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識柚1 【別れ道、右も左も君次第】
駅へと続く道。
アパートに続く道。
いつも選ばせようとする。
「帰ってほしいですか、本当に?」
他でもない、おまえが尋ねてくる。
無邪気に。
残酷に。
「師匠、選んで」
セムリリアミ1 【桜月の夢見姫】
「桜はもう散ってしまったわね」
「サクラ…?」
「あのうちに来る無礼な女とは違うぞ」
「花のことよ」
見たことはないかしら、と黒髪がさらりと流れる。
同じ黒でも、いつも手にしていなければ安心できない、あの鉄とは違う、少女の髪。
わざと攻撃的に、鋭角的にしているその兄の髪も同じように黒い。二人は兄妹、といって同じ男と女からできたもの。
「サクラ。接ぎ木でしか増えない、木」
「なんだ知ってるんじゃないか。ま、それはソメイヨシノだけの話だが」
「ソメイ…?」
「サクラの種類よ」
そう、そんな名前だった。
自分と少し似ていたからとデータを拾っていた時に覚えていただけ。薄い薄い色の花。
「来年は三人で行きましょうか」
二人がいてくれさえすれば、世界の綺麗なものをまだ、知ることが出来そうだ。