・・・

澪「ほら、ついたぞ梓」

梓「ぅ~ん…」ゴシゴシ

梓「ぁ~…なんだかすごい建物ですね…」

澪「そうだろ?この街の有名な“三大喫茶店”の一つなんだ」

澪「その三大喫茶店の中でもここはレトロのお手本みたいな建築とアンティークな調度品で支持が高いんだ」

店員「いらっしゃいませ。お二階の方へご案内します」

澪(お、二階に行けるんだ。ラッキーだな)

澪「うわぁ~ネットの写真で見るのと迫力が全然違う…異世界へ迷い込んだみたいだ…」

澪「古びた時計や蓄音機の調度品、この暖かな照明…雰囲気抜群だな」

澪「どうだ?梓」

梓「すごくゆったりできます…zzz」グデー

澪(ふふふ)

澪「私は珈琲とチーズケーキにしようとおもうけど、梓はどうする?」

梓「オレンジジュースとチーズケーキで…zzz」

澪「りょ~っかい!」

澪「あのっ、すみません!」

・・・

梓「……」モグモグ

梓「……」チューゴクゴク

梓「ふわぁ……」ユッタリ

澪「はぁ…もうずっとここに居たいな」

梓「ラーメンがあれば完璧です…」

澪「プフフwwこんなところにラーメンなんてないだろwwww」

梓「ふふふっ」

澪(笑ってる梓ってほんとかわいいなぁ…)

・・・

澪「なんだか膝ってすごく匂いしないか?くさいとかじゃなくて、なんか他の部分より匂いがする気がする」

梓「そうですか?ヨイショ」クンクン

澪「ははは、今ここで嗅がなくてもww」

梓「う~ん。たしかに自分の匂いはする気がしますけど」

澪「よくわからないか~」

梓「嗅いでみますか?」

澪「えっ?///」

梓「私のヒザ…」

澪「い、いやぁ…ココではさすがにちょっと///」

澪「また今度な///」

梓「そですか」

澪(梓ってよく分かんないなぁ…)ドキドキ

店主「………」チラチラ

澪(うぅ…なんか視線が気になるな)

澪「もういい時間だし、そろそろ出ようか」

梓「あ、はい」

店員「ありがとうございました」

澪「さて、もう暗くなってきたな。夜ラーメンといくか」

梓「夜はどこに行くんですか?」

澪「ここから少し遠いんだけど、この街一番のラーメン激戦区で知られる所…その激戦区の中でも1,2を争う有名店…」

梓「ホントですか!?」パァァ

澪(うっ///笑顔が眩しい…!)

澪「あぁ。梓はこってり系は大丈夫だったか?」

梓「はい!ラーメンならなんでもイケますッ」

澪「その店は二年くらい前に新しくできた店なんだけど、開店から行列が絶えなくてな、おそらくこの街でいま最も熱い店の一つだ」

澪「スープは超こってりした鶏白湯系で、すごく濃厚だけど鶏ベースだからクドくなくて女性にも人気らしい」

澪「いってみるか?」

梓「行きます!」

澪「よし。じゃあちょっと遠いからバスで行こうか」

梓「はい!」ニコニコ

澪(ふふふ。もっと笑顔になってくれ、梓)

・・・

澪「着いた。もうすっかり暗いなぁ。ここから少し歩くぞ」

梓「はい」

澪(しっかし絵にかいたような閑静な住宅街だな。古い建物が多くて、“イマドキ”の住宅街とは全然違うけど)

澪(ここら一帯がラーメン激戦区なんだなぁ)ワクワク

梓「………」テクテク

澪(梓の足取りも非常に軽やかだ)

澪「………」テクテク

梓「………」テクテク

澪(ラーメン屋がチラホラ見えてきた!やべぇ、オラワクワクしてきたぞ!)

澪(ラーメン屋以外にも結構いろんな飲食店があるんだなぁ)

ベンベンベン

澪(お、三味線?なんだここ…洋食屋?)

ベンベンベン

澪(くたびれた感じの喫茶店みたいな洋食屋。中で店主と思しき人が一人三味線を弾いてる…)

ベンベンベン

澪(お客さんだれもいない…あ、目が合った。き、気まずい!)

