和「澪、ちょっといい?」
澪「」
和「澪?」
澪「(和と律がデート? えっ? なんで……? まさか和は律のこと……)」
何かもやもやしてるみたいだから先に律から調べましょうか……。
和「律、ちょっと携帯見せてくれない?」
律「携帯? 別にいいけど、はいよ」
和「ありがとう」
案外あっさり渡してくれたわね。さて、機種とか見て聞く間に「わ」の予測変換を調べ……。
待ち受け
和律
和「……えっ」
律「……ああああっとおおおおおおおおちょっとごめんあそばっせええっ!」ピピピピピピ
和「……」
律「……へいお待ちっ!!!」ハア…ハア…
待ち受けがベイブレードを持った荒くれ小学生なものに変わっている。
これはこれでどうかと思うけど……。
和「ねぇ律、さっきのって……」
律「えっ? あ~修学旅行で撮ったやつ! 忘れたのか~? ゛たまたま ゛それにしてたんだよ゛たまたま ゛」
和「そう……ならいいけど」スチャッ
わ予測変換
和
こいつ……黒か。
律「で私の携帯がどうかした?」
和「ねぇ律……あなた私の名前携帯で打つ時どうしてる?」
律「ん? どうって?」
和「だから和に行き着くまでの過程の話よ。もしかして……わ→和にしてない?」
律「あれ? なんでわかったの? いや~のどかで打っても出ないからさ~」
和「……」
律「和……?」
和「わちゃんわちゃん言われてるこっちの身にもなりなさいよ!!!!」
律「とわっ! なんだよ急に……大声出すなよ」
和「あなたが私に送って来たメールは全て「わ」ちゃん宛てだったのね! 間違って「のどか」が返信してごめんなさいね!」
律「何いってんだよ……和に送ったに決まってるだろ?」
和「ならちゃんと「のどか」って打ってよ……漢字だからって誤魔化さないでよ……」
律「でもさ~のどかって打っても和って出な(ry」
和「」ピピピピピピ
和「はい、これで出るようになったわ!」
律「あ……うん」
和「次から気をつけてね」
律「あ……うん……」
澪「(でもそうだとしたらいつからだろう……そんな素振り見せなかったし……)」
和「澪」
澪「(やっぱり修学旅行とかからかな……修学旅行は急接近するって言うし……私も何かしとけば)」
和「みーお」
澪「あひゃいっ!」
和「携帯、見せて」
澪「えっ? えっ?」
和「これはね……私の尊厳を守る戦いなの。お願い、貸してちょうだい」
澪「何かよくわからないけど……はい」
和「」スチャッ
わ
和「あら?」
和「予測変換してないの?」
澪「うん。歌詞をメモする時、余計なインスピレーションが入らないようにって」
和「へ……」
じゃあわからないわね……。
和「」
おもむろにアドレス帳の自分の登録されてる所を見る。
和「……がっ」
和「……澪……信じてたのに……信じてたのに……!」
澪「えっ……? 何が?」
和「これよ!!!」
和が見せつけたもの、それはアドレス帳の登録ふりがな欄。
そう、これは打ち込んだ漢字に自動でふりがながつくシステム……故に発覚した。
澪のわ→和が。
裏切りの……「わ」
和「朝のメールも「わ」ちゃんだったのね!」
澪「その……ごめん。律と同じ理由で……出なかったから」
和「」ピピピピピピピピピ
和「これで出るわ……」
澪「あ、ありがとう…?」
和「……はあ」
澪「……」
和「」チラッチラッ
澪「……」
和「……はあ」
澪「ごめん……そんな気にしてるなんて思わなくて」
和「いいのよ……アドレス帳のワちゃんさえ直してくれたらそれで……」
澪「今すぐ直すから!」ピピピ……
和「……」
結局誰も私のことをのどかなんて呼んでないのよ……心の中じゃ「わ」ちゃんなのよ……。
唯「えっへへ~「和」ちゃん」
和「唯……」
そうよ……唯ならきっと。
幼なじみで付き合いも長いんだしめんどくさいなんて理由で「わ」→和なんかにしてない筈……。
和「唯……信じてるから、私。携帯見せて?」
唯「いいよぉ~」
太陽みたいな眩しい笑顔で承諾する。
ああ……あなたが太陽なら私は月になってずっとあなたの光を受け続けるわ……唯。
唯「はいっ! 和「わ」ちゃん」
和「あんたはずっと「わ」ちゃんって言ってたのね今わかったわええわかったわええっ!」
唯「冗談だよ和ちゃ~ん」
和「もういいわよ……わちゃんでものどかちゃんでもまどかちゃんでもかずちゃんでも眼鏡っ子でもウルトラセブンでも好きに呼べばいいわ……」トボトボ
紬「あれ? 和ちゃん何かあったの?」
和「ムギ……(はアドレスさえ知らないか)何でもないわ」
11Rを戦った後のように席にくたりと座り込む。
終わった……戦いは終わったのだ。
「わ」ちゃんにのどかちゃんは完全敗北……次のラウンドには判定が下るだろう。
明日から私の名前はわちゃんだ……情報社会に置いてきぼりなのどかちゃんなんて名前はもう……。
和「」シクシク
律「和のやつどうしたんだ?」
澪「さあ……」
唯「どうしたんだろうね~わちゃん」
紬「私の出番もうおしまい?」
──公園
夕焼け……私は何故かブランコを漕いでいた。
和「」キーコキーコ
茜色に染まる公園……それを演出しているのは太陽。
太陽……唯……。
太陽「わちゃん」
和「……」ブンブンッ
太陽までが私をわちゃんと呼ぶ幻聴まで聴こえ出した……。
もう長くはないだろう。もう少しすれば私はわちゃんになるのだ……可愛げも丸みもないただの一文字……「わ」
それが私の名前……。
嫌だ……! そんなのっ! 私はのどかよっ!
