梓「大丈夫ですか? 具合とか悪くないですか……?」
紬「……私、どうしてこんな所で倒れていたのかしら」
ジョセフ「覚えてねーのか?」
紬「……どちら様ですか?」
ジョセフ「にゃにィ? そいつも覚えてねーのかァ!?」
梓「以前、ムギ先輩の新しい執事さんって、自分で言ってませんでしたか?」
紬「そんなこと言ったかしら?」キョトン
ジョセフ「……今が何年何月何日か言えるか?」
紬「えっと……『2008年の8月』! もうすぐ、りっちゃんの誕生日ね」
紬「お祝いしないとね、梓ちゃん!」
梓「は、はい!」
ジョセフ「(まァた、時間が飛んでるぜ。さっきまで新歓ライブとか言ってなかったかァ?)」
ジョセフ「(おまけに嬢ちゃんの記憶も操作されちまった。
原因は分かりきってるぜ、あの『音』だ)」
ジョセフ「(こんなメンドーな『スタンド』は始めてだぜ……)」
ジョセフ「(倒すには奴の謎を解くしかねえ。
一見、意味不明でもその謎を解くことによって、攻略法が掴めっかもしんねー)」
- 何故、ジョセフ及び、山中さわ子が戻った時間以上に若返ったのか?
- 何故、敵の『スタンド』の姿は見えているのに、ジョセフは『スタンド』が出せないのか?
- 何故、敵の『スタンド』の姿は見えているのに、本体である『スタンド使い』は姿が見えないのか?
- 何故、ジョセフを殺せる状況であったにも関わらず、その姿を消したのか?
『何故、2008年に時を戻されたのか?』
ジョセフ「(分かんねー、知るか)」
『何故、ジョセフ及び、山中さわ子が戻った時間以上に若返ったのか?』
ジョセフ「(最初は俺の『スタンド』を封じるためかと思った。
俺が『スタンド』を覚醒したのはDIOのヤローの復活と同時期。つまりジジイの時よ)」
ジョセフ「(それより以前に年齢を遡らせりゃあ、『スタンド』は出せなくなるって理屈は通る)」
ジョセフ「(でもよォ、眼鏡の嬢ちゃんまで必要以上に若返らせる理由は無い。そこが分からんのだ)」
『何故、学校の周りにバリアが張られているのか?』
ジョセフ「(俺を外へ逃がさねーためか?。
誰か俺を狙っている奴がいて、俺の動きを制限する為にってカンジでなァ)」
ジョセフ「(しかあ~し、それだと奴の言ったセリフがオカシイことになるぜ)」
ドリーム・ドランカー『それにしても部外者が紛れ込んでいたなんて。余計な手間を』
ジョセフ「(まるで俺は最初っから関係ありませんでしたァ~ン、
みてーな言い方をするのはちょお~っと違うんじゃあないのォ?)」
ジョセフ「(バリアを張ったのは『逃がさない』ためじゃなくて、
何かを『寄せ付けない』ためだとしたら……?)」
『何故、敵の『スタンド』の姿は見えているのに、ジョセフは『スタンド』が出せないのか? 』
ジョセフ「(『スタンド』には幾つかのルールがある)」
ジョセフ「(『スタンド』は『スタンド』でしか倒すことが出来ず、
その姿は『スタンド使い』にしか認識出来ないってな風になァ)」
ジョセフ「(が、稀に例外は存在する。例えばその『スタンド』のエネルギーが余りにも巨大だった場合、
一般人の目もその姿を認識しちまうんだ)」
ジョセフ「(ただ、『ドリーム・ドランカー』さんがそこまでの力を持ってたよーには見えなかったぜ。
主観だけどねー)」
ジョセフ「(つまり、この『例外』は当てはまらねえ。うーん、分からん)」
『何故、敵の『スタンド』の姿は見えているのに、本体である『スタンド使い』は姿が見えないのか?』
ジョセフ「(単純に遠距離から隠れて操作してるって言えば、それまでなんだけどよォ……)」
ジョセフ「(それとも本体の意志とは別に動く、『自立型のスタンド』?
