▼‐04


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ナレーション
「織園戸高校に通う8人の女子生徒は、山奥のコテージに来ていた。
 ここでウィンタースポーツでもと思っていたが、生憎の大雪。
 雪は夜遅くになって、多少マシになっていた」


 【スクリーンに見取り図投影。居間を指示。
  ここが現在位置となります。今後も見取り図投影の指示があれば同様です】

 【るき、あすた以外の全員。二人は上手に待機】
 【照明、徐々に明るく】
 【居間の背景は北側。家具と、廊下に繋がる扉を】


いずる『全く、たまったもんじゃないわ! 夜まで弱まらないなんて!』

こごみ『怒ったって仕方ないことでしょう』

いずる『そりゃあそうだけど……。もう』


 【上手から二人が登場】


あすた『晩ご飯できたよー』

るき『さ、今日は残念だったけれど、明日に備えてご飯にしましょ』

なすみ『この中に誰か雨女ならぬ、雪女でもいるのかね』

るき『なに、どうしてわたしに向かって言うの?』

なすみ『天気予報では夜から大雪のはずだったんだよ。
 それが、るきが前日に突然参加してきたせいで、昼間から大雪になっちゃって』

るき『えー、関係なくない? 許可してくれたのはれんだし』

れん『ごめんね、二人とも……』

なすみ『れんは謝る必要なんてないって。
 るきも、れんに無理言って強制気味に参加したっていうのに、
 罪をなすりつけない』

るき『そもそもわたしに罪なんてないし!』

なすみ『ま、そんなことはどうでもいいし、早く食べましょう』


 【暗転。そのまま次のセリフ】


全員『いただきます!』


 【箸を持つ。利き腕を間違えないように】
 【照明をつける】


舞『ねえ、これ作ったのはあすたなの? 意外と料理うまいんだね』

あすた『なんだ、こんな怪力女が作る料理は変だって?』

舞『そ、そんなこと言ってないよ』

えな『へえ、怪力女の自覚はあるんですね』

なすみ『普段からバカみたいに高い山登っているような子じゃあね』

あすた『否定はしないけど、ひどいなあ』

るき『ほら、れんも食べな』

れん『うん。……電話、まだ繋がらない?』

なすみ『ああ、そのことだけど、相変わらず駄目ね。
 この雪でどこかやられちゃったのかも。まあ年数も経ってるし、仕方ない部分もあるけど』

いずる『はあ、携帯も繋がらなきゃ、コテージの電話も繋がらない……。
 ちょっとした隔離空間ね、ここは』


 【暗転。見取り図。キッチンを指示】

 【るき、あすた。お客さん側を向いて。お皿を運んでいる】
 【背景は横引きの掃き出し窓。雪は弱い】


るき『しかし寒いねー』

あすた『まったくだ』


 【風の音と、窓がガタガタ揺れる音】


るき『おお、風はまだ強いね』

あすた『それでも随分と収まってきた方だよ。
 雪は止んでるし、そろそろ風も止んできてくれるんじゃない?』

るき『んー、なら明日は心配ないね。よかったよかった』


 【暗転。見取り図、居間を指示】
 【いずる、るき、あすた以外。るきとあすたは上手で待機】

 【るきとあすたが上手より出てくる】


るき『あれ、いずるは?』

舞『寝ちゃったよ』

るき『早くない!?』

舞『退屈で眠くなっちゃったんだってさ』

るき『へえ……』

舞『……って、ああ! わたしたちの部屋の鍵、誰が持ってたっけ?』

あすた『いずるじゃないか?』

舞『まさかとは思うけど、部屋の鍵さ……持って行ったまま、締めてないよね?』

あすた『んー……ないとはいいきれない』

舞『か、確認してくる!』


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「そして鍵が案の定締まっていることを確認して、急いで戻ってくる、と」


