数分後……

唯「ごめんなさい」へんにゃり

律「まったくー、おきゃくさんビビってたぞー」

澪「まあまあ」

唯「……ぜんぶ澪ちゃんのせいだからね」ぷぅ

澪「唯、わたしのためにかけつけてくれて、ありがとう」にこっ

唯「つーん!」

しばらくして……

律「おわったぜー!」

紬「おわったー」

唯「りっちゃーん、ムギちゃーん」とてとてとて

律「おう、唯もしごとかたづいたか!」

唯「ん。たっぷりれんしゅーしようね」

紬「あら?唯ちゃんなんだかうれしそう」

律「澪といっしょのれんしゅー、そんなにうれしいか」

唯「ちがうもん」

律「んー?」によによ

唯「ち が う も ん っ ! ! 」

紬「ぴぅっ!」びくっ

紬「りっちゃんと澪ちゃん、おさななじみなのよね?」

律「そだぜー。小学校からの腐れ縁さ」

唯「……うらやましい」ぼそり

紬「え?」

唯「あんでもない」ぷい

律「……あれ?幼稚園からだっけ?あれ?」

紬「おさななじみじゃなかったの?」

唯「……わたしなら、わすれないのに」ぼそり

律「んー?」によによ

唯「あんでもないっ!」ぷーい

ガチャ

紬「こーんにちはー」

澪「ほあっ!?……なーんだ、みんなか」

唯「澪ちゃんおまた」

澪「もう、おそいぞっ!」ぎゅう

唯「にゃ、やだっ!はなして!」べしべし

澪「やーだ。んー」ハグハグ

律「……」

紬「じゃあ、わたしと唯ちゃんで機材はこぶわね」

唯「いってきまー」

律「いってらー」

ガチャバタン

律「……なあ澪、さっきなにしてたん?」

澪「……手のひらに馬かいて、のんでた」

律「馬じゃなくて、人だぞー」

澪「りぃいいいつぅぅううう!」がばっ

律「おわっ!?な、なんじゃい!?」

澪「もうやだー!わたしとボーカルかわってー!」しくしく

律「じゃあ、ドラムどうすんだよ!」

澪「わたしがやるから!ドラムもベースもわたしがやるから!」あうあう

律「ぎゃくにみてみたいわ!」

澪「りーつぅー!りーつぅー!」ぐぐぐ

律「えーい、しっかりせい!そんなんじゃ唯に幻滅されるぞ!」ぐぐぐ

澪「うぅ……」


唯『澪ちゃーんおわかれだよー』

澪『唯!?』

唯『澪ちゃんうたいたくないんだよね?だからさよならー』

澪『まって!わたしちゃんとやるから!』

唯『わたしモーリタニアいくんだー。ハローグッバイー』

澪『やだぁ!唯まって!わたし言いたいことがあるから!やだああぁ……』


澪「……き、きめた!わたしちゃんとうたうよ!」

律「それでいーんだよ。まったく……あんなはずかしい歌詞、わたしにうたわせようだなんて」

澪「わ、わるかったな!」ついっ

律「……しっかりやれよ」

澪「……」

律「この曲に、おまえの誰かさんへの想いをこめたんだろ?」

澪「……しってたのか」

律「バレバレ」

澪「むー」ぷう

律「おまえがうたわなくて、どうすんだよ。……な」

澪「……うん。ありがと」

唯「んしょ、んしょ」

唯「機材、おもい……」へな

紬「♪しゃらんらしゃらんらー」

唯(……ムギちゃん、あせひとつかかずに!)

