カオス、後半暴力表現注意


放課後の桜校。生徒会長真鍋和は、資料整理をしていた。
和「よっこいしょ……」
作業は大詰め。彼女が山積みのファイルを持ち上げると、何かが落ちた。
和「ん……?」

和「これって……」

手に取り確認する。そしてすぐに渋い顔。


和(また出てきた……)


………♪

……♪ ここでOP

…♪

軽音楽部先輩組は、部室へ向かうべく廊下を歩いていた。

唯「んー?」
澪「どうした? 唯」

唯「なんだろ、これ」ひょい
律「消しゴムじゃん」
唯「見てよーほら」

唯が拾った消しゴム。そのホルダーには、澪の写真がプリントされていた。

紬「澪ちゃんだわ。澪ちゃん消しゴムね~」

澪「えええっ!? な、なんで!?」
律「あんとき作ったやつだろー?」

唯「いや違うよ。私達のはただシール貼っただけだもん」

律「…………お、ほんとだ。スゲー良く出来てるなー」

澪「律、ほんとにお前じゃないのか?」
律「アタシこんなことできねーやい」

澪「じゃあ、まさか……ムギ?」
紬「ううん、私じゃないわ」

澪「そうだよな……」チラ
唯「ん?」
澪「…………」クル

唯「え~!? 私にも訊いてよ~!」


………♪

……♪ ここでタイトル

…♪

澪「変なことは忘れて、お茶にしよう」


唯「今日のお菓子はなーにかなっ」

紬「今日はァア、チョコレート尽くしで~す♪」

律「うほー、よりどりみどりだなー」
梓「食べましょう食べましょう!」

唯「あ~、ポッキーもある~」
律「おいおい、ポッキーと言ったらアレだろ」
澪「アレ?」
梓「なんですか?」ムシャアアァ

律「ポッキーゲームだ!」
紬「まあ!!!!!!!!!!!」

唯「おー! やろうやろう!」
澪「ナッぱッ、何言ってるんだ! そんなの……」

律「だっさなーきゃまーけよ! ジャーンケーン

唯紬「ポン!」 梓「もう……」ポン 澪「だ、だからやらないって…………え?」

律「澪の負けエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!」チョキ

澪「ちょっ……!」

唯「あれ~? 私も負けたよ」パー

梓「あ、それじゃあ……」チョキ

紬「やるのは唯ちゃんと澪ちゃんね!!!!!!!!!!!!!」チョキ

唯「よーし! 負けないよ澪ちゃんっ!」
澪「いや、だから……っていうか勝ち負けとかあるの!?」

律「潔くやれー! 男らしくねーなー!」

唯「澪ちゃん、私とやるの嫌ー?」
澪「い、嫌じゃないよ…………ただっ……」

唯「…………」じぃー

澪「はあ……ま、いいか…………」

唯「そいじゃー何味にするー?」
澪「イチゴ味……かな」

梓「あんまり抵抗しませんでたね」
律「いいかげん無駄だと察したな」

紬「は、早く早くっ」ムギュギュ

唯「ほいやー いふよー」
澪「う、うん」

律「ファイッ!!!」
梓「」カァン

唯「むぐぐぐ」カリカリカリ
澪「む、むー」カリカリ

梓「け、結構早いですね……」ドキドキ
紬「YESッ! そこよ~! いけいけぇ~!」グッ

澪(これ以上はまずいよな……キ、キスしちゃうぞ……唯と……)
唯「ん~~~♪」ポリポリ

律「うおおおーっ!」
梓「…………」ゴクリ
紬「いっけ~~~!」ガタッ

——ドガァアン!!!!!

