「和ちゃーん」


「どうかしたの、唯?」


「周りが暗くなって来たし、何か怖い話しようよー」


「怪談?
あんた、怪談苦手じゃなかった?」


「苦手だけど暑いのよりはマシだよう……。
蝋燭とかある? 百物語みたいにして、怖い話しようよ!
身の毛もよだつ怪談で全身涼しくなろう!」


「うーん……、まあ、いいんじゃないかしら。
他にやる事があるわけじゃないものね。
怖い話ってどんなタイプの話でもいいのかしら?
例えば幽霊、妖怪とかの話じゃなくて、殺人鬼や犯罪者の話をして、
幽霊や妖怪より人間の悪意の方が怖いって常套句で終わる話とかでもいいの?」


「うん、そういうのでもいいよ!
怖い話なら何でもオッケーです!」


「でも、一番怖いのが人間って当たり前で面白くないわよね。
幽霊や妖怪や悪魔より人間の方が怖いのって当然でしょ?
だって、それ全部人間の想像力が作った物じゃない。
それは創造者の人間の方が怖いに決まってるわよ」


「夢が無いなあ、和ちゃん……」


「夢……になるのかしら?
まあ、いいわ。
蝋燭なら箪笥の中に入ってたはずだから、マッチと一緒に持って来るわね」


「はーい、お待ちしてまーす」




「じゃあ、言い出しっぺだし、私が先に話すね。
信じてもらえないかもしれないけど、これって私に本当にあった話なんだよ。
幼稚園の頃、和ちゃんの家に遊びに行った時の話なんだけどね……」


「ちょっと待って。
私の家であった話なの?」


「うん、そうなんだ。
ほら、和ちゃんと憂と三人でかくれんぼした事あったでしょ?
あの日ね、押し入れの中に隠れてたんだけど、
中々和ちゃんが見つけてくれなくて退屈で押し入れの中にある物をいじってたんだ。

その中にね、一つ変な物を見つけたんだよ。
今の私の手のひらくらいの大きさの紙の箱なんだけどね、
気になって開いてみたら、箱の中に変な景色が広がってたんだ。
極彩色って言うのかなあ……。
目に痛いくらいの毒々しい色合いの森みたいな所の中にね、
一センチくらいの小っちゃい丸裸の小人みたいな生き物がいっぱい居たんだよ。
皆、全身が緑色でね、目が大きくて、小さな宇宙人?
そんな感じだったなあ……。

その宇宙人はしばらく私に気付かない様子で何かしてたんだけど、
二分くらい見てたから流石にその中の誰かが私に気付いたみたいで、私の方を見たんだ。
宇宙人が皆で私の方を指差して何か言ってるみたいだったんだけど、
その声も小さ過ぎてね、よく聞き取れなくてどうしようかって悩んでたら、急にね……。


「あーあ、見つかっちゃったわね」


って、声が耳元で聞こえたんだ。
小さな宇宙人の声じゃないよ。
耳元で聞こえたんだもん、小さな宇宙人のはずないよね?
その時の私もそう思って後ろを振り返ってみたんだけどね……。
居たんだよ、宇宙人が。

小さな宇宙人じゃなくてね、
大人の男の人くらいの緑色の宇宙人がね、いつの間にか私の後ろに居たんだ。
狭い押し入れの中にいきなり入り込めるわけないのに……。
私、びっくりしちゃって、叫びそうになったんだけど、
その口元が大きな宇宙人の手のひらに押さえられちゃったんだよね。
その手のひらは何て言うかなあ……、そう、スイカだよ。
スイカみたいな臭いとヌルヌルした感触の手のひらだったなあ。

それでね。
その宇宙人……、スイカ星人が言ったんだ。


「騒がないで。驚かせてごめんなさいね。
私達、ちょっとここに住まわせてもらってるの。
でも、貴方に見つかっちゃったから、もうここには居られないわね。
騒がずにその箱を私に渡してくれたら今から出て行くわ、それでいい?」


