唯「先生か~。良いな~、私も幼稚園の先生とかになりたいな~」
さわ子「そのためにも、絶対に大学に受からなきゃいけないわね。ねぇ、唯ちゃん、りっちゃん」
律「うっぉい、何でピンポイントで私達? 普通、澪とかムギにも言うでしょ!!」
梓「当然ですよ。普段から真面目にしている人より、普段真面目じゃないほうを心配するに決まってるじゃないですか?」
唯「なんか、今日のあずにゃんヒドイよ~」
律「本当だな。なんか、やたら毒舌の様な気が……」
学「はははは。何だか、とっても面白い生徒たちだね」
さわ子「でしょ? でも、毎日退屈はしないわよ」
学「わかるよ、その気持ち。俺もそう思ってるから……」
さわ子「そうでしょ。そういえば、学君って何処の学校でやってるの?」
その言葉で、学達の顔が曇る。
学「……ニュータウン小学校……だった」
律「ニュータウン小学校? 確か、それってゾーンの襲撃を喰らったていう」
澪「バカ、少しは空気よめ」
空気を読まない発言をした律に鉄拳を喰らわせる。
さわ子「そう……あそこだったの……」
数美「でも、子供たちは全員無事だったから……。だから、大丈夫よ」
紬「それは、不幸中の幸いでしたね」
さわ子「それじゃあ、今はみんなはどうしてるの? 別の学校でやってるとか?」
学「いや、実をいうと。俺達……やることがあるから、今は休職中なんだ」
唯「給食? 皆、給食センターのおばさんになったの?」
文也「はは、違うって。休職中っていうのは、休みの期間って事だよ。こんな簡単な言葉も解んないんじゃ、小学生の勉強からやり直してやろうか~」
唯「ふえ~。私も、勉強を休職中に出来ないかな~」
暫し笑いに包まれる。
文也「いいか、今から話すのは宇宙語で」
唯「宇宙!?」
律「うぉ、なんかスゲー!!」
唯と律は文也と国語の勉強(というよりは面白い言葉を教えている。中には宇宙語も教えていたり)。
澪「だったら、これも知っていますか? これは……」
レミ「うんうん、知ってる、知ってる。私もその曲は大好きなんだ」
澪はレミと音楽の話。
梓「それで、大変なんですよ。唯先輩ったら」
数美「はははは、でも、梓ちゃん嫌そうじゃないわよね」
梓「え!? えぇ、まぁ……そうですけど」
梓と数美は世間話。
健「うぉっ、っていう力強ッ!? 本当に、これが女子高生の腕力かよ」
紬「健先生も……なかなかやりますね……」
健と紬は何故か腕相撲をしていた。
椅子に座って、紬の淹れた紅茶を飲むのは学とさわ子。
軽音部と星川兄妹の楽しそうな姿を見ながら、学は紅茶を啜る。
学「懐かしいな。まさか、さわ子ちゃんとこんな所で会えるとは思えなかったよ」
さわ子「それを言うなら私もよ。懐かしいわね、私達の出会い……まだ覚えてる?」
学「忘れるはずがないよ。両親を失ったばかり俺に手を差し伸べてくれたのはさわ子ちゃんだったんだから……」
そうね、とさわ子も紅茶を啜る。
さわ子「それにしても、中学校卒業してから会いに来てくれないなんて酷いじゃない。文化祭の日程、手紙教えたのに、私……待ってたのよ」
高校1年の時の事を思い出す。
軽音部に入部し、初の舞台を星川兄妹にも見てもらいたく手紙を送った。
結局、学がさわ子の前に現れる事はなかったのだが……。
さわ子「ねぇ、どうして?」
学「……行ったよ」
さわ子「え?」
学「文化祭には行ったし、ステージも見たよ。……だけど、会えなかったんだ」
さわ子「そう……」
思い出すのはあの時の記憶。
文化祭のステージで一心不乱にギターを弾く彼女を見て気付いた。彼女は既に、別の人を見ていた。
そう思うと……会いに行けなかった。気づいたら、家に戻っていた。
そして、ずっと……会えないままでいた。
そんな二人を、先程まで別の話で盛り上げっていた他の面々は何故かソファーの陰に隠れながら見つめていた。
律「なんか、アダル~トな雰囲気ですな~」
健「文化祭って……多分、兄貴が黙って帰ってきて部屋に籠って泣いていた……あの日だろうな」
数美「あぁ、あったわね。そんな日」
紬「あの真面目そうな学さんにそんな過去があったんですか?」
レミ「私も兄貴にそんな過去があるなんて聞いたことが無いんだけど」
健「いや、そりゃあ、レミと文也はまだ小っちゃかったしさ。まぁ、何ていうか……あんな兄貴、俺達も初めてだったしさ」