そっちの方がまだ可能性高いかなァ……)」
ジョセフ「(そうなると何故、『スタンド』がこのようなことをしたのかを考えなきゃあな。
理由も無く……だなんて言わせねーぜ。てめーの行為には必ず理由がある)」
『何故、ジョセフを殺せる状況であったにも関わらず、その姿を消したのか?』
ジョセフ「(こいつが一番分かんねー。ツインテールの嬢ちゃんに俺が殺される姿を見られるのを嫌った?
そりゃあ、なんともお優しいことだぜ)」
ジョセフ「(けどよォ、例え見られたとしても、
お得意の『音』で記憶を弄れば済むことだろーが)」
ジョセフ「(つまり、あの『スタンド』には見られたくない理由が明確にあったってことよ)」
ジョセフ「(そこに『鍵』があるよーな……無いよーな)」
梓「あの……ジョジョさん」
ジョセフ「……うん? ああ、どうしたァ?」
紬「ムギ先輩、記憶が混乱してるみたいで……ジョジョさんのことを全く覚えてないみたいなんです」
ジョセフ「みてーだなァ」
梓「ですから、ムギ先輩を少し休ませようと思うんです。
なので、保健室まで連れていくのを手伝っていただけませんか?」
紬「私なら大丈夫よ、梓ちゃん?」
梓「だ、駄目ですよ! もしかしたら、どこかぶつけたのかもしれないじゃないですか」
紬「梓ちゃんって、意外に心配性なのね」クスッ
梓「当然です! 人一人丸々忘れてるなんて、ちょっと変ですよ」
紬「だって、本当に知らないんだもん。その……ジョジョさん?」
ジョセフ「(やはり嬢ちゃんから俺の記憶が消えている……
というより、別の記憶を植え付けられたと言った方が正解かァ?)」
ジョセフ「(じゃなきゃあ、今は何年何月ですかァ?
なんて聞かれても、『2008年の8月』なんてスラスラ出る訳がねー)」
ジョセフ「オーケイ! とりあえず、ここに留まるのはよくねー。失礼するぜ、琴吹お嬢さん」ガシィッ
紬「えっ? き、きゃっ! ///」
梓「(お、お姫様抱っこ……!)」
ジョセフ「まァ、何がなんだか分からねーだろーけどよォ、
ここは大人しくカワイイ後輩の言うことを聞いておくべきだぜ」
紬「は……はい」
ジョセフ「(嬢ちゃん達を巻き込む訳にはいかねえ。
少なくとも、今確実に殺意を向けられてるのは俺だけだ)」キリッ
紬「あ、あのぉ……///」
ジョセフ「どうした?」
紬「ジョジョさん? の手が……その……当たって……///」
ジョセフ「ゲッ!? ご、ごめェ~ン!」
梓「ていッ!」ゴッ!
