周囲の熱狂を掻き消さない程度の声が5人の間で響くその時……Poppin'Partyの歌が終わり、遂にその時が訪れる。
香澄「――ありがとうございました!! この次もよろしくお願いします!!」
唯「みんな……いよいよだね……!」
律「ああ、ここにいる誰にも負けない、最高の演奏を見せてやるぜ!!」
澪「私達でやるんだ……私達の手で……!」
紬「私もこの時をずっと待ってたわ……みんな、楽しんで行こうね♪」
梓「はい……行きましょう!」
唯の声に全員の声が重なり、香澄達の撤収が始まる。
放課後の再来は、もう目前にまで迫っていた――。
―――
――
―
――フッ
香澄「あれ……照明消えちゃったよ? どうしたんだろ?」
突如会場が暗転し、微かなざわめきが観客席に広がり始める。
その沈黙を縫うように、まりなの声がスピーカーから響き渡り……。
まりな「皆さんお待たせしました! ここで本日のスペシャルゲストの登場です!! どうぞ!!!」
まりなの声を合図に、唯達5人は暗闇の中で上着を脱ぎ捨て、颯爽とステージ上に踊り出た。
そして、暗転から一変。眩いばかりのライトがステージを照らし出す。
そこには、光り輝くTシャツを身に纏い、楽器を構える唯達の姿があった。
――放課後が始まる。
10年という長い月日を経て、彼女達の、一日限りの放課後が今、始まる――。
―――
――
―
HTT一同「………………」
静かにステージ上に佇む唯達の姿に、香澄達は思わず息を呑み込んでいた。
香澄「……………えっっ?」
蘭「う、嘘……………今日のゲストって……」
彩「……律……さん………??」
友希那「…………梓……さん………」
唯達の姿を見た香澄達の間に沈黙が走る。
予想外の人物のいきなりの登場に頭の整理が追いつかず、香澄達の間に動揺が駆け巡り、彼女達を知る全員が言葉を失っていたのだが……。
そんな香澄達の沈黙をよそに、こころだけはステージに向け、嬉々とした表情で声を上げていた。
こころ「…………!!! すごいわ!! つむぎーー!! 紬が演奏するのねっ!!」
こころ「がんばって!!!! つむぎーーー!! 応援してるわね~~~~っっ!!」
あらん限りの声量でこころはステージに向かい、声援を送り続ける。
その声に応えるように、律がスティックを掲げ、放課後の演奏が開始された――。
律「ワンツスリーフォーワンツースリーフォー!」
特に自己紹介もないまま、突如としてその曲は奏でられた。
それは言葉による自己紹介ではなく、演奏による自己紹介と言っても過言ではない。
あえて最初の挨拶はせず、一気にハイテンションの演奏を見せつける事で急激に観衆の心に飛び込んでいく。
そんな律の目論見は見事にハマり、息もつかぬ程に奏でられる音は無条件にフロア全体の注目を浴び、放課後の存在を瞬く間に知らしめていくのだった。
声「うわ、いきなり凄い演奏……! 誰? あの人達?」
声「私達よりも年上っぽいけど、ねえ知ってる?」
声「ううん……でも、かっこいいなぁ~! リフも正確だし、あの人達、とってもライブ慣れしてるって感じがするね!」
声「ベース弾いてるあの女の人……かっこいいなぁ~」
声「でも、この人たち、どっかで見たことあるような気が……」
声「あー! 私あのギターの人知ってる! 前にジャズのライブやってた人だよ!」
声「えっ!? じゃあ、もしかしてプロの人なの?」
声「えー! 誰々?? 有名人???」
まりな(唯ちゃん達、凄いよ……初めて見る人も多いはずなのに、お客さん達みんなが放課後ティータイムに注目してる……!)
