気がつけばあたりはすっかり暗くなっていた

澪「…ハァ…ハァ…」

動悸が激しい
足からは力が抜け、コンクリートに膝を落とした
息を整えようとして深呼吸するけれども
込み上げてくる酸っぱさと、辺りの鉄臭さにむせ返りそうになる

澪「っ…」

全てが歪んで見えた

しかし視線はひとつに向けられていた
警戒するような、怯えたような目で。
それでも目を離さなかった

暗くなっていく自分の先にちゃんといるか探した

ひどく遠い、自分から離れた場所に横たわっている
血まみれの幼馴染の元へ走った

澪「…っ律!…りつぅ!!」
律「…ぃ…ぉ…ガハッ」

律の口からは大量の血が吐き出された

澪「喋るな!くそ…なんで…こんな…っ」
近くの人が呼んだのだろうか
遠くでサイレンの音が聞こえた

律「…やく…そく…」
澪「……律…」

律のいった『約束』
そう それはいつかという名の遠い記憶の目印



……

律「暑いぜチクショー!!」
唯「あ~~い~~~す~~~…」

季節は7月
梅雨も終わり太陽が張り切る時期に突入した
といっても軽音部のメンバーはあついあついと口に出す以外
今までと同様ゴロゴロしていたわけだが。

澪「ほら、練習するぞ!あついからってサボるな!」
梓「そうですよ!練習しましょう!」
唯&律&紬『え~~~…』
唯「こうも暑いとギー太もひけないよぉ~」
律「もう音楽室にエアコンつけりゃぁいいのによ~」

澪「それは同意できるがむぎ、便乗するな」
紬「えへっ」
梓「…」

とはいってもやはり夏は夏
早速初夏の暑さにやられ一通りの通し練習をして
皆早々に帰路につくことにした

律「じゃ皆お疲れ!」
澪「じゃあまた明日」
唯「ばいばーいりっちゃん澪ちゅあん…アツィ…」
紬「じゃあ澪ちゃん、例の件は明日ね」
澪「ああ、梓もまた明日な」
梓「はい、お先に失礼します」

そういって私と律はみんなと別れた

律「なぁ、さっきむぎにいってた『例の件』て何のことだよ?」
澪「ん?ああ、CDのことだよ。もう一年もたったしちょっとまとめてみたいと思ってさ」
律「おお!!?何部長のアタシを差し置いてそんな嬉しいことやってんだよぉ!?」
澪「お前や唯がいると作業が進まないだろうが」
律「仰るとおりでした」

澪「ほら」
かばんからCDを取り出す。むぎが試しとして作った一枚目だ。
本当は家に帰ってから聞こうと思ってたけれど
目の前で瞳をキラキラさせてる律を見て気が変わった。
本当にこいつは昔から可愛い奴だ
律「うぉう!?いいのか澪!?」
澪「いいよ、ほら、早くいこう」
律「おう!」

澪「しっかしこんなに暑いと練習がはかどらないよなぁ…」
律「そうだな~、早く合宿にいきたいもんだぜ~」
澪「おい、遊ぶためじゃなくて練習のために行くんだからな」
律「わかってるってば。あ!澪!アイス買ってこうぜ!!」

律は先ほどまで扇いでいたウチワをコンビニに向ける、店内は涼しそうだ
それに、連日試験や何やら色々と忙しいこともあったせいか
今日は律ともっと一緒にいたい気分だった

澪「なら早く中に入ろう。こう暑いと汗がとまらないよ」
律「よっしゃぁ!澪サンキュー!じゃあアタシ、スイカバーね!」
律「あ!あとスーパーカップも買って!?」
澪「なんで私が奢る事前提なんだよ!?」