のどかっ! 和なのっ!
「和ちゃん」
その時、声がした。
その声の主は優しく……それが当たり前かのように私の名前を呼んでくれた。
その声の主は……
和「憂……」
憂「お姉ちゃん達心配してたよ?」
和「そう……」
心配してたのは……果たしてどっちかしらね。
憂「隣いい?」
和「ええ」
憂「」キーコキーコ
和「」キーコキーコ
憂「こうしてると昔を思い出すね~」
和「そうね……泥だらけになるまで遊んだっけ……」
憂「覚えてる? 昔ここでかくれんぼして……」
和「覚えてるわ……。唯が鬼で……ずっと見つけられなくて泣き出して」
憂「私が心配になって出ていって一緒に和ちゃんのこと探したんだよね」フフフ
和「そうそう。和ちゃ~んどこ~って一生懸命叫んで……」
和ちゃ~んどこ~?
唯「和ちゃ~んどこ~?」
って……あれ?
憂「今も昔も変わってないね、お姉ちゃんっ」
和「ほんとね……全くあの子ったら……」
あんな大声で呼ばれたら……恥ずかしいじゃないの。
唯「和(のどか)ちゃ~ん~どこ~?」
今も昔も……私の名前はのどかなのね…。
これからもずっと……。
和「帰りましょう、憂」
憂「うんっ! 和ちゃん」
打ちやすいから「わ」→和、それもいいわ。
本当は和(わ)でも、私の為に打ってくれれば別の意味が生まれるのも確かなんだもの。
のどかという意味が。
むしろ逆に和って言葉を見たらのどかってイメージするぐらいにしてやろうじゃない。
上等よ、覚悟しなさい……「わ」ちゃん。
憂「ね、これ見て」
和「ん?」
私に向けられた……憂の携帯?
そこには「わ」の予測変換があった
わ予測変換
わかった 忘れた 私の 渡して
和「あれ……ない?」
憂「えへ~」
のどか予測変換
和ちゃん大好き 和ちゃん 和さん 和ちゃ~ん 和お姉ちゃん のどかちゃん 和ちゃんと買い物行きたいな
和ちゃん今度遊びに来て 和ちゃん今日晩御飯食べに来て 和ちゃん今日泊まってって
和「憂……ありがとう」
本当に……この姉妹には勝てないわね。
唯「和ちゃ~ん」
和「また泣き出す前に出ていってあげないと」クス
憂「お姉ちゃんももうそんな子供じゃないよ~」フフフ
憂「……ねぇ和ちゃん」
和「ん? どうしたの憂」
憂「携帯……見せて?」
和「いいけど……どうかしたの?」
憂「うん……ちょっとだけ……ね」
憂「」ピピピ……ピピピ……
和「? ……? ……!」
ま、まさか……!
和「う、憂っ! やっぱり携帯返し(ry」
憂「おかしいよ……? 和ちゃん。ういって打っても憂って出ないよ……? この携帯」
和「あのね……それは……」
まずい……
憂「変だよね……最低でも「う」で出してると思ったのに……まさか「う」の予測変換で全く出ないなんて……さ?」
和「それはあのえっとその……」
憂「……!? もしかして!!!」ピピピ……
和「憂?! ちょっと待って「ゆ」行はやめなさい「ゆ」行はっ!」
ゆの予測変換
憂鬱 夕焼け ゆっくり 故に 唯梓 油断
憂「和ちゃん……「ゆううつ」の鬱を消して憂……に?」
和「その……あの……ごめんなさい」
憂「う……ううっ……うああああああああん」ポイッ
和「ああアあっ! 私の携帯が噴水にいいいいいいっ!!!!」
憂「和ちゃんは純ちゃんや梓ちゃんとは違うと思ってたのにいいっ!!!」トッタトッタトッタ
和「ごめんね憂いいいいいいいい」トッタトッタトッタ
憂「私はゆうじゃないも~~~~~~んっ!!!!!」トッタトッタトッタ
和「ごめんねういいいいいいいいいい」
唯「あれ? 二人ともなにやってるの? 鬼ごっこ?」
こうして、唯の家まで三人で鬼ごっこ?をしましたとさ。
その日憂の機嫌を治す為に唯の家に泊まったのは言うまでもない。
和「こういうことになりかねないからみんな名前を打つ時はちゃんとその人の名前で打たないと駄目よ?
漢字だからって誤魔化さないこと」
和「私(和(のどか)との約束ね」ニコッ
おしまい
最終更新:2011年02月22日 20:51