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巴「っかし……ほんっと楽しいライブだったよな~」

モカ「うんうん、みんな盛り上がってたし、サイコーだったよね~」

巴「やっぱ、ライブって楽しいよなぁ」

あこ「うんっ♪ お姉ちゃんのドラム、今日も輝いてたよ!」

律(あれ、この声……)

 巴の声を聞いた律の頭にある事が浮かぶ。

 早速それを試してみようと、律は巴に声をかける。


律「ねえねえそこのおじょーさん、ちょっといいかしらん♪」

巴「はい? あ、アタシですか?」

澪「おーい律……あ、そんな所にいた……」

律「あー澪、ちょうどよかった。ちょっと2人とも並んで、『あめんぼ あかいな あいうえお』って言って声合わせてみてよ」

巴・澪「……?」

 律の声に顔に疑問符を浮かべながらも、巴と澪は並んでそのセリフを発する。


澪・巴「「……? 『あめんぼ あかいな あいうえお』これでいいの(ですか)?」」


律「うはっ! やっぱ似てる! お前ら2人声似すぎだろ!」

あこ「本当だ……おねーさん、お姉ちゃんに声そっくり!」

澪「え、そ、そう?」

巴「前に蘭にも言われたけど……そんなに澪さんとアタシって声似てるか?」

蘭「うん……初めて聞いた時はあたしもびっくりしたよ……」

巴「ん~、自分の聞く自分の声って分からないからなぁ」

律「それじゃあ……そうだな……」

 スラスラとメモに何かを書き、律は巴に見せながら続ける。

律「あの、巴ちゃん……だっけ、何も言わずにこの紙に書いてあるセリフ、ちょーっと感情込めて読んでみてくれない?」

巴「……? はい、えっと、なになに、『萌え萌え~……キュンっ♪』…………へっ!?」

モカ「お~~、トモちんの萌え萌え声だ~、ねえねえトモちん、録音するからもう一回~♪ アンコールー♪」

あこ「わぁぁぁ! お姉ちゃん、今すっごく可愛かったよ! あこももう一回聴きたいっ♪」

澪「りーつー、お前女子高生に何言わせてるんだーっ!」

 ――ごちんっ!


