最近どの店に行っても、カラフルで可愛らしいポップで溢れてる。
俗に言う、いや、俗に言わなくてもバレンタインデーのせいだ。
バレンタインなんて、お菓子会社の戦略だ~、なんて言うけど、感謝の気持ちを表すものとしてありだと思う。

よって、私がここに来たのもそのためだ。
決して澪がどうこうとか言うわけじゃない。
澪だけじゃなくて、みんなの分も考えてるわけだし。

律(よし…)キョロキョロ

ササッ

『周りの子とは違うチョコで差をつけてみよう!』

『大好きの気持ちを込めて、あの人に…』

『ドキドキな手作りチョコ、してみない?』

律「//////」

いや、深い意味はない。
感謝の気持ちだし、普段みんなにお世話になってるし、ぜんっぜん深い意味はないし。

律「友チョコ作るんだけどどれがいいかな~…///」トコトコ

律「友チョコだから、あんまり気合い入れてもな~…。でもでも、感謝の気持ちだしな~。迷うな~。これなんかいいな~///」ソロッ

律「////」ペラペラ

?「あれ?あの人って…」

律(う~む…。)

?「律先ぱーい!」

律「どひぇーーーぃ!」パターン!

純「うわぁ!」ビクッ

律「だだだ誰ダァ!?」

純「こ、こんにちは…」バクバク

律「なんだ、佐々木さんか…」

純「だから!鈴木です!鈴木純です!って言うか、いっつも『純ちゃん』って呼んでるじゃないですか!」

律「このやり取りはお約束ですから!」

純「ボケはやりすぎるとウケませんよ!」

律「ぐっはぁ~!」

純「お?」

律「ん?」

純「おやぁ~?」ニヤニヤ

律「はっ!」

純「へぇ~。なるほどね~」ニヤニヤ

律「ちが!これは、たまたま見てただけで…」

純「素敵なチョコ作り…上級者向けですか~」

律「みんなに!みんなに作ってみようかな~ってさ!」アセアセ

純「わざわざ上級者向けね~」

律「たまたま手にとったのがこれで!えっと、え~っと、こんなもんこうだー!」ポイ

店員「お客さん?」ニッコリ

律「あぁ!すみませんすみません!」

純(忙しい人だな~)

律「たはは~、どーもすみませんね~…。あれ?」

唯「ふんふふ~ん♪」

律「唯?」

唯「あ、りっちゃん。おいすー」

律「おいすー。何してんだ?」

唯「あのね、憂が私に好きなチョコ作ってくれるんだって」

律「話が見えん」

唯「だから~、この中からどれか作って貰おうと思って買いに来たんだ~」

『世界のチョコお取り寄せ100選』

律「憂ちゃん!」ウウッ

純「健気な子っ!」ウウッ

唯「あー、純ちゃんやっほ~」

純「こんにちは。唯先輩」

律「のん気か!」

律「だいたい世界のチョコなんてハードル高すぎるだろ。しかもレシピもないのに」

唯「え~?憂なら大丈夫だよ~」


純「憂なら何とかしそうな気がする…」

律「あははー…確かに」

唯「純ちゃんはどうしてここに?りっちゃんは分かるけど」モフ

律「おい!」

純(ナチュラルに抱きつかれたー!)

律「こーら!唯!純ちゃんが迷惑だろ」

唯「ほえ?そなの?」

純「いえ、迷惑と言うか…ビックリしたと言うか…」

唯「オッケーでした!」フンス

律「いやいやいやいや」

唯「か~ぁわいいよ~」モフモフ

純「え~…」

律「…」ウズウズ

唯「あずにゃんもいいけど、純ちゃんもいいなぁ~」モフモフ

律「…唯ばっかズルい!あたしも混ぜろ!」モフ

純「えぇぇえぇー!」

律「いや~、実はずっと前から気になってたんだよな~。このモフモフ」モフモフ

唯「いいでしょ~?」モフモフ

律「いいな~」モフモフ

純「あの、お二人とも…」

唯「なに?」

律「ん~?」

純「言いにくいんですけど…人目が…」

唯 律「「あ…」」

ワック!