だから、私は口元を押さえられたまま、
スイカ星人に言われた通りに小さなスイカ星人が入った紙の箱を渡したんだ。
そうしたら、スイカ星人は嬉しそうに私の頭を撫でてくれて、
そのまま紙の箱と一緒に押し入れの中から居なくなっちゃったんだよね……。
押し入れを開けもしないでだよ?
本当に気付いたら押し入れの中から居なくなっちゃってたの。
ワープでも使ったのかなあ……。
それから私、スイカ星人の事ばかり考えててぼーっとしてたせいで、
和ちゃんの足音に気付けないで、その後すぐに和ちゃんに見つかっちゃう事になったんだよね。

そのスイカ星人の正体は今も分かんないし、
これからも分かんないままだろうけど、それでもいいかなって思うんだ。
分かんない事は、分かんないままでもいいんだよね。
和ちゃんの家の押し入れに何の用があったのかも分かんないけど、
もしかしたらあの紙の箱が宇宙船で、その修理でもしてたのかもしれないね。
これで私に本当にあった話はおしまいだよ。
和ちゃんはどんな話をしてくれるのかな?
スイカ星人の正体が分かる話とか知ってたら、話してくれると嬉しいな」


「知ってるわけないでしょ、そんな話……」




【ひきこもり3日目】


「唯、ハワイは何処にある島か知ってる?」


「え? 南の島だよね?」


「具体的にはどの辺りに?」


「イ……インドシナ海?」


「確かに南の方ではあるけど……。
でも、そうじゃなくて、太平洋よ、太平洋。
太平洋の南の方に浮かんでいる島……、それがハワイなのよ」


「それがどうかしたの、和ちゃん?」


「南の島と言ったら日差しが厳しいわよね?
その南の島のビーチの波打ち際で、大体の人が何をやっているか知ってる?」


「うーん……、寝転がってるイメージがあるよ。
こんがり日に焼けて小麦色の肌を作りたい! って感じなのかな?
私は日焼けは痛いからあんまりしたくないけどねー……」


「そうよ、唯」


「ふぇっ?」


「ハワイのビーチの波打ち際……、
観光客は寝転がって日焼けオイル、もしくは日焼け止めを塗っているわ。
全身に塗りたくっているわ。
それがハワイのために必要な事なのよ」


「どういう事……?」


唯が不思議そうに首を捻って私に訊ねる。
もう……、唯ったら……。
ここまで言っても理解してくれないなんて、
唯は本当に今の状況の事の重大さを分かっているのかしら?
私は右手で眼鏡を掛け直し、腰に手を当てながら唯に言ってみせた。


「よく考えなさい、唯。
ハワイ帰りという事になっている私達は、
夏休み後、クラスメイトから質問攻めに遭う事になるはずよ。
「ビーチはどうだった?」、「日本人ってどれくらい居た?」、
「日焼け止めとかちゃんと塗った?」、「カメハメハ大王饅頭売ってた?」、
そんな多くの質問を何人から何度も訊ねられる事になるでしょう。

その時、その質問に即答出来なかったらアウトなのよ。
一瞬でも口ごもってみなさい。そこから私の計画の全てが瓦解するわ。
特に唯はただでさえ嘘を吐くのが苦手なんだから、
妙に鋭い事がある律辺りに突っ込まれるとすぐ馬脚を露わす事になるでしょうね。
だから、ハワイの知識はこれから唯にじっくりと教え込ませてもらうけれど、
それでもね、単に机の上で勉強するだけでは分からない事があるものよ。

勿論、それは実践よ。
ハワイに行った人がほぼ確実にやる事を実践しておかなければ、
私達の嘘はすぐに見抜かれて、噂となって町中に広まってしまう事になるわ。
それだけは避けなければならないのよ」


「それは何となく分かったけど……、
結局、何を実際にやるの、和ちゃん?
……ひょっとして、日焼けオイルとか?」


「そうよ、さっきも言ったでしょう、唯。
ハワイ……、いいえ、ビーチの波打ち際の人達は、
ほぼ確実に日焼けオイルか日焼け止めを塗っているわ。
だからこそ、私達はそれを綺麗に塗れる練習をしておかなければならないの。
特に私達は一週間以上の長い期間、
ハワイに滞在してる事になっているわけだから、
そんじょそこらの海の家の店員以上の実力を身に着けておくべきなのよ」


