澪「…はっ」ガバッ
澪「あれ…確か私…ムギと…」
澪「…」
澪「なぁんだ…ただの夢か」
澪「…なぁんだ……ハハ」
紬「澪ちゃん…」
澪「!!!」ビクゥ
紬「良かった…本当に良かった…」グスン
澪「ム、ムギ!?? あ、あれ? ここは…」
紬「…保健室のベッドよ」
紬「澪ちゃん…倒れちゃったの…」
澪「ムギ…?(ゆ、夢じゃあなかったのか! 私あのまま倒れて…)」
紬「私が…私が、あんなことしたから……」ポロポロ
澪「!!」
紬「ごめんな…さい…。本当にごめんなさい…!」ガバッ
紬「キモチ…悪いよね……よりによって私なんかが澪ちゃんに……ひっく」
澪「なんで…泣くの? 泣かないで…ムギ」
紬「だって…だってっ……!」
澪「ムギ…私の方こそごめん…倒れたりなんかして」
紬「どうして…? 悪いのは私だけよ…」
澪「ムギは何も悪くないよ…私ちょっと緊張しすぎてただけだから」
紬「澪ちゃん…優しすぎるよぉ……」ポロポロ
澪「…」
澪(優しい? 私が?)
澪(そんなことない)
澪(私は…最低の人間だ)
澪(こんなに泣いているムギを目にしても、キスされて良かった、としか思ってない)
澪(ムギの泣き顔は可愛いな……とか思ってる)
澪「大げさだよ…そんなに泣くなってば…」
澪「それとも、本当はムギの方が嫌だったんじゃあないの?」
澪「『よりによって私なんか』に…キ、キス…しちゃってさ」
紬「…え?」
澪「そうなんだろ? ムギ…」
紬「そんなことないっ!!!」
澪「!!?」ビク
紬「あ…ごめん…私は…」
澪「…」
紬「…」
澪「なぁ、ムギ」
紬「…うん?」
澪「ムギってさ、キスしたことあるの…?」
紬「…どうして…急に…」
澪「…ちょっと気になっただけ。…ムギのこと…知りたいだけ」
紬「澪ちゃん…?」
澪「正直に答えてよ…それともまた内緒?」
紬「…」
澪「答えてくれたら…さっきのこと忘れるから…ムギも自分を責めなくていいから…」
紬「……。わかったわ」
澪「………あるの?」
紬「…」コクリ
澪「……っ!!」
澪「…それって、こないだ言ってた『好きな人』と?」
紬「…うん」
澪「…ほっぺた? それとも…く、くち?」
紬「…え、と……」
澪「りょ…両方とも……?」
紬「///」コクリ
澪「…」
澪「…そっ、かぁ……」ジワッ…
澪「…そう、なんだぁ……」ポロポロ
紬「澪ちゃん、なんで澪ちゃんが泣くの?」
澪(なんでだろうな。涙が止まらない)
紬「もしかして、全部わかってて聞いたの?」
澪(知らないよ。もしわかってたら、そいつに飛び掛かってしまいそうだ)
紬「ごめんね、澪ちゃん。私は最低の人間なの」
澪(何を言ってるかわからない。最低なのは私だってば)
紬「澪ちゃんに優しくされる資格なんて全然ない」
澪(優しくなんてしてないってば。ただの私の下心とムギの勘違いだ)
澪「ねぇ、ムギ」
紬「…なあに」
澪「もういいよ。変なこと聞いて悪かったよ。今日のことはお互い全部忘れよ?」
紬「…そんなこと」
澪「忘れようよ…そしてまた元の仲に戻ろう」
澪「別に何も無かったんだよ…」
紬「ごめんなさい」
澪「謝る必要なんてないんだ。何も無かったんだから」
紬「ごめんなさい…りっちゃん」ボソリ
澪(最後に何か聞こえた気がする)
澪(ううん、聞こえてない。ムギは今、何も言ってない)
……………………………
…………………
………
澪「ムギ、おはよう」
紬「おはよう、澪ちゃん」
澪「古文の宿題やってきた?」
紬「うん、ちょっといつもより難しかったね」
唯「ムギちゃん澪ちゃん〜〜! 写させて〜〜!!」バタバタ
澪「やれやれ、またかよ…」
紬「はい、唯ちゃん」クス
唯「ありがとう〜。ムギちゃんは天使さんだよっ」カキカキ
澪「ハァ…まったくムギはぁ…自分でやらせないと為にならないぞ?…ふふ」
律「そうだぞぉ〜唯。まったくお前はいつまでたっても成長しないな!」カキカキ
澪「お前が一番最悪だっ!」ゴチン
律「ぐぇ」
紬「…」
澪(あれから…私たちは不思議なくらいいつも通りに戻れた)
澪(いや、正確に言うとちょっと変化はあった)
澪(気付くと、ムギが律のことばっかり見てる…気がする)
澪(私が過敏に意識しすぎるようになったのか。それとも本当にムギが変わったのか)
澪(どっちの変化かはわからない)
紬「…ねぇ、りっちゃん」ボソボソ
律「ん〜? なんだよムギ! 小さい声で?」
紬「!! …ごめん、なんでもない。…あとで」
澪(…)
澪(別に…私が気にしなければいつも通りなのかもしれない)
澪(それならもうやめよう)
澪(前と同じようにムギと友達でいられるならば、やっぱりそれ以上の幸せは無いのかもしれない)
……………………………
…………………
………
澪「もしもしー、律?」
澪「今から買い物でも行かない? 私駅にいるんだけどさ」
律『ごめんなー澪。これから用事なんだよ』
澪「そ、そうか…」
律『また今度な!』
澪「うん、じゃあな」
澪「…」
澪「これから、どうしよ…」
澪「ム、ムギでも誘ってみるか///」
澪「って、あ! あそこにいるのはムギじゃないか」
澪「なんという運命…」デヘヘ
澪「よし」フンス!