律「ごめんなさい」フカブカ-

唯「このとーり」フカブカ-

純「あぁ!そんなに気にしなくていいです!別に嫌なわけじゃないですし」

律「あ、そなの?」ケロッ

唯「ならいっか」ケロッ

純(なんかこの2人私と同じタイプな気がする…)

唯「それで?純ちゃんはなんで本屋さんにいたの?」

律「私にも聞け!」

唯「りっちゃんは澪ちゃんにチョコ作るんでしょ?」

律「」

純(もしかして、バレてないつもりだったのかな…)

純「えっと…私もムギ先輩にチョコを作ってみようかな~、なんて…」

唯「そうなんだ~。じゃあじゃあ、りっちゃんと一緒に作っちゃえば?」

純「律先輩と?」

唯「りっちゃんお料理上手だし、おもしろいよ」

純(おもしろさ関係ないような…)

律「誰も作るなんて言ってないだろ!たまたま暇だったからブラブラしてただけだし!////」

唯「うんうん」

純「ちゃんと分かってますよ」

律「その生暖かい目はなんだー!」

純「でも律先輩と一緒って言うのはいいアイデアかも…」

唯「でしょ~?」

純「澪先輩にもチョコ渡したいから、味の好みが…」

律「まぁ!聞きまして奥さん?!」

唯「バッチリ聞きましたわ!」

律「ムギという本命がいながら浮気ですって!」

唯「ふしだらですわね!」

純「同じベーシストとして尊敬してるだけです!」

律「だよね~」

唯「ね~」

純(この人達は…)

律「でもさー、もし例えば私が澪にチョコ渡すとして、いや、例えばだぞ?ちょっと迷うんだよな~」

唯「なにが?」

純「律先輩のチョコなら喜んで食べると思いますよ」

律「だって澪いっぱいチョコ貰うじゃん?他の子と違うチョコ渡したってやっぱり飽きるんじゃないかな~、なんてさ」

純「なるほど」

唯「私だったらいっぱい貰えたら嬉しいよ?」

律「唯もなんだかんだで貰うからな~」

純「そうなんですか?」

律「あー…なんかこう…ちっちゃい子に餌付けするような感じで…」

純「なるほど…」

唯「しどい!」ガーン

律「あげたら本当に嬉しそうな顔しちゃうからな~。こいつは」ウリウリ

唯「だって嬉しいんだもん」

純「それだけ食べて太らないって…」

律「純ちゃんも他人事じゃないかも」

純「え?どうしてですか?」

律「こんな事言っちゃなんだけど、軽音部は澪だけじゃなくて、みんなチョコ貰ったりしてるの知らなかった?」

純「じゃあ…ムギ先輩も…?」

律「去年は軽く10個は貰ってたな」

純「そ、そんなに?!」

律「バレンタインくらい目一杯気持ち込めて作って渡したいし、喜んでもらってご褒美のギューとかしてほしいのは山々なんだけどな~」

純「そんな…どうしよう…」

唯「そんな…」

律「おいおい。唯まで落ち込むことないって」

唯「2人のチョコの味見役しようと思ったのに!」

律「そっちかい」ビシッ


ーside 澪ー

『お菓子やお料理にまぜちゃえ!相手のハートをしっかりキャッチ!初めてでも安心黒魔術』

澪「ふむ…」ペラ

澪(媚薬?)ジッ

澪(なになに…これを混ぜれば男女問わず相手はあなたにメロメロ間違いなし、あなたの思うがままに。敏感になりすぎて止まらなくなっちゃう…だと…!)

澪(あの感度がいい律が更に敏感に…)

もんもんも~ん

律「澪ぉ…。なんか体が変…」スルスル

澪「り、律…」

律「澪の冷たい手で体冷ましてぇ…」スッ

澪「りつぅぅぅ!」ガバチョ


澪「律!今夜は忘れられない夜にしてやるからな!」

澪母「澪ちゃんご飯よ~」

ガチャ

澪「律!いつもより敏感じゃないか…ここか?ここがいいのか?」

バタン

澪父「母さん、澪は?」

澪母「なんだか妄想で忙しいみたい。ほら、もうすぐバレンタインだから」

澪父「へえ…」

澪母「枕をりっちゃんに見立て、いやらしい手つきで襲ってたわ」

澪父「詳しく聞きたくなかったよ!?」

澪母「私達バレンタインなんてすっかりご無沙汰よね」

澪父「そうだね。どうだろう、バレンタインに僕らも食事に行かないか?」

澪母「あなた…」

澪父「なんだか照れるなぁ…」

澪母「きっと澪ちゃんもりっちゃんと勤しんじゃうから、ちょうどよかったわね」フフフ

澪父「空気台無しだよ!」

澪「ママごめんね。宿題してたら夢中になっちゃって…」スタスタ

澪母「あら?お疲れ様」

澪父(色々と気まずい…)