律「あいてっ! いきなり殴んなよなーもー!」

澪「黙れこの酔っぱらい! ほら、いいから行くぞ!」

律「だ~~! 分かったから引っ張んなって!!」

 澪に引きずられ、あえなく退場となる律だった。


蘭「……意外、まさか澪さんにあんな一面があるなんて……」

ひまり「澪さん……や、やっぱりか……かっこいい……!」

モカ「ひーちゃんひーちゃん、ちょっと何言ってるかモカちゃんわからないよー」

つぐみ「あははは……ひまりちゃん……」

巴「あれが澪さんの幼馴染……なんか、色々と凄い人だったな……」

―――
――

律「ったく……おー痛っ……澪のやつあんなに怒らなくたっていいだろ……」

彩「あ、律さん、お疲れ様ですっ!」

麻弥・千聖・イヴ・日菜「――お疲れ様です!」

 頭を擦りながら歩く律のその背に向け、パスパレのメンバーから声が投げ掛けられる。


律「ああ、みんなもお疲れ様~……ってか、今は仕事じゃないんだからそんな硬くならなくてもいいよー」

イヴ「リツさん、素晴らしいドラムでした♪ 私、本当に尊敬しますっ♪」

千聖「でもまさか、変装して会場に来ていただなんて……ステージで見た時は本当に驚きましたよ」

日菜「あれー、やっぱみんな気付いてなかったんだ?」

彩「え、日菜ちゃん気付いてたの??」

日菜「うん、受付で見た時から律さんだって気付いてたよ♪」

麻弥「あー、だから日菜さん、ライブ前からあんなにご機嫌だったんですね♪」

律「……ははは、やっぱりバレてたか……私もまだまだだな……」

律「あ、っていうか、受付っていや……彩ちゃんーーーっ」

彩「ひっ! は、はいっ!」

律「今朝流れでサイン書こうとしたの見てたぞー。自分を安売りすんなっていつも言ってるだろー! だいたいそーゆー所でアイドルってのはだな~!」

麻弥「ま、まぁまぁ律さん! 今は仕事じゃないって言ってましたし、今日は堪えてくださいっ、ね!」

律「それとこれとは話が違ーう!……たく。いいか彩ちゃん、ファンサービスってのはだなー!」

千聖「律さん、後で私からも彩ちゃんには言っておきますから……!」

律「次に私が見かけたら、もっと言うからな~!」

 そして意味深な事を強調しつつ、千聖と麻弥に宥められながら、律は渋々その場を後にしていた。


唯「うぅぅ……彩ちゃん、なんかごめんね、私のせいで……」

彩「え? あ、そんな、とんでもないですっ!」

彩「あれ……律さんさっき……あぁ……そっか……」

彩「……あ……あの、もし良かったら、サインじゃなくて申し訳ないですけど……握手でしたら♪」

 律に気付かれぬよう、彩はそっと唯の手を握る。

唯「え、彩ちゃん……い、いいの??」

彩「ええ……放課後ティータイムの演奏……すっごく感動しました……唯さん、いつも応援……ありがとうございます♪」

 唯の手を優しく包み込む彩の柔らかい手。

 その指の感触を忘れぬよう、唯は何度もその手を握り返していた。


唯「彩ちゃん……あ、ありがとう……! ありがとう……!!」

律「……ま、あれぐらいなら今日ぐらいは見逃してやるか」

麻弥「……? 律さん? どうかしました?」

律「……ふふふっ、いーや、なんでもないよ♪」

律(ったく……2人とも、やんならもうちょっとバレないようにやれってえの……)

