ガチャッ

和「ギャルのパンティおくれーっ!」

律「なんだ、あの変態は」

唯「知らない子だね」

和「ねえ私の親友の唯、ちょっと耳よりな情報があるんだけど」

紬「呼んでるわよ親友の唯ちゃん」

唯「私のこととは限らないよ」

律「ここにお前以外の唯がいるのか?」

澪「よし、唯のかわりに私が親友になってあげるよ赤メガネさん」

和「あら、いいの?私はノンケでも構わず貝を合わせちゃう赤貝メガネなのだけど?」

澪「かいを合わせるってなに?」

紬「OK、この話、この琴吹紬が預からせてもらうわ〜(^ヮ゚)」

和「頼んだわよ」

澪「やっぱりムギは頼りになるなぁ〜」

律「おい、唯。あとは若いもの同士に任せて帰ろうぜ」

唯「そだね」

和「待って待ってよ唯」

唯「親友の澪ちゃんと仲良くね」

和「あら、もしかして嫉妬してくれるの?」

唯「ち、違うもん!行こ!りっちゃん」

律「なんだ、このかわいい生き物は」

紬「ここがパラダイス銀河だったのね」

澪「茶番はそれまでにして、何の用事でここへ来たんだい、赤メガネさん」

和「単刀直入に言えばアンタ達、軽音部ってまだ部活になってない事をお知らせに来たんだけど」

唯「えっ」

律「人数は揃ったろ!?」

和「いや、私、生徒会なんだけど軽音部の部活申請届け受け取ってないし」

律「なんで受け取ってないんだ!?」


和「だって提出されてないから」


律「納得だぜ!」


澪「おい」

唯「え?え?そういうの誰が出すの?」

澪「そりゃ部長の律だろうな」

律「そういや、あったわ〜そんな紙…」ガサゴソ

りっちゃんはカバンの中からクッシャクシャになった部活申請届けの用紙を出した。

なんかもう緑色とか茶色の謎の粘液もへばりついていた。


りっちゃんはサバサバさっぱりとした気持ちの良い性格だけど物理的に薄汚いのがタマにキズだらけだ。

気色悪い。


サラサラ

律「ほら、書いたぜ」

和「汚ならしい用紙ね…あら、これ顧問の名前が書いてないけど」

律「顧問って必要か?」

和「とりあえずいないと部として認められないわ」

唯「部として認められなかったらどうなるの?」

和「アンタ達、音楽準備室を勝手に巣にしてるけど、学校側に締め出されても文句言えないわね」

律「そんなの横暴だ!」

和「音楽準備室に勝手にティーセット持ち込むのは横暴じゃないの?」

紬「あぁ!?」


ガッシャーン


唯澪律和「!?」


ムギちゃんがいきなり机を蹴っ飛ばしたので、みんなビクッってなった。

紬「ウッソで〜す(^ヮ^)♪」

