憂「おはよー、梓ちゃん」
梓「憂おはよ」
憂「月曜日の朝って眠いねー」
梓「ねー」
憂「純ちゃんはまだ?」
梓「まだ。純の奴、自分から朝練しようって言っといて」
憂「あはは。じゃあ先に練習始めちゃおうか」
梓「そうだね、時間もったいないし」
ジャカジャカジャカジャン
梓「♪ふわふわたーぁぃむ」
憂「♪ふわふわたーぁぃむ」
ジャジャッ ジャジャッ ジャ-ン
憂「ふぅ」
梓「憂、演奏すごく安定してきたね」
憂「そうかな?」テレテレ
梓「うん、合わせててすごく楽しいよ!」
憂「貯めてたお年玉で思い切ってキーボード買ってよかったよ」
梓「……ほんとに、ありがとね」リョウテ ギュッ
憂「ううん、私も楽しいから」オカエシニ ギュッ
梓「そろそろ教室行かなきゃ。結局純は来なかったね」
憂「うん……純ちゃん、寝坊かなあ」
梓「まったくもう、新歓ライブは明日だっていうのに」
~~~
憂「純ちゃん、今日はお休みだったんだね……」
梓「先生は風邪って言ってたけど、電話にも出ないし」
憂「メールにも返事ないね」
梓「そんなに体調悪いのかなあ……大丈夫かな、純」
憂「お見舞い行ってみる?」
梓「そうだね。途中で何か買って行こうか。ゼリーとか」
憂「うん、そうだね」
~~~
ピンポーン
憂梓「……」
憂「出ないね」
梓「うん……あっ!」
憂「え?」
梓「今、純の部屋の窓に人影見えたよ」
憂「えっ」
梓「私が見たら、なんか隠れた」
憂「純ちゃん……かな」
梓「多分」
憂「電話してみるね」
プルル プルル
純『……もしもし』
憂「あっ、純ちゃん!やっと出てくれた」ホッ
純『……』
憂「梓ちゃんとお見舞いに来たよ。……いま部屋にいるんだよね?」
純『……』
憂「体調そんなに悪いの? ゼリー、玄関前に置いておくから……」
ガチャッ
梓「あ、玄関から音がしたよ?」
憂「えっ、純ちゃん?もしもし?」
純『……鍵開けといたから、勝手に上がって部屋まできて』プツッ
憂「あっ、切れちゃった」
梓「純の様子どうだった?」
憂「うーん、声は普通だったけど、なんか暗かったよ」
梓「そっか……。とにかく上がらせてもらおうか」
憂「そうだね」
トコトコ ガチャ
梓「おじゃましまーす」
憂「おじゃまします……」
梓「部屋まで上がっちゃっていいんだよね?」クツヌギ
憂「うん、純ちゃんがそう言ってた」クツヌギ
トントントン……
梓「純?入るよ?」コンコン
ガチャ
純「……」
憂「純ちゃん、具合どう?」
純「……」
梓「純?大丈夫?」
純「……」
憂「頭まですっぽり布団かぶってるから」ヒソヒソ
梓「様子が分からないね」ヒソヒソ
純「……ふたりとも」ボソ
梓「うん?」
憂「なあに?」
純「ふたりとも、私の親友だよね?」
梓「えっ?」
憂「純ちゃん?どうしたの?」
純「……違うの?」
梓「いや、親友だよ。なんでそんな当たり前のこと聞くの?」
純「じゃあ約束して。絶対笑わないって」
梓「え?」
憂「笑わないって、何が?」
純「いいから!約束して!」
梓「あっ、うん約束する」
憂「約束するよ」
純「……」
梓「……」
憂「……」
純「……」パサッ
梓「?!!!!!!」
憂「Oh……」
純「……」
梓「……っ」フルフル
憂「ど、どうしたの?純ちゃん、それ」
純「新歓ライブあるし、思い切って美容院でストパーかけてもらおうと思ったら」
梓「……」フルフル
純「美容院、すごく混んでて、店員さんがテンパってて」
梓「……」フルフル
純「私の隣にいた人とオーダー間違えたらしくて」
憂「……それで、その、えっと」
純「アフロにされました」
梓「アフッ」ブフォッ
純「……」
憂「……」