澪「パパ?」

澪父「なんだい?」ビクッ

澪「どうしたの?ボーっとして」

澪父「そうかな?バレンタインに母さんと出掛ける事になったから、浮かれてるのかもね」

澪「ぃよっしゃぁ!」ガッツ

澪父「え?」

澪「なんでもないなんでもないよ!」アセアセ

澪母「本音がだだ漏れしちゃったのね」クスクス

澪「もう!ママったら/////」

澪父(えっ?なんだこの空気)

澪母「ふふふ…。澪ちゃんもすっかり恋する女の子ね」

澪「ママぁ…///」

澪父(え?僕がおかしいの?おかしくないか?あれ?)

澪母「浮かれるのもいいけどハメすぎちゃダメよ?」

澪「…わかってるよ…」

澪父(ここは羽目を外さないように注意するシーンじゃないかな?)ダラダラ

澪父(そうか!これは夢なんだ!パパお仕事行っちゃうの?なんて聞いてた天使のような澪がこんな事になるはずがないんだ)

澪「パパどうしたのかな?」

澪母「仕事では順応できても、子供の事には順応できなかったのね」

澪父「母さんは順応力ありすぎだよ…」


ワック

唯「ところで純ちゃんはムギちゃんの付き合ってるんだよね?」

純「そうですよ」

唯「きっかけって何だったの?」

純「うへ?!」

律「はいはい!私も気になりまーす!」

純「長くなりそうなのでまた今度~…」

唯「時間ならあるから大丈夫!」

律「早く早くぅ!」ワクワク

純「…。数ヶ月前になるんですけど…」

ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー

純(ちょっと早く出すぎたかなー?あんまり人いないや)

そろーりそろーり

紬「わあ!」

純「わああああーー!」

紬「大成功!」

純「つつ紬先輩?」

紬「おはよう。純ちゃん。驚いた?」

純「ええ、かなり…」

紬「やったぁ~!」

純(変わった人だなぁ)

紬「なんだか今日はいいことありそう」ニコニコ

純「はあ…」

紬「純ちゃんはいつもこの時間なの?」

純「今日はなんか早く目が覚めちゃって。いつもはもっと遅いんですけど…」

純(本当は遅刻ギリギリなんて言えない)

紬「そうなんだ~」

純「紬先輩はいつもこんなに早いんですか?」

紬「今日はいつもより遅めよ。電車に乗り遅れちゃって」

純「はは~ん…。さては寝坊ですね!?」


紬「ううん。私も朝早く目が覚めたから新曲作りしてたの。そしたら、つい夢中になっちゃった」

純「軽音部の曲作りですか」

紬「うん。すっごく楽しいよ」

純「すごいなー。紬先輩は」

紬「どうして?」

純「だって頭もいいし、ピアノもうまいし、美人で優しいし、曲まで作れちゃうんですもん」

紬「そんな…」テレテレ

純「しかもお金持ち!一日でいいから紬先輩の家で過ごしてみたです」

紬「えっ?」ピタッ

純「えっ?」

純(はっ!もしかして、お金持ちって言われるのがなのがコンプレックスなんじゃ…)

純「あ、あの…」

純「ごめんなさ「じゃあ純ちゃん!今度私のお家に遊びに来てくれない?!」

純「…へ?」

紬「やっぱりダメだよね…。急にこんな事言われても困っちゃうもんね」シュン

純「そんな事ないですよ!ただ、なんで私なのかな~?って…」

紬「だって、梓ちゃんのお友達だもの」

純「ん?」

紬「梓ちゃんも遊びに来た事あるの。だから純ちゃんも来ないかなって思ったんだけど…」

純「?」

紬「?」

純「私、軽音部じゃないんですけど…」

紬「?梓ちゃんとお友達でしょ?なら私も仲良くなりたいもん」

純「…!……ぷっ…くふふ」………

紬「なにかおかしかったかしら?」

純「あっははは!紬先輩って面白いですね」

紬「???」


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最終更新:2013年02月17日 12:44