ドア「ガチャ」

澪「さあ、今日も部活がんばるぞー!」

シーン…

澪「…って誰もいないのかよ///」

澪「ふぅ…」ストッ

澪「誰かこないかなぁ」

澪「ムギとか…ムギとか……ムギとか」

澪「しかし今日は体育でマラソンあったから疲れたなぁ…」

澪「…」

澪「良かったなぁ……走るムギ…体育着姿…揺れるカラダ……」ジュルリ

澪「…は!」

澪「なんか…私ただの変態になってるな……」

澪「しかし疲れた……」

澪「ねむい…」コクリコクリ…

澪「むぎゅぅ……」

澪「」zzz

ドア「ガチャリ」

紬「遅くなってごめんね〜」

紬「…って、あら?」

澪「」zzz

紬「…澪ちゃん?」

澪「う〜ん、むにゃむにゃ…」

紬「…」ジー

澪「ん?」パチリ

紬「おはよう澪ちゃん」

澪「ああ、ムギだ…ムギが見える…」

紬「うふふ」

澪「良い夢だ……」

紬「夢じゃないよ?」

澪「…え〜……現実かぁ…そりゃ最高だぉ……」

澪「!! って、え!!?」ガバッ

紬「おはよう♪」

澪「うぁああ! ムギ!! ななな何やってるんだよ!!」ズザザ

紬「澪ちゃん見てたの」

澪「び、びっくりした…」ドキドキ

紬「…あ、澪ちゃん。じっとしてて?」

澪「…?」

紬「ほら、涎」フキフキ

澪「…は///」

澪「ご、ごめん! そのハンカチ洗って返すから!」

紬「あら、気にしないで」

澪「い、いいから!」

紬「いいから、いいから♪」

澪「……恥ずかしい///」

紬「…」クスッ

澪「ていうか、いるなら起こしてくれよ…」

紬「ふふ、あんまり気持ちよさそうに寝てたから」

紬「部室って日差しが気持ちいいもんね」

紬「私も寝てるとこ梓ちゃんに見られちゃったことあるわ///」

澪「なん…だと…(中野め…なんて羨ましいイベントを…)」ギリギリ

紬「それに今日マラソン疲れたもんね」

澪「うん…(走るムギ、素敵だったよ! …とか気軽に言いたい)」

紬「走る澪ちゃん格好良かったわ」

澪「!」ドキンコ

紬「ふふ」ニコニコ

澪「ム、ムギも素敵だったょ……」ボソボソ

紬「…ん?」

澪「い、いやいや! ム、ムギって本当いい娘だよな!」

澪「いつもニコニコしてるし…誰にでも優しいし…可愛いし…」

紬「う、嘘…。そ、そうかな///」

澪「!!(誤魔化しで結構大胆なこと言ってしまった…っ)」

紬「ど、どうしたの急に///」

澪(ああ…真っ赤になったムギたまらん……じゃあなくて! この反応っ…! く、口説けるのか!? このまま!?)

澪「ほ、本当だよ…! 素直だし裏表とかないしさー」

紬「…」

紬「そうかな」

澪(あれ? なんか失敗かな…)

紬「ふふ…それは澪ちゃんの勘違い…かな?」

澪「え…」

紬「だって、私は人に言えない内緒だらけだもの」

澪「そ、そりゃあ一つ二つは誰にだって…」

紬「ううん…もっとたくさんよ」

紬「こうして澪ちゃんと話してる今だって…私、とんでもない隠し事してるかも」

澪「…?(なんだろう、このムギの表情……なんか、からかうような寂しいような感じ)」

澪「ム、ムギの秘密かぁ…知りたいなぁ〜、なんて……ハハ」

紬「そう…? …じゃあ、1つだけ聞いてくれる?」

澪「え…いいのか?(い、意外な展開…? でもムギの秘密って…)」

紬「ときどきね、誰かに無性に聞いて欲しくならない? 心の奥底にあるものって」

澪「まぁ…わかるような」

紬「聞いて……くれる?」

澪「…うん(なんか緊張してきた…)」

紬「私ね…実は」

澪「…」ドキドキ

紬「女の子を好きになっちゃったの」

澪「!!」

澪「な、何を…じゃなくてだだ誰を…(やば…やばい…動揺してる…わたし)」

紬「ふふふ…これ以上はまた内緒!」

澪「そ、そんな…」

紬「ね? 私ってちょっとフツーじゃないし、隠し事だらけでしょ?」

澪「む、ムギ…(うぅ…なんかワケわかんない…なんでか…涙でそう……)」

紬「ごめんね…急に変なこと言って……」

澪「だ、誰なんだよ…軽音部の誰かなのか!?」

紬「…それは」

澪「…」ドキドキ

紬「…言えないわ」

澪「そ、そんなぁ〜…」

紬「今は…ごめんね。でも、いつか澪ちゃんには絶対に聞いてほしいな…なぁ〜んて…」

澪「…!!(なんだよ…それ…)」

澪(少なくとも私じゃあないって言いたいのか!?)

紬「…みんな、遅いね〜」

澪「……ん…だよ…」

紬「うん?」

澪「なんだよ! それ! 今じゃあダメなの!?」ガシッ

紬「み、澪ちゃん…?」

澪「むむむムギ…! 教え…デ!、く」

紬「」

澪(ぐぉぉ…思い切り舌噛んだ///)

紬「だ、だいじょうぶ澪ちゃん?」

澪「ら、らひじょうぶ…」

紬「ちょっと舌見せて」グイッ

澪「うわっ…(ムギ…顔近いよ…)」

紬「あら…凄い血出てるわ…ちょっと拭いてあげる」

澪「!! い、いいって……!!」バッ!

