ダダダダダッ……



律「おーいムギー!」ダダッ!


紬「りっちゃん!」

ジョセフ「ドラムの嬢ちゃん?」

律「こんなとこにいたのかよ! もうすぐ新歓ライブ始まっちまうぞ!」

紬「……新歓ライブ?」

律「へへっ、私達もう二年生だろ? 軽音部に可愛い後輩が来ると良いな」

紬「二年生? ち、ちょっと待って」

律「まぁ、来るかどうかは私達の演奏次第! 気合い入れてこーぜムギ!」

紬「ストップ! 話を聞いてりっちゃん!」

律「お、おお」

紬「新歓ライブとか、もう二年生とか、いったい何の話をしているの?
  私達もうすぐ卒業でしょう?」

律「はぁ? ムギこそ何の話してるんだ?」

律「卒業なんか、まだ先の話じゃん」

紬「卒業が……先の話?」

律「うん、先」

紬「……」

紬「りっちゃん、貴方の名前はッ!」

律「名前? なんだよいきな……」

紬「いいからッ!」

律「田井中律ですッ!」

紬「年齢はッ!」

律「じゅ、十六歳ですッ!」

紬「今年は何年ですかッ!」

律「2008年ですッ!」

紬「え!?」

律「え!?」

ジョセフ「え!?」

律「な、なんだよぅ、二人して変な顔してさ」

律「てゆーか、そこのデカいお兄さん誰だよ……もしかしてムギの彼氏?」

紬「NO! 若くなっちゃってるけどジョジョさんよ、りっちゃん。
  ほら、ロンドンで助けて貰ったでしょ?」

律「……ジョジョ? ……ロンドン?」

律「なにそれ?」

紬「どういうことなの……」

ジョセフ「な、なあんか嫌な予感……こ、これってつまり……」

律「やばっ、私達の出番までもう時間無い! 行くぞムギ!」ダダッ!

紬「ま、待って! もう色々待って!」ダダッ!



ジョセフ「……」



ジョセフ「ハァ~ア、俺くらい色んな経験してっと大抵のことにゃ驚かねぇけどよ」

ジョセフ「『タイムスリップ』とは恐れいったぜ」

ジョセフ「モチロン、あのお嬢ちゃんがフカシこいてる可能性もあるが、そんな様子は無かった」

ジョセフ「これも『スタンド』かァ?」

ジョセフ「分からんな、なんだってこんなことをするんだ?」

ジョセフ「そいつを聞き出す為にも……まずは『スタンド使い』を見つけだすッ!」

ジョセフ「そしてここに取り出したるは観光用に持ってきたカメラ!」サッ

ジョセフ「俺の『スタンド』を使えば、『スタンド使い』の居所なんて一発だぜーッ!」ズオォオオ


ジョセフ「『隠者の紫』!」ガシァン!


ジョセフ「……」

ジョセフ「あん?」


ジョセフ「『隠者の紫』!」ガシァン!


ジョセフ「……」


ジョセフ「『隠者の紫』! 『隠者の紫』! くのっ、コノッ!」バシバシ

ジョセフ「ハァ、ゼェ~、ハァ、ゼェ~、ゼェ~」



ジョセフ「オ――――――ノォ――――――!?」

ジョセフ「『スタンド』が出せねえだとォ――!?」

ジョセフ「も、もしかして、若返っちまったからかァ?」

ジョセフ「ということは……」



  • 『スタンド』に頼らず自力で『スタンド使い』を見つけださなくてはならない

  • 『スタンド使い』を見つけたら、『スタンド』無しで『スタンド使い』と戦わなくてはならない

  • そもそも『スタンド使い』を倒せたとしても元に戻れる保証は無い



ジョセフ「オーマイガッ!!!」ガァーン

ジョセフ「無理無理! 出来る訳無いっつーのッ!」

ジョセフ「『スタンド』が使えねーのに、『スタンド使い』がいるかもしれねー場所にいるのは危険過ぎる」

ジョセフ「ここは一旦、逃げるが勝ちだぜッ!」ダダッ!


ジョセフ「(まずは敵さんの『目的』を探らなきゃあな)」

ジョセフ「(ソイツは何者なのか? 何故、こんなことをするのか?)」

ジョセフ「(それが分からないことには手の出しようが無)」



ガン!