―――
――

【ステージ前】

こころ「紬達、本当に凄い演奏だったわね~♪」

紬「うふふっ、こころちゃんもステキなステージだったわよ♪」

美咲「でも、ほんと……びっくりしましたよ……」

はぐみ「うんうん、ムギちゃん先輩、すっごくかっこよかったね♪」

薫「あああ……私も、まだ心が踊っているよ……この興奮はしばらく収まりそうもないね…………そうだ、紬さん、宜しければ、今からダンスでもいかがですか……?」

紬「ええ……いいわよ♪」

花音「あははは……薫さん、相変わらずだね……」

美咲「ほんと、薫さん紬さんも相当疲れてるハズなのに、一体どこにそんな体力があるんでしょうね……」

 そして程なくしてから、ステージ上で紬と薫による社交ダンスが繰り広げられる。

 見る者全てを魅了するかのようなそのダンスは瞬く間に会場中の注目を浴び、相次いで拍手が巻き起こっていた。


紬「~~♪ まぁ……お上手なステップね♪」

薫「はははは……いや、紬さんには及びませんよ……ああ、なんて儚い……最高の一時です……」

花音「薫さん、凄く楽しそうだね」

ひまり「わぁぁ……い、いいなぁ」

 そして、ステップを踏むことに調子を良くしたのか、紬の腕が薫の脇に伸び……そして。

紬「ふふふっ……そーれっっ♪」

薫「ふふふふふふふっっ……ふわっ……えっっ……!?!?!?」

はぐみ「うわぁ~♪ すごいすご~い♪」

こころ「まぁ……すごいわ♪ 薫が空を飛んでいるわ♪」

美咲「う、嘘でしょ!? 薫さんがあんなに軽々と! 紬さんって実は、かなり力持ち?」

澪「ムギ……やりすぎ……」

律「おーおー、飛んでる飛んでる……いや~、さっすがムギだなぁ」

紬「うふふふっ……もう一声~~っ♪」

薫「………………………」

梓「……あれ? あの人、白目向いてませんか?」

千聖「薫……完全に気絶してるわね」

美咲「ちょっ! 紬さんストップ! 薫さん身体だけじゃなくて意識まで飛んでますよ!」


はぐみ「ねーねームギちゃん先輩! 今度ははぐみにもやって欲しいな♪」

こころ「じゃあ、その次は私ね♪」

紬「ええ、いいわよ~♪」

律「ここは遊園地か!」

美咲「知らなかった……まさか紬さんが、こころレベルの天然キャラだったなんて……」

花音「つむぎさんがこころちゃんと仲良しな理由、なんとなく分かった気がするね……」

―――
――

【ラウンジ】

 所変わって打ち上げ会場を離れたラウンジ、そこにはRoseliaの5名が集まって話をしていた。

 そこに梓も合流し、静かなラウンジ内に、少女達の笑い声が飛び交い始める。


梓「あ、Roseliaの皆さんどうも、今日はお疲れ様でした!」

友希那「梓さん……お疲れ様です」

梓「皆さん、本当に素敵な演奏でした……私もまだまだですね、もっと頑張らないと……」

あこ「そんな……放課後ティータイムの演奏も、ものすっごくかっこよかったと思いますっ!」

リサ「あはは、あこの言うとおりですよ、でも、プロの人にそこまで言われちゃうとなんだか照れちゃいますね」

紗夜「私達の方こそ、梓さん達のおかげで、大切な事を思い出せました……梓さん、ありがとうございます」

燐子「ありがとう……ございます」

梓「いいえ……私の方こそ、友希那さん達の演奏を聴いてたら、悩んでいた気持ちが吹っ飛んだ感じがします」

友希那「悩み……ですか?」

梓「はい……お恥ずかしい話なんですけど……私、少し前まで自分の音楽が分からなくなっていたんです……」

友希那「梓さんにも、そんな事があったんですね……」

梓「ええ……私もまだまだです、でも、これからはもう大丈夫……今日、先輩達と演奏して……皆さんのライブを見させてもらって……とても大切なことを学びました」

梓「今日、ここでRoseliaの……皆さんの歌を聴けて、本当に良かったです」

リサ「梓……さん……」


梓「……聞きましたよ、『FUTURE WORLD FES.』に参加するってお話……凄いと思います、頑張って下さいね♪」

友希那「はい……ありがとうございます。私達も、梓さんと父のステージ、楽しみに待ってます」

梓「――はいっ♪」

 友希那の言葉に、笑顔で梓は返す。

 そして、梓と友希那達は握手を交わし、互いが互いの未来を誓い合う。

 プロとして更なる飛躍を志す梓と、自身の夢に向かい、歩き続けるRoselia。

 互いの出会いに感謝をしながら、その手はしばらくの間、固く握られ続けるのであった――。

―――
――

【CiRCLE 店外】

 打ち上げの賑わいが僅かに聞こえる店外。

 上空に広がる夜空には星が煌めき、至る所で輝きを放っていた。

 夜空を照らす星々を見つめながら、香澄は静かに佇んでいた。


香澄「…………綺麗な星…………」

唯「香澄ちゃん、ここにいたんだね」

 満天の星を見上げる香澄に向け、唯が声をかけていた。


香澄「唯さん……今日は、お疲れさまでした」

唯「ううん、香澄ちゃんの方こそお疲れ様……すっごく頑張ってたね」

香澄「唯さん達もです……」

唯「ふふふっ……お星さま……綺麗だね~」

香澄「……はいっ」


 ………………。


 そうしてしばらくの間、2人は静寂に身を任せていた。

 互いの健闘を称え合うように、夜空の星は眼下の2人を優しく照らす。


 ――そして、香澄の口が静かに開かれた。

香澄「……あの、唯さんは、どうして、幼稚園の先生になろうって思ったんですか?」

唯「うん……私ね……高校生の頃、すっごく好きだった先生がいたんだ……今日、お客さんで来てた人なんだけどね」

香澄「…………その人、唯さんの憧れの先生だったんですね」

唯「まぁねー……私も、その先生みたいになりたくて……それで、大学も教育学部に入ってさ」

唯「結局、色々あって高校の先生にはなれなくってさ……それでも、どうにか先生になることはできたんだ」

香澄「………………」

唯「おかげで今、すっごく楽しい毎日を送らせてもらってるよ♪」

香澄「……唯さん、お話を聞かせてくれてありがとうございます」

香澄(憧れの人……かぁ、それじゃ、私にとっての憧れは…………)

 唯の笑顔に釣られるように、香澄の顔にも笑顔がこぼれる。


 そして……。


唯「あ、そうだ、香澄ちゃんが音楽をやってる理由、私も聞いてもいいかな?」

香澄「はい……私……小さい頃……『星の鼓動』を聴いたことがあったんです」

唯「星の……鼓動……?」

香澄「はい……その時、すっごくキラキラ、ドキドキして……それで私、高校生になったら、あの時みたいにキラキラ、ドキドキしたいって思って、色んな事に挑戦してみたんです」

