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 音楽室。

学「さわ子ちゃん!!」


 音楽室に戻ってきた学が見たのは、荒らされた室内と倒れるさわ子の姿であった。
 学はさわ子へと駆け寄る。

 彼女達の楽器などは無事である。恐らく、最後まで守ったのだろう。
 明日の文化祭を必ず成功させるために……。


レミ「なんてことなの。こんなの酷すぎる!!」

健「畜生。俺達が……あいつを倒してれば」


 奥歯を噛みしめる。
 血の味が口の中に広まった。


学「さわ子ちゃん!! さわ子ちゃん!! さわ子ちゃん!!」


 必死にさわ子の名前を呼ぶ学。
 声に反応し、ゆっくりとその瞳が開く。


さわ子「……皆は……?」

学「……」


 自分の心配よりも、まず生徒の心配をする。
 その姿に、学達は何も言う事が出来なかった。


さわ子「ねぇ、学君。答えてよ、皆はどうしたの!! ねぇ!!」


 痛々しい傷跡が付いた腕で学に掴みかかる。
 自分達も同じ教師であり、さわ子の気持ちは痛いほど分かる。


さわ子「そ、そんな……わたし、わたし……あの子達を……」

学「……ごめん……」


 これしか言えない自分が情けない。
 さわ子は学の腕を掴みながら崩れるように泣き出した。

 月明かりが音楽室を照らした。


 戦艦・バルガイヤー。


シュバリエ「戻ったぞ」


 コマンドギンと、その演奏隊に選ばれた5人を引き連れて戻ってくる。


シュバリエ「メドー様。彼女達こそ、コマンドギンが選んだ者たちであります」

メドー『その小娘たちがか? そんな奴らで大丈夫なのか?』


 高校生の女をメンバーに選んだことに、メドーは顔をしかめる。
 だが、コマンドギンは不敵に笑う。


コマンドギン「心配いりません。彼女達の演奏には心の闇が含まれていました。その闇があれば、破壊の演奏は完璧な物へとなります」

メドー『そうか……。シュバリエ、お前はいつも私の予想の上を行くもの……信じるぞ』

シュバリエ「ご安心ください。明日……地球の最後を見せてあげましょう」


 シュバリエの高笑いがバルガイヤー内に響く。


 その様子をモップ片手に見ている男が一人。
 かつてはバルガイヤー艦長であったが、度重なる失敗により掃除係へと降格された、ガロア艦長である。


ガロア「精々余裕面こいて、失敗してしまえ~シュバリエ~!!」


 音楽室。


 攫われる前、学校に宿泊許可を取っていたことが幸いし、唯達がいなくても不審がる者はいない。
 様子を見に来た生徒会長であり、唯の幼馴染である真鍋和が不審がったものの、スタジオで練習していると無理やり言い聞かせた。
 まぁ、納得はしてないようだったが。


さわ子「……ねぇ、教えてくれない? ファイブマンの事……」


 既に深夜となった時間。
 目元を真っ赤にしたさわ子は学にそう尋ねた。

 別に隠す理由もなく、学はさわ子の向かい側へと座る。


学「すべては、20年前から始まったんだ……」


 自分達の両親が死を迎えた星を蘇生させる研究をしており、家族皆で惑星シドンを移住し緑で一杯にしていた最中にゾーンによる襲撃を受けたこと。
 両親が子供たちと人工ロボ・アーサG6を自分の命を犠牲にして地球に逃がしたこと。
 ゾーンがいずれ地球を攻めてくると考え、ファイブマンとなるべくトレーニングしていたこと。
 そして、20年後ゾーンが攻めてきて、地球戦隊ファイブマンとなったこと。

 淡々と話す学の言葉を、さわ子は黙って話を聞いていた。

 全てが話し終えると、ファイブブレスを握りしめて立ち上がる。


学「父さんと母さんは自分の命もかえりみず必死に俺達を逃がしてくれた。だから、今度は俺達が命の張って、銀河でただ1つの虹の降る星、地球を守る番なんだ」


 ファイブブレスは誓いの証。
 今までも何度も危険な目に遭ってきた。しかも、学に限っては実際に死んだこともある。
 それでも立ち上がり、必ず地球を守ると誓ったのだ。