ジョセフ「オーッノーッ!」

ジョセフ「なんだーッ? 壁に頭をぶつけちまったよーな感覚だぜ」

ジョセフ「けれども目の前に壁は見えねえ」

ジョセフ「……」ソーッ

ジョセフ「ますます泣きたくなってきましたよォん?」

ジョセフ「ご丁寧に学校の周りに見えねーバリアを張り巡らしてやがる」

ジョセフ「けどよーッ! 俺にだって対抗策が無い訳じゃあ無いんだぜーッ!」



コォオオオオ……!



ジョセフ「『波紋疾走 (オーバードライブ)!』」ゴオォン!



バシュウウウン!



ジョセフ「ダ、ダメだ、『波紋』が壁にその威力ごと吸収されるッ!」

ジョセフ「逃がす気はからっきしねーってことかよ、くそったれーッ」



その頃 体育館のステージ裏


律「おーっす!」

澪「やっと来たか」

唯「ムギちゃんだ!」

紬「あ……澪ちゃん、唯ちゃん」

唯「間に合わないかと思っちゃったよぉ」

澪「ムギがいないと皆、演奏出来ないからな。間に合って良かった」

唯「ねぇねぇ、ムギちゃんは見た? 観客席が新一年生でいっぱいだよ」

律「新歓なんだから、そりゃそうだろー」

紬「あ、あの!」

澪「どうしたムギ?」

紬「わ、私達って高校三年生じゃあなかった? この前、卒業旅行でロンドンに行ったわよね?」

唯「ロンドン?」キョトン

澪「なんだそりゃ」

律「まだ言ってんのかよムギ。私達は二年生になったばっかだって」

紬「……」


紬「(やっぱり何かおかしいわ……)」

紬「(いきなりジョジョさんが若返ったり、皆がまるで昔の皆に戻ったように……)」

紬「(これって、『タイムスリップ』って奴なのかしら?)」

紬「(なんでこんなことが?)」



『……は軽音部による演奏です』



唯「呼ばれたッ!」

律「ヨッシャ、ガンバルぞー!」

澪「手のひらに『人』と書いて飲み込む……手のひらに『人』と書いて飲み込む……」



キィィィィィィィィィィン……



紬「……?」



――――――

――――

――



学校の部室


紬「(う……! 『音』が頭に……)」

紬「……あら?」キョロキョロ



梓「一年二組の中野梓です。パートはギターを少し……」

律「お、唯と一緒じゃん!」

梓「これから宜しくお願いします」

澪「うん、宜しくな梓」

唯「ちっちゃくて可愛い~!」



紬「な、なんで部室にいるの? さっきまで体育館に……あれ?」



梓「宜しくお願いします、紬先輩」

紬「梓……ちゃん?」

梓「新歓ライブでの皆さんの演奏、とても凄かったです! 感動しました!」

唯「うう……眩しすぎて直視出来ません」

律「ええ子や! この子ええ子や!」

澪「一緒に頑張ろうな!」


紬「(あ、ありのまま今起こったことを話すわね!
   私は新歓ライブがこれから始まると思っていたら、既に終わっていました)」

紬「(また、『タイムスリップ』したの……?)」



ガチャリ



紬「(誰か来た? ……えええッ!?)」



さわ子「皆遅れてゴメン、先生がうるさくてさ~。この子が新入部員?」

唯「うん、中野梓ちゃんだよ」

さわ子「黒髪ツインテかぁ、色々着せ替え甲斐がありそうね」

梓「あ、あはは……宜しくお願いします……」


紬「(さわ子先生が制服を着てる……しかも妙に若々しいというか……)」


さわ子「部員もこれで六人。軽音部も良い感じになってきたんじゃあない?」

紬「えっ」

澪「ムギ?」

紬「軽音部……五人じゃないの?」

律「いやいやいや、梓が入ったんだから六人だろ」

紬「いえいえいえ、どう数えても五人よ」

律「はぁ?」

唯「六人で合ってるよムギちゃん。まず、私でしょ?」

唯「澪ちゃん、りっちゃん、ムギちゃん、梓ちゃん……」

紬「うんうん」

唯「さわちゃん」

紬「さわちゃん!?」

さわ子「私を忘れるとは良い度胸ねムギ?」

紬「……さわ子先生は顧問でしょう?」

澪「顧問は堀込先生だぞ」

紬「ちょっと待って……今、頭の中整理したいの」

さわ子「どうしたら、私が顧問なんて発想が出るのよ。私はまだピチピチの高校二年生だっての」

紬「高校二年生!?」

澪「ピチピチは死語だろ……」

律「さっきからどうしたムギ? おかしいぞ」

紬「もぉ、なにがなんやら……」



学校の校門前


コォオオオオ……!