ステージの上で奏でられる歌と音は着実に観衆の心を昂らせ、既に全身で演奏に乗る人も現れだす程だった。
そして、放課後の演奏に聴き入る観客のその姿を見たこころ達もまた、相次いで紬達への感想を口にしていた。
はぐみ「ねえねえみーくん! 凄いよ! ムギちゃん先輩が演奏してるよっ!」
美咲「お客さん達もあんなに乗ってる……まさか……今日のゲストが紬さん達だったなんて……!」
花音「うん……私もびっくりして腰抜かしちゃうところだった……」
薫「フフフ……さすが紬さんだ……! あああ、私も心の高鳴りが抑えられない……儚い……なんて儚い演奏なんだろう……!!」
こころ「すごいわぁ……さすが紬ね♪ 放課後ティータイムーーー! さいこーよーー!!」
美咲「放課後ティータイム……ああああっ、思い出した……!!」
花音「み、美咲ちゃん?」
美咲「花音さん、前にこころの家にあったCDをアレンジしてみんなで歌った事あったの覚えてます?」
花音「そういえば……あったね、覚えてるよ」
はぐみ「あー! それって、今ムギちゃん先輩が演奏してるこの歌だったよね?」
美咲「うん、そのCDにはっきりと書かれてましたよ、『放課後ティータイム』ってタイトルが……でも、まさかそれが紬さん達の歌だったなんて……いくら何でも世間狭すぎでしょ……!」
はぐみ「すごい偶然だね……でもはぐみ、とっても嬉しいよ! はぐみ達、ムギちゃん先輩達と一緒だったんだね♪」
こころ「そうね♪ 凄いわ、凄いわ♪ 私達、音楽で紬達と繋がっていたのね♪」
薫「これこそまさに運命だね……ああっ、なんて儚いんだろう……!」
美咲「運命……ね。薫さんの言ってることも、さすがに今回ばかりは的を得てるって感じがするよ」
美咲「紬さん、頑張って下さい……! 私達、最後まで聴いてますから……!」
柄にもなく、美咲は声を上げる。
その声に応じるように、ステージ上の演奏はより一層の熱を増していき、フロアは更に盛り上がりを見せていくのであった。
憂「おねーちゃーん! かっこいいよーー!!」
純「懐かしいな……すっごく懐かしいよ、この感じ!!」
直「ええ……みんな、凄く生き生きしてる……!」
菫「お姉ちゃん! みんな! がんばれーー!!!」
和「唯……みんな、凄いじゃない……!」
さわ子「さっすがー、やるじゃないのあの子達♪ ……ほんと、よくやったわね……凄いわよ、みんな!!」
香澄「唯さんだ……唯さんが、歌ってる……!」
有咲「驚いたな……まさか、スペシャルゲストが唯さんたちだったなんて……」
香澄「有咲!! 前に行こう!! 前で、唯さん達の演奏、聴きに行こう!!」
有咲「ああ……! 香澄、行くぞ!!」
有咲の手を引き、香澄達は強引にステージの前へと繰り出す。
そこには既に蘭に彩、こころや友希那達の姿もあり、多くの演者が観客に混じって放課後の演奏を聴いているのが見えていた。
そしてしばらく、絶好調で始められた放課後の1曲目の演奏が終わりを迎え、唯のMCが始まる。
唯「みなさんこんにちわ!! 私達が、放課後ティータイムでーす!!!」
―――ワアアアアアアアアアア!!!!
唯の声に会場全体からは割れんばかりの喝采が巻き起こる。
開始からハイテンポな曲を最高潮のテンションで歌いきった事もそうだが、それ以上に、唯達のその高い演奏力と歌唱力がスペシャルゲストとして観客の期待に応えていたのが何よりも大きい要因だった。
フロア全体から期待と歓喜に溢れた称賛が唯達に送られる。それは突如姿を見せた唯達を、放課後ティータイムの存在を初見の観衆全員が受け入れた事実に他ならなかった。
唯「いきなりの演奏でみんなびっくりしたと思うけど、でも、こうした方がいいと思ったので、思いっきり演奏してみました。みんな、どうだったかな?」
香澄「唯さーん!! 素晴らしい歌でしたーー!!」
声「うんうん! サイコー! もっと聴かせてー!!」
唯「あははっ、みんなありがとー♪ でもせっかくだし、ここでメンバー紹介するね♪ まずはベースの、
秋山澪ちゃん!」
――♪ ~~~~♪ ~~♪
唯に振られ、自己紹介とともに澪の指がクールなベース音を奏でる。
澪「皆さんどうも! ここにいるみんなに負けないよう、私達も頑張るので……よかったら是非聴いてってくださーい!」
唯「澪ちゃんは私達のお姉さん的な感じで、練習の時はしっかりみんなを纏めてくれてました♪」
澪「ボーカルがもっと真面目に練習にしてくれてたら、私ももっと楽できたんだけどなぁ~」
――あはははっ!
唯「えへへへ……じゃあ次は、我らがリーダー、
田井中律ちゃん!」
――タカタンッ! タタタタッ! ドコドコドコドコ――ジャンッ!!
