魔人「ああ、もちろんそんなのでも構わない。アタイの力にかかれば意中の相手と結婚するのもカンタンだからね」

梓「結婚……」ドキッ


梓(もし、唯先輩と結婚したら……)

唯『おかえり、あずにゃん。ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?』

梓『全部いただきます!!』ガバッ

ギシギシニャンニャン



梓「///」ボンッ


魔人「ど、どうしたんだよおい。急に悶えはじめて」

梓「魔人さん!私願い事決めました!!」ズイッ

魔人「お、おう。てか顔近いって!」

魔人「まあいいや、言ってごらんよ」

梓「は、はいっ!」

梓「ゆ、ゆいせんぱいと……け、け……///」


ピリリリリ

梓「こ、こんな時に電話!?」

魔人「またナイスなタイミングだな。 願い事は電話終わったら聞いてやるから、とりあえず出ちゃいな」

梓「どこがナイスタイミングですか……」ピッ

梓「もしもs」

律『梓!! 大変だ! 唯が、唯がっ……!!』

梓「!? ど、どうしたんですか律先輩!?落ち着いてください! 唯先輩に何かあったんですか!?」

律『唯が、車に……うぅ。ひかれた……』

梓「えっ……?」


梓「あの、律先輩……?冗談ですよね?」

律『梓の家に謝りに行く途中で……、道に飛び出した子猫を助けようとして、唯も、飛び出して……うっ…』

梓「そんなバカなそんなバカなそんなバカな……」

律『とにかく○△病院に来てくれ!! すぐに!』プツッ

梓「うそ……」プーッ、プーッ……

魔人「おいどうしたんだよ? 何かあったのか?顔真っ青だぞ」

梓「ま、魔人さん!!」ガシッ

魔人「お、おい!?本当にどうしたんだ!? 大丈夫かよ!?」

梓「唯先輩が!唯先輩が……!!」ユサユサ

魔人「ただごとじゃないみたいだな。説明してくれよ」

梓「唯センパイが、グスッ。事故にあって、いま病院にいるっていっで……。うぅ……」グスッ

魔人「じ、事故ぉ!?」


梓「! そうだ妖精さん! 唯先輩を治してよ! 私の最後のお願い事!!」ユサユサ

梓「ねっ?いいでしょ!? 唯先輩を治して!」ブンブン

魔人「……残念ながらそれは無理だ」

梓「!? 何でよ!? 何でも叶えてくれるって言ったじゃない!!」

魔人「ああ確かに言ったさ。でも叶えられるのは、アタイを呼び出した当人に効果が及ぶ願い事だけなんだ……」

梓「そ、そんな……! じゃあ唯先輩のケガは治せないってこと!?」

魔人「すまないが、そうなるな……」

梓「そ、そんな……」ガクッ

梓「うぅ……唯先輩……。唯せんぱぁーい!!」ウワーン

魔人「……すまない」


梓「……私、ちょっと行ってきますね」スクッ

梓「○△……グスッ びょういんに……」フラフラ

魔人「梓……」




魔人「(……そうだ!) ま、待て梓!!」

梓「……なんですか?」

魔人「一つだけ、方法があるかも……」

・・・・・・

数十分前


唯「あずにゃん、まだ怒ってるかなー?」

律「ある程度でいいから落ち着いてくれてるといいんだけどな……」

紬「お詫びのケーキも持ってきたし、とにかくちゃんと謝らなきゃね」

澪「そうだな」

ニャー


唯「あ!ネコさんだ!」

紬「まあ!可愛いわー」

律「野良ネコか? にしても通学路でネコ見かけるのなんて珍しいな」


澪「かわいいな……」ナデナデ

ネコ「ニャー」トテトテ

律「……プッ。逃げられてやんの」

澪「う、うるさい!」

唯「あっ、ネコさんそっちの方行ったら危ないよー」

ネコ「ニャー!」ダッ

唯「あっ!コラ待ちなさい!!」タタッ

ブロロロロロ

紬「! 唯ちゃん危ない!!」

唯「えっ!? う、うわぁ!!」

律「唯ーっ!!」

キキイーッ!!