さわ子「……昔から不思議な人だって思ってた。友達と遊ぶよりも弟妹を優先させて、休みの日も剣道とか武術ばかり……。友達なんかいらない……そんな感じだったわよね」

 あの時の学は必死だった。
 小学生ながらもゾーンの恐怖を知り、親の代わりに弟たちを守ろうとしていた。

 当然、友達などできなかった。
 そんな時、話しかけてくれたのがさわ子だった。


さわ子「……そうか、学君たちがファイブマンだったのか……」

学「さわ子ちゃん、ごめん……。俺達のせいで唯ちゃんたちが」

さわ子「止めて!!」


 学の言葉を遮る。


さわ子「謝らないで……学君たちのせいだなんて思ってないし、思いたくないの……だから、謝らないで……」


 誰でもいいから八つ当たりが出来れば楽だった。
 お前のせいだ、と罵倒が出来れば楽だった。

 彼女達は明日のために必死に頑張ってきたのだ。明日は唯達にとっては最後の、梓にとっては先輩達との最後お文化祭なのだ。
 なのに、なのに……。


 悔しい……。
 教師として何もできなかった自分が……。


 気づいた時にはさわ子に何かが覆いかぶさっていた。
 それは、学の大きな体であった。


学「約束する。彼女達は絶対に助ける。そして、文化祭に間に合わせてみせる。だから、もう自分を責ないで」

さわ子「学君……」


 再び涙が溢れ出そうになるのを堪える。

 感情が溢れ出しそうになる。
 高校に進学して、遠くの学校に行ってしまった学を忘れようとしていたことを……。
 音楽にのめり込み、そして、学の事を忘れるために別の男性を好きになったが、自分は……やっぱり……。
 あの時、文化祭に誘ったのだって……。


