純「そ、そんなに落ち込むなって梓。きっとこれから急速に伸びてくって!」
憂「そ、そうだよ!きっと梓ちゃんは大器晩成型なんだよ!」
梓「……じゃあいつ急速に伸びるようになるの?」
純「えっ……そ、それは……」
梓「何月何日何時何分何秒!地球が何回回ったとき!?」
純「小学生か!!」
憂「で、でも私は小っちゃいのもかわいくていいと思うけどな」アセアセ
梓「それは憂が身長伸びて余裕があるから言えるだけでしょ」
純「ダメだ。完全にふてくされちゃってる」
憂「これはしばらくそっとしておいた方がいいかもね…」
梓「ふてくされてなんかないもん!!」
純「わかったわかった。とりあえず、ホームルーム遅れないように早く着替えよ」
梓「……ぬぅー」
放課後
梓「くそー、純と憂めー。ちょっと身長伸びたからって……」ブツブツ
梓「はぁ…。でもいつまでも身長のこと気にしてても、仕方ないか」
梓「これから部活だし、切り替えていかなきゃね!」
梓「よーし!頑張れ私! 身長がなんだ!!今日はたくさん練習してやるです!!」ガチャ
梓「みなさん こんにち……」
唯「えー、澪ちゃん今年は2cmも伸びたの!?」
律「すげーな。165とかいっちゃうんじゃねーか!?」
紬「明日お祝いのケーキ持ってくるわね!」
澪「そ、そんなに持ち上げるなよ〜///」
梓「」
唯「あ、あずにゃん。やっほー」
律「おー。梓来てたのかー」
律「……そういえば、2年も確か今日が身体測定だったよなー?梓は何cm伸びたんだ?」
梓「うぐっ」グサッ
紬「……?梓ちゃん、どうしたの? 具合悪いの?」
澪「梓、大丈夫か。顔真っ青だぞ?」
梓「い、いえ!私は大丈夫ですから! さ、さぁー皆さん今日も張り切って練習しましょー!!」
律「ははーん? さては梓。今年もあんま身長伸びなかったんだろー?」
梓「ぐっ…!そ、そんなことありません!! 私、今年はそこそこ伸びましたから!」
唯「へぇー。何cmくらい伸びたのー?」
梓「へっ? え、えっと…」
唯「?」
梓「じゅ、十センチくらい…?」
唯「えっ……?」
澪「じゅ、10cm…?」
梓「はっ…!(つ、つい強がってしまった!!)」
律「いや流石に10cmはねーだろ…。どうみてもいつものサイズだし」
唯「あずにゃん?無理しなくていいんだよ? あずにゃんは小っちゃいからこそあずにゃんなんだから」
梓「……むぅ」
部活終了後
梓「うぅ…。あの後もみんなして身長の話して……。 もう泣きそう…」
梓(ハァ…。なんで私ってこんな身長低いのかな……)
梓「何か身長伸ばす方法ないのかなーっ、っと…。……ん?」
カァー カァー
梓「あっ! カラスがまたゴミ捨て場あらそうとしてる!まったくもう……」タッタッタ
梓「こら!あっちいきなさい!!しっし!」ブンブン
カラスたち「カァー!カァー!」バサバサバサ…
梓「ふー…。なんとか追い払えた…」
梓「よかった…。ゴミ袋とかも破けてないみたい」ホッ
キラッ
梓「……ん?今何か光ったような…?」
梓「これかな…? 魔法瓶…?」
梓「まだ新しい……。これを捨てるなんて勿体ないことするなぁ」
梓「まったく。バチ当たりな人もいるもんだね。魔法瓶くんっ」キュッキュッ
モワモワモワ……
梓「!? ゲホッゴホッ!!ま、魔法瓶から煙が……!?」
魔人「よぉーっす!」
梓「ブッ!!ちょ……!えっ…!!? 魔法瓶から人がっ!?」
魔人「そんなに驚かないでよ。アンタが呼び出したんだからさ」
梓「よ、呼び出した…!?何の話?」
魔人「ほら、アンタ魔法瓶こすってくれたでしょ? いやー、おかげで何年かぶりに社場に出られたよー」
梓「は、はぇっ……!?」
魔人「またまたー。そんな何も知らないような素振りしてるけど、本当はアタイの魔法目的で呼び出したんでしょ?」
梓「ま、魔法!? なんのことですか!?」
魔人「なんだい、知らないで呼び出したの? 魔法ってのは願い事を3つまで適えるっていう魔法ね。ほら、よく御伽噺とかにあるあれだよ」
梓「…私、夢を見てるのかな…」ツネー
魔人「ちょっと失礼だな!まぎれもない現実だって!」
梓「そ、そんなこと言われても…。にわかには信じられないというか…」
