唯「ん…?」

目が覚めるとそこは見たことのない場所だった。

唯「あれ…ここどこだろ…?」

「お…おい!り…律!起きたぞ…!」
「おーやーっと起きたかー」
「大丈夫?痛いところはない?」

唯「あ…はい…大丈夫です」

急に声をかけられた。
この人達は誰なんだろう?

唯「あ…あのー……」

「ようこそ!死後の世界へ!」「ようこそー♪」
「バカ律!いきなりそんなこと言われてもわからないだろっ!」

唯「しごの世界……?」

私語…死語…死後……

唯「…え!?死後!?わたしが!?え?」

死後って…ここは天国…または地獄…ってこと?

「そうだ。お前は死んじまったんだ」

唯「……!?わかった!!」

「おー理解してくれたか!」
「こんなすぐに納得してくれるなんてすごいわー♪」
「おい…なんかおかしくないか?」

唯「これは夢なんだね!なるほどなるほど!すごくリアルな夢だな~」

「ズコーッ」
「やっぱりな…」
「まぁそうよね♪」

唯「夢のみなさんこんにちは!私、平沢唯っていいます!」

「…まぁ説明すればいいか……私は田井中律だ!よろしくな唯!」

「私は琴吹紬。ムギって呼んでね♪よろしく唯ちゃん♪」

「あ…秋山澪…よろしく…」

唯「りっちゃんにムギちゃんに澪ちゃんだね!よろしく~」

澪「み…澪ちゃん…」

唯「…だめかな?」

澪「い…いや…いいよ…平沢さん…」

唯「澪ちゃんも下の名前で呼んでよ~」

澪「ゆ…唯…」

唯「ありがと~」

律「ところで唯!さっきの話の続きだけど、ここは夢の世界じゃない!れっきとした死後の世界だ!天国か地獄かはわからないけどな!」

唯「りっちゃん、またまた~死後の世界なんてありえないよ~」

紬「…もしかして……唯ちゃん、死んだときの記憶…ないの?」

唯「へ…記憶…?うーんと……あれー…何も思い出せないや…なんでだろ……」

あれ…ホントに何も思い出せない…過去も…家族も…友達も…

唯「…まぁ夢だしね~」

澪「お…おい律…唯のやつ、もしかして死ぬときに頭を強く打ったんじゃないかな…」

律「…たぶんそうだな…」

唯「せっかくの夢の世界だからな~何しよっかな~?」

律「やっぱり信じないか……仕方ない…ムギ、アレ持ってきてくれ」

紬「…わかったわ…りっちゃん」

澪「ひぃぃぃぃぃ…」

唯「ん?何するの~?」

ムギちゃんが建物の中に入っていった。なにを取りにいったんだろう?

律「私がやる。澪とムギは向こうに行っててくれ」

紬「…ハイ……りっちゃん…コレ……行きましょ澪ちゃん」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ」


