和「憂……!」ググググ

憂「和ちゃん!眼鏡はどこ?!」タタタッ

梓「眼鏡なら私が持って……あっ」バッ

唯「ノドカチャン、イッカイダケ、イッカイダケ……」ハァハァ

憂「お姉ちゃん!そんなことしちゃメッでしょ!」メッ!!

唯「!!」ビクッ

梓(唯先輩の動きが止まった……?!)

憂「和ちゃん眼鏡!」サッ

和「っ!」スチャッ

唯「……はっ!」

和「……」ゼェゼェ

唯「……の、和ちゃん……私また……」ヘナヘナ

紬「あら……」

梓(正気に戻った……?)

和「唯、落ち着いた? じゃあまずは私の上からどいてちょうだい」

唯「あ、うん……」ヨロ

憂「和ちゃ……和さん、ごめんなさい……」

和「いいのよ、大丈夫」ヨッコラショ

唯「……和ちゃん……ごべんだざい……」グズグズ

和「もういいから、泣かないで唯。ほら憂も」ナデナデ&ナデナデ

梓「……ええとあの、なんだったんですか、今の」

和「これから説明するわ。とりあえずみんな座りましょうか」

澪「和、その前にこっちも」

律「……」フルフルフルフル

和「あっ、ごめんなさい、律……えっと、りっちゃん」

梓紬(りっちゃん?!)

律「……」チラッ

和「びっくりさせちゃったね。りっちゃん、大丈夫よ」ニコッ

律「……みおちゃ、」ギュッ

澪「ほらりっちゃん、みんな友達でしょ?怖くないよ?」ナデナデ

律「……」フルフル

梓(律先輩が……)

紬(澪ちゃんにしがみついて、子犬みたいに震えて)

梓紬(可愛い……)

澪「誰か髪留め用のゴム持ってない?輪ゴムでもいいんだけど」

紬「あっ、シュシュなら持ってるよ」スッ

澪「ありがとうムギ。ほら、りっちゃんこっち向いて?前髪結ぶからね」

律「……」フルフル

澪「よっ……と、これでよし」

律「……」パイナポー

律「……はっ。澪……、私また、」

澪「気にするな。さ、みんな椅子に座って一旦落ち着こう?」ヨッコラショ

紬「あっ、じゃあ私、お茶淹れるね」


ーーーーー


澪「……とまあ、律に関してはそういうことだから、みんな気にしないであげて」

梓「律先輩にそんな過去が……」

紬「軽くは言えないけど、りっちゃん、大変だったのね」

律「いや、澪が言ったとおり気ぃ使わないで。恥ずかしいから」タハハ……

紬(パイナップルなりっちゃんも可愛い……)

澪「それで、さっきの唯はいったいなんだったんだ?」

唯「……」グスン

和「それは」

憂「和さん、私から説明させて」

和「憂、」

憂「私とお姉ちゃんに原因があることだから」

和「……じゃあ、お願い」

憂「お姉ちゃんがこうなったのは、私たちが中学生の時ーー」


ーーーーー


和「……催眠術?」

憂「うん。昨日TVで催眠術の番組見て、お姉ちゃんが試してみたいって」

和「へえ……。それで、どうして私が呼ばれたの?」

唯「和ちゃんにも協力してもらいたいからです!」フンス

和「つまり遊びに付き合えってことね」

唯「えへへ……そうとも言うかな」ニヘラ

和「で、私はどうすればいいの?」

憂「私がお姉ちゃんに催眠術をかけるから、」

憂「和ちゃんはお姉ちゃんの前に立ってて?」

和「わかった。これでいい?」

憂「うんっ」

唯「ういー、私は準備おっけーだよ!」

憂「じゃあ始めるね? お姉ちゃん、目をつむって」

唯「んっ」ツムリ

憂「はい、では心を落ち着けて、深呼吸をして……」

唯「……」スーハー

憂「あなたはだんだん眠くなり、くらーい場所にゆっくりと、静かに沈んでいきます……」

唯「……」

憂「そこはとても心地よい場所で、あなたの心はだんだんと解放されていきます……」

唯「……」ユラユラ

和(遊びの割には、なんだかふたりとも真剣ね……)

憂「……私が3つ数えて手を叩いたら、あなたは目を覚まします」

唯「……」ユラユラ

憂「目を開けて最初に見た人に……あなたは……」

唯「……」ユラユラ

憂「……えっと、あなたは……」モジモジ

和(?)

憂「……キス、したくなります」カァァッ

和(えっ?)

