—5分後—
澪ちゃんとムギちゃんは別荘を出て
茂みの奥へと消えていった。
戻ってくる頃には二人は大人の階段をのぼっちゃってるのかなぁ。
まあ、澪ちゃんにその気は無さそうだったけど…
でも近所にいる私と仲良しのノラねこも
とみおばあちゃん家の飼い猫に犯されて妊娠してたし
人生なにが起こるか分からない。
澪ちゃん、無事に帰ってきて…
私は神に祈りたい気持ちになった。
唯「まあ、いいや」
本当はそんなこと、超どーでもよかった私はお腹がすいたので、とにかくお昼ご飯を食べようと思いたったよ。
食べ物は別荘の方で用意するから持って来なくていいという話だったけど
りっちゃんを信用していないワケじゃないけど、りっちゃんを信用してなかった私は
念のためカレーヌードルを持参していたけど
ここはりっちゃんをもう一度だけ信用して別荘内のキッチンに向かった。
唯「何か美味しいものがありますように…アーメン南無阿弥アッラー!!」
私は真剣に神さまにお祈りしました。
—キッチン—
唯「冷蔵庫さんには何が入ってるかなっ」
がぱ
っと冷蔵庫を開けると
パンツが
冷やされていた。
パンツしか
入ってなかった。
唯「冷やした下着を身につけるのが好きって人の話…聞いたことあるけど、りっちゃんもそうなのかなあ」
こうなったからには
私はパンツをすべてヤカンに詰め込んでやった。
これで紅茶を沸かしたらパンティーの完成だね!
唯「ばんざ〜い!ばんざ〜い!ばんざ〜い!」
唯「……」
—2分後—
結局、キッチンにはキュウリしか見当たらなかったので
お湯を沸かしてカップラーメンを食べようと思いヤカンを手にとる。
ヤカンの中には何故か下着が詰まっていた。
唯「えっ……?」
気持ちが悪い…
いったい誰がこんなことを…?
大体どうせなら薄汚いパンツより夢が詰まっていたら良かったのに…。
唯「ふえぇ…こんなヤカンでお湯沸かしたくないよう…」
私は仕方なく寝た。
—?—
キャアアアアアァァッ…!!
唯「!?」
ガバッ
絹を裂くような悲鳴が聞こえて私は飛び起きた。
唯「まあ、いいや」
私は気にしないで寝た。
澪「少しは気にしろ」
唯「ハッ…澪ちゃん。そういえば今、どっかから悲鳴が…」
澪「私が悲鳴をあげたんだよ。だってお前、すごいヨダレ垂らしながら寝てるから…」
唯「あぇ?」ジュル…
見れば私の体は生暖かい液体でどろどろで
床一面ぐちょぐちょの水たまりができていた。
そういえば体に力が入らないし頭もクラクラする。
今なら伝説の餓狼テリー・ボガードの超必殺技パワーゲイザーを放てる気がした。
唯「パワァアッゲィザアァアアア!!!」
澪「なにしてるんだお前」
唯「体力ゲージが点滅したら使える必殺技」
澪「お前、私を殺そうとしたのか!?」
澪「ごち〜ん!」
唯「はぅっ」
澪ちゃんは口で、ごち〜んとか言いながら私を軽く小突く真似をした。
かわいい。
唯「いつか私を生かしておいた事を後悔させてやるよ〜」
澪「それよりお前、そんなに水分出したら生命の危機だぞ」
唯「み、みず…」
澪「みみず食べたいの?」
唯「水だよ!常識で考えてよ!」
澪「ヨダレの垂らし過ぎで死にかけているヤツに常識がどうとか言われたいと思うか?」
唯「思わない」
私はすごい納得した。
—みみず—
唯「ごくごく」
澪「水はうまいか?」
唯「ヨダレの代わりにカルピスを補給したら
カルピスが血管を流れるようにならないかな」
澪「その理論でいくとお前の血管には今までヨダレが流れていたことになるが…」
唯「痛いところをつくね」
唯「あっ、そういえば澪ちゃん、ムギちゃんはどうしたの?」
澪「聞くな」
唯「分かった」
澪「練習しようか」
唯「うん…」
ジャ〜ンジャ〜ン♪
唯「澪ちゃん、ここの楽譜のぎゅい〜んってやり方、弾き方教えて」
澪「お前は相変わらず音楽用語を覚えないんだなぁ」
唯「トレモロとかフラムとか言われてもしっくり来ないもん」
唯「ぎゅい〜んはぎゅい〜んだよ」
澪「そうか」
私は基本、ギター教本を見て地力で練習するしかないけど
澪ちゃんと練習する時は分からない事をなんでも聞けるので
なんとなくこういう時間は好きだった。
なんでも1人で出来る方が良いとは思うけど、私は頼って甘えて、そして誰かに頼られて甘やかして
誰かと支えあう生き方の方が好き。
唯「えへへ」
澪「なんだ突然。気色悪いヤツだなあ」
私はけなされたので澪ちゃんを殺害するためギターを振りあげた。
キャアアアアアアアアアァァァッ…!!