ジョセフ「オーッノォーッ! 痛えーッ!?」
――――――
――――
――
学校の部室
梓「すみません、遅れました」ガチャリ
唯「あ、あずにゃんやっと来たぁ」
澪「何かあったのか?」
梓「実はさっきまでジョジョさんとムギ先輩と保健室にいたんです」
律「保健室? どっか具合悪いのか?」
唯「えっ!?」
梓「わ、私はなんでもないです! ただ……ムギ先輩がちょっと体調不良みたいで」
澪「ムギが? 珍しいな。皆で様子を見に行こうか」
梓「今、ジョジョさんがムギ先輩のことを看てます。
ムギ先輩は『私のことは心配いらないから練習していて』と」
律「そっかー……じゃあ、今日はお茶無しか」
唯「えっ!?」
澪「お前らなぁ……」
梓「ムギ先輩の言うとおり、ここは練習しましょう!」
梓「過ぎた時間は戻りません。ですから、これを機にもっと真面目に……」
唯「ムギちゃんのお茶が無いとイマイチやる気が~……」
律「唯に同じ~……」
梓「もお……」
梓「(なんだか、私も毒されてきちゃったなぁ……
前までは、この緩い空気はどうなの? とか思ってたのに)」
梓「(今じゃ、すっかりそれが当たり前になって楽しんでる私がいる……)」
梓「(って、ダメダメ! 私がしっかりしないと!)」
唯「あっずにゃあ~ん! 何、難しい顔してるのー?」ムギュウ
梓「唯先輩……びっくりした……」
唯「ごめんね、あずにゃん。ちゃんと練習するからそんな顔しちゃ駄目だよ」
梓「……はいはい」
唯「し、しどい! 信じてないねあずにゃん!?」
梓「言葉より行動ですっ」
『……楽しいなぁ……こんな日がずっと続いたら……』
保健室のベッド
紬「すぅ……すぅ……」
ジョセフ「寝つきが早くてよろしいことで」
ジョセフ「(本人は大丈夫つっても、生身で直に『スタンド』の攻撃を受けてんだ。
どんな影響があるか分かんねー以上、しっかり休んで貰わんとなァ)」
紬「ううん……もはやゲル状では飽き足らないのォ……ビシバシビシィッて……」
ジョセフ「うおッ!? ね、寝言かァ~? どんな夢見てんだよッ!」
ジョセフ「夢、夢か……」
ドリーム・ドランカー『校内全体の夢移行を確認、肉体の夢移行を確認、記憶の夢移行……二名失敗』
ドリーム・ドランカー『……能力を使用時に対象範囲を校内に集中させたのが失敗だったんですかね?
ちょうどその時、この二人は校内の外にいた。だから影響が中途半端に……』
ジョセフ「(あの『スタンド』も夢がどうのこうの言ってたなァ)」
ジョセフ「(夢……夢を見る。記憶の夢移行に二名失敗……ってのは、
話の前後からして、俺と嬢ちゃんのことか)」
ドリーム・ドランカー『次は貴方ですよ……ですが貴方だけはこの世界では不要な存在、いつ『覚める』とも限らない』
ジョセフ「(『覚める』って、物言いも気になるぜ。
まるで、俺が眠ってるみてーな言い方じゃあねえか)」
ジョセフ「(俺はこの通り、お目目パッチリだもんねー)」
ジョセフ「(何から『覚める』と言うんだ? 眠りから『覚める』? ……夢から『覚める』?)」
ジョセフ「(夢……移行……覚める……)」
ジョセフ「もしかして……見ているのか? 俺は……夢を?」
ジョセフ「待て待て……今、もんのすごぉ~く、喉まで何か出掛かってるぜーッ!?」
紬「むぎゅむぎゅ……何を言ってるの? ……そんなもの見えたかしら?」
ジョセフ「ま、また寝言かよッ! だからどんな夢見てんだよッ!」
ジョセフ「(……っと、長居しちゃあいられねえ。またいつ、『スタンド』に襲われるかも分からん)」
ジョセフ「じゃあな、嬢ちゃん……」
紬「人の腕からイバラは出ませんよ梓ちゃん……疲れてるのよ……ほら、ホテルに戻りまむぎゅ……」
紬「すや……すや……」
ジョセフ「……あァ?」
ジョセフ「(い、今……何て言いやがったァ?)」
紬「くー……くー……」
ジョセフ「人の腕からイバラ……俺の『隠者の紫』じゃあねーかッ!」
ジョセフ「なんで嬢ちゃんが『隠者の紫』を知ってるんだァ!?」
ジョセフ「ロンドンで初めて嬢ちゃん達に会った時に、確かに目の前で使ったけどよォ、
フツーの人間にゃあ、見えねーはずだぜッ!?」
ジョセフ「……人の腕からイバラは出ませんよ梓ちゃんだァ?」
ジョセフ「(見えていたのか……? 俺の『スタンド』がツインテールの嬢ちゃんには)」
ジョセフ「(そして『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えない……)」
ジョセフ「まさかのまさかだぜ、これはよォーッ!」ダダッ!
