チュンチュン! ピーヨピーヨ

澪「…ふぅ」

澪「やっと書けた…最高の出来だ…」

澪「あとはこれを今日ムギに渡すだけ…」

澪「……ねむい」バタリ


がっこう!!

澪「結局寝坊して遅刻してしまった…」

澪「まあそれはとにかく! 重要なことは、これをどうやってムギに渡すかだけど…」

澪「放課後…直接かな……」

澪「でもムギと2人きりになれるチャンスなんてそうそう無いよな…」

澪「…」ブルル…

澪「もう緊張してきた…トイレいこ」

澪「うぅ…改めて鏡見ると酷いカオしてるなぁ私…」

澪「目赤いし…ガチャピンみたいな半目だし…髪なんてボサボサ…」

澪「今日はやめといた方がいいかな…」

紬「あら、澪ちゃん?」

澪「!!」ドキン!

紬「澪ちゃん…なんか寝不足みたいだけど大丈夫?」

澪「いいいいやいやいや! だいじょぶだよ! はっはっは!」ドキドキ

紬「そう…?」

澪「ははは…(ん? あれ、もしかして今って2人きり?)」

澪(ここで渡すか…)

澪(いやいやトイレてロマンの欠片もないし…しかもこんな身なりで)

紬「?」

澪(いや、でも引き伸ばすと私の性格上どんどんハードル上がるし…)

澪(チャンスだし! もう行くか!)

澪(問題なのは気持ちだ! ムギは良い子だから場所とか外見とか気にしないって!!)

紬「? ?」

澪「ムギ…突然だけど、これ読んで欲しいんだ…」スッ

紬「…え? な、何」

澪「読めば…わかるから…」

紬「いま、ここで?」

澪「で、出来ることなら…(部室で読まれでもしたら厄介だしなぁ…)」

紬「…わかったわ」カサカサ

澪「…っ!(渡した…渡してしまった!)」

紬「…」

澪「…」ドキドキ

紬「…」

紬「…」グスン

澪「!! む、ムギ…?」

紬「…ごめ…ごめんなさい……」グスングスン

澪「え……?」

紬「凄い…凄いの…澪ちゃんの想いが……とても伝わってきて……」

澪「……!(伝わったっ……!)」

紬「…でも、無理よ……私は…」

澪「え」

紬「こんなの無理……私と澪ちゃんじゃあつり合わない……」

澪「そ、そんな……」ジワッ

紬「ごめんなさい…」

澪「つ、つり合うとか合わないとか、そんなの関係ないだろ…!!」

紬「!!」

澪「私の気持ちわかってくれたんだろ!?」

澪「だったら応えてくれよっ……!!」

澪「これが…私の全力なんだ……」グスン

紬「でも…でも……」

澪「お願いだっ! ムギ!!」

紬「でも…私…」

紬「こんな素敵な歌詞に見合う曲、作る自信ないわ……」

澪「だから! そんなことな…」

澪「…」

澪「ほぇ?」

澪「えっと…そこには私の想いとか…全力とか……って、あれれ??」

紬「…」

紬「澪ちゃんの全力の歌詞…なのね……」

澪「え、歌詞っていうかえと…」

紬「…そうね…澪ちゃんの折角の力作をムダには出来ないしね…」

澪「あ、ああ…」

紬「…そうよね。やる前から諦めちゃあダメだよね」

澪「お、おお…」

紬「澪ちゃんを見習わなきゃ! 弱音吐いてごめんなさい! やっぱり私やってみる!」

澪「え、ええ…」

紬「つり合うかわからないけど…私も全力で曲作るわ!」

澪「う、うん…」


律「おいおい…お前らなに便所で騒いでるんだよ…」

紬「あら、りっちゃん♪」

律「どーしたんだ?」

紬「うふふ、まだ何でもないの」

律「まだ?」

紬「楽しみにしてて、ね!」

律「……???」

澪「…(残念なような安心したような)」

澪「…(ま、いっか…なんか疲れた……)」

澪(きっと、今のままが一番幸せなんだって、神様が言ってくれてるのかもしれない…)

……………………………
…………………
………

澪「よし、日直の仕事終わり!」

澪「…ふふふ」ニヤニヤ

澪「今日は唯と律は掃除当番っ…」

澪「ムギは先に部室に行ってるっ…!」

澪「…うふふふふふ…今部室に行けば…でへへ///」

澪「」ニヤニヤ

スタスタ…

ドア「ガチャ」

澪「おまたせ…、ムギ…///」

澪「…あれ?」

澪「誰もいないし…」ガックリ


澪「…あれ…戸棚の陰から…何かが出ている」

澪「な!」

澪「あの世界が嫉妬する黄金の輝きは!」

澪「ムギの髪………?」ソォ〜

澪「!」

澪「ム、ムギ!? どうしt…」

紬「…」スー スー

澪「寝てる…」

澪「こ、これが中野梓が見たという幻の! 『部室で眠る女神』か…」

紬「…ん」

澪「!」

紬「…」ムニャムニャ…

澪「!!」ドキュゥゥゥン

澪(なんだろうこの可愛い生き物は///)