唯澪「!?」
唯「またどっかから絹を裂くような悲鳴が…!!」
澪「ねえ唯、唯。私、失神していいか?」
唯「いいけど、もしも殺人鬼がいたら私は失神した澪ちゃんを囮にして一目散に逃げるよ」
澪「いじわる!」
私たちはギターにベースを武器として握りしめ、別荘内で悲鳴の聞こえた方へ正体を探りに向かった…
ぎし
ぎし
なるべく静かに歩いているつもりでも床板が軋む…
私たちは中から悲鳴が聞こえたらしき部屋のドアを
バアァアァアァンッッ!!
律澪「ぎゃああぁあああ!?」
私たちがドアを開けようとすると中からりっちゃんが飛び出してきて
澪ちゃんと同時に叫びました。
息ぴったり、さすが幼なじみだね!
唯「で、どうしたの?」
律「た、大変だ…」
律「冷蔵庫で冷やしていたパンツが…ヤ、ヤカンの中にワープしてた!!」
唯「えっ!?」
唯「あぁソレ、よく考えたら私が移したんだったや」
律「お前の仕業かよ!?」
バシィンッ!!
りっちゃんはアケビを床に叩きつけた。
律「あ、それ、お前らの昼飯な」
澪「昼飯を叩きつけるなよ」
唯「りっちゃん、今までアケビ探してたの?」
律「ああ。ふもとのうどん屋で釜玉うどん食べた帰り道に
たまたま落ちてたヤツを拾ったんだ」
澪「お前なに1人だけうどん食べてるんだ」
唯「というか、この別荘内に他に食べるもの、用意してないの?」
澪「お前、食事は任せてくれって言ってたよな」
律「だからアケビ用意しただろうが」
唯「用意っていうか、うどん屋さんの帰りにたまたま拾ったみたいなこと言ってたよね」
澪「言ってた」
律「結果良ければ全てよし」
澪「床に叩きつけられて身が飛び出したグチャグチョのアケビをランチサービスで喰わされる結果は
良い結果と言えるのか?」
律「為せばなる!」
澪「何を為すんだよ!?」
律「…ナス」
もう、りっちゃんの瞳には何も映っていなかった。
律「あっ?ナスと言えばムギの姿が見えないが一緒じゃないのか?」
澪「聞くな」
律「分かった」
りっちゃんの耳と鼻から、うどんがぴゅっと超合金ロボットのミサイルみたいに飛んでった〜。
—アンプとかある和室—
ヒマだったので練習を始めようと澪ちゃんが駄々をこね始めた。
律「い、嫌だ」
唯「私たちは絶対に練習しない」
澪「武道館に行くんだろ!?」
律「切符買って電車で行ってこいや」
澪「もともとお前が行こうって言い出したんだろうがっ!?」
律「言ってねーよ!?」
唯「い、いや、言ったよ。練習はしたくないけど、りっちゃんが武道館に行こうと言ったのは確かだよ…」
澪「な!な!」
律「そのりっちゃんはアタシじゃねー」
澪「じゃあお前はどのりっちゃんだと言うのだ」
律「アタシはたぶん3人目だから…」
そう言うとりっちゃんは綾波レイみたいな表情をして「なかよしモグタン!」って謎の単語を叫びましたが
澪ちゃんは無視して喋りだしました。
澪「我々以前にも桜高軽音部があったって、ちょっと前に話してただろ?」
唯「うん」
澪「その時のカセットテープが見つかったんだけど…」
律「なあ。そのうち子供たちはカセットテープの存在を知らなくなるらしいぞ」
唯「えっ、じゃあステカセキングってもう意味不明になっちゃうよね…」
澪「最新のステカセキングはキン肉マンゼブラのカセットもレパートリーに加わって超強いのになぁ…」
律「いいから話を進めろよ」
唯「澪ちゃんはすぐ脱線するんだから」
澪「あ〜あ〜神様っ♪お願いっ♪♪コイツらが早く死にますように…」
澪ちゃんはメロディを奏でながらひどい事をゆった。
かちゃん
澪ちゃんが古いラジカセの再生ボタンを流すと、別荘内に爆音が鳴り響く。
ボンボンボンギュアアアアアア!!!