梓「でも以外に、さわ子先生ってモテたんですね。先輩たちから聞いた話だと、そんな印象なかったですけど」
澪「でも、確か先生って好きな男子の為にヘビメタに走ったんだよな。それって、学さんの事振ってるって事だろ」
紬「まさに大人って感じね」
律「いや~、びっくりな事実だな。実は、さわちゃんの本性を知らないからとかじゃないよな」
文也「いやいや、知ってるって。さわちゃん、怒るとめっちゃ怖いんだぜ」
数美「多分、兄さんのお化け嫌いってさわ子さんの影響よね……」
律「まぁ、あの変貌はまさに山姥だしな」
文也「そうそう」
ハハハハハハハハハっ
さわ子「誰が山姥ですって~」
律「ひぃー、や、山姥だぁぁ!!」
文也「で、でった~!!」
鬼のような形相でいつの間にやら近づいてた。
まぁ、あんなに大声で話していれば気付かれない方が無理なのであろうが……。
学「よしっ、それじゃあ、俺達もそろそろ行こうか。皆、明日は発表なんだし、いつまでもこうしてるわけにはいかないだろう」
唯「えぇ~、もっと話してようよ~」
梓「無茶言っちゃダメですよ、唯先輩。それに、私達も練習する時間、本当になくなっちゃいますよ」
唯「でも~。あっ、そうだ。皆にも私達の演奏聞いてもらおうよ」
律「おっ、良いな。それ、予行練習って奴か」
唯「そう、それ。律ちゃん、正解」
律「やっりー!!」
唯「ねぇ、いいよね、澪ちゃん、ムギちゃん、あずにゃん」
紬「いいわね~、それ」
澪「そうだな……練習にもなるしな」
レミ「えっ、本当にいいの?」
唯「勿論だよ~。あっ、でも本番も来てもらいたいんですが~」
レミ「行く行く、絶対に行くわよ。ねぇ、姉さん、それに兄貴達」
数美「そうね、行けたらいいわね」
唯「行けたらじゃなくて、本当に来ていいんだよ」
健「よしっ、だったら絶対に行くぜ。唯ちゃんたちのステージの本番をみんなで見るよ」
文也「兄貴、そん約束して」
唯「本当? 約束だよ」
健「あぁ」
学「本当にいいのかい? 練習……しなきゃいけないんだろ?」
梓「大丈夫ですよ。先輩達も誰かが見ているとやる気のでる様ですし。是非、聞いて行ってください」
さわ子「そうよ、あの子達もやる気満々なんだから、水を差しちゃダメよ」
学「ははは、さわ子ちゃんにはいつになっても敵わないよ」
さわ子「ふふ、当然でしょ」
演奏をするために、唯達は楽器の準備をして配置につく。
準備が終わると、唯は大きく息を吸う。
唯「それじゃあ、こんにちは~放課後ティータイムです。今から、さわちゃんのお友達のために演奏をしたいと思います」
律「えらく、上から目線だな」
唯「えへへへ、だってカッコいいところ見せたいじゃん」
梓「それよりもはじめましょうよ。本当に時間なくなっちゃいますよ」
唯「も~う、あずにゃんはせっかちだね~。よし、それじゃあ聞いてください。一曲目は」
演奏が始まる。
先程とは打って変わって、一生懸命に、そして楽しそうに演奏をする。
その姿から、彼女達がこの文化祭に懸ける思いを……。
今まで一生懸命頑張っていたことが分かる。
文也「へぇ~、上手いもんだな」
レミ「ご飯はおかずって、なんだか楽しくなっちゃうわね」
数美「皆、本当に楽しそ~う」
健「いいぞ、放課後ティータイム!!」
学「凄いな……彼女達」
さわ子「普段はフワフワしてるけど、やる時はやる子達だからね」
―聞こえたぞ!!―
―この音だ。地球最後の演奏をするのは貴様らだ!!―
唯「1.2.3.4.ごっはん!!」
演奏が終わると、学達は自然と拍手を送っていた。
唯達はどうも~、顔を赤くしながら拍手を受けた。
澪「ふ~、中々上手くできたな」
梓「そうですね、本番でもこの位出来ればいいですね」
健「いや~、凄かったぜ。健先生もびっくりだぜ」
律「そこまでほめられると、なんか照れるな~。なぁ、ムギ」
紬「えぇ、嬉しくなっちゅう!!」
唯「それじゃあ、次は……」
続いての演奏をしようとした瞬間。
学「!?」
さわ子「どうし」
学「危ない、伏せろ!!」
何かを感じ取った学は、さわ子の言葉を遮って叫ぶ。
その直後、窓ガラスが破壊される。
唯「キャァァぁ!!」
律「うわぁっ!!」
文也たちは咄嗟に彼女達の前に立ち、飛び散るガラスから守る。
何が起こったのか分からないさわ子を含む、軽音部の面々。
すると、割れた窓からゆっくりと巨大な影が入ってくる。