魔人「まあ無理もないかもね。魔法瓶から出てくる魔人なんて、普通の人は見たことないだろうしね」
梓「そりゃそうですよ! ていうかこんなの漫画の世界でもありませんよっ!」
魔人「あはは。で、アンタ名前はなんていうの」
妖精「梓っていうのかい! とりあえずよろしくな!!……っても私の姿はアンタ以外には見えないんだけどね」
梓「え?そうなの…?」キョロキョロ
「ちょっと…。あそこのゴミ捨て場で一人でぶつぶつ言ってる子がいるわよ」ヒソヒソ
「最近急激に寒くなってきたからかしらねぇ」ヒソヒソ
魔人「なっ?本当だろ?」
梓「……そうみたいだね」グスン
梓「とりあえず、元の場所に戻して、と……」コトッ
魔人「ってオイオイオイ!!ちょっと待てよ!! まだ願い事聞いてないぞ!」
梓「でも急に願い事なんていわれても……」
魔人「遠慮すんなって! あるだろ?願い事のひとつやふたつくらいさ」
梓「そんなこと言われても……。本当に私は願い事なんて……」
梓(……あっ)
純『あ、まさか梓。身長測るのがいやだからとかー?』ニヤニヤ
律『さては梓。今年も身長あまり伸びなかったんだろー?』ニヤニヤ
梓「……本当に、願い事かなえてくれるんですか?」
魔人「そりゃもちろん!アタイの力を信じろって!! 但し三つまでだけどな」
梓「じゃあ、あの…。ここでは言い辛い願い事だから…」
魔人「OK。どこへでも連れてきな。アタイはそれまで中で寝てるからさ」スゥー…
梓「あ、中に戻れるんだ…」
梓「でも本当にこんなのが願い事かなえてくれるのかなぁ?」ジトー
魔人「こんなのとは失礼だな!アタイの怒りの魔法を浴びせてやろうか」ヌッ
梓「わー!ごめんなさい! 信じますから!許してください」
魔人「冗談だって。さ、行くんなら行きな」スゥー…
梓(何かとんでもないことになってしまった……)
・・・・・・
サーン…
マジンサーン…
魔人「んあ?」
梓「魔人さーん!」ノゾキッ
魔人「うわぁっ!!びっくりした! そんな蓋の隙間から覗かないでくれよ!」
魔人「魔法瓶をこすればすぐ行くから!次からはそうしてくれ!」
梓「あっ…。ごめん」キュッキュッ
魔人「ふぅ…。心臓止まるかと思ったよ」
梓「魔人にも心臓とかあるの?」
魔人「教えてあげてもいいけど、願い事一つ分と交換な」
梓「そ、それはダメ!」
魔人「あははっ。ジョーダンだってぇ。……で?願い事ってのは何だい?」
梓「実は……」
・・・・・・
魔人「なるほどね。要するに背を大きくして、みんなを見返してやりたいってことか」
梓「お恥ずかしながら…」
魔人「よし。アタイに任せときな!みんなの前に堂々と出られるようにしてやるぞ!」
梓「よ、よろしくお願いします!」
魔人「よーし。じゃあちょっと目瞑ってろよー?アデニングアニンシトシンチミン!!」
魔人「はっ!!」モワーン…
梓「ゲホッ…ゴホッ…!ま、また煙が…!」
魔人「はいお疲れさん。これで願いがかなったはずだよ」
梓「これだけでですか? 一見何も変わってないように見えますけど……。私、本当に大きくなったんですか?」
魔人「あ!梓まだアタイの力を信じてないね!? 気づかないかい?見える世界が変わってることに」
梓「そういわれてみれば……。何だかいつもより目線が高くなってるような……?」
魔人「だろ? 鏡見てごらん。自分の変わりっぷりに気づくはずだよ」
梓「…! 本当に背が高くなってる!」
魔人「ついでにサービスで服のサイズも直しといてやったからさ。明日は堂々と学校に行ってくるといいよ」
梓「!! あ、ありがとうございます!このご恩は一生忘れませんっ!」
魔人「おいおい照れるからよせって///」
魔人「…で。あと願い事2つ叶えられるけど。そっちのほうはどうする?」
梓「あ……。それはまだ決めてないんですけど…」
魔人「そっか。じゃあ決まったら起こしてくれ。それまでアタイは例のごとく寝てるから」
魔人「じゃ、決まったら呼んで」スゥー…
梓「……夢じゃないよね?」サスサス
梓「今まで背伸びしないと届かなかった棚にも簡単に手が届く…」
梓「ほんと、夢みたい…」
梓(これなら明日からは健康診断でも背の順で並ぶときでも何であろうが堂々としていられる!)