澪(こんな街外れの住宅街だもんな。ヨソから来る人はラーメン目当てで来るだろうし…)

澪(またここに来る事があればいってみようかな…)


ガヤガヤ

澪「お?歩道に人がわんさかいる。もしかしてここか?」

梓「ぁ~…」

澪「お、ここだ。着いたぁ」

澪「凄い行列だなぁ…開店30分前だというのにもう20人は並んでるぞ」

梓「凄いです…」

澪「さ、並ぼう」

梓「はい」

澪(これは開店してもまず私たちは店に入れないだろうな)

前の人「あ、どうぞ」ペラ

澪「あ、どうも(お品書きが回ってきた)」

澪「ん~。梓はどうする?」

梓「私はこの“黒だく”ってのにしてみます」

澪「おっけー。私はこの一番普通の“鶏だく”のチャーシュー増し、玉子かけご飯セットと“チャー玉”ってのを頼もう」

澪(もうお腹ペコペコだ!)

澪「メニューどうぞ…」

後ろの人「あ、どうも~」

・・・

澪「ふー、寒いなぁ…」

梓「はい…」ガタガタ

澪「ホントに寒そうだな…こっちこいよ」

梓「ぁ……ぅ…///」ギュー

前の人「鶏だくで」

店員「かしこまりました」

澪(お、列に並んでるお客さんにオーダー取ってる)

店員「お二人さまですね?ご注文はお決まりでしょうか?」

澪「え~と、鶏だく玉子かけご飯セット、チャーシュー増しお願いします」

店員「あ、え~と?鶏だくチャーシュー増しの玉子かけご飯セットって事ですね?」

澪「え?あ、はい」

澪(あぁ~ちょっと単語が前後するとややこしいのか。ごめんなさい)

梓「私は黒だくチャーシュー増しで」

店員「はいかしこまりました」

澪「あっ、あと“チャー玉”お願いします!」

店員「申し訳ございません…チャー玉の方売り切れてしまったんです」

澪「あ、そうなんですか。じゃあ普通の煮玉子は…」

店員「申し訳ございません。それも売り切れです」

澪「あ、わかりました…(ぐぬぬ…)」

・・・

店員「はい、お待たせしました!先頭から順番に店内にお入りください!」

ゾロゾロ

澪「お、やっとか」

ゾロゾロ

店員「申し訳ございません!ここからのお客様、もうしばらくお待ちください!すみません」

澪(やっぱり、この人数は入りきれないか)

澪「もう少しだ梓」

梓「はい…」

・・・

店員「ありがとうございました~!」

おっさんA「あ~うまかったなぁ!」

おっさんB「超ドロドロやったわぁ!」

澪(ん?あのおじさん何か持ってる。ドロップの缶?なんだろ…)

澪(スープの素かなにかか?)

店員「お次の二名様店内へお進みください!」

澪「お、やっと入れる」

梓「ふぅ…」

澪(ほぉ~店内はラーメン屋らしからぬ匂いだ。鍋物っぽい?)

澪(打ちっ放しのコンクリートとブロック塀、綺麗なレンガ、明るい木のカウンター)

澪(今どきだなぁ)

澪「店内でもお客さん椅子に座って待ってたのか。もう少しの辛抱だな…」

女B「キャハハハ」クッチャクッチャ

女C「アヒャヒャヒャ」ズゾゾビチャビチャ

澪(なんて野郎共だ…ペチャクチャ喋りながら汚い食べ方しやがってぇ!!!)

澪(あんなダラダラ遅くて汚い食べ方、ありえないぞ。絶対おいしくないよ)

澪(大体こんな行列できてんのに、ゆっくりする気マンマンかよ!サテンじゃないんだぞ、空気読め!)

店員「お二人様、お座敷の方へどうぞ~!」

澪(キタキタキタァー!!!)

