しいならしてもいいよ」
梓「へー」
律「梓はどうなの?」
梓「は?なんで私が律先輩の指のことなんか心配したりしなきゃいけないんですか」
律「おいこら。そんな他人ごとみたいにな、お前」
梓「愛があっても他人はひとなんですよ……」
律「愛はあるのか」
梓「はい」
律「……」
梓「胸キュンしました?」
律「いや……」
第5話 終わり
第6話 兄
唯「そーなんだよー、わかんなくってさー。今度英語教えてよー」
純(唯先輩がずっと電話してる)
唯「あ、私もとろろ蕎麦好きー」
純(相手は誰だろう…)
唯「3人でセッションとかしちゃう?」
純(軽音部の人?)
唯「バカリズム? ううん、知らない。あのねー、憂が好きって言ってたのは、バナナ……そう、バナナマン!」
純(話題がつかめねえ)
唯「じゃあ今度ライブ観に来てよ。あ、お蕎麦屋さんも連れてってね」
唯「じゃ、またねー」ピッ
純「もー、部屋で二人きりなのにずっと電話される身にもなってくださいよ」
唯「ごめん、ごめん。さびしかった? よしよし、ギューッとしてあげよう」
純「で、誰と電話してたんですか?」
唯「お兄ちゃんだよー」
純「あれ? 唯先輩、お兄さんなんかいましたっけ」
唯「なに言ってるの、純ちゃん」
唯「純 ち ゃ ん の お兄ちゃん だよ?」
純「ははは、ちょっとそんな冗談……」
唯「お兄ちゃんもベースやってるんだってねー」
純「いつ知り合ったんですか!!聞いてないですよ!!」
唯「えへへ、ちょっとねー。お兄ちゃんと私は友達だから!」
純「いや、ちょっと、ほんと、マジで、ええ、マジなんですか?」
唯「純ちゃん汗かいてるー。あ、お兄ちゃんのこと、私もお兄ちゃんって呼んでいい?」
純「もうすでに呼んでるっていうか……この話やめません?」
唯「あ、そっか。純ちゃんは『あっちゃん』って呼んでるんだもんね」
純「兄の話はやめましょう」
唯「ねーねー、ちっちゃい頃、お兄ちゃんと結婚するって言ってたってほんと?」
純「やめろ!」
第6話 終わり
第7話 年末
梓「あー」ゴロゴロ
律「梓ー、せっかくの年末なんだから元気だせよ」
梓「元気ですにゃん」
律「そうは見えないぞ」
梓「あずにゃん元気でちゅう」
律「ちゅうってどこから出てきたんだよ」
梓「あー、ミカン取ってください」ゴロゴロ
律「梓は年々唯に似てくるな……ていうか唯にこの様子を見せてやりてえ」
梓「ダメです。唯先輩の前での
中野梓はマジメでかわいいあずにゃんなんですから。このキャラは崩せません」
律「キャラって言ったか。ああ、昔のかわいい梓よいずこ」
梓「今もかわいいですよ?」
律「……よく考えたら昔から別に可愛くはなかったような、そうでないような」
梓「あ?」
律「なんでもねっす」
梓「あー」ゴロゴロ
律「おい、しゃっきりしろって。荷造りして実家帰るんだろー。ほら、手伝ってやるから」
梓「だるい……帰りたくないですー……」
梓「同性の先輩とレズ同棲してる娘に気を使って理解を示そうとする母親との会話がつらい……」
律「あー。ふーん、はあ。なるほど。ふーむ」
梓「先輩の家はどうなんですか」
律「うちの親は別に……そういえば『梓ちゃんと一緒にお風呂入りたい』とか言ってたな」
梓「律先輩のうちの子になろうかな」
律「どこに魅力があった。言っとくが父親の台詞だぞ」
梓「私、気にしないです」
律「私が気にする!っていうか気にしろ!」
第7話 終わり
最終更新:2014年10月13日 13:07