紬「…みおちゃん……」

澪「え…」

紬「…みおちゃん……すき…」

澪「!!」

紬「…すきまに入っちゃダメよ……ふふふ…」ムニャ

澪(……なんの夢だよ…私は梓かっつーの)

澪「し、しかし…こんなにじっくりゆっくりムギを近くで見れるなんて…」

澪「肌真っ白だし…髪ツヤツヤ……唇もキレイなピンク……」ハァハァ

澪「む! ダメだダメだ!」ブンブン

澪「私…完全に変態だ……」

澪「…くちびる…?」

澪「…」ドキドキ

澪「ちゅ、ちゅーしちゃおうかな…///」

澪「いやいや、やめろ私! 最低過ぎるぞ!!」

澪「でも…何も減るもんじゃあないし…」

澪「…このまま、ムギさえ気付かなければ…誰も何も傷つかない…」

紬「…」ムニャ

澪「」ドキッ

澪「これは『チャンス』だ……ムギにちゅーしろという『チャンス』と私は受け取った………」

澪「私の成長は……未熟な恋愛経験に打ち勝つことだとな……」ゴゴゴ…

澪「ムギ……」

澪「…ごめんっ……!」スッ

紬「…ん……」zzz

澪「…………っ(あと…1mm……!)」ドキドキ

ドア「ガチャコン」

澪「」

梓「こんにちわー!」

澪「    」

梓「って、えええええ!!! 先輩たちなななナニをッ!!?」

澪「」ビクーン!

梓「い、いま…キキキ、キス……あ…あ…わ……」

澪「ち、違うぞ! 違うんだ梓!!」アセアセ

梓「なんだ、違うんですか」ホッ

澪(あれ? ちょろい)

紬「……ん〜〜?」パチリ

澪「ぬふぅ!!?」ビクリ

紬「ふぁ……。あら…澪ちゃん、梓ちゃん…どうしたの〜?」

梓「いや、今澪先輩がムギ先輩にキスしてるように見えt」

澪「う、うわー! わー、わー、わー!!」

紬「…えぇ?」

澪「あうあう…」

紬「……澪ちゃん…本当…なの…?」ジッ

澪「ちちち違うよ! 神に、女神に誓ってしてない! そんなこと(まだ)してない!!」カグブル

梓「じゃあ、あんなに顔近づけてナニしてたんですか、澪先輩」

紬「……っ!!」

澪「そそそそれれれはは……(黙れぇぇええ中野ぉぉぉおおおお!)」

澪「む、ムギがこんなところで、ねね寝てるから、ぐぐ具合でも、わ悪いのかと、思て!」

澪「おデコで熱測ってただけだよ!!」

…シーン

澪(あわわ…さ、さすがに苦しいか!?)

梓「なんだ、そうだったんですか」

澪(あ、やっぱりちょろい)

紬「…そう…なの……?」ジッ

澪「う」

紬「…ごめんね、心配かけちゃって…西日が気持ちよくて寝ちゃってただけなの」

澪「あ、ああ…別に…元気なら…(信じて…くれたのかな?)」

梓「もしかしてまた誰か驚かそうと隠れてたんですか?」

紬「えへへ」ニコッ

澪(あ、いつもの笑顔///)ホッ

紬「…ありがとう、澪ちゃん」

澪「? いや…それほどでも…」

紬「…」

澪(なんだろう…今一瞬見せた表情は)

紬「りっちゃん、いないわよね?」キョロキョロ

梓「? まだみたいですけど?」

紬「…」ホッ

澪(ハァ……とにかく反省しよ…)

澪(バレて、嫌われなかったのが最大のラッキーだったと考えとこう…)