梓「……ゴメン、ちょっとトイレ借りる」イソイソ
~~~
梓「……ただいま」ガチャ
純「存分に笑ってきましたか」
梓「ごめんなさい」
純「いいよ、梓がアフロになってたら私だって口から大腸出るくらい笑うし」
梓「じゃあお互い様だね」
憂「梓ちゃん」
梓「ほんとごめん」
純「……」
憂「あっ、でもほら、純ちゃんが気にしてる癖毛は目立たないよ!」
純「それ以上の何かを失ったけどね」
梓「むしろ癖毛ツインテよりアフッ……今の純のほうが可愛いかも」
純「本気なら私の目を見てもっかい言ってみて?」
梓「当然目を見て言えますん」
純「どっちよ」
梓「でも、やってる途中で気付かなかったの?」
純「前の晩にゲームしすぎて寝不足で、椅子に座ってすぐ寝ちゃったから」
梓「ふぅん」
憂「その場ですぐストパーかけ直して貰えばよかったんじゃない?」
純「パニック起こして走って帰ってきた」
憂「そうなんだ……」
梓「じゃあ、今からは?美容院が悪いならやってくれるんじゃ」
純「今日定休日」
梓「あー」
憂「えっと、そのアフ……髪型を誤摩化す方法があればいいんだよね」
純「いいよアフロってはっきり言ってくれても」
梓「……」
憂「ぼ、帽子かぶるとかどうかな、先生に事情話して」
純「さっき試した。でも横と後ろからアフロがはみ出した」
梓「……っ」フルフル
純「ニットキャップに押し込んだらキノコみたいにモコッてなった」
憂「頑固なアフロだね」
梓「っ!」ブフォッ
純「……」
憂「梓ちゃん」
梓「申し訳ございません」
純「もう嫌、髪型戻るまで学校行かない」
梓「えっ……えっと、でも、それじゃ明日の新歓ライブが」
純「……梓はさぁ」
梓「え?」
純「梓は私のことより新歓ライブのほうが大切なんだね」
梓「えっ、いや、」
純「梓の気持ちはよーくわかった」
憂「やめなよ純ちゃん、梓ちゃんは何もそんなつもりで」
梓「確かに新歓ライブのほうが大切だけど、純だって大切だよ」
憂「梓ちゃん、気持ちは分かるけど今そういうこと言うのはメッだよ」メッ!
梓「憂ごめん、気をつける」
純「……」
憂「あ、純ちゃん、これお見舞いのゼリー」ニコッ
梓「奮発して純の大好きなお徳用フルーツミックスにしたよ」ニコッ
純「わあ、ありがとう嬉しい!」ニコッ
純「とでも言うと思ったか」
憂梓「ごめんなさい」
純「ああもう、ほんとに泣きそう」グスン
憂「……あっ、そうだ」
純「何?」
憂「その、いっそのこと、アフロを純ちゃんの個性にしたらどうかな」
純「えっ」
梓「それいいかも。……何かこう、ニックネームを付けるとかさ」
純「……例えば?」
憂梓「パパイヤ」スズキ
純「帰れ」
憂梓「ごめんなさい」
純「もう誰も信じられない」
梓「ほんとにごめんってば」
純「……あのさ」
梓「何?」
純「ふたりとも、私の親友だよね?」
憂「そうだよ」
梓「疑う余地なんてないでしょ」
純「余地だらけだよ」
梓「そんなことないって。親友だよ私たち」
純「……じゃあ、ふたりが私の親友だって証拠を見せてよ」
憂梓「証拠?」
純「そう、証拠」
憂「どうやって?」
純「アフロ」
憂梓「え?」
純「アフロになって。ふたりも」
憂梓「……」
純「友達ならやってくれるよね?」
梓「……」
純「梓の髪の長さなら、でっかいアフロができるよ」
梓「……」
純「わあい楽しみだなぁ梓の特大アフロ!わくわく!」
梓「……」
純「憂のこぢんまりアフロもきっと可愛いだろうな!きゅんきゅんするよ!」
憂「……」
憂「……あのね純ちゃん、すごく言いづらいんだけど」
純「何?」
憂「美容院、定休日だよ」
純「そうでした。ちくしょう!!」ガンガン!!