澪「ほら梓、奥の方がいいだろ」

梓「ありがとうございます」

澪(4人席の狭い座敷、対面と相席だけどテーブルの上に仕切りが置いてある。よしよし)

店員「お待たせしました!鶏だくチャーシュー増し玉子かけご飯セットと黒だくですね~!」ゴトゴト

澪「待ってましたぁ」

梓「………」ソワソワ

澪「じゃあ…」

澪梓「いただきます!」

澪(っていうかチャーシュー増しすごいな。こんなに肉厚のチャーシューが器に360度展開している)

澪(とりあえず、チャーシューはどんぶりの右上方に沈ませ加減に安置…ふふっ後でなっ)

澪(しかしスープがすごい粘度だな)ズズズ

澪(ほほぉ~濃厚なのにあっさり!鶏がすんごく効いてる!“ポタージュ”と言われているわけだよ)

澪(クリーミーなスープが麺に絡んでくる絡んでくる…スープというか、もうパスタソースのレベルだ)

澪(麺を持ち上げるのも一苦労だ)

澪「………」ズルズルズルチュル!

澪(うん。このまろやかな舌触りと触感…普段食べないジャンルだから、一層新鮮に感じる)

澪「………」フーフー

澪「………」ズゾッズルズルズルチュルン

澪「………」モグモグモグ

澪(黒胡椒の風味がほのかにしていいなぁ…)ズルズルズル

梓「………」チュルチュルチュル!

澪(梓も必死に食べてる)

澪(スープがこってりしすぎて、上に乗ってる白髪ねぎが付け入る隙がないな)

澪(って、ふへぇ!?なんだこのメンマ)

澪(大きいねぇ!白髪ねぎで隠れてて気が付かなかったけど、よく見ればすごくデカい!)

澪(木材の切れ端みたいな、デカいメンマが二つ…)

澪「………」シャクホロリモグモグ

澪(うん!味が染みてて、中までしっかり柔らかい!)

澪「………」モグモグ

澪(チャーシューはパサパサ系だけど、柔らかくて肉の味が美味しいね)

澪(玉子かけご飯はどうだろう…白飯と生卵、これはシーチキンとネギかな?)

澪(玉子かけご飯用の醤油はこれか。よーし、全部白飯に投入だぁ)ザバァ

澪「………」ハムッハフハフハフッ!

梓「………」ハムッチュルチュル

澪「………」フーフーズゾゾチュル

梓「………」ズルズルチュルッモグモグ

澪「………」ハムハムハフハフ

梓「………」ズズズハフハフ

澪「………」モグモグゴックン

梓「………」ゴクン

澪梓「ふわぁ……!」

澪梓「………」

澪「ぷふふっ」

梓「ふふふっ」

澪「あ、梓。スープが顔に付いてるぞ」フキフキ

梓「澪先輩こそ…」フキフキ

澪(う…なんだか私たちすごく恥ずかしい事してる気がする///)

店員「お待たせしました!一名様カウンター席の方どうぞ!」

澪「そろそろ帰るか」

梓「はい」

・・・

澪「家までもうすぐだぞ~がんばれ」

梓「ぅぅ…」コックリコックリ

澪「ほら、しっかりしろ」

梓「もう食べられません…」ウツラウツラ

澪「こりゃ半分寝てるなぁ~」

梓「ぅ…」ガクン

澪「おっと大丈夫か梓!」

梓「スースーzzz」

澪「全くしょうがないなぁ…」ヨイショ

澪(後輩をおんぶするなんて初めてだ…)

澪(梓って軽いなぁ…でもすごく暖かい)

梓「みぉ…センパイ…」ギュウ

澪「ん?どした?」

梓「ラーメンに誘ってくれて、ありがとう…ご…ざいま…」

澪「なんだ水臭いぞぉ~?同じ部活のせんぱ…ぃ…」

梓「スゥスゥ…」

澪(寝言か…?)

澪「ふふふ」

澪「もっといろんな所へ連れていってやるからな、梓」

・・・

それから、私と梓は都合が合えばいつも街へ行き、ラーメンを食べ歩きました。
ラーメンを食べてる時の梓はとてもホッコリしていて表情豊かで、いつも学校で見る梓とはまるで別人です。
時にはラーメンの事で口論になったり、色々共感し合ったり…そんな梓の色々な顔を見る事ができる私は、他人には無い何か特別な物を独り占めしている気分でした。
最近では水族館や植物園、喫茶店などいろいろな所も回っています。梓は本当に楽しそうに笑っています。
私はそんな幸せそうな顔をする梓を見るのが好きです。
梓と一緒にいられて、私は今とっても幸せです。


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最終更新:2013年02月09日 22:59