11月11日。それは、梓の誕生日。

去年は、けいおん部の皆でお祝いしたけど今年は少し違う。

何故なら……

律「何悩んでんだ?」

澪「え?」

律「昨日の話か?」

澪「あ、ああ。まあな」

律「そんなに、悩むほどじゃないと思うけどな。自然に……」

澪「……そうだよな」

でも、その自然にってのが難しいんだよな。

梓「澪先輩っ」

澪「あっ、梓」

ぎゅっ

澪「わっ」

梓は、私の顔を見るなり腕に抱き付いてきた。

律「朝からお熱いですな」

澪「うっさい///」

律「邪魔者は、先に行きますから」

澪「ああ」

律「昨日の話、さり気なくしてみろよ」ボソッ

澪「う、うん///」

しばし、歩調を遅くして律との距離を開ける。

私と梓は、交際していた。

半年ほど前、私は梓から告白された。

突然の告白にビックリしたけど、意外に積極的な梓の押しもあって

私達は交際をスタートさせた。


梓「最近、朝冷えてきましたね」

澪「そうだな」

梓「でも、こうやって澪先輩と寄り添ってると温かいです」

梓は、私の腕にスリスリと顔をすり寄せる。

澪「私も温かいよ」

流石にこうして歩いてると、ただの先輩後輩には見えないだろうな。

付き合い始めた当初は、人目とか気にしてたけど何時の頃からか吹っ切れた。

澪「じゃあ」

学年の違う梓との分かれ道。

梓「澪先輩」

梓は、キュッと目を瞑り顔を少し上に向けた。

いわゆる、キスして下さいポーズ。

周りをキョロキョロと伺い、人目が無いのを確認すると

ちゅっ

澪「また、昼休みな」

梓「はい」

何故か、初めて梓とキスした時を思い出してしまった……



付き合い始めて、二週間位。

デートの帰り道。

さっきと同じように梓が目を閉じ、キスして下さいポーズを取った。

私も梓とキスしたかった。

なのに改まって、キスをせがまれると身体が硬直して動かない。

梓が目を瞑り、私は身体が硬直。と言う状態のまま、しばしの時間が過ぎた。

梓「?」

梓の目が開いた。

梓「もう……」

梓がそう、呟いたかと思うと私の肩に手をかけ

ちゅっ

梓「待ってる間、恥ずかしかったじゃないですか///」

澪「ご、ごめん//」

それが私と梓のファーストキスだった。

…………

お昼休み

私達は、人目の付かない場所でお弁当を食べるのが日課になっていた。

お互い持参した手作りのお弁当を食べあった。

お弁当も食べ終わると、私は脚の上をポンポンと叩く。

梓は、モゾモゾと私の脚の上に乗っかる。

そして、私に身体を預けるように寄り添う。

梓の身体が密着したら、ギュッと抱きつく。

この体勢は、梓のお気に入りらしい。

澪「あのさ。来週、梓の誕生日だろ?」

頃合いを見て、切り出す。

梓「はい」

澪「誕生日は、一日ゆっくりデートしない?」

梓「デート?」

澪「誕生日は、梓とずっと一緒に居たいなって」

梓「良いですね」





澪「それで……」

梓「……あの、デート終わったら私の家、泊まっていきません?」

梓「その日、両親留守だから気使わなくて良いですよ」

澪「!」

澪「良いね。それなら一日梓と一緒に居られる」

少し予定は狂ったけど、ほぼ計画どおり。

梓の誕生に、私は一つの野望を抱えていた。

それは……

初H

ウブな私達は、付き合い始めてから半年経つというのに、まだ済ませてなかった。

そういう雰囲気に持っていくと言う意味で、梓の誕生日と言うのは、うってつけだった。




~昨日~

律「えええぇええ!!」

律「まだ、してなかったの?H」

澪「うん///」

律「付き合って半年も経つだろ?」

澪「そう……だけど」

律「えええぇええ!!」

澪「何で2回も驚くんだよ」

律「だって、スゲーいちゃいちゃしてるから、てっきり毎日の様にHしてるのかと」

澪「毎日するか!///」

律「したくないの?H」

澪「……そういうのは、お互い大人になってから///」

律「本音は?」

澪「……Hしたい///」

律「正直でよろしい」

澪「で、でも誰とでもHしたいって訳じゃなくて、梓とだから///」

律「はいはい、わーってるよ」

澪「中々そういう雰囲気に持ち込めないっていうか///」

澪「ち、ちなみに律達はどの位でHしたの?」

律「付き合い始めて、20日くらいだ」

澪「早……」

律「愛があれば、そんなもんだぜ」

律は、私よりも一足早く恋人を作り交際していた。

お陰で、色々とアドバイス貰ったりしていたのだった。

律「……来週さ、梓の誕生だろ?」

澪「うん」

律「ちょうど良い機会じゃん。誕生日お祝いして、そのまま梓を家に泊めて」

澪「あ、なるほど」

律「でも、普段通りじゃダメだぜ?」

澪「普段通りじゃダメ?」

律「そう。例えば……」

…………

梓「澪先輩?」

澪「ハッ!」

梓「今日、何だかボーッとしてますよ?」

澪「そ、そんな事無いよ」

梓「そうですか?」

澪「うん」

