学校昼休み・・・

和「澪、一緒にお弁当食べない?」

澪「お、和。いいよ~食べよう食べよう」

澪「和は弁当自分で作ってるんだろ?」

和「そうよ。毎朝兄弟の分も作ってるわ」

澪「へぇ~大変だなぁ。なぁその生姜焼きとこれ交換しないか?ちょっと和の弁当食べてみたい」

和「いいわよ、ほら。味は保証しないけど」

澪「いただきま~す」パク

澪(うん、ウマい。さすがだなぁ)

澪(弁当の生姜焼きって冷めて油でギトギトになりがちだけど、全然そんな事ない)

澪「うんうん」モグモグ

澪「なぁ和。普段笑わない人が笑ってたりすると、すごく幸せそうに見えるよな」

和「え?」

澪「なんかこう…その人の意外な一面を見たようで、自分まで嬉しくなってきちゃうよな~」

和「え~と、何の話?」

澪「あっ、いや…なんとなく思っただけだよ。気にしないで!」

和「………」

和「ふふっ…澪、変ったわね」

澪「へ?」

澪「そ、それはどういう…」

和「そんな悪い意味じゃないわ。最近の澪はなんだか見ててすごく充実してる。満たされてるって感じに見えるわ」

澪「そ、そうかな…?///」

和「何かいい事あった?」

澪「え、う~ん…(梓…)」

澪「ま、まぁな!部活も楽しいし、勉強もはかどってる!」

和「ん?う~ん…」

澪「えっ?」

和「“学校生活が楽しい”ってのとはまた違う感じに見えたんだけど…まぁいいわ」

澪「あ、あはは…」

澪(そうか…ついこの間までは“足りてない”って感じてたんだっけ…)

澪(気が付けばそんな悩み、何もかも吹っ飛んでた…充足してる)

澪(梓と一緒にラーメン食べたり…お出かけしたり…)

放課後部室・・・

澪「おーす!」ガチャ

律「お、澪おーす!」パチン

紬「澪ちゃんおーす♪」パチン

澪「また将棋かぁ~。もう完全にハマってるなぁ律」

律「へへっ、ま~ね~」パチン

紬「あ、りっちゃん鋭い手ねぇ~」パチン

唯「たのもー!」ガチャ

紬「あら唯ちゃん」

律「おっす唯!」ビシィ

唯「りっちゃんおっす!ムギちゃんおっす!澪ちゃんおっす!」

梓「こんにちわ」ガチャ

唯「あ、あずにゃんおっす!」

紬「じゃあお茶にしましょうか♪」

・・・

紬「昨日初めてカップ焼きそばを食べたの~」キラキラ

律「いまさらかよ!」ビシッ

唯「カップ焼きそば美味しいよね!!」

澪「ははは」

梓「…」

紬「あら梓ちゃん…口に合わなかった?もしかして一口も食べてない?」

梓「あ、いえ…今はあまり食欲が無いので…」

澪(もしかして放課後、私とラーメン食べに行く約束してるから、ケーキは控えてるのかな?そこまでしなくてもいいのに…ww)

唯「あ、そういえば澪ちゃんこの間あずにゃんと二人でラーメン食べてたね」

澪「へっ!?」

紬「まぁ!そうなの?」キラキラ

澪(ムギの反応はいちいちおかしい!)

唯「街で見かけたよ~。車に乗ってて声はかけられなかったけど」

澪「あ、ああ見てたのか。そうなんだ、たまたま街で…」

唯「別の日にも見かけたよ!違うラーメン屋で。休みの日は結構二人で遊んでるの?」

律「おっ、澪ぉ抜け駆けかー?」

澪「あ、いや…梓も私もラーメンが好きで、たびたび一緒に食べ歩いてるんだ」

澪「なぁ梓…?」

梓「はい!」ニコニコ

唯律紬(すごい笑顔!!)

律「へぇ~梓がラーメン好きってなんか意外だなぁ」

律(梓のあんな顔初めて見たぞ)

唯「私も好きだよ!!」

紬「私ラーメンはまだ食べたことないわ…」シュン

律「おいおい…」

梓「み、みんなで食べに行きますか…?美味しい店たくさんありますよ…」

澪(えっ…)

律「お、いいね~行こうぜ!」

唯「行こう行こう!」

紬「素敵ね!」

澪(梓…なんか残念だけど、普通こういう流れになるよな~)

澪(ま、そうだよな。みんなで楽しく食べた方がおいしいだろうし。私もそうしたいと思ってたよ…)

澪「………」ショボーン

梓「………」

律「そうと決まれば早速練習だー!!」

澪「練習かよ!」

律「ん?澪しゃん練習したかったんじゃないの~?」

澪「いや、話の流れ的にその…」

律「ん?ん~?」ニヤニヤ

澪「う~…えぇい練習だ練習!さっさと練習しよう!」

紬「は~い♪」

唯「オッケー!」

律「放課後ティータイムは最強だぁー!」

澪(なんなんだこのノリ。ワケワカランww)

律「さーてと…」

梓「ぅ…」フラフラ

律「はは、梓。さぁ起きろ起きろ~!」

澪「?」

梓「ぅぐ…あぁ…」フラッ

梓「…」バタンッ!