夏になったせいなのかいつもより外が明るく感じた
私たちはコンビニの前でアイスを頂いていた

澪「後でちゃんと金返せよ」
律「わかってるってば、あ~冷たっ!」
律「やっぱ夏はスイカバーだよなー」
澪「緑色の方が私は好きだけどなぁ」

二人が買ったのは1個入りの赤いスイカバーだった

律「あ、もう7時だ」
澪「ホントか?ああもう、夏は時間の感覚がおかしくなる、吐きそう…」
律「吐くなよ!!?まったく…」

そして太陽はすっかり隠れていた
明日から夏休みだ


~合宿in紬家別荘~

唯「あはははははー♪」
律「あははははははー♪」
梓「あはははははははー♪」

澪「皆元気だなぁ…」
紬「今年も楽しくなりそうね♪」
澪「ああ、そうだな」

律「ほら!澪達もこいよ!」
唯「一緒に遊ぼうよ~♪」
梓「唯先輩!暑いです!離れてください!」
唯「えへへー♪」
紬「ニヤニヤ」

律「お腹へって力でないよぉ」
唯「ご飯にしようよぉ」
梓「先輩達が軟体動物みたいにみえます」
澪「あいつらは年がら年中似たような感じだからなぁ」
律「いいから飯をくわせろぉおおぉぉ!!うわぁあ!!」
澪(野獣か、コイツは)

唯「ご・は・ん!」
律「ご・は・ん!!」

澪(全く…世話がやけるな)
澪「取りあえず暑いから離れろ、律。唯も落ち着け」

紬「ニヤニヤ」

唯「痛っ!!」
梓「どうしたんですか?唯先輩」
律「あっちゃ~包丁で指がぱっくr「きゃぁあぁああぁ!!!」
梓「み、澪先輩!?」
唯「澪ちゃん大丈夫だよ?ほら」
澪「いやぁぁあぁああぁ!」
紬「あらあらまぁ」

律「まーったくこんなもん舐めりゃサッサと治るだろうが」ペロ
澪「!?」
梓「!?」
紬「!!?」(キマシタワー)

律「ほら唯、絆創膏貼ってきな」
唯「ありがとうりっちゃん!」

澪「…」
梓「…」

今日の晩ご飯はおいしかった
おいしかった、けどおいしくなかった
なんでだろう
律が唯の指を治すために舐めただけなのに
それだけなのに
ずっとその事ばかり考える
なんでだろう
なんか 寂しい

唯&律『新大陸発見だぁあぁああぁ!!』
梓「何やってるんですか先輩…」

今日も多数決で遊ぶことになった
またむぎに裏切られる結果となった
皆はビーチバレーをしていたけれど
私は昨日の事を整理したくて
ビーチパラソルの下でずっと腰を降ろしていた

律が唯の指を舐めた時
凄く胸が締め付けられたように苦しくなった
この感情はなんだ?
なんでこんなに苦しいんだ?

今、律の頭にボールが当たった
あはは、怒ってる怒ってる

律が大袈裟な動きでスマッシュをかます
まぁ当然砂で滑って転んだ
おいおい気をつけろよ?

ほらまた転んだ
だから気をつけろってば

紬「ふぅ、疲れちゃった」
澪「お疲れ様、むぎのおかげで律vs唯&梓がみれるよ」
紬「そんなつもりで抜けたんじゃないってばw」
澪「あ、また頭にボール当たった、ヘディングで返したぞ」
紬「梓ちゃんもヘディングで返したわ」

澪「あ、ワカメ踏んでまた転んだ」
紬「ホント。でもうまいことボールをあげたわね」

唯「ギー太アタァックゥ!!」
澪「顔面に直撃だ」
唯「ごめんりっちゃん!」
律「ギー太関係ないスマッシュだなオイ!」

紬「さっきからりっちゃんこけまくりね」
澪「もう三回は転んでるぞ」
紬「りっちゃんたら…」
澪「全くいくつになっても変わらないんだから…」

紬「…澪ちゃん」
澪「ん?」
紬「さっきからりっちゃんの話ばかりね♪」

澪「…へ?」
紬「ビーチバレー実況の時もずっとりっちゃんのことばかりいってたし」
紬「澪ちゃんは本当にりっちゃんが好きなのね♪」

私が…律を好き…?

澪「へ?え…え?」

確かにビーチバレーの時は律の事ばかりみてた
気がついたら律の事を見ていた
今でも律を見ると胸が苦しくなる

この感情…好き…なのか?


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