唯「……」

唯「……あれ?なんともない……?」

梓「よかった、間に合いました……」ガシッ

唯「あ、あずにゃん!? どうしてここに!?」

運転手「ったく危ねぇな! 気をつけろ!!」

ブロロロ……


梓「はぁ、はぁ……。よ、よかったぁ……」ヘナヘナ


律「唯!! 大丈夫か!?」

唯「う、うん大丈夫。あずにゃんが助けてくれたから」

澪「え、梓いつの間に来てたの!?」

澪「はぁ、でもよかった……。急に飛び出したもんだからびっくりしたよ」

紬「本当……。もし梓ちゃんが来てくれなかったら大変なことになってたかもしれないわね」


律「てか梓、お前身長もとに戻ってないか?」

梓「そ、その話は今は置いといて! 唯先輩! 急に飛び出しちゃダメじゃないですか!!危ないでしょ!!」

唯「ご、ごめん……」

梓「でも……。 本当に……グスッ。ひかれなくて……よかったよぉ…」グスッ

唯「あずにゃん……。たすけてくれてありがとね」ナデナデ

梓「……唯センパーイ!」ウワーン

唯「よしよし」ナデナデ



梓「……もう危険なことはしないでくださいね?」

唯「うん、これからはもっと気をつける。だからほら、涙拭いて? ほら、ハンカチ」

梓「ありがとうございます」ポロポロ

・・・・・・


梓「……ありがとうございます。大分落ち着きました」

律「にしても梓、お前いつ来たんだー? さては気配を消して私らのことを……」

梓「ちがいますよ!もうっ!」

澪「あ、それとごめんな、梓? 梓がせっかく大きくなったのにあんな態度とっちゃって……」

梓「澪先輩、もうそれはいいんです。私、この身長のままでいいって分かりましたから」

律「……で? 大きくなるのにどんなトリック使ったんだよ?梓しゃん?」ウリウリ

梓「そ、それは教えられません」

律「えぇーん!? ケチー……」

梓「ほ、ほら! もう遅いですしいつまでも話し込んでたら暗くなっちゃいますよ! そろそろ帰らないと!」


紬「そうね。梓ちゃんにも会えたことだし、今日はもう帰りましょうか」

紬「改めて梓ちゃん、ごめんね? でも私はやっぱりこのサイズの梓ちゃんが一番だわ」

唯「私からもごめんね? 背が高くてもあずにゃんは あずにゃんなのにあんなこと言っちゃってさ」

梓「もうっ。その話はいいっていったじゃないですか。私は怒ってませんから」

律「やっぱり梓はちっちゃくてナンボだしなー?」ニヤニヤ

梓「胸見ながら言わないでくださいよ! てか律先輩には言われたくありません!」

律「何だとー中野ぉー!!」ガシッ

梓「きゃーおやめになってー」

キャッキャッ

澪「まったく……何やってるんだか」ヤレヤレ


澪「ほら、そろそろ帰るぞ。みんなまた明日な」

紬「みんなまたね〜」

・・・・・・


梓の部屋


梓「……今日はありがとうございました、魔人さん」

魔人「上手くいったみたいで良かったよ。過去に人を送り届けるってのは初めてだったからさ」

梓「……ふふっ」

魔人「何だよ梓。急に笑って」

梓「いや、魔法瓶拾っておいてよかったなって思って」

魔人「えー、二日経ってようやくアタイのありがたさに気づくなんて遅すぎるんじゃないのー?」

梓「そうかな……?」

魔人「ちょっ!そこで悩むなよ!」

アハハハ……


魔人「……さて。これで梓とはお別れだね」

梓「そういえば、願い事3つしたのに、これじゃ何も変わってないのと一緒ですね」

魔人「あはは、本当だね! アタイもこういうパターンは初めてみたかも」

梓「でも私、これでよかったと思います。何も変わらなくっても、今のままで私は十分幸せですから」

魔人「ははっ、欲がないねぇ。アンタは」

梓「謙虚だと言ってください!」

魔人「褒めたつもりだったんだけどね」

梓「だって魔人さん、あんまり人とか褒めなそうですし……」

魔人「あ、こう見えても結構お世辞は上手いんだよアタイは!」

梓「って結局お世辞だったんじゃないですか!!」