するとすぐに、いつもの優しいムギちゃんに戻ったので私たちは何も見なかった事にした。


澪「と、とにかく顧問の先生を探さなきゃな」

唯「誰かいい人、いるかなぁ?」

律「顧問なんて飾りだしヒマそうなのに頼めばいんじゃね?」

紬「一応は音楽に理解のある先生がいいとは思うけれど…」

唯「じゃあ音楽の先生に頼んだら?」


和「ナイスな名案ね!さすが唯!」

律「それほどの事か?」

澪「むしろ音楽に理解ある先生と言って音楽の先生以外の選択肢があるのだろうか」

和「あら、黒髪美少女さん。私が唯を褒めたから嫉妬してるの」

澪「ああ。赤貝メガネさんは私だけ見てればいいんだ」

和「私、そういう重い関係はちょっと…」

唯「いつも和ちゃんが私に求めてくる事だけどね!」

和「私、あんなのなの?」

紬「ストーカーにストーカーされるストーカーってなんだかゾクゾクしちゃうわね!」

律「ハタから見てる分にはなんでもいいぜ」

そういうワケで私たちは顧問を探すため、とりあえず職員室に向かった。


—職員室—

律「失礼しま〜す」

澪「先生、ちょっとよろしいですか?」

さわ子「はい。どうしたの?」

さわ子先生はニコリと微笑みながら私たちの方に顔を向ける。


さらさらふわふわ略してさわさわな長い髪に品のいい眼鏡、整った顔立ち、すべすべの白い肌にスラリと細長い手足。

そして優しそうな笑顔に柔らかな物腰。

山中さわ子先生はこの桜ヶ丘高校の人気美人音楽教師だ。


唯「そんなさわ子先生に軽音部の顧問をやってほしいのです!」

紬「ほしいのです!」

さわ子「えっ、急にそんなことを言われても…」

澪「頼れるのは先生しかいないんです」

律「お願いしまっす!」

さわ子「う〜ん…でも、私 合唱部の顧問をやっているからちょっと難しいわ。ごめんね」

紬「あぁ!?」ガシャーンッ

さわ子「!?」

律「お、おいムギっ」

和「ムギ、やめなさい。さあホラ、チョコレートよ」

紬「ぐわあおおあっ」

バクッ

キレて今にも飛びかかりそうなムギちゃんを3人がかりで抑えつけて私たちはその場を立ち去った。


—帰り道—

澪「さて、どうしたものかなぁ」

律「もう顧問なんかいらん。アタシ達はもう勝手にやって行こうぜ」

唯「でもでも、そしたら部室使えなくなっちゃうかもなんだよ〜」

紬「困ったね…」

唯「そ、そうだよね」

正直ムギちゃんの豹変ぶりの方が恐くて困るよ!
と思ったけど怖いから秘密にしておいた。

紬「?」

紬「どうしたの唯ちゃん、私の顔をじっと見て」

唯「…ムギちゃん、かわいいなぁ〜って思って」

紬「あぁ!?」


ブッ!!

ビチャ!!