紬「……ゆーいちゃん」

唯「な、なに?」

紬「このおしごとが終わったら、ちょっとおはなししましょ」

唯「?……ん。わかった」



紬「……ふう、おしまい」

唯「それでムギちゃん、おはなしってなに?」

紬「唯ちゃん、なやみがあるでしょ?」

唯「え?……な、ないよ!?」あせあせ

紬「ほんとかしらー?」にこにこ

唯「……ぅ」

紬「はなしてみて?」

唯「……りっちゃんや澪ちゃんには、いわないでね」

紬「いわないいわない」

唯「……わたし、さいきんある子にこまってて」

紬「うんうん」

唯「その子はやだっていっても抱きついてくるし、いくらいってもベタベタするし、ほんとにこまった子なんだ」

紬「あらあら」

唯「……でも」

紬「でも?」

唯「でもね、ほんとはいやじゃないの。とってもうれしいの。その子がわらうと、いつも元気になれるの」

紬「そっか」

唯「……なのに」

紬「なのに?」

唯「わたし、その子にひどいことばっかりして、いいたいことがいえなくて……」

紬「唯ちゃん?」

唯「このままずっと、この気持ちがいえなかったらっておもうと、なんだか情けなくて……」ポロッ

紬「あっ……」

唯「……ぐすっ……なくなんて、おかしいよね……」ポロポロ

紬「……だいじょうぶよ。唯ちゃんは情けなくなんかない」

唯「……んん」ふるふる

紬「だって唯ちゃん、その子のためにずっとがんばってきたもの。その子をよろこばせるために、一生懸命にやってきたじゃない」

唯「そんなこと……」

紬「さっきもその子をたすけるために、わざわざお化けやしきにかけつけてきたんでしょ?」

唯「……あれは、ただのかんちがいだもん」

紬「かんちがいするほど、その子を心配したのよね?さけび声をきいて、たすけにいったのよね?」

唯「……そ、だけど」

紬「唯ちゃんには、それだけの勇気があるのよ」

唯「ゆうき……」

紬「その勇気を、こんどは想いをつたえるためにつかうのよ!」

唯「……んー」

紬「その子も、唯ちゃんが想いをつたえてくれるのをまってるはずよ」

唯「……ん。わかった、がんばる」

紬「えらいわ、唯ちゃん!」なでなで

唯「か、カンタンなことだもんっ」つんっ

紬「さあさあ、まずはライブを成功させましょう!」

唯「……ムギちゃん」

紬「はい?」

唯「……ありがとね」


そして、本番直前……

澪「いよいよ、だな」

紬「ええ」

律「みんなー、舞台袖で100円ひろったぜー!」

澪「おまえはもっと緊張しろ!」べしっ

唯「……りっちゃん」

律「んー?」ひりひり

唯「やっぱり、このふくで演奏するの、止めよう……」

律「ぷっ」

唯「あ、あに?」がうー

律「まーだそんなこと気にしてたのか?」

唯「はずかしいものは、はずかしいもん」ぷい

澪「だいじょうぶ、すっごくかわいいよ!」

唯「もー!もー!」

澪「ゆーい」

唯「つーん」

澪「……」ぎゅ

唯「な、なに……?」

澪「わたし、しってるから。唯がたくさんれんしゅーしてたの」

唯「あ……」

澪「のぞいちゃった。ごめんね」

唯「……もう」

澪「唯なら、ぜったいにだいじょうぶ」


澪「ね?」にこっ

唯「……ん」ぽひゅー

澪「さあ、いくぞ!みんな!」

律「おう!」

紬「おー」

唯「……澪ちゃんっ!」

澪「んー?」

唯「わたし、澪ちゃんに伝えなきゃいけないことが……」


「次は、軽音楽部による、バンド演奏です」


唯「……あとでね」


憂(お姉ちゃん、皆さん……)

憂(がんばって!)


律「1、2、3、4!」

澪「♪キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI」

澪「揺れる思いはマシュマロみたいにふわ☆ふわ」

澪「♪いつもがんばる」

唯「……いつもがんばる」

律(……お)

澪「君の横顔」

唯「君の横顔」

澪「ずっと見てても気づかないよね」

澪唯「夢の中なら二人の距離縮められるのにな」

澪唯「あぁ カミサマお願い二人だけのDream Timeください☆」


澪「お気に入りのうさちゃん抱いて今夜もオヤスミ♪」

澪唯「ふわふわ時間」

澪唯「ふわふわ時間」

澪唯「ふわふわ……」

わああああああ!!

澪「みんなー!ありがとー!」

ひゅーひゅー!

和「ささ、時間おしてるからはけてはけて」ひそひそ

律「うし、撤収!」

唯「……」

澪「唯?」

唯「あのー、みなさん。すこしおじかんをいただけますか?」


唯「……わたし、この軽音部にはいるまえは、いちども部活なんかしたことない子でした」

唯「いまわたしがここにたっているのは、みんなわたしの友だちのおかげなんです」

唯「特に、あるひとりの女の子は、いつもわたしをたすけてくれたし、笑顔をたくさんくれました」

唯「……でもわたし、みんなになんにもお返しできなくて、むしろひどいことばっかりして」

唯「たたいたことはなんどもあったけど、言うべきことはいちども言ったことがなくて」

唯「……だから、この場で言わせてくださいっ!」

唯「りっちゃんにムギちゃん、ありがとう!そして」



唯「澪ちゃーん!だいすきだよーっ!」


澪「……へ?あえ?」

紬「まあ……」

憂「わああ……」

ひゅーひゅー!ぴゅー!

澪「あ……あうぅ……!」ぱたーむ

律「みおーっ!?」



唯「あ、あれ?」



翌日……

律「えー諸君!きのうはおつかれさま!」

唯紬「わーい!」

律「ムギのキーボード、すごくよかったぞ!」

紬「よかったわぁ」

律「唯は初ライブにしては、じょーできだったぞ!」

唯「ありがとー!」

律「澪のボーカルも、すっごくよかったぜ!」

紬「もうファンクラブができてたわねぇ。……ゆいみおファンクラブ、ですって」

律「……とうの本人は、再起不能だけどな」

澪「モウ……オモテアルケナイ……」

唯「澪ちゃん……きのうの、おこってる?」おずおず

澪「……ゆい」ぎろり

唯「へ……うわっ!」

澪「きのうはよくもやってくれたな、このこのー!」うりうり

唯「わっ……は、はにゃして!」

澪「だーめ!もうぜったいにはなさないからな!」すりすりすり

唯「もー!やめてよぅ」にこにこ

澪「ゆーいー」

唯「つーん!」



THE END






最終更新:2011年02月22日 20:04