梓「きっと私のこの姿を見たらみんなも…」
純『えー!? 梓すっごい背高くなってるじゃん! モデルみたい!』
憂『梓ちゃん、格好いいー!』
和『私 生徒会に行って梓ちゃんファンクラブの設立を早急に申請してくるわ』
さわ子『新しく梓ちゃん用の衣装を新調しなきゃ〜!』
紬『明日お祝いのケーキ5個くらい持ってくるわね!』
律『きぃーっ!悔しいけど羨ましいぜっ』
澪『なんだか梓の方がお姉ちゃんみたいだな///』
唯『背が高いあずにゃんも可愛いー!』ムギュー
梓「なーんてことになったりしてね///」
梓「……うへへ」
アズサー、ゴハンヨー
梓「(あっ、もうそんな時間だったんだ……)い、今いくー!!」
梓(ふふっ、なんか明日学校に行くのが楽しみになってきた!!)
・・・・・・
翌日
梓の教室
純「でさー、それで兄ちゃんがさー……」
憂「へぇー、そんなことあったんだー」アハハ
ガララッ
純「あっ、誰か来た」
憂「随分背の高い子だねー。あんな子このクラスにいたっけ」
純「転校生かなんかじゃない? あれ、こっち向かってくるよ?」
憂「というか見慣れた顔と髪型の子のような……」
梓「おはよう、純。それに憂」
純憂「……えっ?」
純「あの……。転校生の方ですか?」
梓「失礼な!! 私だよ私!」
憂「この声…、この髪型…。まさか本当に梓ちゃんなの!?」
梓「そうだよ。何、どうしたの二人とも?」ニヤニヤ
憂「な、なんというかびっくりした……」
純「てか急に背高くなりすぎじゃない!?一体何があったのよ」
梓「私もいろいろと大きくなる努力したんだよ。ふふ、もうこれで純たちに小さいとは言わせない!」
純「いや、別に小さいとか言ってないし。…てか何か違和感がすごいというか……」
憂「何か梓ちゃんじゃないみたいだね……」
梓「ちょっ!?せっかく大きくなったのにその反応ひどくない!?」
純「そんなこと言われたって……。急にそんな姿になられても、すぐには受け入れ難いというかさ…」
純「てかまさか梓……。ネットとかで怪しい薬買って飲んだんじゃないよね? あるいは手術したとか……」
梓「! そ、そんなわけないじゃん! ほ、ほら私にも急成長期がきたのっ!!」
純「…本当かなー? 何か小細工でもしてるんじゃないのー?」ジロジロ
憂「私は前の梓ちゃんの大きさも結構好きだったけどなー」
梓(ぐぬぬ……!まさかの大不評!!)
キーンコーンカーンコーン……
純「あ、もうすぐ授業だ。ほら、梓も憂も席戻りな」
憂「うん。じゃあまたね、梓ちゃん」スタスタ
梓「……むぅー」ポツーン
・・・・・・
放課後
梓「はぁー……。背が高くなったのはいいものの……。思ったより皆の反応が微妙だったな……」
梓「でもまだ軽音部のみなさんたちがいるです! 先輩方ならきっと大きくなった私をほめてくれるはず……」
梓「……ほめてくれるよね?」
梓「いけないいけない! 戸惑うなんて私らしくもない! だめだめ!自身を持てわたし!」パシパシ
梓「よしっ!やってやるです!!」ガチャ
梓「皆さん、こんにちは!!!」フンスッ
唯「あーずにゃ……ってあれ?」
梓「どうしたんですか唯先輩?いつものように抱きついてくれてもいいんですよ?」ニヤニヤ
唯「いや……、その……。ど、どちらさま……?」
梓「」
梓「ちょっと唯先輩!私ですよ私! いつもあなたに抱きつかれてるあずにゃんですよ!」
唯「だってあずにゃんはそんなに大きくないよ!」
梓「私だって成長くらいしますよ!(魔法で成長したんだけど……)」
律「まさかあの七夕のときに書いた願い事が叶ったのか……?」(※15話参照)
梓「ふふん。そうかもしれませんねっ」
律「てかそれにしたって成長したにしろ大きくなりすぎじゃないか……?170くらいあるように見えるぞ……」
澪「私よりも全然……」
律「そして大きくなったわりにそこはあんまり変わってないな」ジー
梓「こ、ここの話は今はいいんです!」
紬「梓ちゃん、まさか危ない薬でも飲んだんじゃないよね?」
梓「ムギ先輩まで純と同じこと言うんですか!? これは純粋な成長です!」
律「そんなこと言われてもなー……。にわかには信じられねーよな……」
澪「なんか変な感じはするな……」