「失礼、今のはちょっとした挨拶よ」
学「貴様は、銀河闘士!!」
コマンドギン「正確には違うわ。シュバリエに依頼を受けてこの星を消しに来た銀河指揮のコマンドギンよ」
律「銀河闘士っていうか、それって、ゾーンの怪人だろ!? 何でこんな場所にいるんだよ!!」
唯「はっ、まさか本当に澪ちゃんを?」
澪「そ、そんなわけないだろう。わ、私は普通の高校生だぞ!!」
学「さわ子ちゃん、皆を逃がすんだ」
さわ子「学君たちは?」
学「大丈夫だよ、俺達は……」
コマンドギン「邪魔者たちはどけっ!! ピック爆弾!!」
学達に向かってピック状の爆弾を幾つも投げつける。
学「みんな、行くぞ!!」
健・文也「「おぉ!!」」
数美・レミ「「OK」」
学、健、それに文也は腕に装着されたブレスレット・Vチェンジャーブレスを、数美とレミは首に下げたVチェンジャーコンパクトを天に掲げる。
―ファイブマン!!―
眩い光が彼等を包み込み、一瞬のうちにその姿を変える。
学はファイブレッド。
健はファイブブルー。
文也はファイブブラック。
数美はファイブピンク。
レミはファイブイエロー。
彼等こそ、地球をゾーンの間の手から救うために立ち上がった戦士。
地球戦隊ファイブマンである。
唯「変身した……」
梓「えぇ!! レミさん達が噂のファイブマンだったなんて」
紬「驚きね……」
律「さわちゃん、知ってたの?」
さわ子「知るわけないじゃない。今初めて知ったわよ」
ファイブレッド「唯ちゃんたちに手を出させるものか!!」
コマンドギン「そうか、貴様らがファイブマンか。ついでに葬ってくれる!!」
コマンドギンは指揮棒の形をした剣を取り出す。それをファイブレッドに向かって振り下ろす。
ファイブマン「Vソード!! くっ……皆、ここでは危険だ!! こいつを外に放り出すんだ!!」
Vソードで剣を受け止める。その力強い一撃を長くは受け止められない。
ファイブレッドの言葉に、他のメンバーは頷く。
ファイブイエロー「メロディータクト!! ハァッ!!」
タクトから伸びたリボンがコマンドギンの体を縛り付ける。続くように、ファイブブルーとファイブブラックが駆け出す。
ファイブブルー「ツインアレイ!!」
ファイブブラック「パワーカッター!!」
それぞれの個人武器でコマンドギンの腹部を殴りつける。剣を落とし窓へと後ずさる。
ファイブピンク「キューティーサークル!!」
コマンドギン「キャッ!!」
コマンドギンへとファイブピンクがキューティーサークルで突く。
ファイブレッド「今だ!! ハァッ!!」
最後にファイブレッドがキックを浴びせる。
コマンドギン「ウワァァァァァァ!!」
兄弟の見事な連係プレーによってコマンドギンは窓から外へと放り出される。
レッドを除くファイブマンは、窓から飛び降りて後を追う。
ファイブレッド「みんな、今のうち逃げるんだ!!」
唯「おぉ、カッコいい。正義のヒーローみたい!!」
律「見たいじゃなくて、本物な」
澪「それよりも早く逃げよう、また来るかもしれない」
さわ子「ねぇ、学君!!」
唯たちに逃げるように促し、同じように窓から飛び降りようとするファイブレッドをさわ子が引き止める。
さわ子「……後で……ちゃんと話してくれるのよね」
ファイブレッド「……」
何も答えず、今度こそ窓から飛び降りる。
窓の外からは金属がぶつかり合う音や、爆発音が聞こえてくる。
さわ子「……学君……」
律「こんな時にさわちゃんがこんな状態だし……取り敢えず、どこに逃げようか?」
梓「あの怪人、狙いは私達だって言ってましたよね? それって、下手に逃げるのも危険なんじゃないですか?」
唯「大丈夫だよ~。だって、ファイブマンがいるんだからさぁ」
澪「で、でも、もしファイブマンが負けたら、私達はゾーンに捕まって一生奴隷として生きていくしかなくなるんだ。そして、使い終わったら、宇宙区間に捨てられてそのまま、そのまま……」
律「あぁ、やばいなこれ。ていうか、さわちゃんもいい加減戻って来い」
さわ子「はっ、そうね。取り敢えず、ゾーンが攻めてきたこと他の生徒にも伝えましょう」
紬「そうですよね。それじゃあ、放送室に」
「その必要はないぞ。あいつの狙いは御嬢さんたち5人だけ。ほかの生徒には危害は加えない」
さわ子「誰!? この子達には指一本触れさせないわ!!」