「そんじょそこらって、和ちゃん……」


「というわけで、唯……」


言い様、私は箪笥の上に置いていたそれを手に取って唯に見せ付けた。
そう。これから私達はハワイのために多くの努力を重ねなければならないのだ。


「今から風呂場に行ってオイルを塗る練習をするわよ。
全身にムラなくオイルを塗れるよう、しっかり気合いを入れるのよ。
特にあんたはかなり不器用なんだから、頑張ってよね」


「別にやる事も無いし、それはいいと思うんだけど……。
今、和ちゃんが手に持ってるのって、オリーブオイルだよねー?
それ塗るの? 大丈夫?」


「日焼けオイルは現地で調達するつもりだったから家に無いのよ。
でも、心配しなくても大丈夫。
肌のケアにオリーブオイルを塗る事があるって聞いた事があるわ。
それに食べられる物なんだから、肌に塗っても平気なはずよ」


「ええー……」




風呂場、すのこを敷いてその上に唯をうつ伏せに寝転がらせる。
これからオイルを塗る練習を始めるわけだけれど、
唯が既に不満そうに頬を膨らませて愚痴をこぼしていた。


「すのこの上に寝転がるのって結構痛いよ、和ちゃん……」


「我慢なさい、これもハワイのためよ。
私だって次に寝転がる予定なんだから、お互い様になるでしょう?
変に動かないでよ、唯。
私だってオイルを塗る経験なんて少ないんだから」


「あ、何回か塗った事あるんだね」


「ええ、生徒会の皆と海に行った時に何度かね。
あの時は上手くオイルを塗れなくて恥ずかしい思いをしたものよ。
だからこそ、ハワイ帰りの私達はオイル塗りの腕を上げておかないと」


「そういえば、和ちゃん。
水着の紐は外しておかなくていいの?
ドラマとかだとよく水着の紐を外してから塗り始めたりしてるけど……」


「あれは日焼けオイルを塗る場合ね。
よく憶えておきなさい。日焼け止めの場合は水着の紐を外す必要は無いの。
その辺を知っておかないと、いざという時に恥を掻くわよ。
と言うか、唯……。
水着の紐も何も、今あんた全裸じゃない……」


「そうでした」


てへっ、と舌を出して唯が自分の頭を軽く叩いた。
軽音部顧問の山中さわ子先生が何度か見せた事がある仕種だ。
人に影響されやすい唯の事だから、いつの間にか自分の癖として身に着けたんだろう。
その調子でオイル塗りもすぐに習得してくれるといいんだけど……。
そう思いながら、私はオリーブオイルを手のひらいっぱいに垂らしてみる。


「うわぁ……」


私が呟くより先に唯がそう呻いていた。
実際問題、私も呻き声を上げたい気分だった。
覚悟してはいた事だけれど、こんなに肌に絡みつく感触だとは思っていなかった。
正直、かなり気持ち悪い。
しかし、私は首を振って、その嫌悪感をどうにか振り払う。
気持ち悪かろうとどうだろうと、私は後ろを振り返っているわけにはいかない。
ハワイのために、将来のために、私は前に進むしかないのだ。


「じゃあ、塗るわよ、唯」


「ほ……、ほいさ!」


躊躇いがちな唯の言葉を皮切りに、
私はまず唯の背中にオリーブオイルを塗り始める。
背中全体に塗り広げる事自体は簡単だった。
けれど、オリーブオイルの量が多過ぎたのか、
オイルが唯の背中から肩や胸の方にどんどん流れ落ちていく。
これでは素人丸出しだ。
焦って流れ落ちるオイルをどうにか手で追い掛け、
私の手の中に唯の小ぶりな乳房の感触が広がったと思うと……。


