週末

梓「……んーっと、んーっと」

パラパラ

梓「この一週間唯先輩の審査に明け暮れたわけだけど」

梓「さすが唯先輩。とんでもない執念」

梓「媚び売りまくり、点数稼ぎしまくり!」

梓「いったい私の背中にどれだけ糸くずついてるんですか」

梓「うん……あまりに不自然な一週間だった……」

梓「ともあれこの収集したデータをもとに回数券の発行を……」

梓「むむ……意外と……むむ」

梓「うわぁ……これホントに渡すの?」

梓「……30秒3枚、1分5枚、3分5枚……いやいやコレはないでしょ」

梓「あんな偽りの善行で+をつけまくったのが甘かった!」

梓「また最初に渡した奴でいこっと」

梓「つけあがらせたらなにも変わらない……!!」



翌朝


梓「というわけでハイ」

唯「えー……あんなにがんばったのに……こんだけ……」




_____
| 回数券  |
|¨¨¨¨¨¨¨¨¨.|
|. 10秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 10秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 20秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 30秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 30秒  |
|.       |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

梓「こ、これでも、か、かなりオマケしてるんですからっ!」

唯「そうなの? ……うん、わかった! ありがと! これで一週間がんばるよ!」ニコッ


梓(うっ……笑顔が眩しい)

唯「よーし、じゃあ今週もがんばるぞって意味をこめて一枚!!」

梓「どうぞ……」

唯「いきなり30秒つかっちゃうのもありかなぁ……いやいやでもそれは最後のお楽しみ……」

唯「うーんうーん、なら間をとって20秒……でも一枚しかないし……えへへ、迷っちゃうなぁ」

梓「なんか楽しそうですね」

唯「うん! どれを選ぶかで一週間のスタートが決まるからね!」

唯「最初にドカンときめて週末尻すぼみか、最初は控えめで最後にパァーっとつかうか」

唯「いろいろ楽しみ方があって楽しいよ! 制限かけるって意外といいもんだね!」

梓「なっ……そ、そうですか……それは結構!」

唯「でも……やっぱり前みたいに好きなときにギュウってしたい気持ちもあるよ」

梓「……」

唯「……はい、とりあえず今週は10秒からはじめる」

梓「どうぞ」

唯「今週の第一あずにゃん! いきます!」


唯「うむうむ、ポジショニングは完璧」

唯「角度修正……いくぞー」

梓「イメトレですか」

唯「最高の補給にせねば……!」

梓「……クスッ」

唯「あー笑わないでよー! こっちは真剣なのにー!」

梓「早くしましょう」

唯「おっけい……えいっ」ギュウ

梓「んむ……まぁ、いつもと一緒ですよね」

唯「んぅ~~~、体がスポンジみたいにあずにゃん分をぐんぐん吸収する~~」

唯「やっぱこれだね~、早く1分券とかほしいな~」

梓「とか行ってる間に10秒ですよ」

唯「ちぇっ! このまま全部つかっちゃおうかな」

梓「それしたら後悔するでしょ絶対」

唯「う、うーん……今週も頑張ってポイント稼ぎしないとね……」

梓「あ、そのポイント稼ぎの件についてですが」

唯「ほえ?」

梓「今週からは少しでもわざとらしいと判断したら即座にマイナスつけますからね!」

唯「え……」

梓「当然です! ズルいのはだめですよ!」

梓(うっ……自分でいっててグサグサ)

唯「え~、そんなぁ~」

梓「だいたい私の靴はそんなに汚れてませんし、糸くずもついてません! たい焼きもそんなにいりません!」

唯「むぅ……」

梓「別にいいんじゃないですか? 自然体で」

唯「うー、でもだらだらしちゃう私は嫌いでしょ?」

梓「嫌いっていうか……たしかにだらしないですけど……」

唯「自然にふるまうと……きっとまた嫌われちゃうよ」

梓「き、嫌ってませんって! ほんとっ! ほんとです!」

唯「……じゃあどうして……こんな券」

梓「そ、それは……」

唯「嫌なんでしょ? そりゃこんなダメな先輩にに抱きつかれたくないよね……」

唯「でもあずにゃんは優しいからお情けで……」

梓「ちがいますって……ちがうんですよぉ」

唯「大丈夫! 私強く生きるよ!」

梓「あの……あのあの」

唯「あずにゃんに尊敬してもらう先輩をナチュラルに目指します!」

唯「めざせ澪ちゃん! 目指せムギちゃん! 目指せりっ……さわちゃん!」

梓「……」

唯「ってことでまた放課後にねっ! あずにゃん!」

梓「えっ、ちょ……唯先輩……」


梓(はぁ……なんで素直になれないんだろう)

梓(抱きつかれてあんなに嬉しがってるくせに……)

梓(ばかばか……)



