~帰り道~
『梓に暴力はふるいません』
──カチャ
澪(なんとか聞き出せたな。こうしてICレコーダーで録音もできたし。梓の母親には嘘つく形になっちゃったけど)
澪(これと一緒に首輪や鎖を警察に持って行って、梓の首の痣なんかを見せれば流石に捕まるだろうな)
澪(ただ一番問題なのは、梓がそれを望んでるかだ……)
澪(曲がりなりにも母親で、父親が自殺したからああなったわけだし)
澪(自殺以前は普通の家庭だったはずだ)
澪(ある意味、あの母親も被害者なのかな……)
~澪の部屋~
澪「ただいま」
梓「……みお、遅かったです」
澪「うん。ごめんな梓」
澪(やっぱり話すべきだよな……)
澪「……なあ梓」
梓「?」
澪「今、梓のお母さんに会ってきたんだ」
梓「…………」
澪「それで証拠も録ってきた。あとは梓が警察に助けを求めれば母親は捕まると思う」
梓「…………」
澪「…………」
梓「……捕まって……ほしいです」
梓「……お父さんを殺したあの人は許さないです」
澪「────え?」
梓の話はこうだった。
昔から母親はああで、何かあると梓に暴力を振るっていた。
それを止めようと父親が割って入るが、母親は手首を押さえられただけでヒステリックに泣き叫び、
事あるごとに何度も警察に電話をしていたらしい。
外面だけは良いので、警察に話を聞かれたときも『夫が、私と娘に手を上げた』そう言い通し、父の言い分は通らなかった。
家に初めて警察が来たとき、梓は父を必死に庇った。
しかし、当時小学生の梓の話など、真剣には聞いてもらえなかった。
そして父を庇った罰として、梓はより一層、母に酷いことをされたらしい。
それ以降、警察が来たときは、母の暴力が怖くて父を庇うことができなくなった。
中学生の頃、一度だけ父と逃げたことがあるらしい。
しかし母は、父の友人に話を聞いて回り、すぐに居場所を特定。罰として、梓への暴力がエスカレート。
そこまでされても、父は決して母を殴ったりはしなかったそうだ。
いや、怒鳴ったり殴ったりすると警察を呼ばれるので、実際は出来なかったのかもしれない。
そして今から一ヶ月前、ふと、魔が差した──
母は梓に首輪をはめ、鎖で繋ぎ、庭に放置し始めた。
それを見た父は初めて母を殴った。
そして数日後、父は刃物で刺され、殺された。
母は警察に「夫に襲われ刺されそうになり、咄嗟に刺してしまった」と語った。
もちろんそのときの泣きじゃくる母の姿を梓は演技だと見抜いていた。
母の腕には刃物で切られた後──もちろん自分でつけたんだろう──があり、
警察は以前から中野家の事情を『暴力的な父親がいる家庭』と認識していた。
そして正当防衛が認められ、母親は無罪となり、警察が母親に配慮し、自殺と公表した。
梓「お母さんは精神的にあまり強くないので、私が産まれて、子育ての心労からおかしくなったんだと思います」
梓「とにかくお母さんが怖くて、警察にも相談できなかったです」
梓「それでもお父さんは出来るだけ私を守ってくれて」
梓「抱きしめたり頭を撫でてくれたことは1度もないけど、私がお父さんに依存しないように、そう考えてだと思うんです」
澪「…………」
梓「現にもう私は、隣で抱きしめたり頭を撫でてくれる人がいないとダメですから」
澪「…………」
梓「……責任……とってください」
澪「……梓」
そして私は、梓の唇へ、そっとキスをした。
梓「っっっ///」
澪「…………」
梓「……も、もう一回です!」
澪「……ん」チュッ
梓「~~っっ///」ジタバタ
そして、私と梓は警察に駆け込んだ。
一から事情を説明し、鎖や首輪、ICレコーダー、
梓の首の痣などを見て、事態を信じてくれたようだ。
梓の母の取調べが始まるとともに、家からは新品の首輪や鎖、
拷問器具らしきものまでが発見された。
後日、娘への暴行、夫の殺害を認め、梓の母はその大きな罪を償っている。
~夜・澪の部屋~
澪(なんとか警察も信じてくれたな)
澪(しかし、今日一日で色々あったな)
澪(梓の母親に会いに行って、梓から事の真相を聞いて、警察へ駆け込んで……)
澪(そして、文字通り梓が独りになっちゃたな……)
澪(父も母も、兄弟姉妹は元からいないし……)
澪(子供の頃からこんな状態で放って置かれてるんだから、近しい親戚もいないだろうし)
澪「…………」
澪(そういえば梓とキスしたよな……)
澪「…………」
そう思い、疲れて眠ってしまった梓の寝顔をそっと覗き込む。
澪(か、可愛いな……)
梓「…………」スースー
澪(顔ちっちゃいし……)ジーッ
梓「…………」スヤスヤ
澪(ほっぺたプニプニだし……)ツンツン
梓「…………」
澪「…………」ツンツン
梓「…………」
澪「…………」ツンツン
梓「……あの」
澪「…………」ツンツン
澪「あ……」
澪「起きてたのか?」
梓「あんなにツンツンされれば誰だって起きますよ……」
澪「そっか(口調が戻ってる……)」ツンツン
梓「ち、ちょっと! やめてください!」
澪「あ、ごめん……」スッ
梓「あ……」
澪「え?」
梓「も、もう知らないですっ!」ガバッ(頭まで布団かぶる)
澪「…………」
梓「あの、澪先輩」ヒョコ
澪「ん?」
梓「……ちゅー、してください」
澪「…………」
梓「…………」
澪「……うん」
梓「……お願い……します」
澪「…………」
澪「……ん」チュ
梓「んん……」
澪「はぁ……はぁ……」
梓「んちゅ……んん……」
澪「ちゅ……梓……んっ……」ドサッ
梓「んちゅ……みお……しゅき……れろ……」ギュッ
そんなこんなで色々あって……よくじつ!