魔人「バレた?」

梓「もうっ……。本当に変な魔人さん」


魔人「よし!じゃあお別れの前にアタイに言うことはないかー?」

梓「へっ……?」

魔人「ほら、無言でお別れなんて寂しいだろ? なんでもいいからさ」

梓「……ありがとうございました、魔人さん」

魔人「ははっ、またそれかよー! でも梓らしいっちゃ梓らしいか!」

魔人「じゃあアタイからも! こちらこそありがとな! 短い時間だったけど楽しかったぞ!!」


梓「……また会える時って来るんですかね」

魔人「さあな? まあアタイの気分次第ってとこかな?」

梓「なんですかそれ」クスッ

魔人「まあ会えなくてもアタイは梓のこと、忘れるまで忘れないけどな」

梓「ちょっとー、それはひどくない?」

妖精「うそうそ。忘れないよ、梓と出会ったことは」

梓「……私も忘れませんよ。魔人さんと出会ったこと」


魔人「じゃあそろそろ行くな。その魔法瓶はあげるよ」

梓「うん。ありがとうね、魔人さん」

魔人「じゃあ元気でな! グッドラック!!」スゥー……

梓「そちらこそお元気でー!」



梓「……」

梓「……行っちゃったか」

梓「変だったけど不思議な魔人さんだったな……。何か、まだ信じられない気分……」キュッキュッ

魔法瓶「……」

梓「何か少し寂しくなっちゃったな……」


ピンポーン

梓「ん? 誰だろ、こんな時間に」

梓「はーい」ガチャ

純「あああ梓! 大変なの!!」

梓「ちょっ、何よ純? こんな夜中にどうしたのよ」

純「い、今そこのゴミ捨て場で魔法瓶を拾ったら何か変な魔人が出てきて!!」アワアワ

梓「えっ」




「唯誕」

                 ___
            _  '"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`丶、
           '⌒:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:⌒\.:.:.:.\
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       |.:.:|=={_∧:.:{.:.:.:.:.:.|´厶 \.:.:l.:.:j.:.:.:.:.:{
       |.:.:||==∧l厶 !\:.:.:| f升iハ |:ヽ|:.イヽ.:.:.:'、  11月27日は私の誕生日だよー
.         '.:八:.:.|i f爪ハ  \! 弋)リ | .:.:.: | }.:.:.:.:ヽ
        ヽハ\、弋)リ ,    ////!.:.:.:.:.|'´.::.:.:.:.: |
          |.:.:.:ゝ///         | .:.:.: |:ノ:.:.:.}.:.:.j
          |:.:.:人     tっ     /.:.:.: 人>┴'く
         ';.:.:.:.:.:> _   _ イ/.:./ /    ヽ
          ヾ{\:{ヽ:{ `T∧ /}//         |
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            {  、    ∨ハ ∨    |     リ
                '.   \j 《V小'_》 丶j     lヘ
            ∨ ヽ|   l|o| l|     |     |∧
               ∨ :l  lト、!.l|    |      |
               〈. 八   ∨     |      | ∧
              ∨  ヽ.   \   |       |  ヘ
                  ∨   \.   \ !      .|/   \