唯「ほっ!?」 澪「ひ!?」

律「ポッキー落ちたぞ、おい」
紬「いいところだったのにぃ……」ズーン

梓「だ、誰ですか!?」

激しい音を立てて開いたドア。振り返ると、そこには床に倒れた学生が二人。
すぐ後ろには、その二人を心配そうに眺める真鍋和が。

唯「和ちゃーん」
澪「な、なんか……奥にもたくさん人が……?」

階段から踊り場にかけての狭い通路に、十数人以上が押し寄せていた。
その圧倒感に、澪はたじろぐ。

律「どしたー? てか大丈夫かーその子達」

和「それが……」

「別に怪しい者ではございません!」
「私達、澪先輩ファンクラブの者です!」

威勢良く立ち上がって勝手に自己紹介をかましてきたのは、緑リボンの一年生。
二人とも軽音楽部とは初対面である。

唯「お〜、繁盛してるねファンクラブ~」
律「流石になくなったと思ってたけどなー」
澪「願わくばそうあって欲しかった……」ズーン

澪(でも、曽我部先輩の意志を継いで、こうしてやってきているんだから……ムゲにできない……)


「あれが澪先輩よ……」「初めて見た~」「あの中で一番輝いてるよね」「素敵~」「なんで今まで気づかなかったんだろ〜」「でもいつも軽音部で可哀想な目にばかりあってるんだって……」「なんで軽音部にいるんだろ?」「さっきヤバかったよね……」「うん、ほんとそれ」


梓(なんか、ただならぬ空気って感じ……)

紬「……ひょっとして、後ろにいる生徒は、みんなファンクラブ?」
和「そうね。なんか、私について来たみたい」
澪「和ぁ~……」

唯「すんごいね! 有名人だよ澪ちゃん!」
律「こーまで有名になったら、有名税ってやつを払わなきゃな!」
梓「澪先輩は滞納者ですね」
澪「お茶会じゃ足りなかったか……」トホホ


純「えへへ……澪先輩!」ひょっこり


梓「じゅッ、純!? なんであんたがここに!?」

和「鈴木さんは、秋山澪ファンクラブの第一幹部よ」

梓「ゲェーッ!?」ドヒャー

純「次期会長候補でもあるよ!」ドヤ顔ダブルピース

紬「幹部! なんだかかっこいい!」ホワー
澪「どこまで増えてるんだ〜……」
唯「なまずのぼりだね!」
律「うなぎだうなぎ」


和「貴方達、あんまり澪や軽音部に迷惑がかからないようにね?」

ファンクラブ共「はーい」

律「んで、和はどうしたんだ?」

和「どうしたもこうしたも、あんた達この前のライブで、ステージの控え室を散らかしたままでしょ。ペットボトルとか」

唯「あ~……そういえば?」
梓「ラ、ライブが終わったからって、フヌケ過ぎた……!」
律「えー、機材とかはちゃんと片付けたんだしそれくらいオマケしてくれよー」
澪「そんなオマケはないっ。 ……ごめん和。すぐ片付けにいくよ」

和「うん。私も一緒に行くから、とっとと終わらせましょ」

律「おーっし! 軽音部出動だー!」
唯紬「おー!」

………♪

……♪

…♪

過去を清算しに、講堂へ進む軽音楽部御一行。
だが思いも寄らぬ苦難が彼女達に降りかかる。

「きゃー! 澪先輩ー!」
「こっち向いて~! 澪先輩ー!」

「あっちに澪先輩いるって!」「マジ!? いこいこー!」

「MIO様~!!!」
「MIOだー! わー!」「MIO様サインして~!」
「キェェァアアァァァァァァ! アぁぁぁぁあああああ!!!」
「HHT~~~っ!!!」

律「うおー! どけどけー! 放課後ティータイムのお通りじゃー!」
唯「なんか大スターって感じだね~♪」
紬「うん♪ 澪ちゃんすごい!」
MIO「うわああああああ! オあああああ
ああ!!!」
梓「いたあい!! や、やるかこいつッ! ……ギュッ!? せ、センパーイ! 助けてくださーい!」

和「これほとんどファンクラブ……? どうなってんの一体……」

講堂についてからも、御一行はまとわりつくファンクラブに作業を阻まれ続けた。
とめどなく続く怒涛に、流石の軽音部も辟易する。

唯「うぐあああっ……なんかギボヂ悪い……」
律「オイ、おいおいおいおいおいおい! やめろぉっ! アタシに向くんじゃねー!」
澪「いたぁっ! 髪を引っ張らないで! やめてってば!」
梓「み、澪先輩になにするんですか! 離れてくださっ……ウンギャアァァァァァァァ!!!」

