澪「じゃあ梓。鍵開けたから乗っていいぞ」ガチャ

梓「はい!ありがとうございます!」バタン

律「おー!後部座席も結構広いなー!」バタン

梓「……ちゃんと後部座席でもシートベルトしてくださいよ?」

律「わかってるよ……。 梓こそちゃんとチャイルドロックしとけよ」

梓「誰がチャイルドですか!!」

澪「お前ら少しは落ち着けよ……」バタン

梓「あ……。すみません……」


梓「……ん?澪先輩、これってカーナビですか?」

澪「ん?それ? そうだよ。それで今日はここまで来たんだ」

梓「へぇー。 ってことは帰りも使うんですよね?つけてみていいですか?」

澪「あぁ。いいぞ。電源スイッチはそのボタンな」

梓「えーと……このボタンですか?」ポチッ

カーナビ「ウィーン」

梓「あ、ついたみたいです!先輩、この後はどうすれば?」

律「そしたらそのユーモアモードってボタン押して」

梓「これですね!」ポチッ

澪「おい」


梓「あれ、いけなかったですか……?」

澪「いや、いけないってわけじゃないんだけど……」


カーナビ「ポンッ  あずにゃんペロペロ(^ω^)」


澪「こんな感じだから………って梓!!どこから持ってきたか知らないけどハンマーをカーナビに向かって振りかざそうとするのはやめろ!!!」



おわる


第5話

「唯先輩は私の目が届く範囲にいてください!」


ある日の夜。

私はいつものようにギターの練習を終えると、これまたいつものようにギー太を抱いて布団にもぐりこみました。

最近はギターの練習を終えたら一日の感謝をこめてギー太と一緒に寝るようにしているからです。えへへ

私はいつものようにギー太におやすみを言ったあと、彼を抱いて眠りにつこうとしました。

たくさん練習もしたし、今日もいつものようにすぐ眠れると思っていました。





梓「……というわけで今日は一緒に寝ましょう、唯先輩」ガチャ

唯「ぶっ!!? えっ!!?あ、あずにゃん!?」

……突然あずにゃんが私の部屋の窓から入ってくるまでは。


唯「なっ……えっ!?い、意味が分から……、てかそこ2階の窓だよ!?」

梓「何驚いてるんですか。唯先輩のためなら2階の窓から入ることくらい朝飯前ですよ」

唯「突然窓から誰か入ってきたらびっくりするのは当たり前だよ!! ていうかそれより今 夜中だよ!?な、何考えてんのさ、あずにゃん!危ないでしょ!」

梓「何考えてんのかって……そんなの唯先輩のことに決まってるじゃないですか。言わせないでくださいよ恥ずかしい///」

唯「い、意味分かんないよ!!」


梓「? 分かりませんでしたか? だって昨日、私言ったじゃありませんか。『唯先輩は私の目が届く範囲に居てください』って」

唯「そ、それがどうしたっていうのさ」

梓「ハァー……。まだ分かりませんか。だって昨日そんなこと言ったわけですし当然、私には唯先輩のことを監視、監督する義務が発生するでしょう?」

唯「いやちょっと待っt」
梓「待ちません。だから私は今夜は唯先輩と一緒に寝る必要があるんです!!!」

唯「いやいやいやその理屈はおかしい!絶対おかしいって!!」


唯「確かに今日の部活であずにゃんが目が届く範囲にいてとかなんとか言ってた気がするけれど……。
  だからといって普通こんなことしないでしょ! というかちょっと今日のあずにゃんおかしいよ……」

梓「そんなこと言われましても……。だって私、唯先輩がベッドから落ちやしないか、寝違えたりしないか、金縛りにあったりしないか心配で心配で……。
   だからこうするしかなかったんですよ」

唯「そ、そんなこと心配しなくて結構だよ!ていうか余計なお世話だって!!」


唯「とにかく!もう帰りなって!あずにゃんのお父さんとお母さんが心配するでしょ」グイグイ

梓「いーやーでーすー!それに私の両親は今旅行中で当分帰って来ないんで大丈夫です!」グイグイ


梓「もしかして……唯先輩は私と一緒に寝るのが嫌なんですか?」ウルウル

唯「な、泣き落とししようとしてもムダだからね!ダメなものはダメっ!! さぁあずにゃん帰る支度して」

梓「……わかりましたよ。じゃあこれから私は一人でさびしく街灯も少なく危ない夜道を涙を流しながら帰って自分の家のベッドで枕を濡らしてますよ。
  あー、こんなことを強いるなんて唯先輩がこんなに冷たい人だとは思わなかったなー」チラッ


