—10分後—
とりあえず私たちは紅茶を飲んで一服することにした。
おやつはヤギの生首だった。
きっと先生を血祭りにあげて無理やり顧問にした後
祝勝会をするためにムギちゃんは用意したのだろう。
でも紅茶にヤギの生首は合いそうにない。
見ると澪ちゃんは既に失神していた。
律「それで顧問の件はどうする?」
唯「私、思ったんだけど、りっちゃんの言う通り
そんなに部活にこだわること無いんじゃないかなあ」
紬「えっ」
律「アタシそんなこといったっけ」
唯「昨日、自分たちだけで勝手にやろうとかゆってたじゃん」
律「ゆってたな」
唯「おしゃべりなら教室や誰かの家でも出来るし
楽器の演奏は学校に頼んでたまにやらせてもらえばそれで充分…」
律「あまい!」
ダンッ
と、りっちゃんは机を叩いた。
澪「…ハッ?」
衝撃で澪ちゃんが目を覚ましてヤギと目があって失神した。
面倒くさいので私はヤギの生首を窓から捨てた。
キャアアアアアアッ!?
下から悲鳴が聞こえたが私にはどうしようもない。
はははははは!!!
律「アタシたちの目標は武道館ライブだ!」
律「そんな、たまに練習とかナマっちょろいことで武道館に行けると思うなよ!?」
唯「ほぇ、私たち武道館に行くの〜?」
紬「私、武道館行ったことあるわ」
律「チケット買っていくなんて誰にも出来らぁ!!」
紬「顔パスで」
唯「チケットいらないんだ」
唯「誰にも出来ないことをムギちゃんは既にやり遂げたんだよ、りっちゃん」
律「唯、元気玉の準備だ!」
りっちゃんはネチョネチョと鼻糞をほじり出した。
紬「な、何をする気!?」
律「海よ、空よ、大地よ!!ほんの少しずつでいい…」
律「アタシに元気を分けてくれ!!」
唯「何言ってるの?」
律「早くお前も鼻くそほじってアタシに分けてくれ」
私は人間でいたかったから聞こえなかったふりをした。
唯「ムギちゃんは70点、りっちゃんは65点」
私は友達に点数をつけた。
すると、りっちゃんは悲しそうな顔でほじくり出した鼻くそを鼻の穴に戻し、話も戻した。
律「だから部活を続けるために顧問は必要不可欠なんだ」
唯「でも昨日は顧問なんかもうどうでもいいみたいなこと言ってたのに」
紬「うんうん」
律「なにせアタシは後先考えずになんでも喋るからな」
律「全て勢い、無秩序、無鉄砲、無計画さ!」
清々しい笑顔でりっちゃんは目くそをほじってから目に戻した。
唯「こうなったら職員室の先生全員に片っ端から顧問の件を頼もうよ。
1人くらいはウンと言ってくれるかも」
律「それしかないか。ホラ行くぞ澪」
澪「イクっ…!?」
ぴくんっと変なことを言いながら澪ちゃんが目を覚ました。
澪「あれ…釘バットやヤギは…?」
唯「夢でも見ていたんだよ。ね、ムギちゃん」
紬「うん」
澪「じゃあ昨日、唯が私を肉便器にしたという話も夢だったの?」
唯「もちろんだよ」
澪「そうか…」
これで面倒ごとはだいたい解決した。
—27秒後—
澪「片っ端から声をかけるって?」
澪「でも私、人見知りだから知らない大人と話すの怖いなあ」
律「お前なぁ」
紬「だけど確かに知らない先生に声をかけるまではいいとして
その人がとんだ地雷ヤロウだったら困るわね」
唯「口うるさいとか、指導と称して体に触ってくるとか…そういう地雷也先生もいるかもね」
澪「ひっ」
律「そうは言ってもアタシらが入学してたった1ヶ月、よく知らない先生ばっかだぜ」
澪「あっ、そういえば私、気になってたんだけど…」
紬「裏ビデオって見たことある?」
唯「裏どころか表ビデオも見たことないよ」
律「というか今どきビデオは無いだろ」
澪「ム、ムギは見たことあるのか?」
紬「いいから澪ちゃん、話の続きを」
澪「!?」
律「澪は昔からすぐ話が脱線するからなあ」
澪「唯、唯!今、私、悪くないよな!?」
私は面倒なので無言でにっこり微笑んでおいた。