梓「やめなよ純!ベース弾く大事な手なんだよ!」ガシッ
純「梓……」
梓「うっかり痛めたら、明日新歓ライブできないじゃん!」
純「ちくしょう!ちくしょう!!」ガンガン!!
憂「梓ちゃん」メッ!!
梓「ごめんなさい」
純「はぁ……手も痛いだけだった」ズキズキ
梓「……純、私決めた」
純「何をさ」
梓「明日の新歓ライブ、アフロのヅラかぶる」キリッ
純「えっ」
憂「梓ちゃん?」
梓「だって純は、私のために軽音部に入ってくれたんだもん」
純「……」
梓「ジャズ研だって、受験だってあるのに」
憂「……」
梓「今までだって、純には何度も助けられて、背中押してもらって」グスッ
純「……」
梓「笑ったりしてごめんね純。私、純に恩返ししたい!」リョウテギュッ
純「梓……」
憂「私も、私もアフロのヅラかぶるよ純ちゃん!」ソノウエカラギュッ
純「憂……」
梓「憂も、ありがとう」ウルウル
憂「ううん、だって私、ふたりの親友だもん!」ニコッ
純「……ありがとう、あんたたちはやっぱり私の親友だよ!」オカエシニギュッ
梓憂純「明日のライブ、がんばろうね!!」
~~~
To:お姉ちゃん
もう授業終わった頃かな?
昨日あれから純ちゃんの家を出たあと、
梓ちゃんと一緒に駅前のバラエティショップに行って
純ちゃんの純粋アフロが霞むくらいの特大カラーアフロを買いました。
今朝、アフロになった私たち3人を見たさわ子先生が
鶴の恩返しで例えれば、充分に恩を返されたうえに
豪華ハワイ旅行までつけられちゃいました、くらいの勢いで
3人のアフロに合わせたサイケな衣装を作ってくれたんだ。
今度、美味しいケーキを作って
ティータイムでおもてなししようと思います。
そうそう、肝心の新歓ライブは大盛り上がりだったんだよ!
純ちゃんがアドリブでHey Yo Yoとか言い始めた時には
正直どうしようかと思ったけど
梓ちゃんが、和ちゃん直伝のチェケラッチョイを披露した時が
オーディエンスの盛り上がりもピークだったYo。
見た目がサイケになったからっていっても
演奏したのはふわふわ時間なんだけどね。えへへ。
友達が携帯で動画を撮っててくれたので、送るね。
お菓子ばっかり食べてないで、ちゃんとお野菜も食べるんだよ?
律さん、澪さん、紬さんにもよろしく伝えてください。
またメールします。
P.S.
私たちのトリオ名は、「放課後ボンバーズ」に決まりました。
憂
ヘイヨ-! ヨ-! ヨ-! ヨ-! ヘイヨ-! ヨ-! ヨ-! ヨ-!
チェチェッ チェチェッ チェッ チェケラッチョイ!! キャーッ
フワフワタ-ァィムッ フワフワタ-ァィムッ ジャジャッ ジャジャッ ジャーン
律「……」
澪「……」
紬「……」アラアラ フフッ
唯「……なんか可愛い妹と後輩が一気に遠くへ行った気がする」
律「どうしてこうなった」
唯「もう、憂とどんな顔して会えばいいかわかんないよ……」
律「梓に部長を任せたのは、間違いだったのか……?」
澪「私たちの手を離れて飛び立った、ってことなのかな……」トオイメ
唯「そうでも思わないとやってられないよ」ナミダメ
紬「学園祭ライブを見に行くのが楽しみね♪」ウフフ
おしまい
最終更新:2011年03月26日 22:16