紬「うう……頭がぐるぐるする……ふにゅ……」
廊下
ジョセフ「うおおおおおーッ!」ダダッ!
唯「あれ? ジョジョさんだ、おーい!」
ジョセフ「じ、嬢ちゃんかッ!? ちょうどいいぜ」キキィーッ!
ジョセフ「あのツインテールの嬢ちゃんはどこだッ!?」
唯「あずにゃんのこと? あずにゃんなら部室にいるけど……どうしたんですか?」
ジョセフ「その嬢ちゃんに抜き差しなんねえ用事があんのよ……ん?」
ジョセフ「おめーは何してんだ?」
唯「いやぁ……実はコッソリ練習を抜け出してきたのですよ」
唯「今日のあずにゃん、いつもよりスパルタなんだもん。
だから、視線をすり抜け、あずにゃんの隙を突いて逃げたのです……」
ジョセフ「だから、背中にギターしょってんのか」
唯「あ、後が怖いぜ……」
ジョセフ「おめー、仮にも先輩だろーが。後輩にケツ叩かれてどうすんだよ」
ジョセフ「って、のほほんとお喋りしてる場合じゃあねーッ!」
唯「ほえ?」
ジョセフ「(さっさとツインテールの嬢ちゃんをとっ捕まえねえとッ!)」
ジョセフ「じゃあなーッ! ……うっ!?」
ドドドドドドドドドド……
ドリーム・ドランカー「こんにちはDEATH!」
ジョセフ「オーマイガッ!? よりによって、このタイミングでェ~ッ!?」
唯「?」
ドリーム・ドランカー「本当に余計な手間をかけてくれましたね……」
ドリーム・ドランカー「邪魔者は消えて無くなるDEATH!」
ジョセフ「ま、待ったァ! STOP! STOP!」
ドリーム・ドランカー「命乞いですか?」
ジョセフ「いーや、違うねッ! てめー……中野梓の『スタンド』だな?」
ドリーム・ドランカー「!」
ドリーム・ドランカー「……」
ジョセフ「へ、へっへっへっ! ドンピシャ?」
ジョセフ「そしてこの世界は『タイムスリップ』した世界じゃあねえ、
お前が作り出した架空の2008年の夢だ! コイツもドンピシャ?」
ドリーム・ドランカー「!!!」
ドリーム・ドランカー「……な、何故分かったんです」
ジョセフ「うおーッ! セェーッフゥ! てめーのその反応でようやく確信が持てたぜッ!」
ドリーム・ドランカー「カ、カマをかけたんですかッ!?」
ジョセフ「この手の探り合いは俺の十八番なのよーッ!」
ドリーム・ドランカー「グッ……!」
ジョセフ「この世界が『夢』で出来てるってんなら、色々分かってくることはある」
唯「(……ジョジョさん、急に一人で喋り始めてどうしたんだろ?)」
ジョセフ「さぁて、答え合わせといこうかァ?」バン!
ジョセフ「まず一つ目ッ! 俺は本当は若返っちゃあ『いない』ッ!」
ジョセフ「ず~っと、引っかかってたのよォ。
なんで俺はてめーの姿を認識出来るのに『スタンド』が出せないのかってなァ」
ジョセフ「答えは簡単、俺は『若返ったという夢を見せられていたから』」
ジョセフ「いや、俺だけじゃあねえ。この学校にいる者ほぼ全てにだろうなァ」
ジョセフ「つまり精神的、本質的な所での俺は何も変わっちゃあいねえ。
『スタンド』だって、ちゃあんと持ってる。だから俺はてめーを認識出来る。
だが、体は若返ったと思いこんでいるから『スタンド』が出せねえ」
ドリーム・ドランカー「……」
ジョセフ「黙り込むのはそれが正解だから」
ジョセフ「てめーの『夢』は看破されたッ! 俺は『覚めた』ぜ?」
カッ!
唯「うわっ、な、何ッ!? まぶし……!」
ジョセフ「……お~、戻った戻った。やれやれじゃな」バァーーーン!
最終更新:2013年01月30日 23:40