澪「唯…お前だけが私のオアシスだよ」
唯「えへへぇ〜」
澪ちゃんは気色悪いところもあるけれど
私の知り合いの中では飛び抜けて超絶美少女なので好かれて悪い気はしない。
むしろ完璧な美少女より気色悪い美少女の方がポイントが高い、って隣に住むおばあちゃんも言ってたっけ。
唯「澪ちゃん好き!」
澪「私も!」
律「いいから早く続きを言え」
心無しかりっちゃんがイライラしているのを感じた。
澪「私たちが入学する前、この桜ヶ丘高校には軽音部が存在したんだ」
唯「あっ、そうなの?」
律「そういや言ってたな、そんな話」
澪「その時の顧問の先生、まだ学校にいないかなって考えててさ」
紬「あっ、なるほど。元顧問ならやってもらえる可能性が高いわ」
唯「澪ちゃんあたまいい!」
澪「えへへ」
律「伊達におっぱいデカイんじゃないんだな!」
澪「うるさいよ!」
唯「あっ」
紬「どうしたの唯ちゃん?」
唯「なんでもない」
一瞬、軽音部の頭の良さとおっぱいの大きさは比例するんじゃないか
と思ったが
りっちゃんが生きる希望をなくすと良くないので私の胸のうちにしまった。
おっぱいの話だけに。
—職員室—
澪「失礼します」
律「いや…」
唯「りっちゃん?」
律「失礼スマッシュ!!」
プオッとりっちゃんは職員室に入るなりオナラをした。
失礼にもほどがあるよ、と思ったがおっぱいが小さく脳も小さなりっちゃんには仕方のないことだった。
だけど見れば、りっちゃんのオナラを深呼吸で肺にためこんでいる男性教師たちがいるので
りっちゃんも女子高生として捨てたものじゃないんだなあ、と心底見直した。
唯「やるね、りっちゃん!!」
律「まかせとけって」
掘込「スーハー」
掘込「スーハー」
掘込「スーハー」
掘込「スーハー」
掘込「スー----ハァァァァァァァァァァァァァ…」
さわ子先生が汚物でも見るように男性教師を眺めていて不覚にも興奮した。
さわ子「あら、あなた達、顧問は見つかった?」
澪「その事なんですが…」
紬「以前、この学校に軽音部があったと聞いたのですが
その時の顧問の先生がいらっしゃらららららいかご存知らいれすか?」
さわ子「えっ」
唯「いらっしゃらららい?」
紬「しゃらんらぁ〜」
さわ子「はぁ…」
紬「顧問になったら150万円あげます」
さわ子「私を軽音部の顧問にしてください」
こうして、さわちゃんは軽音部の顧問になったのだった。
—夏休み前—
ミーンミンミンミン…
澪「合宿をします!」
暑さで気がふれた澪ちゃんが全裸で変なことをわめきちらした。
澪「服は着てるだろ!?」
唯「澪ちゃん、ナチュラルに心を読まないでよ」
澪「唯の考えそうなことくらい大体分かるんだよ」
紬「ストーカーだから?」
澪「ああ」
唯「否定してよ!?」
澪「というか、合宿するって言っただけで
変な事わめきちらしたってどういうことなの」
唯「合宿ってどこ行くの?」
澪「質問に答えてくれ」
律「合宿と言えば、やっぱ海か山か沼だろうなぁ〜」
紬「楽しそうね〜」
澪「言っておくけど遊びに行くんじゃないぞな」
澪「集中して練習するための…」
澪「軽音強化合宿だ!!」
紬「あぁ!?」
唯「ほざけ!!」
澪「うぅっ…律ぅ〜;;」
澪ちゃんは飛び上がって泣きながら、りっちゃんのスカートに潜りこんだ。
律「よしよし、かわいいヘタレ野郎が」ナデナデ
唯「まあ練習はするよ。いずれ天下一武道会に出場したいからね」
律「なに言ってんだこのバカ」
紬「唯ちゃん、天下一武道会じゃなくて武道館ライブでしょ?」
唯「あぁ!?」
紬「ハァ!?」
澪「!?」
私とムギちゃんはにらみ合いをして顔を近づけたあと唇と唇をチュッってやった。
澪「わ、わあぁああ!!ウッヒョーwww」
澪「お、お前らキッスを!!柔らかい唇と唇が!!二人はデキてるのか?」
いつもはお堅い澪ちゃんだけど えろいことが大好き!