 脚本の読み直しを一度区切り、ちかちゃんは少し疲れたのか、ふうと息を漏らした。
 すると美冬ちゃんが代わって、ここまでの流れを汲みながら、口を開いた。


「この劇は暗転で見取り図で場所移動を示してるみたいだけど、
 そのぶん舞台セットとかは少ないのかな?」

「なるほど……舞台セットの他にも、小道具も必要最小限になってそうね。
 それがかえって推理を解きやすくしてるかも。姫子、聞いてもらえる?」

「りょーかい」

「あ、それと散々出てくる見取り図も、あれば送ってもらって」


 姫子ちゃんは携帯を取り出し、後輩ちゃんを電話越しに呼び出した。


「ねえ、ちずる」


 姫子ちゃんが話しているなか、しずかがわたしの袖をちょいちょいと引っ張る。


「どうしてこの人たちを選んだのかな」

「どゆこと?」

「被害者と探偵の人はわかるんだけど、残りの人がわからないんだよ。
 五人は特に上から順番に選んでいるみたいだけど……」


 しずかに言われ、もう一度人物欄を見直す。
 なるほど、確かに被害者と探偵を除く六人中五人は、上から順番に取っていったようだ。
 しかしそこから一気に飛ばした六人目――安藤れんが何故選ばれたのか、わからない。
 なにか重要な役割でもあったんだろうか。

 和ちゃんに疑問を投げてみると、あっけないほど簡単に曖昧な答えが返ってきた。


「とても重要、かもしれないわ」

「いまいち決まらないね」

「原作のアンドレニ外交官夫妻は特異な立場にあるのよ。
 ただ、夫妻のうちどちらに“安藤れな”が当てはまるのか、それがわからないから」

「女の子だから妻じゃないの?」


 和ちゃんは肩を竦めた。


「原作では男のキャラなんて、ここには溢れかえってるわ」


 ごもっとも。よく考えてみれば、探偵も原作じゃ男だ。
 わたしたちの疑問が一つ解決したのか、してないのかはさておいて、
 一段落ついた頃、姫子ちゃんは電話を切った。


「うん、やっぱり舞台上のセットは無いって。
 座ったり寝そべったりする椅子を、いくつか置いておくぐらい」

「それ以外には一切?」

「一切」


 随分と省エネな劇だ。道具係も、作り甲斐がないんじゃないかな。
 と、そのとき、姫子ちゃんの携帯が軽快な着信音を鳴らしだした。
 いま流行りのアーティストの、特に有名な曲だ。


「お、きたきた。写真撮ってくれたんだ。これが見取り図だって」


 たったいま受信したメールに、見取り図の写真が添付されていた。
 それを全員で覗きこみながら、ここが居間で、ここがキッチンなどと話し、
 簡略化してしまってはいるけれど、きちんと紙に写し取った。



「そうそう、背景はスクリーンに全部映すんだって。
 見取り図が映って、すぐに背景に切り替わるみたい。
 で、小道具なんだけど、鍵が一つ。返り血を浴びた掛け布団が一つに、
 シーツが一つ。あとは財布に、鞄に、ロープだってさ」

「ロープ? 絞殺ではないよね?」

「何に使うのかはわからないって言ってたけど」


 眉を八の字にした美冬ちゃんが、脚本を改めて見直そうとするけれど、
 ちかちゃんがそれを止める。
 目で合図すると、阿吽の呼吸で、バトンが美冬ちゃんからちかちゃんに渡った。