律「おい唯」

唯「な~に~?りっちゃん?」

律「いまからお前を殺す」

唯「へ…殺す…?やだなー…りっちゃん…いくら夢でも…その冗談笑えないよ……」

律「安心しろ。苦しくないよう一発で殺してやるから」

唯「ひっ…り…りっちゃんそれ銃…?あ…わかった、それモデルガンでしょ…?もぅ驚かせないでよー…危ないからこっちに向けな」

律「許せよ唯」


パーン


~~~~~~~~~~~~~~

唯「…うわぁぁぁぁぁぁ!!?」

な…なに今の夢…?私が殺される…夢…

律「お、起きたか?」

唯「へ……?………………」


唯「」


唯「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!ころされるぅぅぅぅぅ!!!!!だれかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

律「落ち着け唯!大丈夫だから!な!とりあえず落ち着け!!」

紬「唯ちゃん起きたの!?今すごい声が……」

唯「ムギぢゃぁぁぁぁぁ!!!だぢげでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

紬「大丈夫よ唯ちゃん!落ち着いて!!」

律「唯、ごめん!この通りだ!許してくれ!もうしないから!」

唯「うぅぅぅぅぅぅ…………」

紬「唯ちゃん…大丈夫?落ち着いた?」

唯「はぁ…はぁ…う…うん…」

律「悪い唯!唯がどうしても信じなかったから、しかたなくなんだ!ホントーにゴメン!」

唯「うぅぅぅ…どういうこと…?」

紬「ここは死後の世界だって言ったでしょ?だから私たちは殺されても死なないの。時間がたてばどんな傷でも治るわ」

ってことはここは本当に…

唯「…本当の死後の世界……」

律「…そうだ」

そっか…私死んじゃったんだ……

唯「…でも私、ホントに何も思い出せないよ…?なんで…?」

律「唯はたぶん頭を強く打って死んじまったんだ。時々そうやって記憶喪失でここに来ちまうやつがいるらしい」

紬「大丈夫よ唯ちゃん。何かがきっかけで思い出せた人もいるみたいだから……それにきっと思い出しても辛いだけよ…」

律「ムギ…」

ムギちゃんすごく辛そう…
嫌な過去だったのだろうか。

律「…まぁそういうことだ唯!あんま気にすんな!ここの生活もなかなかに悪くないしな~…なっ!ムギ?」

紬「…そうね♪」

律「ということで、改めてよろしくな唯!」

紬「よろしく唯ちゃん!」

唯「…うん!」

もう死んじゃったんだし…なるようにしかならないよね。
前向きにいかないと!

唯「あれ?そういえば澪ちゃんは?」

律「あー澪のやつはなー…」

紬「部室よりっちゃん!あれはりっちゃんにしか直せないんだから!」

律「ま、唯の案内がてら部室にいくかー」

唯「部室?」

律「そう!私たち軽音部の部室だ!」

~~~~~~~~~~~~~~

ここって学校だったんだ…そういえば制服だった。

律「んで今のが理科準備室!そしてこの階段を上った先が我らが軽音部の部室だ!」

唯「ほうほう…なかなかですなーりっちゃん隊員!」

律「ありがとうございます!平沢隊長!」

りっちゃんの話によると、この学校の半数以上は私たちとは違って元からこの世界にいて、この世界で暮らしている人たちみたいだ。
そして残りが私たちと同じで死んでしまったあと、この世界に来た人たち。
その違いは話せばわかる…らしい。

紬「軽音部、一名様ごあんないでーす♪」

さわ子「あーりっちゃん達、やっと帰ってきたのね!澪ちゃんなんとかしてよー」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」

律「さわちゃんわりーわりー。でも…新入部員連れてきたぜー!」

唯「平沢唯です!よろしくっす!……新入部員?」

さわ子「あら!久々ねぇ~初めてまして。山中さわ子です。よろしくね唯ちゃん」

唯「あ、よろしくお願いします~」

すごく綺麗で優しそうな人だ…

さわ子「敬語じゃなくていいわよ。ここじゃみんな同い年みたいなもんだし」

唯「えへへ…よろしくさわちゃん~」

紬「りっちゃんはやく!澪ちゃんに!ほら!」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」

律「しょうがねーなー…ほら澪、もう大丈夫だぞ~よしよし」

澪「う…りつぅ…」

紬「…はぁ…はぁ…」

唯「ムギちゃん大丈夫?鼻血出てるよ」

さわ子「唯ちゃん、ほっといていいわよ」

~~~~~~~~~~~~~~

律「改めて…軽音部へようこそ唯!!」

紬「ようこそ~♪」

さわ子「これからよろしくね唯ちゃん」

澪「よ…よろしく…」

唯「えーっと…話が見えないであります!」

さわ子「りっちゃんってば話してないの?」

律「いやーこの世界の説明でいっぱいいっぱいで」

紬「いろいろあったわねー♪」

澪「うぅ…」

律「唯!単刀直入に言う!軽音部に入部してくれ!」

唯「えーっ!?…私楽器なんて弾けないよぉー…?」

律「一から教えるから!おねげぇします!お代官様!!」

さわ子「音の厚みを増すためにギターもう一人欲しかったのよね~」

澪「え…あれで足りてなかったのか…?」

唯「えーでもー…」

紬「唯ちゃん!お菓子あるわよ!食べる?」

唯「いっただきまーす!」

