唯「こら!デビちゃん!そんな獣みたいに可愛く威嚇しなくてもちゃんとイッパイあるから大丈夫だよ!」ナデナデ

茜「アウ~ン……」スリスリ

澪(可愛い……か?)

紬(キマシタ……ワ?)

唯「あれ?りっちゃんと梓ちゃんは食べないの?」

律「……えっ?あ、うん。私はいいや」

梓(また梓ちゃんって……)

唯「ええ~!?りっちゃんのくせに米を食べないなんてらしくないよ!このお百姓さん!」

律「な、なに~!そんなに言うなら唯の分まで食ってやる~!村の者集まれ~!百姓一揆じゃあ~!」

唯「ああああ~!生類憐れみの令!刀狩だよ踏み絵だよ~!」

梓「思いついた歴史っぽい単語並べ立ててるだけじゃないですか」

澪「ん?このオムスビすごく塩が効いてて美味いな。さすが憂ちゃん」

紬「本当に美味しいわ~。うちのシェフにも今度オムスビ作ってもらおうかしら~♪」

唯「あ、うん。塩味は憂の涙だね。私が合宿に行っちゃうからって泣きじゃくりながらオムスビ握ってたし。たぶん鼻水も少し混ざってるかもね~」

澪(現実は絶対絶……命)

紬(モウヒトコ……エ)

律(おかしー……し)

梓(食べなくてよかった……)

茜「ぷはぁ~!お腹いっぱい!唯先輩ごちそうさまでした!あんまり美味しくて8個も食べちゃいましたよ!」

唯「ふふふ。むしろ私が食べたいのは君自身さ」キリ


〔ムギ別荘〕

紬「小さい所しか借りられなかったの~♪」

茜「ゲェーッ!これで小さいって……私のすべり台の家はどうなるんだろう……」

律「うん。すべり台は家じゃなくて遊具だからな」

澪「さて、と!さっそく練習始めるぞ!」

律「まず遊ぶか練習するか多数決で決めようぜー!」

唯「賛成~♪」

梓(やれやれ、またこの流れか。どうせ3対2で遊ぶってことになるんだから)

律唯紬「遊ぶ♪」

澪梓茜「練習!」

梓(えっ!?)

律「なんだよー。茜はこっち側の住人だって信じてたのにー裏切り者―」ブーブー

唯「そうだーそうだー」ブーブー

茜「私だって遊びたいですけど……。でも私ユーフォニアムをまだ使いこなせてなくてバンドの音に馴染めてなくて………」

澪「…………」

茜「だからこの合宿をキッカケに成長して本当の意味で放課後ティータイムの一員になりたいんです!」

澪「律唯ムギ。茜の気持ち汲んでやってくれないか。どうせ泊まりなんだし練習が終わってから好きなだけ遊べるだろ?」

唯「うわーん!デビちゃ~ん!」ダキツキ

茜「わぁ!ちょっ唯先輩///胸に顔を埋めてグリグリしないでください///!」

唯「デビちゃんがそんなこと思ってたなんて!私も精一杯がんばってデビちゃんと一つになる!バンド的にもアッチの意味でも!」グリグリ

茜「ふあぁあん///」ビクンビクン

律「私も唯と同じ意見だ茜。私達の方こそがんばって茜のユーフォニアムと一つになってやる!」

紬「アッチの意味でも?」キマシ

澪「……そうなのか律?///」ギロリ

律「ちっがーう!私はノーマルだーーー!」

梓(……なんで良い話みたいな流れになってるの?まるで馴染めてないのは私の方みたいになってる……)

澪「ん?どうしたんだ梓?そんなに怖い目で茜を見たりして……」

茜「……梓ちゃん、朝からずっと私に冷たいな。私知らない間に梓ちゃんを怒らせるようなことしたのかも……」

律「……あ~アレだよアレ!梓は朝の冗談が思ったよりウケなくて寒い空気になっったこと気にしてるんだよ!」

紬「あらあら♪そんなこと気にしなくていいのに♪それじゃ私が絶対ウケる鉄板ネタを伝授するわ♪マンボウの物まね~♪」

律「やめとけっちゅーとんのじゃ」ツッコミ

澪「さぁバカやってないで練習!梓もいつまでもそんなこと気にするな。つまらないギャグは律や唯に任せとけばいいんだ」

律「なにを~!私の計算され尽くしたギャグと唯の天然ボケを一緒にすんな~」

紬「マンボウの物まね~♪」

茜「…………」チラッ

梓「……!!」プイッ

唯「デビちゃん気にしないで。きっと間が悪かっただけだよ。練習してるうちに梓ちゃんもいつも通りになるから、ね」ナデナデ

茜「唯先輩……ありがとうございます///」

梓(絶対おかしい。これじゃ私が悪役みたい。唯先輩も私にベッタリだったくせに今はピンクの人ばっかりだし……)イライラ


〔別荘内スタジオ〕

澪「……う~ん。決して悪くはないんだけどな」

律「ユーフォニアムなんて私達も全然知識ないしなぁ」

紬「今すぐここにユーフォニアムの講師さん呼ぶ?」

唯「ソウルだよデビちゃん!楽器は魂で奏でるんだよ!」

梓「…………」

茜「大丈夫です。もう一回お願いします!」

梓(ふん。他の先輩達もピンクの人に構いっぱなしですかそうですか)