律「おっ、なんだ!デスメタルか?超うめえ!!」
唯「なにこれ?」
澪「私たち以前の桜高軽音部の演奏だよ」
律「ほへぇ、すっげえな」
澪「まあデスメタルだし怖いし気持ち悪いし個人的には演奏者は早死にすればいいと願ってるけど、とにかくすごかったらしいんだ」
澪「こんな人間のクズどもですらこれだけ上手いんだから、
私たちはコレを上回る演奏をしなきゃ末代までの恥だゾ☆」
澪ちゃんは自分が嫌いなデスメタルを演奏してるというだけで
偉大な先人たちの悪口を言った。
こういうところは澪ちゃんの良くないところだけれど
今後、澪ちゃんが人生でどんな苦労をしようが知ったこっちゃないなあと思ったので
私は「そうだね^ヮ^」って微笑んであげた。
澪「な!な!」
私に同意されて嬉しそうな澪ちゃんが妙に鼻毛に見えた。
鼻毛じゃなくて儚げに見えた。
まあ、どっちでも通じるよね。
唯「とにかくそれで合宿しようなんて言い出したんだね〜」
律「学祭ライブの日も近づいてきたしなぁ」
澪「ああ。だからそろそろ本腰を入れて練習…」
キャアアアアアァァッ!!
澪ちゃんが何かを言いかけたその時、外から絹を裂くような悲鳴が性懲りもなく響き渡った。
澪「おい、もうアレは無視しよう」
律「見に行かなくていいのか?」
澪「よく考えたら、わざわざ怖い目に遭いに行くバカがどこにいる?」
律「よく考えたらそれもそうだな」
唯「二人がよく考えたなら私もそれでいいよ」
よく考えた私たちは悲鳴の主の冥福を祈って話を続ける。
唯「練習するのはいいけど、少年漫画みたいになんか秘密特訓したいよね〜」
澪「軽音部が誰に何故、特訓を秘密にするんだ?」
唯「それは秘密だよ。教えられないよ」
律「まさに秘密特訓だぜ」
澪「バカらしい…まあ少年漫画と言えば、亀仙人や安西先生みたいな名コーチがいたら上達が早くなるだろうとは思うけど」
安西先生はともかく亀仙人は修行をつけてもらえる事を条件にパイパイを摘まませてくれとか言いそうだけど…
律「そういえば亀仙人の亀ってアレだな」
澪「亀がどうしたんだ?」
唯「……?」
かめ…
亀頭…
あっ、ちんぽ○仙人!?
私は天翔龍閃みたいに閃いたが黙っといた。
唯「名コーチならさわ子先生はどうかなあ」
律「そういや顧問になったけど、あんまり部室に来ないよな」
澪「元々、合唱部で忙しいって言ってただろ?」
澪「そんな中、合宿には参加してくれるって話だし、これ以上なにかを要求するのも悪いよ」
律「まあ優雅にピアノを弾く姿は見たことあるけどバンド演奏はまた別物か」
唯「ピアノ系ならキーボードのムギちゃんが教えてもらえるね!」
唯「というかムギちゃんどうなったの?」
澪「いきなりなんだよ」
唯「ごく自然な流れで質問したつもりだったよ」
律「だいたい聞くなって言われても、ずっと気になってるわ」
澪「フン」
唯「え?」
唯「澪ちゃん怒ってるの?」
澪「をしている」
律「あぇ?」
最終更新:2015年06月20日 08:33