キーンコーンカーンコーン

澪「もう昼休み終わりか」

梓「早いですね」

澪「また、放課後」

梓「はい」




~放課後~

放課後になり、部活の時間が始まる。

梓と恋人になったからと言って、特別変わりはない。

今までの5人の関係が崩れるのも嫌だったから

部活は部活、プライベートはプライベートと割り切っていた。

律「よーし、今日の部活終わり」

唯「帰ろう」

紬「うん」

律唯紬「バイバイ」

律達は、私達に気を使い先に三人で帰って行く。

梓「どうでした?新曲のリフ」

澪「ん?ああ、良い感じに弾けてたよ」

梓「ありがとうございます。澪先輩に褒めて欲しくて頑張って練習したんですよ」

澪「そうか、頑張ったな」

梓「はい」

澪「じゃあ、頑張ったご褒美に」

梓を抱き寄せ、ギュウッてして上げた。

梓「えへへ」




梓「キス、して下さい」

甘い声でキスのおねだり。

髪をかき上げてデコチュー。

ちゅっ

両方のほっぺたにキス。

ちゅっ、ちゅっ

そして、唇に。

澪梓「んちゅっ、ちゅぱっ、ちゅちゅっ」

梓とのベロちゅ~は、トロけるような甘さ。

ずっとキスしてたいって思っちゃう。

ガチャガチャッ

律「忘れ物っと……」

澪梓「あ///」

律「…………」

律「はいはい、失礼しやしたっと」

ガチャガチャッバンッ

律「あれだけラブラブなのにねえ」

梓「続きしましょ?」

澪「うん///」

澪梓「ちゅっちゅ、ぺろぺろ、ちゅぱちゅぱっ」

梓「澪先輩、ベロちゅ~上手くなりましたよね///」

澪「そ、そう?///」

初めて、ベロちゅ~した時なんて……


いつもの様に軽いキスを交わしてたら、柔らかくてヌルッとした物が私の口内に入ってきた。

澪「わっ!」

思わず唇を離してしまう。

梓「ベロちゅ~嫌ですか?」

あ、さっきのは梓のベロか。

今まで軽いキスしかした事なくて、ちょっと恥ずかしかったけど私もベロちゅ~に興味あったし

澪「ううん、嫌じゃないよ///」ってOKした。

梓「じゃあ……」

再びキスを交わす。

やり方が良く分からず、舌先をレロレロするだけ。

お互い舌を絡めるタイミングが合わなかったりで、中々上手く出来なかった。

キスしてた唇を離すと、私と梓の間にツゥっと架け橋が出来た。

ベロちゅ~した後って、本当に唾液ブリッジが出来るんだな。

澪「う、上手く出来なくてごめん///」

梓「慣れですよ、慣れ。回数こなせば、上手くなりますよ///」

澪「うん///」

それからは、毎日のようにベロちゅ~してた。

お陰で、上手と言われるまで上達しました。

…………






澪「そろそろ帰ろう?」

梓「はい」

梓「誕生日、楽しみです」

澪「私もだよ」

澪「何処か行きたい所とかあったら、考えておいてくれ」

梓「はい」

澪「じゃあな」

ちゅっ

サヨナラのキスを交わし、梓を見送った。

―――――

月日が流れるのは早いもので、もう11月10日。

梓の誕生日前日になってしまった。

私もあれから、色々と計画を立てたりと着々と準備を進めていた。

~~~♪

澪「!」

この着信音は……

そう、梓限定の着信音。

澪「もしもし」

梓「もしもし、澪先輩?」

梓「明日のデートなんですけど……」

澪「うん」

梓と話しながら、ふと鏡に映った自分の姿を見てみると、とんでもなくだらしない笑顔になっていた。

うわ、私こんな顔してたんだ///

梓「澪先輩?」

澪「あ!ごめん、明日一時に駅前で待ち合わせな?」

梓「そうです。じゃ、また明日」

梓「お休みなさいです」チュッ

梓から電話越しにお休みのキス

澪「おやすみ」

チュッと、電話越しにお休みのキスのお返し。

プツッ

その日は中々寝付けなかった。

遠足が楽しみで寝付けない子供の様に。


11月11日

梓「澪先輩」

私の姿に気づいた梓がフリフリと手を振る。

私も手を振り返す。

梓は、私に駆け寄り腕に飛びついてきた。

ニコニコとした笑みを浮かべて私を見上げてくる。

人前で、イチャつくのは苦手だった私だけど

梓と付き合いだしてから、変わり始めたんだっけ。


初めて手を繋いだ日なんて……

梓と付き合い始めた日の帰り道。

恋人になったからと言っても、どうして良いか分からず

ただ、ポツリポツリと会話を交わしながら歩いていた。

やがて梓が、

梓「あの……手///」

澪「ん?」

梓「手繋いでも良いですか?///」

澪「あ、うん///」

梓「じゃ、じゃあ///」

ぎゅっ

繋がれる手と手。

こんな風に、梓と手をつなぐのは合宿の肝試し以来かな?

梓「ずっとこうやって、澪先輩と歩きたかった」

澪「こ、これからは、毎日こうやって出来るな///」

梓「はい///」


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最終更新:2012年12月21日 00:00