唯「こんなに大きいあずにゃんなんてあずにゃんじゃないよ……」
梓「」ガーン
梓「もういいです!せっかく大きくなったのに誰もほめてくれないなんて!私もう帰ります!!」ガチャ バタン
唯「あ、あずにゃん待って! ……行っちゃった」
律「てか突然一体何があったんだー? 急にあんなに大きくなってさ」
澪「それは分からないけど……。でも、梓もせっかく成長したのに、ひどいこと言っちゃったかもな……」
紬「まだ梓ちゃん近くにいるかもしれないし、私探してくるわ」ガタッ
律「いや、待てムギ。ここは少し梓をそっとしておいた方がいい気がする。なんか感情も高ぶってたみたいだったし」
紬「でも……」
律「その代わり、部活が終わったら皆で梓の家に謝りに行く。」
律「澪の言うとおり私らがひどいこと言っちゃったのは事実だし……。それならいいだろ?」
紬「……うん。わかった、りっちゃんの言うとおりにする」
律「よーし! てことで部活が終わったら皆で謝りに行くぞー!」
唯紬「おーっ!!」
澪「よし、そうと決まればそれまで練習だな」
唯「えー? まずはお茶しようよ」
澪「ダメだ。それに梓のためにお詫びにケーキもって行ってあげた方がいいだろ?」
唯「むぅ、わかったよ。よーし!今日は久々に真面目にやりますかぁ!」
律「おうよ!」
紬「おー♪」
澪「さっ、早速始めるぞ!」
・・・・・・
梓の家
梓「結局昨日と同じように逃げ出してしまった……」ドヨーン
梓「せっかく大きくなったのにほめられるどころか誰も認めてくれないなんて……」ハァ…
梓「もういいや……。元に戻してもらお……」キュッキュッ
モワモワモワ……
魔人「ジャジャーン!呼ばれて出てきてチェケラッチョイ!!」
梓「何よそれ……。てか今までそんな登場の仕方してなかったじゃん」
魔人「結構インパクトあるっしょ? 暇だから寝てる間に考えてたんだ!」
魔人「……で梓。そんなことより残りの願い事は決まったの?」
梓「決まったことは決まったんだけど……」
魔人「何だか言い辛そうだな。まあ、ともかく言ってみなよ」
梓「実は……」
魔人「えーっ!? 背を元に戻したいだって!?」
梓「うん……」
魔人「だ、だって昨日、背高くしたばかりじゃん!!」
梓「そうなんだけどさ……。その、やっぱり私には元の大きさが一番な気がするから……」
魔人「いや背を元に戻すのは別にいいけどさ……。何か願い事の無駄使いっつーか、勿体ない気がするけど本当にいいのね?」
梓「うん。お願いします……」
魔人「分かった。じゃあ遠慮なく元に戻させてもらうぞ」
魔人「ペプシントリプシンリパーゼアミラーゼ!!」
モワモワモワ……
梓「さよなら、高身長の私……」シュルル……
魔人「……本当によかったのか? 何か一日だけの高身長体験!みたいになっちまったけど」
梓「いいんです。急に大きくなってもいいことばかりじゃないって分かりましたし」
魔人「アタイには願い事の無駄づかいにしか見えないんだが……」
梓「うっせーです!! 勿体ないことしたなんて思ってないんだから!」プイッ
魔人「ったく、強がっちゃってぇ。最後の願い事は慎重に考えなよ」
梓「わかってるよ……」
魔人「まあ慎重にっつってもあんま何日もかかるようじゃダメだけどな」
梓「え? もしかして日数制限とかあるの?」
魔人「あれ、言ってなかったっけ? 有効期限はアタイを呼び出した日の翌日までって」
梓「……は?」
梓「ってそれ今日までじゃん!!最初に言ってよもう!」
魔人「ゴメンゴメン、言うの忘れてたよ」
魔人「と、いうわけで今日中に決めないと願い事叶えられなくなるからヨロシク」
梓「ちょっとぉ! てか今日中に決めろとかそんなこと急に言われても思いつきませんって!」
魔人「何でもいいんだぞ?たとえば100億万円ほしいとかでも」
梓「その願い事はどうかと思うけど……」
魔人「じゃあさ、梓のかねてからの夢を実現させるのはどう?」
梓「私の夢?」
魔人「そう。ほら、小学生の時とかにも書いたろ?ミュージシャンになりたいとか総理大臣になりたいとかお嫁さんになりたいとかさ」
梓「お嫁さん……?」
最終更新:2015年02月10日 22:13