……………………………
…………………
………

ジャ〜ン♪

唯「いぇ〜〜い!」

澪「ふぅ…なかなかだな」

紬「いい感じだったね!」

澪「今の調子でもう一回演ってみよう!」

律「…」

梓「? 律先輩どうしたんですか?」

律「まだ…何かが足りないな」キリッ

梓「そうですかね…ホントに良かったと思いますが…」

律「何ていうかな…そう! 一体感が足らんな!」キリリッ

澪「は…?」

唯「私たちは一心同体っす、りっちゃん部長!」

紬「私もそう思いまっす!」

律「そうだな…でも、もっともっと私たちは一つにならなければならない!」

澪「律…何が言いたいんだ……ていうか何を企んでいる」

律「私が言いたいのはだな、もっと軽音部で絆を深めないといけないってことさ」

梓「えっと、つまり…??」

律「そのために! これからポッキーゲームを行う!」

澪梓「な ん で だーーーッ!!」

梓「遊びたいだけじゃあないですか!!」

澪「話の持って行き方が無理やりすぎる!」ゴチン

律「あいたーー!」

澪「…ったく! なんだかんだと練習をサボることばっかり!」プンプン

唯「わぁ〜い! げーむげーむ!」

梓「乗らないでくださいよ!」

澪「くだらない提案は放っておいてもう一回演奏するぞ!」

澪「さあ、準備しよう、梓!」

梓「もちろんです! 澪先輩」

紬「…私、一度ポッキーゲームやってみたかったの〜」

梓「ム、ムギ先輩まで!?」

唯「やろうやろう〜!」

梓「んな! み、澪先輩〜……」チラリ

澪「ああ! 何してるんだ梓! 早くポッキーを準備しろと言っただろ!!」

梓「ぇ」

梓「…ポッキー…買ってきましたぁ……」

律「うむ、ご苦労」

梓(どうしてこうなった)

律「よし、対戦相手を決めるぞ。このくじを引いてくれ」

唯「よぉ〜し」サッ

澪「…(ていうか、ポッキーゲームてよく考えたら…色々マズイだろ///)」サッ

紬「♪」サッ

梓「…(どうしてこうなった)」サッ

一同「……!!」

律「組み合わせが決まったようだなっ…!」

律「第一試合! 唯VS梓!!」

律「第二試合! 澪VSムギ!!」

澪「なん…だと…?」

紬「あらあら…」

唯「あ〜ずにゃんだ〜〜! むちゅぅ〜」

梓「ひぃッ! なんでゲーム始める前から!?」

ポッキーゲームっ…! 唯VS梓……!

唯「ふふふ…子猫ちゃん…今夜は寝かさないぞ☆」

梓「な、何をワケのわからないことを…。でも、やるからには負けないです!」

律「両者! 咥えて!!」

唯「よ〜さ〜こい!!」パクッ

梓「…(どうしてこうなった)」パク

律「勝負っ…スタートっ……!!」

唯「」カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…ブチュゥゥゥゥ!!

梓「ブフォォッ!」

唯「…ふぅ」チュパン

梓「よ、避ける暇も与えぬとは……」ヨロッ

梓「は、迅い…」ガクリ

唯「ごちです! いい勝負だったよ、あずにゃん!!」

梓「」グッタリ

律「まあ、勝負的には引き分けだけどな」

澪「」

紬「」

澪「や、やりよった…あいつら…本当に……」

紬「これが…これがッ! 『ポッキーゲーム』…ッ!!」

ポッキーゲームっ…! 澪VSムギっ……!

紬「お手柔らかにね…澪ちゃん…」

澪「あ、ああ…(唯と梓め…なんてものを見せてくれたんだよぉ…)」ドキドキ

律「両者! 咥えて!!」

紬「よぉ〜し、負けないぞぉ〜」パクリ

澪「よよよよ〜し…!」パクリ

澪(うわぁ…ムギが咥えてるポッキーを私も咥えて…この時点でもう…倒れそうだ)クラクラ

律「勝負っ…スタートっ……!!」

紬「…」カリカリカリカリ

澪(な…! は、速いぞムギ…)ポリ…ポリ…

紬「…」カリカリカリカリ

澪(ム、ムギの顔が…もうこんなに近くまで///)ポリ…

紬「…」カリカリ…カリ…

澪(な、何考えてるんだよぉ…ムギぃ……このままだと…)

紬「…」カリ…カリカリカリカリ

澪(うぁあ! 勝負をかけに来たっ……!)ポリポリ…

澪(ムギの顔が…目の前に……)

澪(もう…ダメだ……)クラッ

紬「…」カリカリ

澪(……いや、いいの、かな? このまま、事故って、ことに、して)

澪(ムギ、と…)

澪(そう)

澪(しちゃおー)

澪(…って、いやいや!)

澪(ムリに決まってんだろぉぉぉおおおお!!)

ポキン! グルン!

律(…! 顔を横に背けたっ…! これは澪の負けっ…!)

…チュ

澪(え)

紬「あ…」

澪(いま…)

澪(ムギのくちびるが…)

澪(たしかに…)

澪(ほっぺに…)クラァッ

バターン!

紬「……!!」

律「お、おいおい澪!」

紬「み、澪ちゃん!!」

律「おい、澪! 大丈夫か! 澪! みおーーー!!」

紬「澪ちゃん! しっかりして! 澪ちゃーん!!」

澪「…」

……………………………
…………………
………



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最終更新:2014年11月03日 19:10