「うぁんっ!」


突然、唯が小さな悲鳴を上げた。
その悲鳴の甲高さから考えるに、私の指先が唯の乳首を少し擦ってしまったようだ。
唯が軽く頬を赤くして、私の方に顔を向ける。


「も……、もー……。
和ちゃんったら何してるのー……?」


「ごめんなさい、唯。
オイル塗るのが存外に難しくて……。
でも、自分の実力不足が分かって逆によかったかもしれないわね。
今、練習しておかなかったら、
自分のオイル塗りが未熟って事すら分からなかったわけだから……。
って……、何、上半身起こしてるのよ、唯」


「いやー、ちょっと……」


唯が非常に悪い顔をして微笑んでいた。
この子がこんな顔をしている時は大抵ろくな事にならない。
念の為身構えていると、やっぱりそれは突然起こった。


「隙ありっ!」


「えっ?」


私は軽く叫び声を上げてしまう。
狭い風呂場の中で、唯が唐突に私に飛び掛かって来たからだ。
唯の平たいながら女性の肉体の感触を私は全身で感じる。
幼馴染みの全裸の肉体を……、感じる……。
唯に馬乗りになられた私は少し上擦った声で唯に訊ねる。


「な……、何をするのよ、唯……」


「くすぐったい事したお返しだよー!
ほらほら、和ちゃんも喰らえー!」


そう言って、唯が私の手からオリーブオイルを奪い取る。
そのまま中身を私の身体の上にぶちまけた。
オイルが絡み付き、唯と私の肉体を更に全身で絡ませる。
二人の全身が溶け合うように繋がっていく……。


「お返し!」


「あっ、ちょっ……、唯っ……!」


止める間もなく唯が私の乳房に手を伸ばしていた。
唯の熱、オリーブオイルのぬめり、
妙に技巧のある唯の指先に、私は自分の乳房に複雑な感覚を覚えていた。
時に強く、時に弱く、私は乳房を唯に弄ばれる。
ギターを始めたからだろうか、その指捌きはとても繊細だった。


「もう……、唯ったら……、やめなさっ……!」


「へっへっへー。
ここか? 和ちゃん、ここがええのんか?」


ずっと傍に居た幼馴染み。
成長して、二人とも若干ながら女性的な膨らみを持ち始めて来て、
狭い空間で二人とも全裸で(私は眼鏡を掛けているけれど)、
オイルの妙な感触と熱で絡み合いながら、私が思った事は……。
感じた事は……。
私は大きく息を吐いてから、唯にそれを伝える事にした。


「ねえ、唯……、やめましょう?
これ以上は……、これ以上は駄目よ、唯……。
だって……、だって、私達……」


「ええー、だって、和ちゃんの胸柔らかくて気持ちいいよ?
ずっとモミモミしてたいなあ……」


「揉ませてあげる……。
後でいくらでも揉ませてあげるから……。
今は駄目よ、唯。だって……」


「だって……?」


「凄く……暑いじゃないの……。
これ以上、二人で絡み合っていたら、熱中症で倒れるわよ……」


「うん……。
それは私も思ってたよ、和ちゃん……」


げんなりした表情で唯が自分の汗を拭いながら呟く。
私も人の事を言えた義理ではないけれど、その唯の汗の量は尋常じゃなかった。
比喩ではなく、本当に滝のような汗だった。
唯と風呂場で身体を重ねて思った事は、何はともあれ暑い……。
それに尽きた。
同性で全裸も見慣れてる幼馴染みに胸を揉まれても、それ以上に思う事なんか無いわよね……。
私は唯から身体を離しながら、溜息がちに言った。


「さっさと練習終わらせて、扇風機に当たるわよ、唯……」


「うん……、それが一番だね……」


それから私達はオイル塗りの練習を即座に始めて即座に終えた。
暑さで追い込まれていたせいだろう。
幸いにもと言うべきか、無駄な力を入れずにオイル塗りのコツをすぐに掴む事が出来た。
唯も早く扇風機の風に当たりたいようで、私以上にすぐにコツを掴んでいた。
やる時はやる子なのよね……。
やるようになるまでが長いんだけれどね……。