ちょっと性的なイタズラをしただけでサカリのついた野獣のように興奮して面白いので
私はこの手の遊びをムギちゃんとよくやる。
唯「あはは、こんなの挨拶みたいなものだよねぇ〜ムギちゃん」
紬「私は今ので唯ちゃんの赤ちゃんデキればいいのに…って想いを込めてキスしたわ」
し……ん
私とムギちゃんの温度差に
部室内が静まりかえった。
ムギちゃんは穏やかな微笑を浮かべているものの、
その眼には確固たる意志の炎が揺らめいていた。
めんどくさいなあ…
私は場の空気をうやむやにするため、澪ちゃんの耳に舌を挿入れた。
くちゅ…
澪「ひゃあっ!?」
紬「!?」
唯「ごめんね、ムギちゃん」
なんか夕飯はタコ焼き食べたいなあ…とか思いながら謝罪の言葉を口にする。
紬「…何に対する謝罪なの?」
ムギちゃんはポケットに入っていた沢庵をぐぢゅっと握りつぶす。
え、この人なんでポケットに沢庵入ってたの?
澪「ど、どういうことなんだ…?」
唯「そうだよ、ムギちゃん説明してよ」
紬「説明するのは唯ちゃんでしょ!?」
唯「な、なにが?」
澪「なんでムギという彼女がありながら私の耳に舌を入れたんだ!?」
唯「ム、ムギちゃんは彼女じゃないよ」
紬「じゃあ彼だっていうの!?」
唯「もうそれでいいよ」
律「お前ら…お茶にしようぜ」
静観していたりっちゃんがクールに決めてくれた。
場が荒れた時は紅茶をすすって淀んだ空気を浄化する。
いつしかそれが私たち軽音部のルールになっていた。
さすが軽音部部長、やる時はやるもんだね!
律「ってワケでムギ。私、アイスレモンティーな」
紬「たまには自分で淹れろや」
律「は〜い!」
りっちゃんは珍しく自分で紅茶を沸かし始めた。
余談だが、りっちゃんが家事というかお茶の用意をしてる姿は
オカマみたい。
澪「律、私はミルクティーを頼む」
律「まかせてちょうだい」
紬「私、ダージリンティ」
律「あ?」
唯「わたし、すき焼き」
律「ちょ待てよ」
私はちょっと待った。
律「ミルクティーはいいとしてダージリンティーってなんだ?」
紬「りっちゃん、ダージリンティーを知らないの?」
律「聞いたことはあるが…」
紬「ダージリンティーはインドの紅茶よ」
紬「ウンカという害虫が茶葉をかじることで
かえって香りが強くなる副作用を利用して精製されるわ」
律「ようするに紅茶にウンコを入れて匂いを強くすればいいんだな」
紬「お前が害虫だったのね」
律「あと唯、すきやきってなんだよ」
唯「知らないから食べてみたいんだよ」
律「お前すき焼き喰ったとき、ないのかよ!?」
唯「嘘っぱちに決まってるじゃん。エイプリルフール!」
澪「今7月だけどな」
唯「それ、エイプリルフールと関係あるの?」
し…ん
エイプリルフールってどういう意味だったか忘れた私はバカにされたくないので
精一杯、賢そうにふるまう事にした。
唯「23+18=31」
紬「間違ってるわよ」
唯「それより合宿って、どれくらいお金かかるのかなあ」
律「すごい舵の切り方だぜ」
澪「お前の自由奔放な生き方にはたまに憧れるよ」
唯「私も澪ちゃんの綺麗で長い黒髪に憧れてるよ?」
澪「そ、そう?」エヘヘ
唯「私たちは対等な関係だね!」
澪「いや、それは違う」
私はやんわり見下された。
律「唯が王家七武海級の超絶アホだろうが今さら驚くに値しないが確かに合宿ってどれくらい金かかるかな」
澪「スタジオを借りることも考えると結構なぁ…」
紬「あの…りっちゃん、別荘持ってないよね?」
唯「え?」
律「あるぞー」
唯「えぇ!?」
別荘を持っているかどうかをまず、りっちゃんに聞くことが変だなあと思った矢先、
りっちゃんが別荘持ってると言うので二度とびっくりだ。
澪「お前の家、別荘買うような上流階級だっけ?」
律「まあ気合いでな」
別荘って気合いでどうにかなる話なんだっけ〜、と私は子猫みたいに首をかしげながら
夏休み2泊3日の軽音合宿に行くことになっちゃったのでした!
最終更新:2015年06月20日 08:31