次いで律が器用にドラム捌きを披露し、最大音量の声で会場に向けて叫ぶ。
律「みんなーーー!! 今日はよろしくなーーーーっっ!!」
唯「りっちゃんは私達のリーダーで、みんなが困ってる時、すぐに助けてくれたり、支えてくれたりしてました♪」
唯「すっごく頼りがいのある子なんだけど、結構女の子っぽい所もありまして、なんと……!」
律「おーい! 知り合いがいんだからそれ以上言うなっ! 次行け次ー!」
唯「ふふふっ……はーい! そしてキーボード担当の、
琴吹紬ちゃん!!」
~~~♪ ――――♪
紬「みんな~、盛り上がってるかしらー?」
唯「ムギちゃんはいつも練習の時にお茶とお菓子を持ってきてくれて、後輩の菫ちゃんも練習のお手伝いにも来てくれてました、ムギちゃん、菫ちゃん、本当にありがとうーっ!」
紬「こちらこそ、どういたしましてー♪」
菫「ふふふっ……唯先輩ったら……♪」
――♪ ―――――♪
梓「皆さんはじめまして! 今日は楽しんでって下さーい!」
唯「あずにゃんは、なんとご両親と一緒にプロのジャズバンドを組んでるんです。もし良かったら、みんなも是非聴きに行ってくださーい♪」
梓「もー、ここで無理に宣伝してくれなくてもいいんですよー!」
声「梓さーん! 今度ライブ行くから、よろしくねー!」
梓「あ、ありがとうございまふっ! あっ……!」
――あはははっ おもしろーい!
――可愛いよー! 梓さーん!
観客の声援に思わず噛んだ梓に笑い声が飛び、そして最後に、唯の自己紹介が始められる。
――♪ ――♪ ――♪
唯「私達は、高校生の頃、軽音部で『放課後ティータイム』っていうバンドを組んでました!」
唯「大学を卒業してからみんな一度は離れ離れになっちゃったんだけど、でも先週あった同窓会でみんなで再会して……それで、ガールズバンドパーティーで演奏する事をきっかけに再結成したんです!」
唯「再結成のきっかけを作ってくれたまりなちゃん! 本当にありがとうーー!!」
突如、フロアの隅でステージを眺めるまりなに向けてスポットライトが当てられる。
いきなりの振りに照れながらもまりなは手を降り、その声に返していた。
まりな「私の方こそありがとう!! 放課後ティータイム! 最高だよーー!!」
唯「えへへっ♪ いやーしかし、みんな若いよねぇー、なんていうか……女子高生パワー恐るべし! だよねえ~」
律「あんまそーいうこと言うな! ただでさえこっちはここにいる全員と歳の差感じてんだぞ!!」
唯「でも、10年前は私達もみんなと同じだったんだよねぇ~♪」
律「だーかーら!! 歳がバレるような事言うなーーーっっ!!」
――あははははっっ!
蘭「凄い……ちゃんと会場の笑いも取れて、MCもしっかりこなしてる……これが、澪さんのバンド……!」
香澄「ふふっ……唯さん達、私達の10個も上だったんだね……全然見えなかったなぁ」
彩「……律さん……みんな、かっこいい……! 私も、あんな大人になれるといいな……」
友希那「さっきの演奏……梓さん達が全身全霊を賭けて自分達の音楽に向き合っているのがよく伝わって来たわ……」
こころ「うふふっ♪ 次の曲も楽しみよっ♪ 紬達、次はどんな歌を歌ってくれるのかしら♪」
唯「じゃあ、次は澪ちゃんのボーカルで行くね! 曲名は……『Don't say "lazy"』!!」
澪「Please don't say "You are lazy" だって本当はcrazy――!」
澪の歌声に乗せ、二度放課後の旋律が奏でられる。
先程の唯とは対象的に鈴のように凛とした美声が会場中に響き、多くの観客の心を魅了していく――。
そのクールな歌声はAfterglow全員の心を撃ち、初めて聴く澪の歌声に、誰もが酔いしれて行くのであった。
巴「やっば、澪さんすげえ歌上手い……!」
ひまり「うん……! 歌いながらあんなにベース弾きこなすなんて……か、かっこいい……! 凄くかっこいい……!!」
蘭「あれ、この曲って確か……」
モカ「うん、あたし達も一回演奏した事あったよねー」
つぐみ「確か、ひまりちゃんのお母さんに借りたCDに入ってたんだよね、この歌」
モカ「そうそう、ってことは、ひーちゃんのお母さん、澪さん達のこと知ってたのかな?」
蘭「それは分からないけど………そっか……あたし達、ちゃんと澪さんと通じてたんだ……」
ひまり「私、もう抑えきれないよ!! 澪さあああん!! ステキーーー!!!」
巴「放課後ティータイムーー! いいぞーーーー!!!!」
蘭「ふふっ……みんな、凄く盛り上がってるね」
モカ「蘭も、ちゃんと耳に残しておこーね、あたし達の先輩……になるのかな? あの人達の歌と音を……さ」
蘭「うん、そうだね……!」
蘭(澪さん……私達も、負けませんから……!)