唯「う……。 そんない言い方しなくってもいいじゃん……何か私が悪者みたいになってるし」

梓「唯センパァーイ……」ウルウル


唯「わ、わかったよ! しょうがないなぁ……。あずにゃん、今日だけだからね!!」

梓「!! ありがとうございます!!!唯先輩!」ギュー


唯「こ、コラ!あんまり騒がないの!憂寝てるんだから」

梓「す、すみません。つい……/// その、あまりにも嬉しくて///」

唯「私は全然嬉しくないけどね」

梓「もう、照れなくっていいんですよ唯先輩? まぁ確かに嬉しいことを素直に嬉しいって言うのは簡単なことじゃないですけど///」

唯「すごいポジティブシンキングだね……。なんでそういう解釈になるのさ……」

梓「私としては当然の解釈です。 ……じゃあ早速、一緒に寝ましょうか唯先輩?」モゾモゾ


唯「じゃあ私は別に布団をしいt」
梓「何をおっしゃいますか!!今までの展開から言ってこれは唯先輩も私と一緒に寝る流れに決まってるでしょう!」

唯「知らないよそんな流れ!!」


梓「さぁ、唯先輩? 遠慮なんてしなくていいんですよ……?ほら、私の隣に」パンパン

唯「遠慮も何も、それ私のベッドなのに……」

梓「じゃあなおさら遠慮はいらないじゃないですか。唯先輩、いつでも飛び込んできてくれてかまいませんよ?」

唯「いや、いいよやっぱり。私はお布団で寝るから。今日はあずにゃんが一人でベッド使ってくれていいよ、じゃあおやすみ電気消しちゃうね」

梓「! 待ってください!!」ガシッ

唯「ちょっ! あずにゃん手離してよ!電気消せないでしょ!」


梓「……唯先輩が私と一緒に寝るって約束してくれたら離します」

唯「は、はぁ!? てかなんでそもそもあずにゃんはそんなに私と寝たがるのさ!」

唯「私寝相悪いし、それに二人で寝るとベッドも狭くなっちゃうし何もメリットがないでしょ!」

梓「それでもいいんです!! それ込みでも私は唯先輩と一緒に寝たいんですー!」ジタバタ

唯「そ、そんなにバタバタしないの!ほこり立っちゃうでしょ!」

梓「……じゃあ唯先輩が私に布団かけてくれたらジタバタするのやめます」

唯「……わかったよ。布団かけるだけだからね? じゃああずにゃん、じっとしててn」
梓「確保ーっ!!!」ガシッ

唯「ギャーッ!!」


梓「ふっふっふ、かかりましたね!唯先輩! さぁ観念して私と一緒に寝ましょう!!」

唯「こ、こんな強引な手は無効だよー! はなしてー!」ジタバタ

梓「そ、そんなに必死に抵抗しなくたっていいじゃないですか。 ……唯先輩はそんなに私と寝るのが嫌なんですか?」グスッ

唯「い、いやってわけじゃあないけど……。 でも、その、何というか恥ずかしいっていうか……///」ゴニョゴニョ

梓「恥ずかしい……? ?何が恥ずかしいんですか? ただ一緒にベッドで寝るだけじゃないですか」

唯「だって……。 その、あずにゃんと一緒に寝るの、初めてだから……」

梓「まぁ今夜は寝かしませんけどね」ボソッ

唯「え? あずにゃん何か言った?」


梓「いやいや何でもありません。 ……私も唯先輩と一緒に寝るのは初めてですよ? 初めてなのはお互い様です!」

梓「だから恥ずかしがる必要性なんてどこにもないんですよ、唯先輩?」

唯「そ、そうなのかな……」

梓「そうですよ。いやそうに決まってます!さぁ、唯先輩、電気を消しましょう。そして一緒に寝ましょう」

唯「う、うんわかったよあずにゃん」パチッ

梓(にゃふふ、説得成功ですっ!!)