澪「それじゃもう一回合わせてから休憩にするか」

唯「ふい~。疲れたよ~」

紬「これが終わったら美味しいお茶入れるわね♪」

律「よーしイクぜー!1、2,3,4!」

梓(ピンク頭さえ居なければ前の二年間みたいに先輩達も私だけを見てくれるのに……まぁどうでもいいけど)

♪キミヲミテルトイツモハートドキドキ~♪

澪(おおっ!今回はイイ感じだな)

律(これイイんじゃないか?)

紬(シャランラ♪シャランラ~♪)

唯(うん!すごくイイ!この調子だよデビちゃん……!)

茜(何かを……何かを掴めそうな気がする……!)

梓(…………チッ)

♪アア~カミサマオネガイフタリダケノ~ドリ~ムタイムクダサ……ギュギューンギャギャギャーンギュワワーーン!

澪(……な、なんだ!?)

律(梓が急にメチャクチャなギターソロを入れた!?)

紬(シャ、シャランラシャラ…ン…ラ?)

唯(こ、これじゃ曲を壊さないように合わせるので精一杯だよっ……!)

茜(えっ…えっ…?ど、どうしよう…急にこんなの合わせられない……)

♪デロデロローンビョンビョンギガガガガドゴンドゴン

澪「曲が……」

律「台無し……」

紬「ど、どうして……」


茜「も、もうちょっとで何か掴めそうだったのに……」グス

梓「あ~あ全然ダメですね。この程度のギターソロにも柔軟に合わせられないなんて……まぁ誰のせいとは言いませんけど」チラ

茜「……っ!」

梓「あ~あ誰かさん1人が消えてくれればバンドとして最高にまとまると思うんだけどな~。まぁ誰とは言いませんけどね」チラ

茜「………」グス

梓「すべり台に住んでるような人間がどこからユーフォニアムなんて手に入れたんだか。まぁ誰とは言いませんけどね。誰とは……」

律「いい加減にしろっ!」

梓「…………!!」ビクッ

澪「梓……おまえ……おまえ急にどうしたんだ?大事な仲間に向かって何で…そんなヒドイこと…」グスグス

紬「……泣かないで。泣かないで澪ちゃん」

梓「…………」

律「おまえと茜の間に何があったのかはしらない。ただ今日のおまえの茜に対する態度はハッキリ言って簡単に許せるものじゃない」

梓「…………」

律「そんなに茜が気に食わないならおまえがこのスタジオから出て行け。海でも見て少し頭を冷やして来い」

梓「そんなっ…そんな!なんで私が……!」

律「…………」

澪「…………」

紬「…………」

梓「ゆ、唯先輩!助けてください唯先輩!他の先輩達が私をイジメるんです!唯先輩だけは絶対に私の味方ですよね!?」

唯「……え?な、なに言ってるの梓ちゃん?」ビクビク

梓「そんな呼び方は止めてくださいよぉぉっ!!いつもみたいにあずにゃんって呼んでくださいよぉぉっ!!」グイッ

唯「ちょ、ちょっと止めて梓ちゃんっ……!そんなに強く腕掴まないで……!」

梓「いつもこの腕で私を抱きしめてたでしょおぉぉっ!あずにゃんあずにゃんって私を見つければ飛びついてきたでしょおぉぉっ!」

唯「ひっ……!こ、怖いよ梓ちゃん……!は、離して……」ビクビク

律「やめろ梓!意味の分からない駄々をこねるな!」

澪「な、なぁ。さっきから梓が言ってる『あずにゃん』ってなんなんだ……?」オロオロ

紬「……分からないけど梓ちゃんの中学時代のあだ名か何かかしら……?」

梓「さぁ!唯先輩!早くいつもみたいに抱きしめてくださいよぉぉっ!!」グイグイ

唯「……っ!や、やめて梓ちゃん……!い、痛いよぅ……」

茜「唯先輩を離してっ!!」ドンッ

梓「うぐぅっ!?」

茜「私のことが嫌いなら好きなだけイジメればいい!でも唯先輩にヒドイことしたら私が許さないっ!」

唯「デ、デビちゃんありがとう……」

茜「大丈夫ですか唯先輩。好きなだけ私のこと抱きしめていいですから元気出してください!」

唯「ふふふ。ありがと、デビちゃん」ギュッ

茜「ゆ、唯先輩///」

梓「あ…あ…あ…あうう…嘘です…こんなの…嘘です…」

律「私達も今日の梓は嘘であってほしいと思うよ。とにかく今は1人で反省してこい」