梓「………」

澪「え…?」

澪「あ、梓!?」

唯「あずにゃん!?」

律「お、おい、どうしたんだ梓!」

澪「梓どうしたんだ!?しっかりしろよ!」

紬「梓ちゃん…大変!」

澪「梓!?おい!」

澪「梓?」

澪「あずさ!!」




病院・・・

澪「………」

律「………」

唯「………」グスン

紬「………」

梓母・父「すみません…梓のためにわざわざ…」

澪「あ、いえ…」

律「後輩ですから…」

紬「心配するのは当然ですわ…」

唯「あずにゃん…」グスン

医者「中野さん」ガチャ

梓母・父「はい…」

医者「娘さんは腎臓病の初期段階と思われます」

医者「倒れたのは血圧が低下して貧血になった為でしょう」

医者「腎臓の機能が弱まると、赤血球の産生を促進するホルモンが減少して貧血になります」

医者「腎不全の初期段階の症状が他にいくつか出ていますが、まだ軽度ですし命に別状はありません」

医者「腎臓が弱まったのは恐らく脱水症状や過度の塩分の取り過ぎが原因と思われます」

澪(…っ!)

医者「普段習慣的に塩分を多く摂取していたなど心当たりはありますか?」

梓母「い、いえ…特に心辺りは…」

澪(うぅ…)

医者「それでも梓さんは体格が小さいので、この歳の平均的な女性のそれよりも負担が大きいのでしょう」

医者「とりあえず更に詳細な検査のため、このまま入院という事になりますが…」

梓母「はい…わかりました…」

梓父「ありがとうございます…」

澪「う、うぅぅぅ…わたしのせいなのか?」

澪「私が梓をラーメンに誘ったから…」

律「み、澪…」

医者「君たちはもう家に帰りなさい…」

澪(そんな…そんなぁ……)

・・・

澪「………」トボトボ

律「澪っ…」

澪「………」トボトボ

律「なぁ澪!」

澪「…」

律「梓はお前のせいじゃないって!」

律「梓のやつ、ちっこいから…ちょっと負担がかかり過ぎただけだって!また元気になるさ」

澪「うるさい!よくもそんな無責任な事が言えるな!」

澪「そんな身体の弱い梓を毎日のように連れまわして、一緒にラーメン食べ歩いてたのはこの私なんだ!」

澪「全部私が悪いんだ!私がバカだったんだ…」

律「そ、そんなに思いつめるなよ…」

紬「澪ちゃん…」

唯「澪ちゃん、そんな風に自分を責めないで…」

澪「私が少し気を付けてたら…もう少し梓の事を思っていれば……」

澪「あ、あずさぁ……」ポロポロ

律「澪…」

律「ほら、今日はもう帰って休め」

澪「グスゥ……うん…」ポロポロ



翌日澪の家・・・

律「澪~?」ガチャ

澪「………」

律「ほら、学校の課題のプリント。ここに置いておくからな」

澪「ありがとう…」

律「今から梓の所に行くけど、行けるか?」

澪「うぅ………」モゾッ

律「そうか。まぁ、行ったところで私たち邪魔になるかもしれないから梓に会えるかどうかわからないけどな…」

澪「………」

律「じゃあ、行ってくるな」

澪「…っ…ら…しゃい」ボソ

澪「………」

澪「………」

澪「………」

澪「………」

澪「………」

澪「やっぱり私も行こう…」

・・・

澪「………」トボトボ

澪(今から病室に行っても大丈夫かな…?)

澪(いや…心配だ。梓が心配だ!早く梓の顔が見たい!)

澪(そうだ、ちゃんと謝らないと…)

澪「………」トボトボ

澪「ここか…」

澪(よ、よし…)スッ

梓『えぇ!?』

澪(梓!?)

梓『そ、そんな…』

澪(誰と話してるんだ?)

梓母『つらいでしょうけど…でも…』

澪(よく聞こえない…)ソッ

梓『もう…何も食べられなくなるの…?』

澪(え…!?)

梓母『お医者様が言うには、最悪…人工透析しなければならないそうよ…』

梓母『食事制限も糖尿病患者の人とは比にならないくらい……』

梓『そんな、やだ…もう美味しい物何も食べられなくなるの…?』

梓母『梓…ごめんなさい』

梓『いやだ、いやだよぉ!お母さん!』グスン

梓母『梓、ごめんね!ごめんね!お母さんもお父さんも、出かけてばかりでちゃんとしたご飯作ってあげられなくて…』

澪(梓……)プルプル

梓『やだよぉぉぉぉ…!』

梓母『ごめんね!ごめんね!本当にごめんね、梓』

梓『あかぁさぁぁん!うぅぅあぁぁぁ!!』

澪(ぁ……あぁぁ…あぁぁぁぁぁぁ!)