「それじゃ全員で読み直しを再開して、この疑問を解いてみよう」



  ▼‐05


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 【見取り図。二階廊下】
 【背景は北側】

 【るき、舞、なすみ。困った様子で】
 【扉が本当に締まっているかどうか調べる】


舞『ほらね、締まってるでしょ?』

るき『ほんとだ……勝手なんだから。
 なすみ、この家の持ち主なんでしょ、もう一つ鍵とかないの?』

なすみ『ないんだよね』

るき『えっ?』

なすみ『つまりここを開ける鍵は、この部屋の中にしかないんだよ』

舞『えー……』

るき『なんというか、正直ずさんね……』

なすみ『……そうだ、ベランダの鍵が開いてるかも。
 わたしの部屋から回って、ベランダ側に行ってみましょう』

舞『あ、それ賛成ー』

るき『ベランダ側も開いてなかったら?』

なすみ『ベランダと部屋を繋ぐ窓には、外から開ける鍵なんて元々ないよ。
 そういう作りじゃないし。そこは恨まないでもらいたいね』

るき『はいはい』

なすみ『じゃあ早速、鍵を取ってこなくちゃ。ちょっと待っててね』


 【暗転】

 【取りに行ってる時間を考えてから、照明をつける】


なすみ『お待たせ。それじゃ行こうか』


 【暗転】
 【見取り図。ベランダを示す】

 【雪は止んでいるものの、寒さで凍える三人】
 【背景は加瀬田の部屋の掃き出し窓】


舞『さむさむー!』


 【舞、足をどたどたさせる。
  ベランダの柵上に乗った雪を手に持ち、下に落とす】
 【効果音】


舞『ほら見て、こんなに積もってたんだ!』

るき『ホント、室内にいると全然感じないけど』

なすみ『ふふ、部屋ごとに扉があってかっちり仕切られてるし、
 壁もしっかりした作りだからね。寒さには強いよ』

舞『なすみの家自慢のコテージだけあるわー。鍵は一つしかないけど』

なすみ『外の事務所にはあると思うの、事務所にはね。
 ……さて、いずるの部屋はここなんだけど』

るき『暗くてなにも見えん……寝てるね、こりゃ』

舞『おーい、起きろー!』


 【舞の窓を強く叩く音。反応はなにもない】


舞『くっそー、わたしに怪力が備わってればこんな窓突き破るってのに……』

なすみ『備わっててもわたしが許さないから』

るき『そもそも断トツに非力な舞がそんなこといっても、虚しく聞こえるだけだよ』

舞『るきちゃんひどいよー……』

るき『少しは力つけてから文句言ってね。さすがに細すぎ』

なすみ『ま、いずるは完全に寝ていそうね。仕方ないから舞とあすたの二人は、
 わたしの部屋とるきの部屋、それぞれに寝てもらうことにしましょう』


 【暗転】
 【見取り図。玄関前の廊下を示す】

 【背景は玄関】
 【上手を向いてこごみが待機。下手から三人登場】


るき『こごみ?』

こごみ『あら、戻ってきたのねえ。どうだった?』

るき『駄目だね。舞とあすたは、わたしたちの部屋に振り分けるしか』

こごみ『全く、勝手な人よね』

なすみ『そういうこごみはなにやってるの?』

こごみ『見ての通り、順番待ちよ。えなのトイレが長くて長くて』

舞『洩れそうなの?』

こごみ『下品なことは言わないでもらえる?』

舞『ごめんなさい!』

こごみ『全く……わたし、あんまり話してる余裕はないの。
 少しは気を遣ってくれる?』


 【暗転】


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 ああ、トイレで待ってるのに、遠慮なしに話しかけてくる人。
 確かに困る、とても困る。
 こっちは必死の思いで我慢してるのに、なにか返さなくちゃいけないからね。


