>唯の家
紬「そろそろイヴも終わりだねー」
唯「うん。パーティー楽しかったねっ!」
紬「うんっ!」
唯「そろそろ…」
紬「…うん」
唯「サンタさんの準備しよっ!!」
―――
>回想
唯「見て見てムギちゃん。これ」
紬「宝くじ?」
唯「うん。あたったんだー」
紬「唯ちゃんすごいわ!」
唯「10万円だけどね」
紬「何に使うの?」
唯「う〜ん。それなんだけどね。ムギちゃん昔言ってたじゃん」
紬「?」
唯「一度でいいからサンタになってみたかったの~って」
紬「うん」
唯「だからね。私達がサンタをやるためにこのお金を使おうと思って」
紬「いいの?」
唯「うんっ!」
―――
>回想終わり
紬「じゃじゃーん。これがサンタさんのお洋服よ~」
唯「わ~」パチパチパチ
紬「ねぇ、唯ちゃんどう?」
唯「とってもよく出来てるよ」
紬「そう? ありがとう」
唯「私もちゃんと頭の部分作ってきたよー」
紬「わくわく」
唯「じゃじゃーん」
紬「わ~」パチパチパチ
唯「良く出来てるでしょー。一人で作ったんだー」
紬「うん。とっても上手。でもどうしてトナカイ?」
唯「それは伊藤園のステマだからだよ~」
紬「ステマ?」
唯「ムギちゃんは知らなくてもいいよ。ほら、いこっ」
紬「うん。いこっか」
―――
>外
唯「さ、寒い…」
紬「うん。手を繋ごうにも袋を担ぎながらじゃ無理だし…」
唯「走って行こう」
紬「うん。それで誰のところから行こっか」
唯「まずはりっちゃんと澪ちゃんかな」
紬「あの二人ね」
唯「どっちの家にいるかわかる?」
紬「それがさぁ。それぞれの家に帰っちゃったみたいなんだ」
唯「え”っ」
紬「恋人同士性の六時間ぐらい一緒に過ごせばいいのに」
唯「でも、澪ちゃんは鶏さんだから仕方ないかな」
紬「鶏さん?」
唯「うん。澪ちゃんはかわいいかわいい鶏さんなんだー」
紬「うん? 確かに澪ちゃんはかわいいよね」
唯「それじゃあ澪ちゃんのところから行ってみよー」
紬「おー!!」
―――
>澪の家
澪「あぁ、律に誘われたのに断っちゃった」
澪「付き合い始めて最初のイヴの夜だっていうのに」
澪「恋人たちの夜だぞ。みんなが裸のお付き合いする日だぞ」
澪「律が勇気を出して誘ってくれたのに私ときたら…」
澪「どうして私は……」
澪「あぁ律。せつないよ。胸がくるしいよ。こんな夜に君に逢えないなんて……」
唯「…」
紬「…」
澪「…うおっ」
唯「澪ちゃんってひとりごと言うんだね」
澪「唯とムギ……どうやって入ってきたんだ?」
紬「気にしちゃ駄目よっ!!」
澪「あ、あぁ……」
唯「なるほどなるほど。澪ちゃんはりっちゃんの誘いを断っちゃったんだ」
澪「あぁ、そうなんだ…」
紬「どうして断っちゃったのかしら」
澪「実は初めてなんだ。でもイヴにこそって思ってたのに、いざとなると」
紬「勇気が出なかったのね」
澪「…うん」
唯「澪ちゃんへたれさん」
澪「返す言葉もございません…」
紬「でも、その気持はわかるわ。私もそうだったから」
澪「ムギも?」
紬「うん」
唯「ねぇ澪ちゃん。私達プレゼントを届けに来たんだ」
澪「プレゼント? そういえば二人共サンタの服を着てるな。頭はトナカイのツノだけど」
唯「でも澪ちゃんにプレゼントはいらないみたいだね」
紬「唯ちゃん?」
唯「今日は澪ちゃん自身がプレゼントになるべきだよ!」
澪「えっ」
唯「裸にリボンつけて私がプレゼントです、ってやるんだよー」
紬「ゆ、唯ちゃん。さすがにそれは」
澪「…ありかも」
紬「えっ」
澪「私がプレゼント…うん。うん。クリスマスだしちょうどいいと思う」
唯「それじゃあ澪ちゃん、裸になって。リボンで包装してあげるから」
澪「わかった」
紬「…こうなったらとことんまで付き合っちゃうんだから!」
―――
>律の家
律「私が焦り過ぎたんだよな」
律「…初めてなのに」
律「みんなで一緒に騒いで、それで十分じゃないか」
律「それ以上なんて…」
律「うん。そうだな。明日はくるんだ!」
律「弱音なんて全然私らしくないぞー!」
律「…」
律「でもちょっとだけ寂しいりっちゃんなのです」
律「…なんちゃって」
唯(りっちゃんもひとりごと言ってる。やっぱり二人はお似合いだねー)
唯(ムギちゃん? って、ねぇ、ムギちゃん!?)