唯「……」ユラユラ

和「ちょ、憂?」

憂「……スリー、ツー、ワン、はいっ」パンッ

唯「!」パチッ

和「!」ビクッ

唯「……」

和「……」

憂「……」

唯「……」ジーッ

和「……ゆ、ゆい?」

唯「……のどかちゃん……」フルフル

和「……な、何?」

唯「……ちゅー、してもいい?」フルフル

憂「!」

和「?!」


ーーーーー


憂「……というわけなんです」

律澪梓「……」ポカーン

紬「……」アラアラ

和「それからしばらくは大変だったわ。私の顔を見るたびに唯が飛びついてきて」

憂「ごめんなさい……」シュン

唯「……ほんとうに申し訳ございません」グスグス

和「素顔を見せなければ大丈夫ってことが分かって、それで眼鏡を掛けるようになったの」

律「和の眼鏡にそんな秘密があったとは……」

澪「それなら、さっきも後ろ向くか手で隠して顔を見せなきゃよかったんじゃ」

和「慌ててたから、そこまで頭が回らなかったわ」

梓「じゃあ和先輩のそれって、ダテ眼鏡なんですか?」

和「いいえ、どのみち視力はあんまり良くなかったから」

唯「一石二鳥だね」

律澪「お前が言うな」

唯「すみません……」ションボリ

澪「……こう言っちゃアレだけど、胡散臭い話だな」

和「その台詞、すごくデジャヴよ。でも実際こうして……ね」チラッ

唯憂「……」ションボリ

澪「まあ、確かに……」

梓「あ、あの」

和「なあに?」

梓「話の腰を折るようで申し訳ないんですが、さっきの、レベルKってなんですか?」

和「レベルKのKはキスのKよ」

梓「えっ?」

憂「レベルKのKはキスのKだよ梓ちゃん」

梓「えっ」

唯「レベルKのKはキ」

梓「それはもうわかりました」

唯「……」ションボリ

和「今回みたいなことが起きた時のために、呼び方を決めたの」

憂「それさえ伝えれば、人づてに説明する手間が省けるからね」

梓「は、はあ……」

律「だけど催眠術をかけたんなら、解く方法もあったんじゃないか?」

憂「もちろんすぐに試しました。でも、いくらやっても解けなかったんです」

紬「どうして?」

憂「それがわからないんです……」シュン

さわ子「自己暗示、じゃないかしらね」キラン

律澪紬梓唯憂和「!?」

律「さわちゃんいつの間に。っていうか、自己暗示?」

さわ子「ええ、憶測だけどね。あ、ムギちゃん私にも紅茶お願い」スタスタスタ ストン

紬「はいっ」イソイソ

和「山中先生、自己暗示ってどういうことですか?」

さわ子「んー、それを説明する前に、憂ちゃん?」

憂「はっ、はいっ」

さわ子「催眠術で、唯ちゃんにキスさせようとしたのはどうして?」

憂「え、えっと、それは……」チラッ

唯「……」

憂「えっと、あの」

唯「……私がそうしてって憂にお願いしたの」

梓「えっ」

さわ子「理由、聞いていい?」

唯「……」

さわ子「言いづらいなら、私が言っちゃおうか?」

唯「……っ」

和「……唯?」

唯「……自分で、言います」

憂「お姉ちゃん……」

和「……」

唯「あのね、和ちゃん。私、私……」フルフル

さわ子「……ちょっと待った」ハァ

唯「!」

和「?」

さわ子「さすがに意地悪が過ぎたわ。隣の音楽室に行って二人だけで話してきなさい」

唯「……」

和「……唯、行こっか」ガタ

唯「うん……」ガタ

キイ バタン

さわ子「私が出しゃばらなくても、あの子達で解決するのが一番いいんだけどね」

憂「……」

紬「先生、紅茶どうぞ」スッ

さわ子「ムギちゃんありがとう」ニコッ

さわ子「……」ズズッ

さわ子「ふぅ、おいし……。ところで、りっちゃん?」

律「ん、なに?」

さわ子「そのパイナップル頭もいいけど、」

さわ子「さっきの子犬みたいなりっちゃんも、なかなか可愛かったわよ」グッ

律「?!」

澪「さ、さわ子先生!」ガタッ

梓(どこから見てたんだろうこの人)

律「さわちゃん何言って……。あんなの、おかしーし……」

さわ子「あら、おかしくなんかないわよ。あのりっちゃんだってりっちゃんでしょ?」ズズッ

律「……っ」

さわ子「器用な性格じゃないからって、何を恥じることがあるの」コトン

律「……でも、」

さわ子「んー。じゃあ、澪ちゃんはどう思う?」

澪「!」

律「……」

澪「……どっちだって、律は律です。それは変わりません」

律「!」

澪「うんそうだ、どっちも律だぞ。な?律」ニコッ

律「……ありがと、澪」

さわ子「ふふ。いいわね、幼馴染って」

律「あ。あのさ、さわちゃん」

さわ子「んー?なあに?」

律「もしかして、”あの”さわちゃんも別人格……」

さわ子「あぁン?!」ギロッ

律澪紬梓「!」ビクッ

憂(お姉ちゃん、大丈夫かな……)ソワソワ


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最終更新:2011年03月24日 23:57