唯「じゃああずにゃん、ちょっと狭いけど、おやすみー」

梓「はい。おやすみなさーい」ギュー


唯「……あずにゃん」

梓「なんですかー?」ギュー

唯「なんで私の体に抱き着いてるの……?」

梓「あぁ、私いつも抱き枕抱いて寝てるんですよ。でも今日はそれがないので代わりに唯先輩を抱いて寝ようと思って……」

唯「な、なにそれ! それじゃ私が寝れないじゃん!」

梓「? なんでですか?別にただ私は抱き着くだけで唯先輩の安眠を妨げる気はありませんよ?」

唯「で、でも……。なんか緊張しちゃってこのままじゃ眠れないよー」ドキドキ

梓「なんで今更緊張するんですか。毎日部室で自分から抱き着いてるくせに」

唯「だ、だってそれとこれとはまるで状況が違うから……。なんかドキドキしちゃって……」


梓「へぇー。部室とは違ってベッドで抱き着かれるとドキドキしちゃうんですかー。どうしてですかー?」ニヤニヤ

唯「そ、それは……、その……///」

梓「もしかして私とあんなことやこんなことをする想像でもしちゃったんですかー?」ニヤニヤ

唯「! そ、そんなことないもん!!」

梓「強がってるわりにはお顔が真っ赤ですよ。唯先輩?」クスクス

唯「……!!///」カァー


梓「……唯先輩?正直に答えてください」

唯「……ゴメン。実を言うとちょっとあずにゃんと大人のことをする想像しちゃった…」

梓「正直でよろしいです。 まぁ私も唯先輩と……する想像をしちゃったんですけどね」


唯「……あずにゃん///」


梓「……唯先輩」

唯「な、なにあずにゃん」ドキッ

梓「……実際にしてみませんか?大人のこと」

唯「……え? えっ!?」


唯「あ、あずにゃん!それはいくらなんでも!!」

梓「大丈夫ですよ。私、唯先輩のこと好きですから」

唯「!? な、なっ……!?あずにゃん!?」

梓「そんなに驚くことないでしょう。だいたい、唯先輩のこと好きじゃなかったら『私の目が届く範囲にいてください』とかいいませんよ」


梓「……唯先輩も私のこと好きですよね?」

唯「そ、それはまぁ、その、好き……なのかな……」

梓「じゃあ何の問題もないじゃないですか。大人のことしちゃっても」

唯「そ、そうなのかな……?」

梓「そうですよ。好きな者同士で大人のことをする……ごく自然なことですよ」

唯「そ、そうだよね!みんなが通る道だよね……?」

梓「そうです!! ……だから唯先輩、いいですよね?」


唯「う、うん分かったよ、あずにゃん」

梓「じゃ、じゃあ唯先輩、 いいですよね?」ドキドキ

唯「う、うん……」ドキドキ

梓「で、では行きますよ! 失礼しますっ!!」ガバッ

ガチャ

憂「おねえちゃーん……眠れなくって……。一緒に寝よ……」

憂「って梓ちゃん!?なんでお姉ちゃんの部屋に梓ちゃんがいるの!?」

梓「」


・・・・・・

憂「まったく!梓ちゃん!!えっちなことをしようとするのはよくないと思うな!めっだよ!!」ガミガミガミ

梓「はい……すみなせん……」


憂「それに夜中に一人で外出しちゃ危ないでしょ!! 何かあったらどうするの!」

梓「反省してます……」


唯「で、でも憂。無理やりにでも家に帰さなかった私も悪いんだからもうその辺で許してあげて?」

憂「お姉ちゃんがそういうなら……」

梓「憂も唯先輩もごめんなさい。つい、気分が高揚してしまって……」 

唯「しょ、しょうがないよあずにゃん。あんな雰囲気だったんだもん」

憂「あはは……(どんな雰囲気だったんだろう……)」


唯「よし!お説教タイムはもう終わり!! 憂、あずにゃん。せっかくだし三人で寝よっか」

梓「……えっ!? さ、三人でですか!?」

唯「そうだよー。憂もいいでしょ?」

憂「私は別にかまわないよ」

唯「じゃあ決まりだね!三人で寝よう!」

梓「は、はい!!(結果オーライですっ!)」

唯「じゃあ今度こそおやすみー(ふぅ……これでやっと寝れるよ)」パチッ