週末


純「はい、やってきました中野家!」

憂「やってきました!」

梓「な、なんでうきうきしてるの」

純「そりゃあ楽しいにきまってるじゃん! 梓が相談事だって~、ぷぷぷ~っ」

憂「えへへ、なんでもお姉さんたちに話してみてっ!」

梓「あーもうすでに後悔」

純「で、悩める子猫ちゃん。どうしたっていうの?」

梓「実は……」

憂「お姉ちゃんのことが好きだけど素直になれない私のとげとげハートをなんとかしてください! とかでしょ?」

梓「うぐ……」

純「おお、さっすが憂! ま、私もわかってたけどね!」

憂「そういえば純ちゃんめんどくさがり屋さんなのによく来たよね」

純「めんどくさいとはいえ! こんな面白い話めったにないからっ!!」

梓「人の悩みをおもしろがるなんて~~帰れ帰れ~~!」

純「おぉっと、いいのかな。恋愛のプロフェッショナルの純様にそんなこと言って」

憂「そうなの? 聞いたこと無いよ」

純「し~っ!」

梓「その……あのね、抱きつき回数券を発行した理由はね」

純「なんか語りだした」

梓「最初は唯先輩を困らせちゃえって軽い気持ちだったんだよ……」

梓「それ+とある事情」

純「それを言わなきゃ」

梓「う……実は私……唯先輩に抱きつかれるとおかしなくらいドキドキするの」

梓「あんまりにもそれが激しいから、いずれ心臓がどうかなっちゃうんじゃないかと思って……」

梓「それでちょっと遠ざけるような真似を……」

純「あんたそれ……」

梓「う、うん。だよね。で、今回ので唯先輩が困った顔したり嬉しそうな顔するたびに……」

梓「だんだんわかってきたんだ……私の本当の気持ち」

梓「私は唯先輩が好き。裏表もなくていつもキラキラしてる唯先輩が好き」

憂「梓ちゃん……」

梓「おかしいかな」

純「わからなくはない! いいよ梓! それがわかっただけでもあんたは成長した!」

梓「あ、ありがと……純。なんだか純にいわれると恥ずかしい」

憂「お姉ちゃんは梓ちゃんのこと大好きだから大丈夫だよ。好きになっていいんだよ」

憂「妹の私がいうんだからそれは絶対の絶対!」

梓「うん……うん……ありがと憂」

梓「あ、でも……どうやって伝えたらいいの? そういうの縁がなかったから全然わかんないよ」

梓「それに急にほら、なんか甘えだすと……変な感じだし」

純「そここだわるか~」

梓「だ、だって! 私だよ!? 先輩たちからしたらいつも口やかましい生意気な後輩だよ!?」

梓「そんな私が唯先輩になんて……」

純「じゃあさ……こうすればいいんだよ」

梓「?」



翌日


唯「あ~ずにゃん! 今週の回数券ちょ~だいっ♪」

梓「あ、はい……」

唯「ワクワク! 今週は何秒分あるかな」

梓「……今出します」ゴソゴソ

唯「1分! 1分券ありますようにっ!! あ、30秒も2枚くらいほしいかも!!」

唯「あーでも10秒がいっぱいってもの結構うれしいんだよねー」

梓「……や、やっぱり……こんなの」

唯「おーいあずにゃーん、どうしたの~? 早くちょうだーい」

梓「これは……無理ですうっ!!」 

ダッ

唯「ちょ、まってあずにゃん! ええっ!?」

梓「無理です無理です~~あっ」ガッ

唯「危なっ!!」

ギュウ

梓「ふぇっ……」

梓「……あれ、転んでない」

唯「急に走り出したらあぶないよあずにゃん……こけちゃうところだったね」

梓「あっ……ゆ、唯先輩」

唯「あっ! ご、ごめんね、勝手に抱き寄せちゃったね。でも危なかったから」

梓「あ、ありがとうございます」

唯「あずにゃんよかった~、転んだら可愛い顔に傷がついちゃうかもだよ」

梓「……」

唯「えへへっ! あ、いまの分で10秒ひいたりなんてしないでねー!」

梓「……」

唯「? どうしたの? え、ほんとに10秒マイナスしちゃったりなんてしないよね!?」オロオロ

梓「……唯先輩。今週の分です。うけとってください」

唯「う、うん……」

スッ




_____
| 回数券  |
|¨¨¨¨¨¨¨¨¨.|
|. 無制限 |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 無制限 |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 無制限 |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 無制限 |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 無制限 |
|.       |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


唯「ほえ……?」

梓「……その5枚だけです」

唯「あずにゃん……これって……」

梓「私ケチですから5枚しかあげません」

唯「……いいの?」


梓「使用期限は一週間です。つかいきれなかったら無駄になりますからね」

唯「……わぁ! やったぁ! 私の頑張りがついに認められたんだね!」

梓「そ、そういう……ことですね!」

梓「あとそれと、いま助けてもらった分は審査対象にしておきます」

唯「えへへっ! えへへ、うれしいなあ。次は100枚くらいちょーだい!」

梓「だ、だめですよ、そんなにホイホイあげたらまたありがたみがなくなるでしょ」

唯「そっかそっか! 誰も持ってない貴重な抱きつく権利だもんね! よーし今週の景気付けに一枚つかおっかなー!」

梓「いいんですか今使っちゃって。無制限券ですよ? 今後発行されるかわからないレアな券ですよ?」

唯「そ、そっか! 無制限……むふふ、いま使うとすぐ授業はじまるもんね」

唯「そうと決まれば金曜日の夜か土日か……うふふふ」

梓「……ふふっ」

唯「あー、でも我慢できなーい! 今日の放課後一枚つかう! 使うから待っててねあずにゃん!」

梓「はいっ!」


おわり



最終更新:2011年03月29日 00:48