香澄「そうしてく内に、私はあのギターに巡り合うことが出来て……有咲やりみりん、おたえ、さーやに会うことができて、バンドを組んで……おかげで、毎日キラキラドキドキできて……! 私今、すっごく楽しいですっ!」

唯「青春……だねぇ」

 どこまでも自分の今を明るく語る香澄のその姿は、唯には一際眩しく見えていた。

 高校に入学した当時の自分とは正反対な眩しさ……その輝きは、昔の自分にはなかったものだった。

 だがあの時、迷っていたからこそ自分は大切なものに出会うことが出来た、それもまた、確かな事実である。

唯「香澄ちゃんは凄いなぁ……私なんか、高校生になった時は、毎日何かしなきゃ何かしなきゃって、まるで何かに追われるように過ごしてたからさ……」

唯「香澄ちゃんみたいに、何かがしたいって前向きな気持ちで過ごしてなかったっけ……」

香澄「唯さん……」

唯「でも、そうやって過ごす内に、私も香澄ちゃんも、大切なものや仲間に巡り合うことが出来たんだよね♪」

香澄「……はいっ♪」


唯「やっぱり、バンドって……音楽って……楽しいよねっ♪」

香澄「はいっ! 私、バンドも音楽も、大好きです!」

 自分の誇れるもの、大切だと胸を張って言えるものに出会えた喜び。

 それは、世代を問わず皆が胸に抱く、掛け替えのない絆。

 出会いが紡ぐ、奇跡とも呼べるものだった。

―――
――

有咲「あ、いたいた! おーい!」

沙綾「香澄ー! 唯さん! 下で記念撮影するってまりなさんが!」

りみ「もう準備できてるって! い、急いでくださーい」

たえ「みんな、待ってますよー」

 CiRCLEから香澄と唯を呼ぶ声がする。


香澄「みんな……」

唯「記念撮影だって、行こっか♪」

香澄「……はいっ♪」

 遠くから聞こえるその声に2人は立ち上がり、打ち上げ会場へと戻るのであった。

【CiRCLE 打ち上げ会場】

まりな「じゃあみんなー、記念撮影、はっじめるよー」

有咲「さすがに、30人以上ともなるとちょっと狭いな……ちょっ! 誰だ今触ったの!」

たえ「あ、有咲、ごめん、私」

有咲「おたえかっ!!」


彩「記念撮影かぁ……何か、掛け声とかないかなぁ?」

まりな「ん~、そうだね、せっかくだし何か掛け声揃えたいよねー、どうしよっか?」

ひまり「あ! じゃ、じゃあ! えい!えい!おーで!」

モカ「いいけど、それ、ひーちゃんだけしかやらないと思うよー」

蘭「ふふっ……確かにそうかも」

ひまり「え~~~~、そんなぁ」

こころ「うふふっ、掛け声といえばやっぱり、ハッピー! ラッキー! スマイル! イェーイ! に決まりよっ♪」

美咲「こころ、それも却下だよ、それだとハロハピだけしか乗れないでしょ」

こころ「そうなのね、残念だわぁ」

律「いきなり掛け声っつっても、急には出てこないよな……」

唯「香澄ちゃん、何か良い掛け声ってないかな?」

香澄「う~ん……そうですね…………あ、あれなんかどうかな?」

 唯に振られ、香澄はカメラに向け、あるポーズを決める。

 右手の人差し指と親指を立て、人差し指をカメラに向けたその仕草は、まるで指で作った銃を撃つ動作にも見えた。


香澄「こうして、『夢を撃ち抜け! BanG Dream!!』っての思いついたんですけど、どうですか?」

沙綾「うんうん、香澄、それすっごく良いと思うよ♪」

友希那「『夢を撃ち抜け』……前向きで、いいんじゃないかしら」

千聖「ええ、今の私達にぴったりのフレーズね、悪くないと思うわ」

まりな「じゃあ決まりだね、みんなー、行くよー!」

 まりなの掛け声に合わせ、全員が指で銃を作り、香澄の言葉を口にする。


全員「――夢を撃ち抜け!――BanG Dream!!」

 ――カシャッ! 



 ――――そして、それぞれの日々が始まった――!


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最終更新:2019年12月15日 08:32