数十分後


梓「……ムニャムニャ。唯先輩ー……zzz」ギュー

憂「おねえちゃーん……zzz」ムギュー

唯(……これじゃ結局寝れないよぉー!!)ウワーン





第6話

「旅行の夜に」


……それは修学旅行二日目の夜のことだった。


修学旅行二日目の夜。同じ班になった私たち軽音部4人は旅館の部屋でダラダラとくつろいでいた

トランプをするなり、テレビを見ているなりしているうちに気が付けば すでに時計の針は就寝時間の一時間ほど前を指していた

もう明日は帰るだけか……と思いながら 名残惜しく窓の景色を眺めていると、私に突如いい考えが浮かんだ

その考えを実行すべく、私は体の向きを変え 視線を窓の景色から軽音部の皆の方に移し、1つの提案をしてみたのだった


「……そうだ!みんな今日は徹夜で語り合わないか? こうやってみんなで夜通しで話できる機会も最後かもしれないしな」

「! それはいいね!私も今日はみんなとたくさんお話したい! ナイスアイデアだよりっちゃん!」

「私、徹夜で友達とお話しするの、夢だったのー♪」

「ちょっ……待てよ。帰るだけとはいえ、明日もあるんだからちゃんと寝とかないと体がもたないぞ。それに夜更かしは健康に良くないし……」

「……ふーん、そっかー。じゃあ澪抜きで今夜は語り合おうぜー」

「え!?」


「……や、やっぱり私もお話するー」

「うふふ」ニコニコ


「よーし、決まりだな! 今夜は夜通し語り合うぞー!!」

「「おー!!!」」  「お、おー……」


……と、こんなわけで今夜はみんなで徹夜で語り合うことになったはずだったんだけど…




「zzz」グー

「……ムニャムニャ」スヤスヤ

「……むぎゅ」スピー

「……(なんでみんな電気消したら速攻で寝ちゃうんだよ!!)」パッチリ

しかも私だけ全然眠くならないし。 昨日もそうだったけど、なんかいつもと違う環境だと緊張しちゃって寝づらいんだよなー

(……今何時なんだろ)チラッ


枕元に置いておいた腕時計を拾い上げ、時計の針を見てみると、時刻は11時30分を示していた 

……私の腕時計がこわれていなければ、もう就寝時間から30分ほど経っていることになる

私は力なく、はぁー…… と一つため息をつくと再び腕時計を枕元に戻し 布団に顔をうずめた




「……りっちゃん」

その時だった。突然、私の耳元に聞きなれた声が飛び込んできたのは。


「……! 唯隊員!起きててくれたのか!!」ガバッ

唯の言葉を聞き 私はすぐに体を起きあがらせる

……嬉しかったからだ。唯があの約束をしっかりと覚えてくれていたことが。 ……別に一人で寂しかったわけじゃあないぞ


「唯っ!! ってあれ……?」

「zzz」グー

しかし上体を起こし唯の方を見てみても 私の視界には寝息をたて すやすやと気持ちよさそうに眠る、幸せそうな彼女の寝顔しか入ってこなかった



「……寝言かよ」

唯の言葉はどうやら自分の意思で発せられたものではない、と理解するのにそう時間はかからなかった

唯が寝ていると分かると、先ほどまでの気分の高揚は一瞬にして去り、私は引きずり込まれるように再び力なく自分の布団に倒れ込んだ


「……えへへぇー、もう食べられないよー…」

まったく幸せな奴だ。いつもティータイムの時に人一倍食べてるくせに、夢の中でもたらふく食べてるなんてな……


「りっちゃんもケーキ食べるー……? …あげなーい」

ひどいな、オイ。もう食べられないんじゃなかったのかよ。 …まぁ甘いものは別腹なのかもしれないけど

私が心の中で一人で虚しく突っ込みを入れていると、そんなことにもまるでお構いなしであるかのようにさらに唯の口から強大なボケがかまされた


「……あぁ!りっちゃんが……! 足利尊氏に…首を…!」

「!?」


え!?急に場面変わったの!? てか夢の中とはいえ私何やったんだよ!