和「どんどん増えてくるわね……早いとこ用を済ませて戻りましょ」

結局、予定より大分時間をかけて、舞台袖の片付けを終わらせたのであった。
軽音部御一行は満身創痍。閉め切った部室で安息のティータイムを過ごす。

澪「はあ……ヒドイ目に遭った……」
唯「私足踏まれたよ」
律「アタシなんかボタン取れたぞ」
梓「髪がほどけました……」
紬「私は……無事でした!」ムキッ

和「ごめん……私がファンクラブをしっかりまとめてなかったばっかりに……」

澪「和が謝ることないよ」
唯「そうだよ〜。それにファンクラブがあんなにすごいなんて誰も想像つかないよ〜」
梓「でも、それはそれで不思議じゃないですか? 今までこんなことなかったのに、いきなり……?」
律「多分ライブが原因だな。ここに来て再び人気爆発ってところかー」

和「……この前のお茶会で役目を果たしたつもりでいたけど、そんなことなかったね。私、ファンクラブを集めて注意するわ」ガタ

真鍋和は席を立つ。その眉間には、僅かにシワが寄っている。
自分の不甲斐なさとファンクラブの無礼に、いささか憤りを感じているようだ。

澪「あ……ま、待って和っ」

和「え?」

澪「その……ファンクラブは、曽我部先輩の意志でもあるし。きっと、ファンクラブの人達に悪気はないだろうから……恥ずかしいけど、私、我慢するよ」

和「そう……?」

律「ッおいおい澪。このままでいいってのかよ」
澪「多分、すぐに落ち着くと思うから……」

唯「澪ちゃんもお人好しだね〜」
梓「良すぎです! 同じことがまた起こるかもしれないんですよ!?」
澪「部室にこもってれば大丈夫だよ。今日は、早い時間に出歩いちゃったから……」
紬「澪ちゃん……」

和「……澪がそういうなら、今回はやめとくわ。でも何かあったらすぐに教えてね」

澪「うん。色々ありがとう和」

和「ええ。 じゃあ私、生徒会行くね」

唯「ばいばーい」

——ガチャンッ

律澪紬唯梓「…………」

律「はあ、なんか疲れたなー」
唯「勉強する気なくなっちゃった〜」
澪「私も……。今日はお菓子食べて帰ろ……」グデー
唯「わお、珍しぃー」
紬「それじゃ、お茶いれるね」ガタ

梓(ポッキーゲーム、続きやらないのかなあ……)

………♡

……♡

…♡

その夜……平沢家

唯「憂〜」

憂「どうしたの?」

唯「今日ね〜? 澪ちゃんのファンクラブがすんごい来てね? すんごかったんだよぉ」

憂「へえ〜!!! あ、そういえば、純ちゃんも澪さんファンクラブに入ってるって聞いたよ」

唯「うん、すごい人気だよね〜」ゴロン

憂「お姉ちゃんや他の皆さんには、ファンクラブないの?」

唯「ないよ〜。私澪ちゃんみたいに美人さんじゃないし〜」

憂「そうかなぁ……」

唯「うーん……他のみんなかぁ〜……。でもやっぱ澪ちゃんだよ。ファンクラブは澪ちゃんなんだよ」

憂「すごいね〜」

唯「おかげで今日はティータイムも半分だったし……。 物足りないよ〜」ゴロゴロ

憂「…………あっ、そうだ」

憂はテーブルに置いてある雑誌を取り、あるページを開いて唯に見せる。

唯「んー? なあにこれ?」

憂「ここ、最近開いた新しい喫茶店! 美味しそうなケーキとか沢山あるみたいだから、行ってきたら?」

唯「お〜! これは興味深い!」ガバッ

………♪

……♪

…♪

次の日……教室

唯「おはよ〜」ガラリッチ

澪「おはよ……」

唯「……澪ちゃん?」


澪「……」そわそわ


唯「…………」ホゲー

律「澪のやつ、今朝からずっとああなんだよ」ささっ
紬「見て見てっ? 廊下に、澪ちゃんのこと見てる生徒……。あれきっとファンクラブじゃない?」
唯「……ほんとだ」
律「気にすんな……つっても無理だろうなー澪には」

