「やくそく、守れなくて……ごめん、ね……?」
『幸せになってくれ、愛し君よ』
「『花が、散ったのを見て、私も家へ帰る道を思い出した』か……」
「わかるのか、意味」
「散るのが美しいって言うけどさ、こう、胸の詰まる美しさだよな」
「スコップなんて持ってどうしたんだよ」
「いや、ほら。そういうのは俺らじゃなくてさ、
桃千ちゃんが一番最初に手にとってあげた方が良いだろ」
「ふふっ、内緒!」
「このレール、どこまでもまっすぐなのかな?」
「どこまでも決められた道を行くだけの僕の人生に、意味なんてないんじゃないかって」
「きまりきった将来なんて、虚しいだけだ」
『君だけは、君だけは信じられると思っていたのに! 結局他のやつらと同じだ、何にも違わなかった!』
「僕は、君を、君の運命を、変えたかった。
日陰で萎れていくがいいさと、人から決めつけられるのも、
小さいから養分が取れなくて当然だと、放っておかれるのも、嫌だった。
僕のエゴだ。
僕は、君の、君を変えることができれば、自分も変われるんじゃないかと思っていたんだ」
『君には、僕にはないものがたくさんあるじゃないか。
手足も、言葉もある。僕にはなかった。僕には、ぼくには君しかいなかった』
「これからも、僕はいるよ。君が土からふたたび芽を出して花を咲かせるのを、僕はちゃんと、待っていたい」
「あ、あの。大門さんは、プラネタリウムとか好きかな?」
「おいこら! スカート短い、ズボン下げるな、ガムは禁止だって言ってんだろ!!」
「大した決まりも守れない人間に割く時間のもったいないこと……」
「やる気が無いなら帰れ。お前一人いるだけで迷惑だ」
「神には神の好きなことをさせる。あたしが警察になるからには、誰にも文句は言わせない」
「だからな、その……家で、帰りを待ってくれてもいいぞ!」
「神の好きな映画って、観てると眠くなんだよな……」
「あたしの力は暴力だ。それじゃダメだ。わかったんだよ、ようやくさ」
「女の子からの好意、断らないようにしてんだ。でも、ちゃんと線引きはしてっから」
「大事なやつ、できたんだよ」
「血と愛にまみれた、嫉妬と狂気の学生服か……」
「あれ、お前、何泣いて……痛ぇッ! わ、悪かったよ、悪かったって!!
お前中は乙女でも外は普通の男子高校生なんだから拳は痛ぇよ!」
「先生が! 好き、なんです。ごめんなさい、ごめんなさ……!」
(駄目だ。好きになってはいけない。あんな想いをさせたくない……俺も、したくない)
「姉さんは、あの、私なんかとは違ってすごく素敵な人なので」
「報われない恋の裏に報われる恋があるってのは、間違い。報われない恋の裏にだって報われない恋はあるでしょ?」
「別にお前が俺を好きだっていいじゃん」
「『好きになったらいけない』なんて『もう好きだ』って白状しているようなもんだぞ」
「好きじゃないわよ、好きなんかじゃ……! 好きなんて言葉じゃ……ッ!」
「ふざけるな。心を揺さぶるような発言をやめろ! あいつのことを愛してやれないならはっきり突き放せ!」
「お前が、中途半端に愛をちらつかせるたびに胸が絞られるように痛んでるんだ。俺にはわかる、あいつの苦しみが。
あいつと俺はずっと一緒だったから」
「中途半端って言うなら、どうすればあいつは幸せなんだよ。頼む、教えてくれ。
俺が何かしてあいつが戻ってきてくれるなら、あいつがそうしてくれって言うこと教えてくれよ!」
「おバカさん。なんにもしてくれなくっていいわよ」
「……あなたが生きてて、幸せでいてくれるなら、あたしと結ばれなくっていい。
だから、さ。幸せになって、俺のことなんてさっさと忘れちゃえよ」
「バカ。バカかお前、ホントにバカだな!!」
「……三回も言わなくっても」
「俺はそんな甲斐性なしかよ!? お前が好きな俺は、どんだけ情けない男だよ!
俺はッ、俺は幸せになった上でお前も幸せにしてやるからな! 覚悟しとけよ!!」
「……ん。待ってる」
「待ってろ、近い将来そうしてやるからな」
「うん、待ってる。楽しみに、待ってっから……」
「ジッケン、だけど」
「目、白い? 白くするようなジッケン、した覚えないけど」
「どうして……。放っておいて」
「弟。血の繋がってる、戸籍上は全く関係ない、私の、弟」
「……ダイジ。そうじゃないなら、こんなことしない」
「綺麗だね! なんでだろう、雪って、志波さんを思い出すな」
「オレの知ってる姉ちゃんのことって、ラーメンが好きだってことだけなんです。
だから、凄い旨いラーメンつくれる男になったら、姉ちゃんが来てくれる気がしてるんです」
「エンドウ。あなたが行くしかない」
「はは、んな顔すんなよ。……大丈夫だって。俺さ、意地でも倒してくっから」
「倒す倒さないの問題じゃない、戻ってこい。必ず戻ってこい」
「……名前が、思い出せない」
「忘れちゃいけないんだ、忘れたら、俺が忘れたらアイツは……ッ!」
「一人になっても泣かないで、か。……難しいよなあ、それ」
「こんな、苦しいもんだっけか。一人になるって」
「……あい、たいな。おれの、こと、わすれ、て、かな……」
「あなたが、行くしかない」
「なんでだよ。こいつと杏奈ちゃんだけ行くって、何かあった時どうするんだよ!」
「杏奈ちゃん、どうして? 私たち」
最終更新:2012年06月07日 02:28