「……zzz」グー

それきり唯の寝言は止み、部屋には再び静寂が訪れた

「……まったく、どんな夢見てんだよ」

突っ込みが追い付かないあまりに突拍子な寝言に半ば呆れながらも 私はまぶたを閉じ再び眠りにつこうとした


……しかしいくら目を閉じても、体勢をかえても、全くといっていいほど睡魔は私に襲い掛かってこなかった

数学や古文の授業ならすぐにでも眠れるのに……。

こういう時に限って全く眠れないことは非常にもどかしいことであった


「だー、もう!!」ガバッ

あまりに眠れないことの苛立ちから、私は再び体を起こしてしまう

上体を起こすと ぐっすりと眠っている三人の寝顔がいやでも目に付いてきた

くそっ……。すやすやと眠りやがって。 こいつら私の眠気まで吸い取っちまってんじゃねーか?

そのまましばらく羨望の眼差しで皆の寝顔を見守っていると 私はあることに気がついた


……そういえば私あまりムギに触ったことないなぁ

唯とはいつもじゃれあってるし、澪にもよくちょっかいを出したり、叩かれたりしてるけど、ムギの肌に触れた記憶は私の中ではほとんどなかった


「……」

つまり、これってムギの肌に触れる絶好のチャンスなんじゃないか? うん。きっとそうだな

「とーう!!」シュタッ

そんな適当な理由(?)で自分を納得させて、とりあえず私はムギのそばへ歩み寄り、ほっぺたをつついてみることにした


「うーん、やわらかそうなほっぺですなー、ムギさーん?」

……我ながらおっさんみたいな台詞だなー、と思いながらもムギの頬を人差し指でつつく

ツンツン。


頬をつつくと、想像以上にやわらかい感触が私の人差し指に伝わってきた

「おぉ……。マシュマロみたいにふわふわ……」

ツンツン。

あんまりつっつきすぎるとムギが起きてしまうかもしれないと思ったが、その後しばらく私はムギのほっぺをつつくことをやめることができなかった

別に寂しいからムギに起きてほしかったとかそういうわけではないけれど。うん。


「……あんっ///」

私がほっぺたをつつくのをやめたのは ムギがこの言葉を発したときだった

え? 何この色っぽい声……?

これじゃあ、なんかまるで私がムギといけないことしてるみたいじゃないか



……ん? 

……ムギと…いけないこと……?

ムギと……

「……!!///」カァーッ

私が自分の布団に素早く戻ったのは そんなことを想像して顔に血が上ってからすぐのことであった


ムギと……いけないこと……?

そう考えた途端、私がムギとあんなことやこんなことをする妄想が次から次へと……

「うわぁあああああ!!!」ガバァ

思わず私は布団をかぶり 妄想を払拭するために大声で叫んでしまう 


まさかムギのほっぺをつついただけでこんなにも気分が高揚してしまうとは……。

まったく恐ろしいぜ、ムギのほっぺ。 ある意味世界最強の武器かもしれないな


そんなことを考えながらも、気分を落ち着かせるために とりあえず私は布団から出て深呼吸をしてみることにした

スゥー、ハーッ…… スゥー、ハーッ……

皆が寝静まっている静寂に包まれた部屋に 私の深呼吸の音だけがひびく  …こんな夜中に一人で何やってるんだろう私……



「……『深』夜に『深』呼吸…。 ……なんちゃって」


……うん。思いついたから言ってみたけどひとっつも面白くねぇな。 自分でもそう思うわ。 どうやら私には駄洒落のセンスがないみたいだ

でもそのくだらない言葉のせいで気分が大分落ち着いた気がした …まぁそれだけ駄洒落が寒かったってことなんだろうけど


「……はぁ、とりあえずもう一回横になるか」

眠気はさっきの事件のせいで完全になくなってしまっていたが とりあえずいつでも寝られるような体勢をつくっておくことにした


それから一体どれくらいの時間がたった時だっただろうか

私が相変わらず眠れずに一人唸っていると 突然私の左腕が何かに掴まれる感触がした


「ひっ!? な、なんだ……?」

私は左腕を動かそうとしてみたが、その何かに結構強い力で掴まれ動かすことができなかった

金縛りか……? 私は恐怖を感じながら、恐る恐る視線を左腕の方に向ける

左腕を見てみると 何者かの手が私の腕を掴んでいた

「うわっ!手っ!? ……待てよ、ということは…」チラッ


「……やっぱり。澪の手か」

腕をたどっていくと すぐにその手の持ち主が私の隣で寝ている澪のものであることが分かった



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最終更新:2015年02月10日 22:04