微笑みながら、蘭の瞳は一心に歌い続ける澪の姿を見つめていた。
対抗心とも、競争意識とも違う感情が蘭の胸中で渦を巻く。
それは、音楽を奏でるバンドマンとしての尊敬とも言える感情であり……人一倍高いプライドを持つ蘭が澪に対し、憧れの念を抱いた瞬間でもあった。
澪「皆さん、ありがとうございました!!!」
――ワアアアァァアァァァァ!!!
2曲目の演奏が終わったと同時、二度歓声が沸き起こる。
その称賛の声を唯達は一身に受け、続く3曲目の演奏が始められた。
唯「次は私と澪ちゃんの2人で歌います、『ふわふわ時間』、聴いて下さい!」
続いて奏でられる3曲目の歌。
その聴き覚えのあるイントロに誰よりも強い反応を示したのは、他ならぬPastel*Palettesの5人であった。
彩「この歌は……!」
イヴ「はい……! リツさんが私達に教えてくれた歌ですっ!」
千聖「そっか……律さん……私達の事を信じてくれて、自分達の歌を……私達に託してくれていたのね……!」
日菜「私さ、この曲を初めて聴いた時、なんとなくだけどそんな気がしてたんだ……これ、律さんが叩いてるんだって、そんな気が……ね」
麻弥「やっぱりこの曲、律さん達の曲だったんですね……ジブン……っ……ぃ、今になって感動してます……っ…ッ!」
彩「ぅぅ……私、な、泣きそう……っっ」
麻弥「彩さん…じ………ジブンもです……うぅっ……!」
日菜「ふふふふっ♪ 私、今すごい、ルルルルルン♪ってなってる! 私この曲、ふわふわ時間が大好きっ!!!」
イヴ「はい、私もですっ♪ リツさんの歌だって知って私、この歌のこと、もっと……もっと好きになりました!」
日菜「ねえ、彩ちゃん! 麻弥ちゃん! 泣いてる場合じゃないよ! 私達も歌おう! 律さん達の歌を……律さん達の輝きを!」
千聖「ええ! 日菜ちゃんの言う通りね……今は泣くのを我慢して……私達も見届けましょう!」
彩「えへへへ……っ……日菜ちゃん、千聖ちゃん……うん、そう……だね!」
麻弥「……はいっ! 律さーーん!! かっこいいです!!! ステキです!! 最高ですよぉーー!!!!」
パスパレの5人は互いに手を取り合い、重ねるように絶賛の声を送り、その歌を口ずさむ。
目元から溢れそうになる涙を懸命に抑えつつ……彼女達は、ステージ上でドラムを打ち鳴らす律の勇姿をその眼に焼き付けていた。
律(彩ちゃん……麻弥ちゃん……みんな見ててくれ!!! これが、私達の……! 私達の輝きだ……!!)
そんな彩達の姿が視界に入り、律のドラムは自身のテンションに合わせ、更に加速していく。
額から滝のように流れる汗すら拭わず、眼前の2人の歌声に合わせ、一心不乱に律はドラムを叩き続けていた。
澪(ちょっと待て律、いくらなんでも走りすぎだ!)
律(悪い!! でも、このままやらせて! ……私今、すっげえ楽しいんだ!!!)
唯(私は平気だよ、りっちゃんの好きにやっちゃって!!)
梓(律先輩! とてもイイ感じです! このままお願いします!)
紬(私達も全力で付いていくわ! りっちゃん、行っちゃえ!)
律(みんな悪いな……それじゃあ、次のサビから遠慮なく行かせてもらうぜっっ!!)