梓『うわぁぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁ!うっ…うっ…!』

澪(私が…こわした…)

澪(私が梓の人生をめちゃくちゃに…!)

澪(私…最低だ…)



3日後・・・

律「おお、和」

和「あら、律じゃない。珍しいわね」

律「あ、あぁ。…澪は来てるか?」

和「来てないわ。風邪か何か?欠席の理由、先生からも聞かされて無いんだけど…」

律「い、いやちょっとね…;」

和「何かあったの?」

律「いやぁ…その」

和「ちょっと何よ、気になるじゃない…澪が3日も学校休んでるなんて」

律「わ、分かったよ」

律「…なぁ、和は放課後空いてるか?」

放課後・・・

和「あの梓ちゃんが澪と…」

律「そうなんだよ。それで今梓はこの病院に入院してる」

唯「あずにゃん元気になったかな…」

紬「具合がよくなっていればいいのだけど…」

律「ここだ」コンコン

「はい」

律「梓?」ガラッ

梓「先輩…」

律「よぉ…」

唯「あずにゃん」

和「梓ちゃん…」

梓「和先輩まで…」

紬「梓ちゃん、大丈夫?」

梓「あ、はい。お医者さんが言うには“治らない”わけではなく、ちゃんとしていれば早く退院もできて…そのうち、普通の食生活に戻れるみたいです」

梓「もちろんそれなりに制限は付きますけど…」

梓「でも!ラーメンだって…また」

律「そ、そうか!また元気になるならよかったよ」

梓「はい。ご迷惑をおかけしました…」

梓「……澪先輩は」

律「澪は今日も来てない」

梓「…」

律「澪は学校休んでるんだ…ずっと。責任感じてるんだよ」

梓「私の身体が弱いから…澪先輩に迷惑かけてしまいました…」

梓「うっ…うぅ…」ポロポロ

律「おいおい、そんな泣くなって…」

梓「でもぉ…」ポロポロ

唯「あずにゃんは悪くないよ…誰も悪くないよ」

紬「ちょっと度が過ぎちゃっただけよ。またよくなるんでしょ?」

梓「でも…あの日も澪先輩と…約束…してたのに…」グスングスン

梓「澪先輩、とっても楽しみにしてたのに…!」ポロポロ

梓「澪せんぱぁぁぃ!うぅぅぅ…」ポロポロ

律「だから泣くなよぉ!こっちまで…」グスン

和「………」

和「梓ちゃん!」

梓「は、はい…」ポロポロ

和「梓ちゃん。澪ね、ついこの前まではあんまり元気が…というか覇気が無かったの」

和「きっと澪はこの学校生活の繰り返しにどこか飽いていたのね…授業中や休み時間もぼーっとしてる事が多かったわ」

和「でも、最近の澪はとても活き活きしてて、すごく充実してるように見えた」

和「きっと、梓ちゃんのおかげだわ」

梓「ぇ…」

和「澪は梓ちゃんの意外な一面を知ったから、ワクワクしてたんでしょうね」

和「梓ちゃんの笑ってるところが見たくてしょうがなかったのよ」

和「そのために、梓ちゃんを連れて、一緒にラーメンを食べてたんだわ」

和「梓ちゃんの幸せそうな顔が見たいから……」

和「…梓ちゃんの幸せそうな顔を見て、自分も幸せになりたいから」

梓「ぅ……」ポロポロ

和「澪ね、梓ちゃんの喜んでるところを見ると自分も嬉しくなるって確かにそう言ってたわ。それはもう幸せそうに」

和「だから、もう泣くのはやめなさい。澪は泣いている梓ちゃんなんか見たくないわきっと」

和「澪の事を思ってるのなら、早く治るように笑顔でいなさい」

梓「ぅぅぅ…」ゴシゴシ

梓「わ、わかりました…私、頑張ります!」ニコッ

律「よし、偉いぞ梓」

紬「梓ちゃん。頑張ってね!」

唯「そうだよ!あずにゃん!泣いてばかりいたら脱水症状になっちゃうよ!」

律「いや、それは無いだろ!」ビシ!

あははははは

梓「ふふふふっ!」

和「梓ちゃんってこんなに明るい子だったのね。澪がいれこむわけだわ」

梓「ふふっ…みなさんありがとうございます…」

律「へへへ、なんたって私は放課後ティータイムのリーダーだからなぁ。このくらいは当然さ」

唯「早くみんなでまた練習したいもんね!」

紬「梓ちゃん、早く元気になってね!」

梓「はい!」

和(後は…)

律(……澪だな)


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最終更新:2013年02月09日 23:01