ジョセフ「一点集中ッ!『波紋疾走』!」ゴオォン!



バシュウウウン!



ジョセフ「これでもダメかよ、チクショー! 出せッ! 出しやがれッ!」


ジョセフ「(……このバリアは『スタンド』によって生み出されたモノ。
      『スタンド』の力は『スタンド』でしか対処出来ねえ)」

ジョセフ「(だから今の俺がいくら『波紋』をぶつけようが意味は無え。
      頭でそう理解していても、ウンともスンとも言わねーのはショックだぜ)」


ジョセフ「くっそーッ! このまま『スタンド使い』を探すしか無いのかよーッ!」

ジョセフ「考えろ……学校全体にバリアを張り巡らせる程の力だ。そう遠くにはいけねー」

ジョセフ「となると、学校内に潜んでいると考えるのが自然だ」



ジョセフ「……行くかァ、学校?」



ジョセフ「でも俺が入っても大丈夫なのか? 確かここ女子校だよなァ?
     『桜が丘女子高等学校』そう書いてあるしよ~っ」

ジョセフ「下手に見つかって騒がれでもしたらメンドーだ。
     ここは抜き足差し足で……なんか悪いことしてるみたいで気分ワリーぜ」ソロォーリ



堀込先生「……む?」

堀込先生「誰だッ! そこで何してるッ!」



ジョセフ「ゲーッ!」


ジョセフ「(こーゆー場面で早速見つかるかフツー!?)」

ジョセフ「あ、あれ~っ? おかしいなあ、ここはどこだァ?」

ジョセフ「日本に観光に来たら迷ってしまいましたァン。ここはドコデスカァン?」

堀込先生「……」

ジョセフ「……」

堀込先生「そんな0.5秒で見破れる嘘をつくんじゃあない。こっちに来い、不審者め!」ガシィッ

ジョセフ「ぎゃぱァー! ですよねーッ! イデデデ、耳を引っ張るんじゃあねーッ!」



唯「お腹減ったぁ……購買って、こんなに遠かったっけ?」

澪「唯は憂ちゃんにお弁当作って貰っているんじゃあなかったか?」

唯「作って貰ってるよ。今朝も作って貰ったよ」

澪「じゃあなんで、購買に……」

唯「そのお弁当をカバンに入れてくるのを忘れてしまったのですよ」

唯「ああ、時間を戻せるなら戻したい……」

律「なんてありがちなウッカリだ。な、ムギ?」

紬「……」

律「ムギー?」

紬「あ、うん! どんとこいです!」ビクゥ

律「おお?」

さわ子「何、ポーッとしてるのよ」

紬「ちょっと考えごとを……」

梓「(なんだか、ぽわぽわした人だなぁ。良い匂いするし)」

唯「もうこうなったら、幻のゴールデンチョコパン手に入れるしか無いよね。
  じゃないと、私がカワイソーだよね」

澪「確かにカワイソーだな……誰にも手をつけられず、
  台所で刻一刻と腐っていく唯のお弁当のことを考えると……」

唯「あう……」



ジョセフ「だーかーらッ! 俺はヘンタイじゃねーつってんだろッ!」

堀込先生「女子校にコッソリ入ろうとする奴がそんな台詞を吐くのか!」

ジョセフ「俺だって入りたくて入った訳じゃあねーッ! だってよォ、こっから出してくれねーのよ!」

堀込先生「何を言っているのか、全く分からん」



律「お、先生だ」

澪「何か揉めてるみたいだけど」

ジョセフ「クッ……面倒臭え」

ジョセフ「(今日はマジで厄日だぜ。こうなりゃあ、『波紋』で眠らせて……)」



紬「……? あっ!」

紬「ジョジョさん!」


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最終更新:2013年01月30日 23:38