~翌日・日曜日~
澪「梓、自分の家へ帰るのか?」
梓「はい、お父さんの残してくれたお金もありますし、私の家はあそこですから」
澪「ここに住んでもいいんだぞ?」
梓「気持ちだけ受け取っておきます」
澪「そっか」
梓「……色々あって、頭がゴチャゴチャしてますけど」
梓「どこまでいっても、親は親なんだと思います」
梓「だからお母さんが捕まった今でも、ちょっと悲しいんだと思います」
梓「つらいことや悲しいことがいっぱいあって、私が産まれてから、お母さんはおかしくなって」
梓「それでも、私が産まれたときは、笑顔で抱いてくれたはずだから──」
梓「そのときだけでも、優しく愛してくれたはずだから──」
梓「私を身篭ったお母さんは、あの家でお父さんと一緒に色々と想像してたと思うんです」
梓「『名前は何にしよう』とか『家族三人で旅行に行こう』とか『河原でバーベキューもいいな』とか」
梓「私にとってのあの家は悲しい出来事だらけですけど、お父さんやお母さんにとっては、楽しい思い出もあったと思うんです」
梓「そんな思い出がつまった場所だったら──」
梓「少しでも私を思ってくれた場所だったら──」
梓「私はあの家に帰ってもいいかなって、そう思ったんです」
澪「……うん。そう思ったなら、それがいいと思う」
梓「はい。それと、この三日間ありがとうございました」
澪「うん。それじゃまた明日、学校でな」
梓「はい。それでは、澪先輩」タッタッタッ
澪「…………」
澪(……澪先輩、か)
~翌日・登校中~
律「おっす澪、おはよー」
澪「ああ、おはよ」
律「なんだ? 元気ないなー」
澪「さすがに疲れた」
律「……それで、終わったのか?」
澪「うん」
律「そっか……」
唯「あ、りっちゃん澪ちゃんおはよー」
~放課後~
紬「今日はケーキよ~」
紬「イチゴタルト、ショートケーキ×2、モンブラン×2よ~」
唯「わぁ、おいしそ~」
律「おっし、選ぼうぜー」
唯「はいはい、私イチゴタルト!」サッ
律「じゃあ私はショートケーキ!」サッ
紬「私はモンブランにしようかしら」サッ
律「ほら、はやく決めろよー」
澪「ん? ああ……じゃあ私はこのモンブランで……」
律(澪のやつ相当疲れてるなー)
律(まあ色々あったみたいだしな。唯が空気読んで澪に何も聞かないくらいだもんなー)
──ガチャ
梓「すみません! 遅れました!」
唯「あ、あずにゃんやっと来た!」
梓「ごめんなさい。放課後にちょっと寝ちゃったみたいで……」
律(梓もお疲れだな)
唯「あずにゃん、余ったショートケーキでもいい?」
梓「あ、はい。何でもいいです」
律「よし、じゃあみんなそろったな」
唯律「いただきま──」
梓「あ! ち、ちょっと待ってください!」
唯「ふぇ? どうしたの? あずにゃん」
梓「えと……ムギ先輩。ケーキ交換してもらってもいいですか?」
紬「ええ、いいわよ~。はい」
梓「あ、どもです」
唯「あれ? あずにゃんってモンブラン好きだったっけ?」
律「確かいつもショートケーキ選んでたような……」
梓「あ、いえ……気分転換にモンブランを……///」
紬「ああ! 澪ちゃんとおそろいが良かったのね」ニヤニヤ
唯「あ、なんだそういうことかー」
梓「ち、ちょっと! 違います!」
律「別にそんな必死にならなくてもいいだろー」
梓「だから違うんです! そんなんじゃないです!」
梓「みおからも何か言ってください!」
澪「……え?」
梓「あ……」
唯律紬「みお……?」
梓「え、えと……み、見送るからって言ったんです!」
律(うわー、無理ありすぎ)
唯(あずにゃん、それはバレバレだよぉ)
紬「あらあらまあまあ」ウフフ
梓「み、澪先輩からも何か言ってやってください!」
澪「…………」
澪「……梓、ちょっとこっち来て」
梓「……はい?」トテトテ
梓「一体なんです──!?」お口にチュー
梓「んん~~っっっ//////」チュー
唯「おおっ! 澪ちゃん大胆っ!」
律「お、おい澪っ! みみ、見てるこっちが恥ずかしいぞ/// 」
紬「まあまあまあまあまあまあ」ウフフ
澪「ぷはっ……はあ……はあ……」
梓「み、みおっ///」
澪「まあ、そういうことだから……みんなよろしくな」
唯「おおおっ! 澪ちゃん、あずにゃんと付き合ってるんだね!」フンスッ
律「ちくしょー梓に取られるとはああああ!! おめでとう♪」
紬「一年生の時からずっと思い続けてきた甲斐があったわね。梓ちゃん♪」
澪「梓」
梓「はっ! はいっ!」
澪「大好きだぞ!」
梓「うぅ……私も……大好きだよ、みお……えへへ///」
~おわり~
最後まで読んでくださった方々ありがとうございました
最初は序盤みたいにマジキチにゃんに変なことさせるのを長々と書いてようと思ったんだが
ネタが全然思いつかないからキチった理由とか考えてたらこんなになってしまった……
こんな深夜までホント申し訳ない
粗めっちゃあると思うが、そこら辺はそっと見逃してくれ……
最終更新:2011年03月21日 01:37