澪「…………」

………♪

……♪

…♪

放課後……教室

唯「和ちゃん、今日一日澪ちゃんといて、ファンクラブを見ない時の方が少なかったよ」
和「教室にも来てたもんね」
唯「モテる女はツライねぇ……」
和「そうね」



澪「なんか、はなししてる……」
律「先行こーぜ」
紬「お茶の準備しときましょう」

律「唯ー、先行ってるからなー」


唯「あ、うーん!」

和「行かなくていいの?」
唯「お茶の準備できるまで。 ……それでね? 私はやっぱり、ファンクラブは前みたいにささやかにやってる方がいいと思うんだ〜」
和「そうね。今日の澪を見てたら、どうにかしないとって思えてきたわ」
唯「いくら澪ちゃんがいいって言ってても、あの様子じゃ心配だよ」

和「そうねぇ……」

和「やっぱり、何かしら行動を起こしておいた方が良さそうね」
唯「私協力するよ! 和ちゃん!」

和「あんた、勉強は?」
唯「もう少しだけ〜」

和「ま、いいけど……」

二人は廊下に出て、二年生の教室へ向かって歩き出す。

唯「どこいくの?」
和「とりあえずファンクラブの情報を集めに、幹部の鈴木さんとこへ」
唯「ほ〜なるほど〜」

……廊下

純「あ、真鍋先輩」ばったり
梓「あ……」

和「あら」
唯「あー」

…………♪

………♪

……♪

部室

既にティータイムの準備は終わり、律澪紬の三人は先に寛いでいた。
そこへ、今日一日塞ぎがちだった澪が口を開く。

澪「ねえ……今日勉強終わった後、時間ある?」

律「ちょっとなら大丈夫だけど?」
紬「私も大丈夫よ。どうしたの?」

澪「あの……相談したいことがあるんだ」

律「みんなが集まったらでいいじゃん」

澪「勉強の邪魔になっちゃ悪いし、終わりの方で話そうと思うんだ……」

律「気になって集中出来ないのはアタシだけだろうか……」

紬「話って、ファンクラブのこと?」

澪「…………多分」

律「多分?」


——ガチャッ!

唯「ほーいお待たせ〜」
梓「どーも、お邪魔しまス……」

律「遅いぞー唯ー」

唯「ごめんごめん。途中であずにゃんと会ったから捕まえてきたよ〜」

梓「スミません毎回毎回」

紬「いいのよ〜♪ 梓ちゃん何飲む?」

梓「あ、バナナケーキ、お願いします」


唯「それでね〜、みんなにお知らせ!」


唯は得意げに雑誌を広げてみせた。三人は開かれた面を覗き込む。
それは新オープンの喫茶店広告だった。

律「おおー、ここって新オープンの?」
紬「綺麗なパフェね〜♪」
澪「ほんとだ、美味しそう……」

唯「今日帰りに行こうよ! あずにゃんも行くもんねー♪」ナデナデ
梓「は、はいっ」

唯「澪ちゃん見て! このケーキとかすんごく美味しそうだよ!? ほらこれとか!」
澪「唯……」

唯「ね!? 行こうよ!」

律「HAHAA、良いなー。そんじゃー早めに切り上げてそこ行くか!」
紬「行こう行こう!」

律「澪、話すのはそこでもいいだろ?」ボソッ
澪「う、うんっ。 ……私も行きたいっ」

律「決っまりぃ〜!」

………♪

……♪

…♪

……その店

ソファーに腰を落ち着かせ、豪華なケーキやパフェに舌鼓を打つ軽音部御一行。
何気ない会話は盛り上がり、澪にも普段の表情が戻る。

律「みーおっ、話はいいのかー?」
澪「えっ? あ、ああ……」

唯「話? なになにー?」

澪「えっと……な、なんか、せっかく盛り上がってたのに、こんな話しちゃうのもなんだけど……」

紬「いいのよ澪ちゃん。なんでも言ってみて? 私達相談に乗るから」
梓「どうぞです、澪先輩!!!」

………♪

………♪

………♪


律「"誰かにつけられてる気がする"、かぁ……」


唯「今回は重いよその言葉!」

澪「わ、私、どうしたら……」サメザメ

梓「心配しないでください澪先輩! 先輩に取り付く輩は、私が排除してみせます! 私がいないときは、律先輩やムギ先輩だっています!」
唯「あずにゃん……私もいるよ……?」

