なんでアタシは
澪を泣かす事しかできないんだろう

なんで私は
律を困らせる事しかできないんだろう

私は公園のベンチでうずくまって泣いていた

泣くだけじゃ何の解決にもならない

そんなのとっくの昔に分かりきっていたのに…っ

受話器越しの律の声を聞いただけで崩れてしまうほど


私は律の事を愛してしまっていたんだ

それでも、今泣いてちゃ駄目なんだ

私はベンチから体を離して道路の方へ向かう
涙で視界がぼやけ霞む

でも

ここで動かなきゃ

ここで言わなきゃ


澪「今、言わなくて、いつ、言うんだよ…私」

今度は、背中越しなんかじゃなくて正面から
律の顔をまっすぐ見るんだ

アタシは全力で走っていた

喉はカラカラ
夜といっても夏は夏 汗でシャツはベトベトだ

それでも

ここで走らなければ

ここで、ハッキリさせなきゃ

律「澪と一緒にいる、なんて言える資格ない!!」

梓のおかげで目が覚めたんだ

アタシ達は一緒にいるべきなんだ
アタシにはやっぱり 澪が必要なんだ

アタシは交差点を通り過ぎ遊歩道を駆けた



…見えた

私は腕で涙を拭った

それでも目からは涙が溢れてくる

けど今は

一歩でも律の元へ行こう

一つでも水面をさざめかそう

律が気づくように

律に伝わるように


ふと横を見ると、一匹の黒猫が歩いているのが見えた

黒いからちょっとした親近感がわいた

澪「一緒に、律のところに行こうか」

律「澪ー!!!!」

アタシは澪に向かって懸命に叫ぶ

けれどここは夜になっても車通りの多いところで

大きなトラックの通る音でかき消されてしまった

律「…もっと近くにいかなくちゃ…」

すぐ目の前にいるのに

車が多くて、澪の姿が見えては、消えてゆく

会いたい気持ちが心に溢れて
次第に焦る気持ちが現れてきた

信号機の下にきて早く信号が赤から青になるようボタンを連打する

しかし信号機はその願いに答えず赤のままだった

律「くっそ、早く青になれよ…!」

信号機が青になるかわりに一気に交通量がへった

澪がハッキリと見えた

律「澪ー!!!」
澪「!!?」

律の声がきこえる

律の姿は信号機の下にあった

ひどく、懐かしく感じた
もう、言ってしまおうか

澪「律ー!!」
澪「言いたいことがあるんだー!!」

信号が青に代わり

澪は律の元へ走りかけた

黒猫は律を見つけて澪より数歩多く駆け出した

その時だった


サイレンの音が周囲に木霊した

「危ない!!!!!」

青信号にもかかわらずトラックが飛び込んできた

黒猫が見るも無残な姿になるのは誰もが瞬時に理解できた

しかし

不幸なことに律の瞬発力のせいか黒猫は難を逃れ

代わりに律がトラックにはねられた

澪「律!!!」

律の身体は空をとび、そして遠くで落ちた



澪「…ハァ…ハァ…」

動悸が激しい
足からは力が抜け、コンクリートに膝を落とした
息を整えようとして深呼吸するけれども
込み上げてくる酸っぱさと、辺りの鉄臭さにむせ返りそうになる

澪「っ…」

全てが歪んで見えた

目の前で 壊れてしまったんだ

ハッと我に返り私は律を探した

周りでは横転したトラックと数台の乗用車ある

私はそれの間をぬって律を探した

澪「律!!律!!りつぅ!!!」

どこにいるんだよ、律

でてきてよ

いつもみたいに笑ってよ

ガソリンくさい

なんだか頭がクラクラする

それになにより体の節々が尋常じゃないほど痛かった

それでもアタシは遠くを見つめていた

ひどく遠い、自分から離れた場所にいる、おびえたような

警戒するような、けれども力強い瞳を探した

暗くなっていく、霞んでゆく自分の視界の先に、ちゃんとあるか探した

律(澪…どこ…?)

澪「…っ!律!…りつぅ!!」

律は澪のいた所から10mほど離れた所で倒れていた

律「…ぃ…ぉ…ガハッ」

律の口からは大量の血が吐き出された

澪「喋るな!くそ…なんで…こんな…っ」
近くの人が呼んだのだろうか
遠くでサイレンの音が聞こえた

律「み…ぉ…」

律は私に向かって精一杯、手を上げた

私は律の手にしがみついた

澪「…っ律」

でも律の手からはどんどん力が抜けていって

どこかで切れたのであろうか
腹部からは大量の血がでていた

慌ててタオルで止血する

澪「死んじゃ嫌だ!!律!!!」

閉じかけの瞼が 完全に閉じてしまった



……

梓「本当に…世話がやけるんだからっ…」
私は律先輩の背中を押した後、壁に背中をあずけていた
私だって馬鹿じゃない
私だって、皆を見てきた
律先輩が抱いている感情は、澪先輩ももってるモノだって

そして、その感情と同じモノを私は唯先輩に抱いているって事も

わかってる

けど、唯先輩はその感情を私にはもっていない


だからこそ
両想いの二人には、繋がってほしかった
途切れないで、ほしかった
誰かにそれは自分のエゴだ、他人に押し付けるなといわれたとしてもも
私はきっと同じ事をするだろう
だって

梓「二人とも、びっくりするくらい鈍感なんだから」

紬「そうね、あの二人はこういう事に対してすごく奥手そうだもの」

梓「っ!むぎ先輩!?」

紬「だからからかな、私も、背中を押したくなっちゃったの」

梓「…」

紬「皆、素直になっちゃえばいいのにね」

そういって紬先輩は私に苦笑いを浮かべた

素直に

そう

素直になれたら、いいのに…

紬「信じましょう?あの二人を」

梓「…はい」

うん、今からならまだ間に合うよ…律先輩

だから、頑張って

しばらく私とむぎ先輩は

すっかく暗くなった空を見ていた


紬「あら、誰からかしら?」

紬先輩の携帯がなっていた

宛名は澪先輩からだった


私達は目を合わせて笑った

梓「大丈夫みたいですね」

紬「ええ」

そう言って紬先輩は電話にでた



……

唯「ういー…あいす」

憂「もう、30個も食べてるよお姉ちゃん」

唯「うーいー?」

憂「…はいはい、今もってくるからね」

唯「ありがとー♪憂ー♪」

私は先ほどまで憂と一緒にやっていたPSPで

リオレイアの素材を剥ぎ取っている時だった

携帯「ヴヴヴヴヴヴ…」

唯「あれ?ケイ太が鳴ってる…」

宛名はむぎちゃんからだった

唯「あれ?むぎちゃん日本に帰ってきてたんだ」

唯「まさか赤いと3倍早くなる乗り物にのって帰ってきてたりして♪」

唯「まーさすがにそれはないよね♪」

私は携帯を手に取り電話にでた

唯「もぉしもーし?むぎちゃん?」



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