唯の合図を皮切りに、律の音は尚も加速する。
それでも決して外すことなく正確に打たれるそのビートに観衆の注目は集まり、一層の熱を帯びていく。
その迫力のあるパフォーマンスには、同じパートを担当するドラマー達も目を離せずにいた。
あこ「すごい……あの人のドラム、めちゃくちゃ凄いよ! お姉ちゃん!!」
巴「ああ……あんなに速くてムチャクチャに見えるのに全然音がズレてない……むしろ周りもしっかりドラムに合わせてる……! いや、なんってテクニックだ! あんなの、アタシだって見惚れちまうよ!」
沙綾「まるで、本当にプロのドラマーのみたいな打ち方だね……ははははっ! 唯さん達のリーダー、凄すぎだよ!」
花音「ふえぇぇ……わ、私には絶対にマネできないテクニック……でも、あんなに楽しそうに叩いてて……か……かっこいいです!」
麻弥「……律さああああん! いっけええええええ!!!!!」
律の演奏はボーカル以上に注目を浴び続け、更にその勢いを増して行く。
唯・澪「――ふわふわタイム(ふわふわタイム)――ふわふわタイム(ふわふわタイム)――」
――♪ ―――♪
演奏の最後、最も激しく、荒々しく豪快に叩かれた律のドラムは、最早アレンジにアレンジを重ねたふわふわ時間本来の演奏とは別の物となっていた。
だが、決して乱れることなく、正確にビートを刻み続けるその音は、既にプロのドラマーの音とも呼べる程に魅力的に見え、多くの観客を虜にして行く。
そして3曲目の演奏が終わったその時……。
立て続けに曲を歌いきった唯と澪にだけでなく、終始行われた律の圧巻のドラムパフォーマンスに対しても、割れんばかりの拍手が巻き起こっていた――。
律「……っ……みんな……ありがとーーーーっっ!!」
――パチパチパチパチパチ!!!
――うおおおおおおおおおおお!!!!
――凄いドラムパフォーマンス!! 私、思わず震えちゃったよ!!
――やべええええ!! 放課後ティータイム、歌だけでなく演奏も凄ぇえええ!!
律「はぁ……はぁ……! き、気持ちよかった……!!」
息も絶え絶えになる程の疲労感が律を襲う。
水を被ったような大汗が顔中を流れ、腕は腫れ上がった様にむくみ、脚が鉛のように重く感じる……。
だが、それでも構わないと言わんばかりに、律のその顔は笑顔で満ち溢れていた。
唯「みんなありがとう!! りっちゃんも凄かったね~♪ でも、まだまだいっくよーーー!!! 次は『ごはんはおかず』!!」
唯「――ごーはんはすーごいーよ なんでもあーうよ ホカホカ♪」
軽快なサウンドに乗せられ、放課後の4曲目が始まる。
それは実に放課後らしい、楽しさに溢れた一曲だった。
唯の口から発せられる和やかな歌声は、先程の演奏で昂ぶっていた観客の激情を程よく落ち着かせ、気持ちを穏やかにしていく。
そしてその音と歌は、梓の眼下で佇むRoseliaの少女達の心にも、確かに届いていた――。
あこ「あははははっ♪ りんりん! 梓さん達の歌……すっごく楽しいね!」
燐子「あこちゃん……ふふふっ……うん、そう……だね!」
紗夜「先程までとは違う、まるでコミックソングのような曲調なのに……何故でしょう、私も、心が跳ね上がるような感覚がしてきました……日菜達の歌を聴いてもこうはならないのに……っ」
友希那「私もよ……さっきまでの震えるような興奮は無い筈なのに……まるで別の感覚が押し寄せて来るようなこの感じは……」
友希那「一体、何なの……? さっきまでの興奮とは違う……この胸の高鳴りは……!」
リサ「友希那、紗夜……きっとそれが、『楽しい』って事なんだよ」
友希那「リサ……」
紗夜「今井さん……」
リサ「アタシ、思い出したんだ……小さい頃、友希那や友希那のお父さんと一緒にベースを弾いていた頃をさ……」
リサ「あの頃は上手いとか下手とか……そんな難しいことなんか考えず、純粋に音楽を楽しんでた……きっと友希那だって覚えてるはずだよ! あの頃の音を……あの頃の楽しさを!」
あこ「うんうん! リサ姉の言ってること、あこも分かるよ!」
あこ「ほら、音楽って、『音を楽しむ』って書くでしょ、梓さん達の歌って、まさにその通りですよ!」
リサ「あはははっ! そうだね、あこ、よく言った!」
友希那「音を……楽しむ……」
紗夜「ふふふっ……宇田川さんらしい考えですね……」
厳密に言えば、あこのその理論は、友希那と紗夜の知る音楽の本来の意味とは違う考えではあった。が……。
それでも、あことリサの言う『楽しむ』という感覚は、2人が久しく味わっていない感情でもあった。
最終更新:2019年12月15日 08:27