っとムギちゃんは鼻血の塊を噴出した。

澪「ひィッ!?」

紬「ゆ、唯ちゃん///」

私はムギちゃんの鼻から噴き出した血の塊を見て失神しそうになったが
かろうじて正気を保って立っていた。

紬「唯ちゃん。私、顧問の件がんばるね!」

ムギちゃんは地面にへばりついた血の塊を拾って食べて栄養補給して走り去っていった。

唯「さんちぴんち!さんちぴんち!」

律「何言ってんだ、お前」

SAN値(さんち)とは正気を保っていられるかどうかのバロメーターで私は
唯「ぎゃぎゃぎゃがゃwww」

律「しっかりしろ!」

その時、りっちゃんは私の事をギュッと抱き締めてくれたんだ。

唯「正気を失ったせいか、りっちゃんがすっごく可愛く見える」

律「捉えようによってはすごい失礼な発言だよな」


唯「でも、本当に可愛いよ」


律「よせやい!」

りっちゃんは顔を真っ赤にして走り去っていった。


私は心にもない言葉を適当に並べただけだったが
りっちゃんのアタフタする姿を見る事で何か優位に立った気がして心が落ち着いた。

私は道路に横たわる澪ちゃんの太ももに「正T」とマジックで書いて家に帰った。


—平沢家—

唯「ただいま〜」

憂「お姉ちゃん、おかえり!」

唯「何か憂を見ているとホッとするや」

憂「あ〜、なんだかバカにされてる気がする〜」

唯「そんなんじゃないよ」

唯「憂、いつもありがとうね本当に」ナデナデ

憂「あっ、うっ、どういたしましてっ!?」


憂は真っ赤な顔をしてキッチンに吊るしてあった牛の死骸にナイフを突き立てた。

一方、りっちゃんに引き続き、妹の心をもて遊んだことで
完全に平常心を取り戻した私は澪ちゃんから電話がかかってきた。

ピロピロ


唯「はい、もしもし〜」

澪『唯、唯!私、目が覚めたら太ももに正Tって書いてあったけど失神してる間に肉便器にされたのかも知れない(;A;)』

澪『律に相談して心配かけたくないしムギは友達かどうか怪しいし、こんな話を出来るのはお前しか…』

唯「それ、私が書いたんだよ」


澪『お前が私を犯したのか!?』


澪『あ、ありがとう///』


私は怖くなってすぐ電話を切った。


—翌日—

紬「唯ちゃん、見て見て!」

放課後、部室に行くとムギちゃんが釘バットを振り回していた。

唯「わぁ、スイカ割りでもするのかな」

律「だと いいな」

傍らを見ると澪ちゃんは既に失神していた。

紬「さぁ!今から山中先生に顧問の件をお願いに行きましょう♪」

釘バットで金バケツをボッコボコにしながらムギちゃんが優しい笑顔を浮かべた。


もうムギちゃんの好きなように生きたらいいよ、と思ったが

ふと、もしも今のムギちゃんを激しく非難したら どんな反応をするのかなあという好奇心が沸き起こった。


好奇心はネコを殺すとかコロ助か誰かが言ってたが
私はネコじゃないから死なずに済むだろう。

唯「ムギちゃんムギちゃん」

紬「なあに、唯ちゃん?」

唯「そんな釘バットで脅して先生が顧問になってくれても
楽しい気持ちで部活できるワケないじゃん、なに考えてるの?」

紬「えっ…」




唯「って、りっちゃんが言ってました」

律「言ってねーし!?」

紬「……」

ムギちゃんは釘バットを握りしめたまま微動だにせず、目だけをギロリとりっちゃんに向けた。

律「あわわ」

律「ち違うんだ。アタシそんなこと思ってねーし」

律「むしろさすがに警察沙汰になってムギが捕まれば平和になるんじゃねーかって思ってたくらいだし、だからさっさと行って殺って捕まってくれ」

紬「!?」

律「って澪が言ってました」

澪「……」


唯「りっちゃん、気絶してる澪ちゃんに罪をなすりつけるなんてズルいよ!薄汚いよ!」

律「うるへー!?元はと言えばお前がアタシを陥れようと…」

唯「ほざけ!」

ガッと私はりっちゃんの胸ぐらをつかんだ。

律「あぁ!?」

紬「ケンカはやめてぇ!」

唯「はい」


律「はい」

私たちはすぐケンカをやめた。

紬「う、うぅ…」

ムギちゃんはぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。

唯「ムギちゃん…」

紬「わ、私…ご、ごめ、なざい…」ヒック

紬「みんなといると、愉しくて、なんでも出来るような気がして…」

紬「でも、本当はみんな迷惑だったのね…」


足元に転がる釘バットを見て「そりゃそうだよ」と思ったけど



唯「そりゃそうだよ」


と思わず言ってみた。

紬「う、うわぁああん、うわぁおおおん」

紬「ゆ、唯ちゃんに嫌われちゃっ…うわぁおおおん」


ムギちゃんは号泣した。


泣き叫んだ。


咆哮した。


律「お、おい、唯」


唯「だ、大丈夫だよムギちゃん。澪ちゃんは迷惑がってたけど、私はムギちゃんが大好きだよ。愛してるよ」

紬「あっ、アイ///!?」

律「そうだぞ〜。アタシもムギのこと、大大大好きだからな!」

律「澪は迷惑がってたけど」

紬「ふたりとも…///」


しなびた青ビョウタンみたいだったムギちゃんの顔が、みるみる薔薇色に染まり、満面の笑みを浮かべた。

私はなんでこんな展開になったのか不思議でならなかったが、とりあえずムギちゃんを抱きしめておいた。


澪「…ハッ?」


目を覚ました澪ちゃんが不思議そうに抱き合う私たちを眺めていた。

いつまでも、いつまでも…



おわり



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最終更新:2015年06月20日 08:31