さわ子「約束よ……絶対に、唯ちゃんたちを助けてね」

学「あぁ、分かったよ……」

さわ子「それと……今だけこうさせて……」

学「……」


 学の思いは昔から変わってはいなかった。


 どうやら彼女の事を大切に思っているらしい……。

 だけれども。だからこそ……。

 彼女の思いには答えてはならないのだ……。
 少なくとも、今はまだ。

 学はそれ以上何も言うこと出来なかった。


 翌日。
 採掘場。


 採掘場に姿を現す、シュバリエとゾーンの幹部達。
 そして、コマンドギンと、死の音楽衣装を身に纏った軽音部の5人。

 彼等の背後には、ギンガマンが急遽設置したライブステージが出来上がっていた。


シュバリエ「運がいいな、地球人達。なんたって、コマンドギンの死の演奏であの世に送られるのだからな」

ドンゴロス「ほんまでんな。これ、普通なら大金ガッポガポ貰ってもええもんやで」

ビリオン「御託はいい。とっとと始めたらどうだ?」

ドルドラ「死の演奏。聞かせてもらおうではないか」


シュバリエ「我慢弱い奴等だ。コマンドギン、準備はいいか?」


コマンドギン「えぇ、いつでも。最高の天気に、最高の観客。悪いわけないじゃない」


 唯達がステージに立つ。
 彼女達の腕にはコマンドギンが作り出した楽器が握られている。勿論、その種類は普段使ってるものと同じである。


コマンドギン「さぁ、ここに死の音楽隊による演奏を開幕します。指揮はこの私、コマンドギンが、演奏はこの可愛いお嬢ちゃん達により行われます。では……」


 コマンドギンがゆっくりと指揮棒を振るうと、唯達が合わせるように演奏を始める。

 楽器から放たれるのは特殊な破壊音波であり、コマンドギンの指揮と合わさる事によりその威力は数倍に膨れ上がる。


 街。

 突如として割れる窓ガラス。
 次々と爆発していく民家に、地面には亀裂が走る。

「うわっ、何だ!?」

「家が!?」

「何だ!? ゾーンの侵略活動なのか!?」

「でも、何処から!!」


 街は一瞬のうちでパニックに陥る。

 採掘場から離れた距離のあるこの場所での破壊活動が、まさか音によるものだとは考える者はいなかった。


アーサー『皆、唯ちゃん達を見つけたよ。今から言う地点に向かうんだ!!』



 夜通し捜索をしていた、健達4人にアーサーからの通信が入る。
 教えられた地点はここからそう遠くはない。


健「よし、行くぞ」

レイ「でも、兄貴は……」

数美「大丈夫、兄さんはきっと来てくれるわ」

文也「……そうだよな、兄貴は絶対に来てくれる」


 学の到着を信じて、5人はそれぞれのバイク・ホークアローを飛ばし、採掘場へと向かう。


アーサー『皆、唯ちゃん達を見つけたよ。今から言う地点に向かうんだ!!』


 夜通し捜索をしていた、健達4人にアーサーからの通信が入る。
 教えられた地点はここからそう遠くはない。


健「よし、行くぞ」

レイ「でも、兄貴は……」

数美「大丈夫、兄さんはきっと来てくれるわ」

文也「……そうだよな、兄貴は絶対に来てくれる」


 学の到着を信じて、5人はそれぞれのバイク・ホークアローを飛ばし、採掘場へと向かう。


 ファイブブレスからの通信は学にも届く。


アーサー『学、健達はもう向かってるよ。学も急ぐんだ』


 あの後、さわ子は一睡もせずに被服室で何かの制作に取り組んでいた。
 その間、学は唯達の無事を祈りながら、荒らされた音楽室の整理をしていた。


学「分かった。俺もすぐに向かう」


 通信を切り、音楽室からから出ようとすると、扉の近くにさわ子がいる事に気づく。


さわ子「行くの?」

学「うん、唯ちゃん達を助けに行く」

さわ子「だったら私も連れて行きなさい。あの子達は私の教え子なのよ」


 真赤にした目を見開きながら学に迫る。


学「分かった。だけど、絶対に俺から離れないでくれ」

さわ子「分かってるわ」


 今気づいたがさわ子は大きな段ボールを持っていた。
 それが何であるか聞こうとすると、別の生徒が部屋に入ってくる。


「あっ、先生。唯達は何処にいるんですか? 携帯に連絡しても誰も繋がらないんですけど……何かあったんじゃないですか?」

さわ子「真鍋さん」

和「先生、教えてください。本当は何があったんですか? それに、昨日音楽室の方で爆発音が聞こえたって生徒がいます。もしかして」

さわ子「大丈夫よ。あの子達は絶対にライブまでには来るから。……信じて」

和「……分かりました。ですが、ライブ開始の時間を遅らせるのにも限度があります。だから、絶対に間に合ってください」

さわ子「勿論よ。あ、そうだ、真鍋さん、これ皆に配っといてくれるかしら」


 先程から持っていた段ボール箱を和に渡す。


和「これって」

さわ子「それじゃあ、頼んだわよ。行きましょう、学君」


 今度こそ音楽室から出る。 

 ライブまでの時間は、後一時間。


 採掘場。


「「うわぁぁぁぁぁ!!」」

「「キャァァァァァ!!」」


 採掘場に大きな爆発が巻き起こり、4人のファイブマンはそれにより吹き飛ばされる。
 彼等のスーツは既に黒く焼け焦げ、戦いの壮絶さを物語っていた。


シュバリエ「どうした、ファイブマン。いや、今はフォーマンと呼んだ方がいいのかな?」


 挑発するかのようにシュバリエが言う。

 コマンドギンによる演奏は未だに止まってはいない。
 ファイブマンは、シュバリエ、ビリオン、ドルドラ、ザザ、それにギンガマンとバツラー兵に苦戦を強いられていた。