澪「む〜ぎ!」ノシ
紬「あら、澪ちゃん♪ こんなところで会うなんて」
澪「ムギ、良かったらこれから一緒に買い物でも行かないか?」
紬「あらあら、澪ちゃんと買い物だなんて嬉しいわ。うふふ」
澪「え!」ドキン
紬「…でもごめんね、今日はムリなの」
澪「…え……何か用事でもあるの?」
紬「うん」
澪「もしかして誰か待ってるの?」
紬「うん」
澪「だ、だ誰を!?」
紬「私これから、りっちゃんとデートなの〜」
澪「」
澪「へ、へへへぇ〜〜…これから律とああ遊ぶのかぁ〜〜…」
紬「デートなの〜♪」
澪「そ、それって私がいちゃマズイのか…な…?」
紬「…」ギロリ
澪「ひっ!!」ビクゥ
紬「澪ちゃん、『デート』の意味もわからないの?」
澪「え、え、え、だ、だって…遊ぶってことじゃあないの!? 別にここ恋人ってワケじゃあないんだし…」
紬「私とりっちゃんは恋人同士よ。何度もキスしてるって言ったじゃない」
澪「」
律「お〜い! むっぎ〜、おまたせ!」
律「…って、あれ? 澪じゃねーか」
紬「あら、りっちゃん♪ …なんかね澪ちゃんが邪魔するの」
澪「じゃ、じゃま…」ガーン
律「おいおい、澪〜。私達の都合くらいわかってくれよな」
律「お前とはまた今度遊んでやるからさ、ハハ」
澪「……っ!!」ジワッ
律「おい〜、まだ何かあるのか?」
紬「…澪ちゃん、もしかして悔しがってるの?」
澪「な!?」
律「ん?? どういうことだ」
紬「なんかね、澪ちゃんて私のこと好きみたいなの」
澪「!!」
律「ま、マジかよ…」
紬「だって…澪ちゃんていっつも私のこと、イヤラシイ目で見てるんだもん。わかってるわよ?」
澪「そ、そんなこと…な…」ブルブル
紬「体育の時間なんて、私のカラダばっかり見てくるし」
紬「事故のフリして胸さわってくるし」
紬「ちょっとほっぺに唇が当たったくらいで興奮して倒れるし」
紬「言い難かったけど、正直キモチ悪かったんだから」
澪「……〜〜〜っ」ポロポロ
律「澪……」
紬「りっちゃん、丁度いい機会だから、澪ちゃんにわからせてあげよ?」
紬「ここで…いつもみたいに激しくキスをして…」クス
澪「…!!」
律「ムギ…そうだな。その方が澪のため、かな?」クス
澪「り、律……お前……!」
紬「さ、りっちゃん…来て」
律「ああ、よ〜く見とけよ、澪?」
澪「や…やだ……」
紬「ん〜〜〜」
律「ふふふ…」スッ
澪「やめろぉぉぉおおおおおおッ!!」
澪「や、やめっ!」ガバッ
澪「…あれ?」
澪「ここ…私の部屋…」
澪「あ…私、勉強しながら寝ちゃって…」
澪「…夢かよ///」
澪「な、なんていう夢を…私なんか溜まってるのかな…」
ヴィーン ヴィーン
澪「!」ビクン!
澪「電話……。り、律から!?」
澪「…もしもし」
律『お〜、澪〜。何してたんだ?』
澪「別に…ずっと勉強だよ…」
律『私の方はさ〜。ずっとムギと遊んでたんだよ』
澪「…な…ん…だ…と…?」
律『駄菓子屋とかゲーセンとか連れてってやったらさ〜、すっごく喜んじゃってさ!』
律『楽しかったぜ〜。ムギのやつ、唯より天然かもしれないぜ!』
澪「…」
律『…ん? 澪? ごめん、勉強の邪魔しちゃったか?』
澪「なん…で…」
最終更新:2014年11月03日 19:11