紬「…え…き、きゃあっ」ガッ グラァ…

澪「あ! む、ムギッ!」ガシッ

ガッ

澪(!! あ、私まで躓いて…)グラァ

ドス! ドスン!

澪「…(ソファに…お、押し倒してしまった…!)」

紬「…」

澪「ご、ごめんムギ…大丈夫…」

紬「う、うん…別に…」

澪「ほ、本当に大丈夫か…? 痛くない…?」

紬「ほ、本当よ…ソファの上だし…」

紬「それより…」

澪「…う、うん?」

紬「そのぉ…澪ちゃん…手が……///」

澪「ん? …あぁ!!(私の左手………ムギの…胸に…!)」

澪(あぁ…なんだこの感触…むぎゅむぎゅするぅ///)ムギュムギュ

紬「……え? …ん……み、みお…ちゃ…ん……?///」

澪「は!(し、しまったぁ!! 何やってるんだ私!!?)」

ドア「ガチャッ!」

澪紬「!!」

律「おっくれたぜーー!!」

律「…ってあれ……お前ら…」

紬「!」

紬「ち、違うの!!」ドン

澪「!! う、うわ」ガタッ

紬「あ…ご、ごめん澪ちゃん…」アセアセ

紬「違うのよりっちゃん! 本当に違うの!」オロオロ

澪(…ムギ?)

律「あ、ああ…そなの……ていうか違うて何が…」

紬「だ、だから…へへへ変なこと…してたワケじゃあ…」

律「いや、当たり前だろ…たぶん、転んで覆いかぶさってただけだろ?」

紬「あ…………うん…///」

律「そんぐらい普通わかるし…」

紬「///」

紬「でも…こんな姿見せたくなかった…」ボソリ

澪「!!」

律「ん…なんか言った?」

紬「ううん、何でもないの」ニコッ

律「おお、もういつも通りに! …でも慌ててるムギって珍しかったな」ニヤニヤ

紬「もぉ…りっちゃんたら」

律「ははは」

澪(…なんか)

澪(いろんなことがいっぺんにありすぎて、ワケわかんなくなってしまった…)クラクラ

澪(でも、確かにムギがあんなに取り乱すの初めて見たかも…)

澪(今のってつまり…)

律「唯と梓はまだなのか?」

紬「そうみたい」

律「アイツらもまたどっかでイチャついてるのかな、ハハ」

紬「…あらあら、そうだといいわね♪」

律「おいおいジョーダンだよ」

紬「うふふ」

澪「…」

澪(なんだろう…このモヤモヤ感は)

澪(私…やっぱり…ムギのこと好き…なのかな)



……………………………
…………………
………


その夜 秋山家!

テレビ『ぼくは死にましぇーん! ぼくは死にまっしぇーん!!』

テレビ『あなたが…あなたのことが! 好きだから!!』

澪「……っ」ジーン

澪「ふぅ…やっぱり恋愛ドラマはいいなぁ…」

澪「特にこの告白のシーンだけは、たとえどんなにつまらないドラマでも泣けるんだよな…」

澪「告白…か」

澪「ムギ…誰を好きになったんだろ…」

———「ときどきね、誰かに無性に聞いて欲しくならない? 心の奥底にあるものって」

澪「確かに…」

澪「私の心、伝えたい…たとえムギが他の誰かを見ていたとしても」

澪「この想いはきっと本物、だよな…」

澪「伝えよう…たとえ後悔するとしても」

澪「告白しよう!」

澪「でも…何て言おう?」

澪「どうせならちょっとは格好良いこと言って、少しでも気を惹きたいしな」

澪「何か良いセリフは…」

澪「『私は死にましぇ〜ん! ムギが好きだから!』」

澪「……いやいや、状況設定が難しいな…」

澪「『ムギの瞳に乾杯…』」

澪「……お酒は20歳になってから!」

澪「『月が綺麗ですね』」

澪「……そう、綺麗な半月をムギの眉毛に例えて…って、余計わかりずらいわっ!」

澪「『む〜ぎ! セッ○スしよ♪』」

澪「……アタマが壊れてきた…」

澪「…」

澪「ダメだ」プシュー

澪「う、うん。最初から私にセリフは向かないよ!」

澪「口下手だし、どうせ噛むしどもるしな…」

澪「!!」

澪「そうだ! 私の得意分野! 文章にして気持ちを伝えよう!!」

澪「これならバッチリだ! ムギの心を掴んで離さない、素敵なラブレターを書くぞ!」

澪「まったく…自分の最大の武器を忘れるなんて…私ったら」テヘ☆

澪「よし」バッ

カキカキカキカキ…

澪『どんなに空腹でも、私は幸せ。』

澪『黄色い眉毛弾ませて駆けてゆく君を見てると、切りそろえた大根がとても似合っている。』

澪『でも沢庵をはずした君の姿も見てみたい・・・。』

澪「…ふぅ、こんなもんかな」フッ

澪「…」

澪「……」

澪「バカか私はぁぁぁぁああああああ!!!」

ビリビリバリーン!

バカカアアァァアアアアア!

アアアアア…

…アア…ア…

………



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最終更新:2014年11月03日 19:07