―――

唯「それでね~」

和「ねぇ、花あずちゃんなんだけど」

和「今日は日差しが強いけど、大丈夫なの? あの子」


唯「ちょ、ちょっと様子見てくる!」

和「私も」

・・・

唯「ぎゃ~~~!!」

和「唯! まさか枯れてたとか……?」

唯「花あずが真っ黒けになってるよ~!?」

コゲ花あず『マナツノビーナス』コゲコゲ

和(日焼け?)

コゲ花あず『タブン、スコシジカンガタテバ、モトノイロニモドリマスヨ』

和「随分都合がいい生き物なのね」

唯「よかったぁ。でも一応パラソル立てといてあげるよ」

コゲ花あず『アリガトウゴザイマス』

コゲ花あず『サァサァ、ワタシノコトハキニシナイデ、アソンデテクダサイ』

唯「なんか悪いよぉ」

和「だったら3人で遊びましょう? そうだ、散歩にでも行かない? あ、でも」

唯「お散歩! いいねぇ~!」

コゲ花あず『ナイスアイディアデス。タノシミデス』グググ…スポンッ

和「え」

コゲ花あず『デハイキマショウ』

和(散歩とか言っておいてなんだけど、まさか地面から出てこられるとは……)


唯「ただいま~!」

コゲ花あず『タダイマデス、ウイ』

憂「あれ!? 花あずちゃんどうしたの! コゲコゲだよっ」

コゲ花あず『カクカクシカジカ』

憂「へ、へー……」

唯「それよりお腹ペコペコだよー」

コゲ花あず『イッパイオサンポシマシタカラネ』

憂「それじゃあ、すぐにご飯にしちゃうからちょっと待っててね」

唯「はーい!」

コゲ花あず『ワタシモ、ウイノゴハンヲタベテミタイデス……』

唯「そっか、花あずはバナナ以外は食べられないんだもんね」

憂「お姉ちゃ~ん」

唯「はーい! じゃあね、花あず! 私ご飯食べてくるよ!」タタタ…


コゲ花あず『……イイナァ』トボトボ…

虫「ペロペロ」ブーン

花あず『シッシッ、アッチニイッテ!』

虫「…ブ~ン」

花あず『マッタク』

花あず『……』

スタスタ…

花あず『?』

唯「……」

花あず『ユイセンパイ? ドウカシマシタ?』

唯「憂と、ケンカしちゃった」

花あず『エ……』

唯『……えへへ』

花あず『ソンナ、ドウシテ……』

唯「今日のご飯に私の嫌いな野菜が入ってて、それでちょっと」

唯「好き嫌いはダメって言われても、ダメなもんはダメなんだもん……」

唯「それなのに憂ってば……!」

唯「もう……憂なんて知らないっ」

花あず『ソ、ソンナカナシイコトイワナイデ』

花あず『ユイセンパイトウイ、ナカヨクシテクレナキャ トッテモカナシイデス……』

唯「……だって」

花あず『ユイセンパイ、ダレニダッテニガテナモノハアリマスヨ。デモ』

花あず『ワタシハ、ユイセンパイガ キライナタベモノダッテ タベラレナイ』

花あず『デモ、アナタハ タベルコトガデキマス。ソレッテ、ワタシカラスレバ トテモシアワセナコト』

唯「花あず……」

花あず『ウラヤマシイデス……ズルイデスヨ、ユイセンパイ』

唯「……ごめんなさい」

花あず『ソノコトバハ ウイニイッテアゲテ? ダイジョウブ。キットユルシテクレマスヨ』

花あず『デモ、スキキライハ ナクサナキャ! ワガママモ イワナイデ!』

唯「う、うん。頑張るよ! 私、頑張って食べられるようになる! わがままもなくす!」

花あず『ソノイキデス! ガンバッテ!』

唯「まずは憂に謝らなきゃだよね。ありがとう、花あず!」

唯「こんなバカなこと聞いてくれて!」タタタ…

花あず『フフッ……コレグライ オヤスイゴヨウデスヨ』

スタスタ…

憂「花あずちゃん?」

花あず『コンドハ……ウイ?』

憂「花あずちゃんのお陰でお姉ちゃんとすぐ仲直りできたよ。ありがとう」

花あず『ウウン、ワタシハナニモシテナイヨ』

憂「そんなことないよ」

花あず『モトモト フタリハナカヨシナンダカラ、ケンカトハ ムエンダモン』

花あず『ネ?』

憂「えへへ……ありがとう」

憂「……私ね、花あずちゃんのこと変に誤解してたかな」

花あず『ウイィ?』

憂「うん、とっても失礼なこと思ってたし、気味が悪いともちょっと思ってた……」

憂「でも違ったよ。花あずちゃんはとってもいい子だし、優しい」

憂「例え生まれ方は違っても、私たちとなにも変わりなかったよ」

憂「……だから、ごめんなさいっ」

花あず『ソンナ、ベツニ ソンナコト キニシナクテモ……』