「名前、俺の名前はバルガイヤー初代艦長、銀河のヒーロー、シュ~バ~リエ~ンだ」
桜ヶ丘高校・裏庭。
コマンドギンと激闘を繰り広げるファイブマン。
幾多の星を滅ぼしてきたコマンドギンの実力は本物であり、ファイブマンは苦戦を強いられる。
コマンドギン「喰らえ、ラッパマシンガン!!」
ファイブレッド「うわぁぁぁっ!!」
ブルー・ブラック「「うおぁぁぁぁぁ!!」」
ピンク・イエロー「「きゃぁぁぁぁぁ!!」」
ラッパから放たれた無数の弾丸がファイブマンを襲う。その威力を物語るかのように強化スーツに焼け跡が残る。
立っている事すら困難になり、ファイブマンは地面に倒れ伏す。
コマンドギン「はははは、どうした? ファイブマンとはこの程度なのか?」
高笑いをするコマンドギン。
ファイブマンは必死に立ち上がる。
ファイブブラック「兄貴、こいつ強い……」
ファイブブルー「こんな奴……どうすれば?」
ファイブレッド「諦めるな、ファイブテクターを使うんだ!!」
ファイブイエロー「そうよ、ファイブテクターを使えばあんな奴に負けない!!」
激化するゾーンとの戦いの中で開発された強化装備・ファイブテクター。
それさえ使えば、コマンドギンを倒すこともできるはず……。
ファイブレッド「行くぞ!! ファイブテク」
「そこまでだ、ファイブマン!!」
突如として聞こえてくる声に、ポーズをとるのを止める。
声の方を振り向くと、校舎の陰から人影が現れる。
シュバリエ「それ以上の攻撃は無用だ。彼女達を殺すことになるぞ」
ファイブレッド「シュバリエ!! それはどういう意味だ!!」
シュバリエ「これを見てみろ」
パチンッ
シュバリエが指を鳴らすと、後に続くように5人の銀河闘士・銀河戦隊ギンガマンが現れる。
彼等の腕には、軽音部5人が捕らわれていた。
梓「は、放して下さい!!」
律「そうだっ、私たちを食べてもおいしくないぞ!!」
紬「私、悪の組織に捕らわれてみるのが夢だったの~」
唯「うぅ~うぅ~」
澪「やっぱり、このままゾーンの下っ端として……」
シュバリエ「この子達がどうなってもいいなら、コマンドギンを倒すがいい」
ファイブレッド「くっ、卑怯だぞ!! 関係ない、彼女達を人質にとるなんて!!」
シュバリエ「卑怯はゾーンの専売特許だ。それに、彼女達は無関係などではない。コマンドギン、こいつらでいいのだな?」
不敵な笑みを浮かべながらコマンドギンはシュバリエの言葉に頷く。
コマンドギン「そうだ、シュバリエ。お前たちも感謝するがいい。名誉ある、私の演奏係に選ばれたのだからな。ハァッ!!」
コマンドギンから発せられる青白い光。
それは、5人の軽音部の体の中に入っていく。
律「うわっ!? なんだこれ?」
唯「なんか、変な気分になって来たよ……」
梓「うっ、きゃああっ!!」
ファイブブルー「や、止めろぉっ!!」
それを阻止しようと、ファイブブルーが跳びかかる。
シュバリエ「邪魔をするな、ファイブブルー!!」
ファイブブルー「うわあぁっ!!」
だが、跳びかかったところを逆にシュバリエに斬り付けられ吹き飛ばされる。
ファイブレッド「健っ!!」
吹き飛んできたブルーを受け止める。
スーツには痛々しい傷跡が残っていた。
――キャアアアアアアアアアッ!!――
唯達5人が眩い光に包まれる。
光が晴れると、そこには黒い鎧のような衣装に身を包んだ唯達の姿があった。
その目には生気が宿っていない。
ファイブレッド「唯ちゃん!! 律ちゃん!! 紬ちゃん!! 澪ちゃん!! 梓ちゃん!! 彼女達に何をした!!」
コマンドギン「何をしただと? ふふ、彼女達には私の操り人形になってもらったのよ。死の演奏のためのね」
ファイブイエロー「死の演奏? なによ、それ!!」
シュバリエ「お喋りはここまでだ。お前たちと遊んでいる暇はないのでな。それでは、失礼するよ。行こうか、コマンドギン」
コマンドギン「えぇ、シュバリエ。行きましょう。お前たちも後に続け」
ファイブマンに背を向けて歩きだすシュバリエとコマンドギン。その後をゆっくりと、唯達とギンガマンが続く。
ファイブレッド「ま、待て!!」
レッドが追いかけようとするが、突然として姿が見えなくなる。
ファイブレッド「逃げたか……」
やり切れないように、悔しそうに呟いた。
最終更新:2015年01月09日 07:53