~~~~~~~~~~~~~~

唯「おいしかったー!」

律「軽音部に入ったら毎日食えるぞー!な、ムギ?」

紬「ええ♪」

唯「入部させてくだせぇ!りっちゃん隊長!!」

律「よっしゃぁぁぁぁぁ!!…助かった……」

紬「やったね♪りっちゃん!」

さわ子「じゃ…まずは唯ちゃんが私たちの音楽性についていけるかテストね…」

澪「まさか…演奏するのか…?」

~~~~~~~~~~~~~~

澪ちゃんがベース、りっちゃんがドラム、ムギちゃんがキーボードだ。
ていうことはさわちゃんがギターかな?

ボーカルは誰なんだろう?

澪「…………」

澪ちゃんがなんだか青ざめた顔をしている…大丈夫かな…?

唯「さわちゃん遅いねー」

律「唯…心の準備だけはしとけ…」

唯「へ?」

ドンドンッ

唯「ん?」

なんだかドアを叩いてるような音がする。

澪「ひぃぃぃぃぃ!」

律「来たか…」

紬「♪」

ドンッメキッ

唯「へ…?」


そこでドアは盛大な音を立てて吹き飛んだ。

さわ子「おるぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!おまえらぁぁぁぁぁぁぁ待たせたなぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

唯「」


そこから先は凄かった。

蹴破られたドアからすごいメイクの人が飛び込んできて、アンプにシールドをぶっ刺したかと思えばすぐに爆音でギターを掻き鳴らし始めた。
するとみんなは申し合わせたかのように演奏を始めた。
りっちゃんは無表情だった。
澪ちゃんは完全に顔がひきつって青ざめていた。
ムギちゃんだけはニコニコしていた。
でもその激しすぎる演奏に反して歌詞は所々可愛らしい感じだ。


さわ子「ふわ゛ふわ゛ダァァァァァーイムッ!!!!!!!!」

澪「ふゎふゎ…たーぃむ…」

さわ子「おるぁ!!!!ベースッ!!!!!」

澪「!?ふ…ふわ゛ふわ゛タぁぁイムぅぅ!!!」

澪ちゃんの声はさわちゃんとは違う意味でガラガラだった。

~~~~~~~~~~~~~~

さわ子「どうよ?」

唯「あー…えーっと…あの…すごく個性的でした!!」

ほとんどさわちゃんの声とギターしか聞こえなかったけど…

さわ子「個性的だと!!?」

唯「あ…あい…」

や…やばいかも…

さわ子「お前…」

唯「ご、ごめんなさいぃ!!」

さわ子「なかなか見所あるじゃねぇか!ボケてそうな顔だと思ったけどな!」

さわちゃん、ひどい…

律「よ…よかったな唯!」

紬「これで唯ちゃんも正式に軽音部の仲間ね♪」

さわ子「唯!お前はギターだ!いいな!!?」

唯「は…はいであります!!!」

こうして私は軽音部にギターとして入部することとなった。

唯「澪ちゃん、立ったまま気絶してる…」

~~~~~~~~~~~~~~

それから私たちは毎日お茶をしつつも練習をした。
授業もあるらしいが出ていない。
りっちゃんいわく「絶対にでるな!消えたくないならな!」とのことらしい。

ギターは主にさわちゃんから教わった。
さわちゃんやみんなの教え方が良いのか、私のギターはだいぶ上達した。
ちなみに澪ちゃんは私が入部した日にコーラスをクビになり私がコーラスになった。


唯「そういえばなんで軽音部なの?」

律「ん?あぁ…学生の青春といえばやっぱバンドだろ!」

唯「そうなんだ~」

記憶がないからだろうか…よくわからない。

唯「なんで私を誘ったのー?楽器もできないのに」

律「あーそれはな……」

さわ子「私がギターの子もう一人欲しかったんだけど、みんな演奏聴くと帰っちゃうのよね~」

澪「…そりゃそうだよ……」

さわ子「あ?」

澪「ひっ」

紬「りっちゃんが最初に唯ちゃんを見つけたのよ~」

律「…あのさわちゃんにかなり急かされてたんだ…唯がいてくれてホント助かったよ…」

さわ子「…りっちゃん聞こえてるわよ」

律「さーっ練習練習!!」

唯「お菓子食べたいよ~」

紬「唯ちゃん後で。ね?」

澪「うぅ…いやだ……」

練習後、澪ちゃんは気絶してしまった。
お菓子二人分食べちゃった。

~~~~~~~~~~~~~~

さわ子「唯ちゃんも大分上達してきたし、そろそろライブに向けて練習ね」

律「久々だなー」

唯「ライブ?」

律「そうだ。学校の講堂でライブだ!」

紬「他のみんなも見に来てくれるのよー♪」

さわ子「ムギちゃんと澪ちゃんは新曲の作詞作曲お願いね」

紬「はい♪」

澪「うぅ私の歌詞が…あんな… 」

さわ子「よろしくね」


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最終更新:2011年02月05日 04:19