紬(はぁ……はぁ……はぁ……)
唯(だ、大丈夫? やっぱり私も手伝えばよかったかな)
紬(だ、大丈夫。ちょっと息切れしただけ。さすがに澪ちゃん袋に入れて担いでくるのは大変だったけど)
唯(リボンでぐるぐるにしたら澪ちゃん歩けなくなっちゃったからねー)
紬(うん。袋に入れて担いできたけど、澪ちゃんは大丈夫かしら)
澪(問題だらけだ。鼓動の高まりが止まらないよ…。律がすぐそこにいるなんて。私…私…)
唯(……大丈夫そうだね)
紬(そうね)
唯(じゃあ澪ちゃんをここに置いて、私たちはおさらばしよっか!)
紬(うんっ!)
澪(って、え?)
唯紬(めりーくりすます!)
澪(お、おい。裸で置いてくなよ…)
律「……物音?」
澪「…………りつ」
律「…み、みお?」
澪「り、りつ。これは違うんだ。違わないけど違うんだ
決して私が裸でいるの好きな痴女なわけじゃないんだ。そうじゃなくて律に私をプレゼントしようと思って
いやでも私がプレゼントなんて嫌だよな。律の誘いを断っておいて都合が良すぎるよな
ご、ごめん。今すぐ帰るから。あっ、リボンがほどけない。りつ悪いんだけど……」
律「…悪いんだけど、帰すわけにはいかない」
澪「り、りつ?」
律「澪自身がプレゼントでいいんだよな?」
澪「……うん」
律「澪、嬉しいよ。こうしてきてくれて」
澪「り、りつー」ドテ
律「ははっ。その体勢で飛びつこうとするのは無理があるって。ほら、解いてやるから」
澪「//」
紬(大丈夫みたいね。カメラもセットしたし、次に行きましょう)
唯(そうだね。でもカメラは没収だよ)ニコッ
紬(そ、そんなぁ)ガーン
―――
>外
唯「次は……あずにゃんと純ちゃんかな」
紬「二人は梓ちゃんの家にいるみたいね」
唯「こっちは私達が手を回さなくて大丈夫みたいだね」
紬「ええ、そうねー」
―――
>梓の家
梓「ほら、純の番だよ」
純「ちょっと待って……うーん。これだ!」
梓「ふふっ」
純「なんだよ。その不敵な笑みは。ってこれババ」
梓「やっぱり純は弱いね」
純「ば、馬鹿にして」
梓「この調子だと今日も私が攻めかなー」
純「むむむ」
紬(困ったわ。二人共全然元気ね)
唯(これじゃあプレゼントを渡せないよ)
紬(こんなこともあろうかと!)
唯(なにかあるの?)
紬(じゃじゃーん。スモークグレネード)
唯(お~!)
紬(これを投げると煙が出るから、その間にプレゼントを置いて逃げましょっ)
唯(うん)
紬(それじゃあ投げるわ)シュッ ポイ
梓「うん?」
もくもくもく
紬(今の隙に)
唯(うん……っ)ドタッ
紬(唯ちゃん!?)