こうして、ハワイのためのオイル塗りの練習は終わった。
これでクラスメイトからオイルの塗り方を聞かれても、何の問題も無いだろう。
ただ一つだけ気になった事がある。
オリーブオイルをシャワーで流す時の事だ。
シャワーの水がオイルに細かく弾かれ、
小さな泡が私達の全身を覆うように発生していたのが、ただただ気持ち悪かったという事だ。
今度練習する時はちゃんとした既製品を使おう。
私と唯は頷き合ってそう深く決心したのだった。




「次は私が怖い話をすればいいのよね、唯?」


「うん! 和ちゃんと怖い話する事なんて無かったから楽しみだなー」


「そうね、唯と怖い話をした憶えは確かに無いわね。
怪談とはちょっと違うかもしれないけど、
とりあえず私が怖いと思ってる事を話してみるわね。

唯は百匹目の猿現象って知ってる?
ある時にね、ある土地の猿が芋を洗って食べるようになったの。
それだけなら潔癖症な猿が現れたってだけの話で終わるわよね?
勿論、話はそれで終わらなかったのよ。

その猿の居る群れはその猿の芋洗いを真似するようになっていったんだけど、
芋洗いを真似する猿の数が一定数を超えた時に、不可思議な現象が見られるようになったの。
その猿が居る群れとは何の関係も無い遠方の猿山でもね、
続々と芋洗いをする猿が現れるようになっていったのよ。
当然だけど、その異なる猿山の猿を接触させたわけじゃないわ。
本当に何の関係も無い猿達なのに、全く同じ行動を取るようになっていたの。
同じ行動を取る猿が一定数……、仮にそれが百匹目とするけれど、
とにかく、その百匹目を超えた途端に、世界中にその行動が伝播するようになったってわけ。

シンクロニシティって言葉、唯も聞いた事くらいはあるでしょう?
『意味のある偶然の一致』。
偶然のように見えるけど、指向性を持った大いなる力の顕現としか思えない現象。
例えばある人物がプリンを食べようとした時に限って、必ず現れる誰かが居たという記録もあるわ。

そうなのよ。
無関係に見えて、生き物と生き物は繋がっているの。
どんな生き物も自分の意志とは別の大いなる意志で動かされてるの。
人はそれを集合的無意識やグレート・スピリッツと呼ぶ事もあるけれど、
それはつまり、私達の行動は自分でない大いなる意志に決められてるかもしれないって事。
私はそれが怖いのよね。
私自身で決めたと思っていた行動が、
本当は他の誰かの意志によって操作されてるかもしれないって考えるのがね……」


「それは……、確かに嫌だし怖いね……」


「でもね、唯。
そんな事より私にはもっと怖い事があるわ」


「えっ……?」


「百匹目の猿現象ってね……、実はデマなのよ」


「デマなのっ?」


「ええ、デマなのよ。
百匹目の猿現象は、それらしい話をそれらしくまとめただけって事が明らかになってるのよ。
シンクロニシティ自体もそれらしい現象はあるけれど、完全に確認されたわけじゃないわ。
さっき私が言った全てが確証のある話ではないの。

でもね、唯はそのデマを信じたでしょう?
人はそれらしい話をそれらしく話されると信じてしまうのよ、例え荒唐無稽な話でもね。
事実、百匹目の猿現象は、結構長い間信じられていたらしいのよ。

私にはね、それが怖いの。
さっき唯はすぐ私の話を信じてしまったけれど、
私自身だってそれらしい話をそれらしく話されると、唯みたいに信じてしまう可能性があるもの。
人は自分が思っている以上に、どんな話でもすんなりと信じてしまうものだから……。
要は人の話は自分の目で確認するまでは、話半分に聞いておきましょうって事よ」


「怖いよ、和ちゃん……。
怖い話をしていたはずなのに、
いつの間にかお説教になってるなんて……、和ちゃんって怖いよう……」



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最終更新:2013年02月20日 22:34