花あず『デモヨカッタ。ウイノホンネガ チャントキケテ』

憂「もう私たちの間で隠し事はなしだよ……だって、家族なんだもん」

花あず『カ、ゾク?』

憂「うん! 私とお姉ちゃんと花あずちゃん! あ、お父さんとお母さんも」

花あず『……アリガトウ。トッテモ ウレシイナァ』

花あず『ソウイエバ、ミテ。モウ コゲコゲジャ ナインダヨ』

憂「あ! ほんと……ふふっ」

花あず『エヘヘ』

花あず(……モウスグ、オワカレナノニ カゾクッテ)

花あず(ツライヨ……)



数日後

唯「う、憂!」

憂「お姉ちゃんっ」

唯「花あずが最後の成長するって!?」

憂「そ、そうみたい……」

花あず『』

唯「繭に包まれてる……」

憂「さっきこうなったばっかりなんだよ」

唯「ちゃ、ちゃんと見届けなきゃ……」

憂「……うん」

…ピキ

憂「繭にヒビが……!」

唯「が、頑張れ花あずっ!」

ピキピキ…ピキッ………パリーン

花あず『……』ファサァ…

唯「花、あず……?」

憂「花あずちゃんに羽根が生えてるよ、お姉ちゃん……」

唯「うん……天使みたい……」

花あず『……唯先輩、憂』

花あず『ここまで成長できたのはあなた達二人のお陰』

花あず『二人の愛を命一杯受けて、私はこの姿になることができたの』

花あず『ありがとう』ニコ

唯「え、えへへ。なんか照れちゃうなぁ」

憂「でも無事成長できてよかったね」

花あず『……うん』

憂「なんだか浮かない顔……どうしたの?」

花あず『……お別れ、なの』

唯・憂「え……」

花あず『これから私は、新たな命を紡ぐ為に旅立たなければいけません』

花あず『これは私たちにとって、とても重要なこと』

花あず『……この家には二度と戻っては来れません』

憂「そんなっ」

唯「い、嫌だよっ! そんなの嫌! こんなのって……っ」

花あず『どうか悲しまないで。私だって……悲しいです』

唯「だったら行かないでっ! ずっとここで暮らそうよぉっ」

花あず『……ごめんなさい』

唯「いやぁっ!! や、やだぁっ……あああぅっ……」

憂「ううっ……」

花あず『……』

花あず『それじゃあ、こうしましょう』

唯「え……?」

花あず『これはお別れなんかじゃない』

憂「で、でも」

花あず『私はもうここから消える。けど』

花あず『今まで3人で過ごしてきたっていう思い出が私そのもの』

唯「どういう、ことっ」

花あず『この思い出を二人が忘れない限り、私はここに存在する』

花あず『新しい思い出はもうできないけどっ……思い出すことしかできないけどっ』

花あず『それが、私という存在なんです……!』

憂「……」

唯「いみっ、わかんないよおおぉっ……うっ、ひぐっ……」

唯「ああぅぅ……!」

花あず『さよなら、なんて言わないっ。だから……』

花あず『唯先輩っ、憂っ』

ファサァ…バサッバサッ……

唯「や、やだっ……いかなっ」

唯「……」

憂「お姉ちゃん?」

唯「……約束したもんね、わがままはもう言わないって」

唯「だからっ、せめて元気な顔して見送ってあげなきゃ! ね、憂っ」

憂「……うん!」

唯「せーのっ」

唯・憂「いってらっしゃーーーい!!」

花あず『!』

花あず『……いってきます!』

・・・

唯「お腹と背中がくっつきそうだよ~……」

憂「はーい、おまたせ」

唯「おほ~! きたきた……うっ」

唯(に、苦手な野菜が……!)

憂「どうしたの? お姉ちゃん」

唯「……」

唯「ううん、なんでもないよ。では、いっただきま~す!」

憂「ふふ、どうぞ召し上がれ」

唯(花あず! 私、頑張るよ~)

唯「だから、あなたも頑張って!」

憂「ん?」



育つあずにゃん編 おわり




梓「旅行楽しかったなぁ。そうだ、先輩たちとクラスの子たちにお土産買って行かないと」

「ちょいと、そこのお嬢さん」

梓「ん? あ、もしかして私のことですか?」

「そうですとも。なにか見ていきませんかい?」

梓「なにかって……」

梓(おかしな物ばっかり)

「こんなものはどうでしょう。あなたにオススメです」

梓「これは?」

「゛覚めるあずにゃん゛でございます」

梓「覚めるあずにゃん……?」


覚めるあずにゃん編 続く




3  ※澪編(注意:ホラー系)
最終更新:2011年03月30日 23:12