唯(ダイジョブダイジョウブ。転んだだけだから)
紬(唯ちゃん…よかった。唯ちゃんにもしものことがあったら私…)
唯(ムギちゃん、大袈裟だよ)
紬(だってだって!)
梓「だって…どうしました?」ニコッ
唯「あ、あずにゃん。これはね」
紬「…見なかったことにしない?」
梓「そういうわけにはいかないです」
純「何も土下座までさせることはないんじゃない」
梓「駄目っ。たまにはきちんと言わないと」
唯・紬「ごめんなさい」ドザ
梓「プレゼントを渡しにきたのはいいです。でもスモークグレネードなんて」
唯「…」
梓「犯罪にでも巻き込まれたのかと思っちゃったじゃないですか」
紬「返す言葉もないわ」
梓「もうっ…お二人は本当に…」
純「梓、そろそろ」
梓「…まぁ、そうだね」
唯「あずにゃんごめんね…」
紬「ほんとうにごめんなさい。梓ちゃん‥」
梓「わかってくれたならいいです」
唯「許してくれるの?」
梓「はい。ちょっと炬燵にでもはいって温まっていってください」
純「あずさ…」
梓「ちょっとぐらいいいじゃん」
純「…うん」
紬「おこたー」
唯「温まるねぇ」
紬「うん」
梓「みんなで大貧民でもやりましょうか」
紬「大貧民! やるやる!!」
―――
紬「あがりっ。これで私は平民ね~」
唯「大富豪だよー」
梓「私も平民です」
純「大貧民…」
純「結局私はこうなる運命《さだめ》なのかな」
梓「そう気を落とさない」
純「…うん」
紬「じゃあ私達そろそろ」
唯「え~っ、もうちょっとおこたで」
紬「二人の邪魔になるから、ね」
唯「そだったね。あっ、その前に」
紬「はい。私達から梓ちゃんにプレゼント」
梓「これ……液晶モニター?」
紬「スイッチを入れてみて」
梓「ポチッとな……トンちゃん?」
紬「うん。これは私が盗撮用に使ってる機材なんだけど、いつでもトンちゃんの様子見れるようにセットしてみたの」
純「今さらっと凄いことを言ったような…」
唯「あずにゃんトンちゃんのこと大好きみたいだから、いつでも見れるようにしたらどうかなー、って」
梓「…お二人とも」
紬「もしかして気に入らなかった…?」
梓「そんなことないです! とっても嬉しいです!」
唯「それならよかったよ」
紬「それじゃあ純ちゃん梓ちゃん。よいクリスマスを」
唯「うん。よいクリスマスを」
梓「お二人も、よいクリスマスを」
純「さよーならー」
梓「…行ったね」
純「うん」
梓「そういえば純にはプレゼントなかったのかな」
純「軽音部の人達にだけ配ってるんじゃない?」
梓「それはそれで先輩達らしくないような……」
純「そういうこともあるって」
梓「そうかも。じゃあ純には私からプレゼントをあげるよ」
純「なに?」
梓「今日は特別に純に攻めさせてあげる」
純「いいの!?」
梓「うんっ。今日はクリスマスだしね」
純「やった、ってあれ?」
梓「どうしたの?」
純「私の靴下に何か挟まってる……これは」
梓「なになに? ミスタードーナツでいつでもドーナツが100円になるカード? 微妙…」
純「唯先輩、ムギ先輩ありがとう…」
梓「嬉しいんだ?」
純「嬉しいよ。だってドーナツがいつでも100円だよ! 210円のDポップもだよ!!」
梓「そんなに嬉しかったんだ?」
純「うん!」
梓「…純にもプレゼントあったみたいだし、やっぱり私が攻めでいいかな」
純「えっ、そんなのないよ」
梓「ふふふ。嘘だよ」
唯(あれっ、純ちゃんにはゲームソフトの予定だったんだけど)
紬(この前親戚の人にもらったカードをあげちゃったの)
唯(そうだったんだ。じゃあこのゲームどうしよっか)
紬(私達で遊べばいいんじゃない。次は…憂ちゃんのところかな)
唯(憂は和ちゃんの家にいるよ)
最終更新:2012年12月25日 20:20