澪「梓……何が原因か知らないけど律の言う通りだ。おまえは少し頭を冷やした方がいいぞ」

紬「あ、あの!もし良かったら良い病院を紹介するから……」

梓「…………病院?」ピクッ

紬「あ、あ……違うの!そういう意味の病院じゃなくて……!」

梓「…………何が違うんですか」

律「お、おい梓?」

梓「じゃあどんな病院だっていうんですかぁぁっ!」ダダダダダ

紬「あっ!ま、待って梓ちゃん!」

律「待てムギ!止めても無駄だよ。今の梓は私達にはどうしようもない。少し1人にして頭を冷やさせないと……」

澪「そ、それに変なことばっかり言ってたぞ。あずにゃんだの唯がいつも梓を抱きしめてるだの……」

律「……たぶん何かが原因で頭が混乱してるんだろうな。とにかく今はそっとしておくしかないよ」


〔別荘近くの森〕

梓「うっうっ…なんでこんなことに……。私はもう一度だけ唯先輩達と楽しい時を過ごしたかっただけなのに……」

ガサガサガサガサタスケテータスケテー

梓「ッヒ!?な、なに?今の音?助けてーって聞こえた?まさか幽霊とか……?」

?「誰か助けろってんだろがゴラァーーーー!!」

梓「イヤアアアアアアアアアアアアッ」

?「うっせー!道に迷っちまって叫びたいのはこっちの方なんだよ……って梓ちゃん?」

梓「……え?……さ、さわこ先生?」

さわ「やっぱ梓ちゃんじゃない。なんで1人でこんな所に居るのよ?私は見ての通り遭難だけど」

梓「いろいろ……本当にいろいろあったんです。先生に言っても信じてもらえるわけありません」

さわ「バッカね~。私は腐っても、あなた達の教師よ?教師が生徒を信じなくちゃ何も始まらないじゃない」

梓「で、でも……」

さわ「ホラホラさっさと吐いちゃいなさい。グズグズしてると持参の猫耳装着してもらうわよ」

梓「…………わ、わかりました。実は……」


さわ「……ふーん。つまり梓ちゃんは唯ちゃん達が卒業した翌日から今日までタイムリープしてきた、と」

梓「……は、はい。どうしても先輩達ともう一度同じ放課後を過ごしたくて…でも…」

さわ「都合良いことばっか考えてタイムリープしてみたら自分が望む世界とは全く違う現実が展開されてた、と」

梓「さ、さっきから淡々と話を聞いてくれてますけど、まさか信じてくれるんですか?」

さわ「うん」

梓「ど、どうして?こんな頭のおかしい人の妄想みたいな話をなんでアッサリ信じられるんですか!?」

さわ「でも、ちょっと意外だったな~」

梓「……え?」

さわ「私ね。梓ちゃんってあんまり放課後ティータイムに強い思い入れなんて無いと思ってた」

梓「…………」

さわ「そのうち卒業していつか全然違う人達とバンドを組むんだろうなって」

梓「……私も軽音部に入ったばかりの頃はそう思ってました」

さわ「でも、そうじゃないのね?」

梓「……はい」

さわ「……私ねぇ。高校の時、初めて女の子を好きになったの」

梓「…………」

さわ「軽音部に入ってすぐに仲良くなったわ。変な子でね。普段はボケ~っとしてるけどギターを持つと誰も聞いたことのないような音を出す子だった……」

梓「……なんとなくイメージできます」

さわ「大人になる前にお別れしちゃったけどね」

梓「ど、どうして……?」

さわ「きっとタイミングが悪かったのよ」

梓「……その人は今どうしてるんですか?」

さわ「どうしてるんだろ?いつか必ず戻ってくるって言ってた。待つつもりは無かったけど、こんなに時間が経っちゃった」

梓「…………」

さわ「……長くはなかった。あっという間だった」

梓「…………」

さわ「でも梓ちゃん。あなたは私みたいなタイプじゃないでしょ?」

梓「……え?」

さわ「待ってられない未来があるなら走ってでもその未来に追いついちゃうのが、あなたでしょ?」

梓「……でも…でも…私…どうすれば……」


さわ「さぁ?それはそこの藪に隠れてこっちを覗いてる子が知ってるんじゃない?」

?「…………っ!!」ガサガサガサ

梓「だ、誰か居るの……?」


3
最終更新:2011年01月16日 22:37