ドルドラ「5人揃わぬファイブマンなど相手ではないわ。死ねっ、ファイブマン!!」


 止めを刺そうと近寄ってくるドルドラ。


ファイブブラック「くっ、あの音が……頭が割れるように痛い」

ファイブブルー「まだだ……くっ」

ファイブイエロー「悔しい……私、悔しいわ」

ファイブピンク「皆……頑張って……」


ドルドラ「戯言を、止めだ!!」


 最後の一撃が放たれようとした瞬間。


「待てっ!!」


 採掘場に力強い声が聞こえてくる。


ブル・ブラック・イエロー「「「兄貴!!」」」

ピンク「兄さん!!」


 専用バイク・ホークアイの後ろにさわ子を乗せ、こちらに向かってくるのは学である。
 学はバイクを停止させる。


学「さわ子ちゃん、ここから離れないでくれ」


学「ファイブレッド!!」


 Vチェンジャーブレスを高く上げ、ファイブレッドへと変身する。


ファイブレッド「ファイブラスター!!」


 腰のホルスターに収められていたファイブラスターをドルドラ達に向けて放つ。


ドルドラ「ウワァッ!?」


 ドルドラは爆発に巻き込まれ、ファイブマンへの止めを刺す手が止まる。


ファイブレッド「大丈夫か? みんな!!」

ファイブレッド「兄貴、先ずはあの演奏を止めないと……」

ファイブレッド「分かった」


 単身、敵に向かって走り出す。
 それをみすみす逃すゾーンではない。


シュバリエ「ファイブレッドを通すな。ここで仕留めろ!!」


 バツラー兵とギンガマンがファイブレッドに向かって走り出す。


ファイブレッド「ファイブテクター!!」


 走りながら肩、肘、腕に強化装備・ファイブテクターを装着する。
 この状態のファイブマンは通常の何倍もの力で戦う事が出来るのだ。


ファイブレッド「ふんっ!! とりゃあっ!!」


 バツラー兵を次々と倒していき、そのうち一体の肩を踏み台にして高く跳びあがる。
 そして、Vソードを取り出し、指揮に夢中となっているコマンドギンへと振り下ろす。


ファイブレッド「Vソード!! アタック!!」

コマンドギン「く、キャアッ!!」


 コマンドギンがステージから離れ、指揮が止まったと同時に演奏も止む。
 ファイブレッドは唯達のもとへと駆け寄る。


ファイブレッド「唯ちゃん、澪ちゃん、梓ちゃん、律ちゃん、ムギちゃん……駄目だ、反応が無い」

コマンドギン「無駄だ、ファイブレッド!! この娘たちは、もはや元に戻る事はない。何故だかわかるか? この娘たちの演奏には闇があったからだ」

ファイブレッド「闇だと?」

コマンドギン「そうだ。気づかなかったか、彼女達は文化祭を怖がっていた。これが最後になるなんて嫌だ。皆でもっともっと演奏していたいとな。その闇の部分を私は引き出したに過ぎない。見ろ。こ奴らを、その願いがかなって幸せそうではないか!!」

ファイブレッド「そんな事はない。確かに、別れは怖いものかもしれない。でも、君達の絆はその程度で壊れるものじゃない筈だろう!!」

ビリオン「そこまでだ、ファイブレッド!!」

 ファイブレッド「ビリオン!? ぐわぁっ!!」


 ビリオンに斬り付けられて、ステージから飛ばされる。
 片膝を付くファイブレッドに、他のファイブマンが駆け寄る。


ファイブブルー「兄貴、大丈夫か?」

ファイブレッド「大丈夫だ」

ファイブイエロー「みんなの音楽をそんな事に使うなんて、許せないわ!!」

コマンドギン「黙れ。音楽をどのように使おうが私の勝手だ!!」

シュバリエ「ファイブマン、貴様らの命もここまでだ。コマンドギン、あれを頼む」

コマンドギン「あれか? わかった、それはいい考えだ」

ファイブレッド「何をするつもりだ!!」


 答えるより早く、コマンドギンはステージに立ち次の演奏を始める。
 その演奏が始まった途端、倒れていたバツラー兵が雄叫びを上げながら立ち上がり、ファイブマンに襲い掛かってくる。


ファイブブラック「何だこいつら? 倒し筈なのに、また蘇りやがった!?」

ファイブイエロー「きゃぁっ!? 何か……凄い強い」

ファイブピンク「気を付けて、さっきより強くなってる!!」


 前よりも明らかに強くなっているバツラー兵に苦戦を強いられる。


シュバリエ「どうだ、ファイブマン。音というのは不思議な力を秘めている、この演奏はバツラー兵たちを強化させる演奏だ。この演奏を聴いたバツラー兵はいつもの10倍の力を引き出せるのだ」



ファイブレッド「何だとっ!? うわっ、皆、ファイブテクターだ!!」


「「「「ファイブテクター!!」」」」


 レッド以外もファイブテクターを装着する。
 これを装着したことにより、何とか攻撃を防ぐことはできているが、力が強すぎる……。
 このままでは。


 ブゥゥゥゥゥン!! ブゥゥゥゥゥン!!


ファイブレッド「この音は……さわ子ちゃん!!」


 ホークアローを猛スピードで走らせ、ステージへと向かうさわ子。
 それをも見逃すゾーンではない。


ドンゴロス「あかんな、ここから先は通せんのや。ソロバン爆弾!!」

 さわ子の周りで爆発が起こるが、それでもスピードを緩めない。


ドンゴロス「あら? あぁぁぁぁ!?」


 そのままのスピードで突っ込み、立ちふさがったドンゴロスを吹き飛ばす。



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最終更新:2015年01月09日 07:55