「余裕がないってどういうことだろうね?」


 しずか、もう少し大人になったほうがいいよ。
 と思ったけど、やっぱり子供のままのしずかもいいかもしれない。


「あ、いま馬鹿にされた気がする」

「気のせいじゃない?」


 こういうことに関して妙に勘が鋭いのは、自覚があるからかもしれない。


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 【居間。安藤が一人。下手より、三人が登場】


るき『あれ、あすたは?』

れん『キッチン。お皿洗ってくるって言ってた』

るき『そっか。で、れんは一人ぼっちで寂しくしちゃってたか』

れん『そ、そんなことないよ……』

るき『今はわたしがいるからそんなことないかー、そっかー』


 【じゃれる二人】


舞『いい加減それぐらいにしときなよー。見てるこっちが恥ずかしいっての』


 【上手より、あすたが登場】


あすた『なんだ、戻ってきてたんだ。それで?』

なすみ『あすた、おかえり。でね、残念ながら鍵は締まってる。
 ベランダ側にも回ったけど、駄目だったね』

舞『というわけでわたしとあすたは、部屋を移ることになりまーす』

あすた『ん、わかった』

なすみ『ああ、そうだ。わたしえなに用事があるんだった』

舞『今はトイレにいるんじゃないっけ?』

なすみ『そうだったね。ちょっと行ってくるよ』

舞『行ってらっしゃーい、こごみに気を付けてねー』


 【下手へなすみが去る】


るき『……う、寒っ』

れん『ベランダに出て、身体が冷えちゃったんだね。
 いま温かいお茶を入れてくるから、待っててね』

るき『あ、いいんだよ別に』

れん『わたしがそうしたいの』

るき『……じゃあ、お言葉に甘えて』


 【暗転】
 【四人のまま。くつろいでる風に。照明オン】


るき『やっぱれんの淹れたお茶は落ち着くわ~』

れん『他の人がいれても変わらないよ……』

るき『気持ちの問題よ、気持ち。ハートね』

舞『このやり取り、既に二回目なんだけど』

るき『あれ、そうだっけ?』

あすた『ここに来たばかりのとき、れんがお茶を淹れてくれたでしょ。
 そのとき同じことを言ってたね』

るき『あちゃー、これぞまさしく二番煎じ……』

舞『上手いこと言ったつもりかっ』


 【下手からなすみ、えなが登場】


えな『わたしたちの部屋にどちらかを寝させる、ってこと?』

なすみ『うん』

るき『おかえり。二人の部屋割りの話?』

なすみ『その通り。舞、あすた、どっちがどっちの部屋に行くの?』

あすた『どちらでも。ま、寝相の悪い舞を、どちらに押し付けるかって話だね』

るき『わたしたちの部屋はもう寝る場所まで決めちゃってるから、困るなあ。
 寝相の悪い子を端っこに寄せられないじゃない』

舞『なにをー! ……』

れん『どうしたの、舞ちゃん?』

舞『お腹……痛い……』

るき『外に出たとき、お腹まで冷やしちゃったんじゃない?』

舞『じゃあなんで一緒に出た二人は痛くなんないのさー!』

るき『知らんって』

なすみ『普段の行いとか?』

舞『二人とも呪ってやるううう……』


 【下手に走っていく舞。トイレのドアを叩く音】
 【しばらくして、下手よりこごみが怒った顔で登場】


こごみ『全くなんなの! やっと入れたかと思えば、さっさと追い出されて!』

るき『あはは、舞のやつなー……』

あすた『出るもん出たならいいでしょ』

こごみ『なんでそう下品なこと言えるのよ』

なすみ『それで、その舞がどっちの部屋で寝るかってことになってるんだけれど』

こごみ『今みたいなこと、これ以上は御免ね。
 ……まあ、仕返しさえできれば、話は別だけれど』

なすみ『何する気なの?』

こごみ『ちょっと、ね』


 【暗転】


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  ▼‐06


「ここまでで、気づいたことは?」

 ちかちゃんが台本の上から目を外す。
 左右で小さく結ばれた髪が、顔の動きに合わせて揺れていた。
 一方で隣のワンレングス少女は垂れ下がったまま、目は釘で打ち付けられていた。