〜唯の誕生日の10日ほど前〜


音楽室


梓「あ、そういえばもうそろそろ唯先輩の誕生日でしたね」

唯「おっ!あずにゃん覚えててくれたんだね!?うれしいよー」ギューッ

梓「やめてください/// ……で、誕生日プレゼントのことなんですけど……」

唯「あ!もしかして先にくれるの!?」

梓「ええまあ。はい、どうぞ」ペラッ

唯「ありがとー! これ何?ポイントカードみたいだけど?」

梓「まあそれに似てますかね」

唯「へー?何のポイントカードなのあずにゃんっ」

梓「唯先輩の誕生日プレゼントと交換するためのポイントカードです」

唯「へぇー!」



唯「……えっ?」


梓「ほら、裏面にスタンプみたいなの押せる欄があるじゃないですか?そこに1時間勉強するごとにスタンプ押してあげますから」

唯「ちょっ!? ポイント貯めないとプレゼントもらえないの!?」

梓「はい。唯先輩にもっとしっかりしてもらうために、今年は少し厳しくしてみました」

唯「そ、そんなぁ……。てかあずにゃんさん、私の目にはスタンプ欄が20個ほどあるように見えるんですが……?」

梓「これでも甘くしたんですよ。誕生日までに20時間勉強したら、唯先輩に誕生日プレゼントあげます」

唯「に、20時間!!? そんな長時間無理だよ!!」

梓「毎日2時間ずつやってください! それぐらい、高校生なんだから当たり前の勉強時間です!」

唯「しょ、しょんなぁ〜……」ガックリ

梓「そして勉強が終わったらこのタイマーに勉強時間を記録してください。毎日確認して、スタンプあげますから」スッ

唯「はーい……」

・・・・・・


部活後 平沢家


唯「はぁー……。プレゼントのために勉強しなくちゃぁー……。まったく、あずにゃんも一日2時間とか厳しすぎるよっ」プンプン

唯「とりあえず、やらなきゃ。……とりあえず生物でもやろ」ゴソゴソ

唯「えーと、遺伝の法則について。遺伝子系がAAとaaの個体が交配した場合、そこから生まれる新個体の遺伝子系を答えなさい、か


唯「えーとAAとaaだから……?」

唯「……?」



10分後


唯「まったく、なんで私の机はこんなに汚いかな。やっぱり勉強の前には机の整理だよね!よいしょっと……」ドサッ

唯「あ!これ前に澪ちゃんから借りたままの小説だ。こんなとこにあったとは…」ペラペラ

唯「………」ペラペラ


そして2時間後

唯「はぁー、読み終わったぁー」パタッ

憂「おねえちゃーん?そろそろお風呂入らないと」ガチャ

唯「はっ!もうそんな時間!?どうしよう勉強しなきゃいけないのに……」アワアワ

憂「お風呂冷めちゃうよ?」

唯「う、うん今入るよ」スクッ

唯(……まあ明日からやればいっかー)


翌日

音楽室


梓「唯先輩、どうですか?順調ですか?」

唯「えっ?何が?」

梓「何がじゃないでしょ……。ほら、勉強のこと」

唯「あっ……! ……ま、まあまあ順調かな?」ダラダラ

梓「じゃあ昨日渡したタイマー見せてください」

唯「ふぇっ!? な、なんで……?」

梓「毎日スタンプ押すって言ったじゃないですか。ほら、タイマー出して」

唯「どうぞ……」スッ


梓「あれ? って勉強時間ゼロじゃないですか! 何か怪しいと思ったら、やっぱりやってなかったんですね!」

唯「き、昨日は机の整理とかして今日から本格的にやろうかと思ってたの!! 今日からちゃんとやるよ!」

梓「唯先輩のちゃんとやるは信用できません!」

唯「ひどいよあずにゃん……」

梓「はぁ……。とにかくプレゼントは20時間が絶対条件ですからね!今日からは本当にちゃんとやってくださいよ?いいですねっ!」

唯「……はぁーい」


平沢家


唯「はぁ……。今日こそ真面目にやらないと。プレゼント貰えないのはいやだし」ガサゴソ

唯「よーし!やーるぞー! 今日は日本史から!」フンスッ

唯「えーと、次のうち徳川吉宗が行った政策を選びなさい。1上米の制、2三方領地替え、3田畑永年売買の禁令の制定、4元禄小判の鋳造」

唯「えーと、徳川吉宗だから……?」

唯「……」コロコロ

唯「あっ、外れたっ!」


一時間後


唯「はひー……。や、やっと一時間終わった……。とりあえずタイマーに入力してっと……」ピッピッ

タイマー「ユイセンパイゴクロウサマデス。アト19ジカンガンバッテクダサイ」

唯「あ、あずにゃんの声だ。凄い高性能だねこのタイマー…」シゲシゲ

唯「にしてもあと一時間もやらなきゃとかもう無理だよー。しかも昨日の分も取り戻さなきゃだし……」

唯「……!」ピコーン

唯「そうだ、一時間くらい多めに入力しちゃえばいいんだ!このくらいならバレないよね」ピッピッ

ビリビリビリ

唯「あう"っ!!!」

タイマー「ユイセンパイガスルコト ナンテオミトオシデス!! バツトシテ1ポイントボッシュウデス!」ポシュウ…

唯「あぁー!!せっかく貯めたのにーっ!!」


唯「やっぱり真面目にやらなきゃダメかぁー……」ガックリ

唯「でも今日は疲れたし眠いしもういいかな……」ウトウト

唯「はっ!ってダメダメ!! そんなことしたら明日以降もっと大変になる!」

唯「ああ、でも眠気が……」ウトウト

唯「……zzz」


翌日


梓「どうですか唯先輩?昨日は勉強できましたか?」

唯「…………」

梓「またできなかったんですか」ハァー…

梓「まあいいです。とにかくタイマー見せてください」

唯「だって昨日はちゃんと一時間も勉強したのに、ちょっと入力間違えたら没収されちゃったんだよ!さすがにひどいよ!」

梓「ズルしようとするのがいけないんです! とにかく、今日から気持ちを切り替えて頑張ってください」

唯「はぁ〜い……」



20
最終更新:2015年02月10日 22:13