梓「唯先輩は、逆にやられちゃいそうなので除外しました。私の目の届く範囲にいてください」
唯「えぁ〜……」ヨヨヨ

律「……ふむ、どうやら軽音部防御網を張る時が来たようだな」

紬「防衛網?」

律「これからしばらくの間は、澪が一人になるのを防ぐ。必ず誰かがそばについてるようにするんだよ」
唯「ガードマンだね〜」

律「それでいいかー澪」
澪「う、うんっ……」

紬「みんなで澪ちゃんを守りましょう!!!」ふんす
唯「よーし私頑張るよ!」
梓「私も、行ける時はいつでも応援に向かいます!」

澪「みんなぁ……」うるうる

律「なにかあったらすぐに部長のアタシに報告! 分かったか!」
唯紬「イエッサー!」

律「んじゃあアタシ、今日家のご飯作んなきゃいけねーしそろそろ帰るわ」ガタッ

澪「!?」

梓「どうりで手早く済んだと思った……」

唯「えー!? 防衛網はー!?」
律「お前らがいるだろー?」
紬「でもりっちゃん、ここからだと帰る途中で澪ちゃん一人になっちゃうわ」

律「…………ぁそうか」

澪「り、律が行くなら私も行くぅう!」ムシャムシャムシャアァァ

律「わりーナ」

唯「気にしなくていいよ〜。いきなり誘っちゃったもんね〜」
紬「澪ちゃんをお願いねりっちゃん」
梓「言い出しっぺなんですから、しっかり守らなきゃダメですよ」

律「当たり前だろ〜? んじゃ行くぞー」
澪「うップ、グゲ……じャあ……また明日ギっ……」ドダダ

律澪二人はお金を置いて、早々と店を去っていった。
残された三人はスイーツとおしゃべりを楽しみ、のち一時間ほど過ごしてから店を出た。

………♪

……♪

…♪

……律澪の帰路

澪「…………」キョロキョロ キョロキョロ

律「そーんなキョドらなくても……」

澪「でもっ、いつどこで視られてるか分からないだろ!?」

律「流石に大げさすぎ」

澪「だ、だあって……!」

律「コッソリつけ回すよーな性根のヤローには、なにもできやしねーって!」

澪「そう…………?」

律「だー! 心配すんな! アタシがいるだろっ?」バン
澪「り、律っ……」じいん

改めて感じる親友の頼もしさ。そのはにかむ横顔を見て、澪は思わず潤む。

澪「そうだな……いつまでもビクビクしていられないっ……」

律の叱咤のおかげで少しは前向きになったのか、澪は縮こまっていた体を直し、進路をまっすぐに見つめる——

——その途中の曲がり角に、澪のことをまっすぐに見つめる学生がいた。

澪「!?」

次の瞬間には引っ込んで見えなくなったが、澪と確かに目が合った。

律「どしたー?」

澪「りりりりrrrrr律律律うぅうううぅぅ……! いたいたいたあぁあ…………」

律「え……マジで?」

澪「マジ……。あそこの角のとこ……!」

律「お、おーし、気付いてないふりしてろ」

澪「う、うんっ」

二人は歩みを続ける。

律は、本当にファンクラブがいたならば、その場で少し叱ってやるつもりでいた。
先ほどは大げさなどと言ったが、ここ最近の澪のやつれようは、もはや笑い飛ばせるものではなかったのだ。

緊張に顔を強張らせる律と、不安で再び縮こまる澪。
やがて二人は曲がり角に差し掛かる……。


律「よく見てろよ」
澪「……」ゴクリ


澪は、誰かが隠れたと思しきその道を、薄目で恐る恐る確認する。

学生「…………」ギロリ

案の定、いた。
電柱の陰に二人を睨みつける学生が。

澪「ふうううううううう!?」

律(い、いやがった……!)



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最終更新:2017年03月15日 08:10