「みーふーゆー?」


 ちかちゃんがひょいとその釘を抜いた。


「あ、ああ、ごめんね。さて、このあとに龍野こごみは、
 蛭田舞に自分の食らった仕打ちを繰り返させるわけだけど」

「飛び出してきた蛭田舞が結構本気で怒るんだよね」


 しずかが自信なさげに、口を動かす。


「ちょっとした悪戯の仕返しのつもりだったんだけど、そうもいかなかったんだね。
 それで、部屋割りは二人を別々にするものになった」

「つまり、穂和呂るき、龍野こごみ、安藤れん、江戸川あすたの部屋と、
 阿部なすみ、水阿利えな、蛭田舞の部屋とに別れたんだ」

「どっちがどっちの部屋だっけ?」

「それなら」


 和ちゃんがすかさず、メモを加えていた見取り図を指さしながら説明する。


「こっち、北側が穂和呂るきたちの部屋で、南東側が阿部なすみたちの部屋ね。
 そして南西側が、たった一人で独占してしまった加瀬田いずるの部屋」

「鍵までかけちゃうなんて、非常識な子だね」

「まあ。お話の中の人物に常識語っても虚しいだけよ」


 肩を竦めて、和ちゃんは言葉を続ける。
 こちらには名探偵ポワロもいなければ、作中の穂和呂もいない。
 しかし、和ちゃんがいる。
 わたしのカメラ紛失事件のときも、お世話になったことを思い出した。

 と、同時に、あまり思い出したくないことが、
 頭の中でむくりと起き上がってきた。
 今お前はお呼びじゃないと、そのことを頭の片隅に押しやる。


「喧嘩して、それぞれの部屋に別れたあと、長めの暗転がある。
 照明がついたときには、起床時刻になっているようね」

「夜の間のことは、なにも情報がないってこと?」

「なにかあっても、主人公が熟睡してて、見てないってことでしょう」


 唯ちゃんがうんうん唸っている。


「じゃあいつ事件が起きたのか、わからないよ~……」

「さて、それはどうかしら」

「え、和ちゃんはわかってるの?」

「この先をもう一度読んでみないことにはわからないわ」

「ハッタリ!?」


 和ちゃんはけろりと、そうよ、とだけ言った。
 これじゃ唯ちゃんは適わないな、とみんなで笑った。


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 【るきたちの部屋。見取り図】
 【背景は窓】
 【寝てるるきと、舞、れん、あすた。下手より、なすみが登場】


 【ドアを開ける音。衝突音】


るき『痛っ』

なすみ『……なんでドアの前で寝てんのよ』

るき『あ、うんん……まあなんとなく。で、どうしたの?』

なすみ『ちょっとついて来て』


 【暗転】

 【なすみたちの部屋。るき、なすみ、えな、舞】


えな『るき……』

るき『一体どうしたのさ……?』

舞『……おかしいんだ、さすがに』

るき『だから、なにが?』

舞『いずるのこと。やけに静かすぎるっていうか、嫌な予感がするんだ』

るき『なにそれ……』

舞『朝になったからさ、ドアからも、窓からも叩いてみたんだ。
 でも全くの無反応で……るきも一応、覗いてみてよ』


 【暗転】

 【ベランダ。背景は、雪のくぼみができた柵側を。つまり手前が窓】


るき『いずるー!』


 【窓を叩く音。反応なし】


るき『……嫌な予感の意味、少しわかったかも』

舞『そうでしょ?』

るき『ねえ、なすみ。これ、もしかしたら緊急事態かもしれない』

なすみ『……うん。わたしの家だ、責任はわたしがとる』

るき『それじゃ、お言葉に甘えて……!』


 【暗転。ガラスの割れる音】

 【いずるの部屋。見取り図。背景は掃き出し窓、一部割れている】
 【横たわるいずると、かけられた血の布団、床に落ちた鍵】


なすみ『嘘……!』

るき『いずる! いずる!』

舞『うっ……』

なすみ『舞、見るのが辛いなら見なくていいよ。
 ねえ、るき、もしかしてもう……』

るき『うん……。死んでる』

えな『そんな、どうして……』


 【るき、床に落ちてる鍵に気づく】


るき『……これは』


 【扉を確認。鍵は締まっている】


るき『なんてことなの』

えな『え、どうしました……?』

るき『なすみ。確かに鍵はこの家の中には一つしかないんだよね?』

なすみ『うん。下に降りれば、それを証明してくれる人だっているよ』

るき『そう……。だとして、これが殺人だとすれば、これは……』


 【暗転。セリフは暗転したまま言う】


るき『……密室殺人だよ』


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最終更新:2015年04月02日 22:44