唯「んー♪」
梓「そ、それはダメです! だめだめだめ!」
唯「え~? くちびるのメンテだよ?」
梓「こんなわけわからない遊びでチューしたくないです……」
唯「そっかー……ごめんね?」
梓「ファーストキスは……もっといいムードとか、場所とか」
唯「乙女だね」
梓「唯先輩はこんなんでいいんですか?」
唯「え? うーん? どうだろ?」
梓「いいホテルの窓辺で夜景を眺めながらとか」
梓「夕焼けにつつまれたふたりきりの浜辺とか」
梓「まぁお互いの家っていうのも……割といいかも」
梓「っと、ほら、いろいろあるでしょ?」
唯「あずにゃん……そういうの考える人なんだ」
梓「うっ……」
唯「でもね、あずにゃん。私とチューすること自体は嫌じゃないんだよね?」
梓「……えっ!?」
唯「今ここではしたくないけどって意味なんでしょそれ?」
梓「えっ、あっ、いやその……!? あれっ」
唯「?」
梓「な、流されただけっ、です!!」
唯「?」
梓「ほんとです! べ、べつにチューがしたいとかそういうのではなくてですね」
唯「焦ってる」
梓「まぁどうしてもって言われてたら断れないじゃないですか? ほら私っていまこんな状況にあるように押しに弱いっていうか」
唯「真っ赤になってる」
梓「とにかくっ! 唯先輩の考えてるようなことではないですっ!!」
唯「へぇ」
梓「……ほんとです」
唯「わぁショック! 唯先輩じゃ嫌だったかー」
梓「……う」
唯「あー、私のファーストキスはどうなるかなー」
梓「……あ」
唯「一体誰のものに……むむむ」
梓「ああ……」
唯「あ、そういえばもう済ましてた!」
梓「えっ!!? 嘘ですよね?」
唯「ほんとだよ、それどころか毎日むちゅちゅーってしてるよ」
梓「えっ……えっ?」
唯「相手は誰か教えてほしい?」
梓「い、いや……ヤ……」
唯「ギー太だよ!」
梓「いやああああっ聞きたくな、ってギー太ですか」
唯「えへっ、嫉妬した?」
梓「してません」
唯「でもちょっと泣きそうな顔したよね?」
梓「……してません」
唯「したよね?」
梓「しましたかね」
唯「ギー太はカウントしない?」
梓「当然です」
唯「じゃあまだファーストキス未体験っ!」
梓「未体験……」
唯「どしたの?」
梓「ちょ、ちょっといっぺんのいてくれませんか?」
唯「まだメンテ中~」
梓「どいてください」
唯「うっ……わかった。いやに真剣だねぇ。よっこらせっと」
梓「うんしょ……あいたた、ちょっと腕がしびれてます」
唯「ごめんごめん」
梓「さ、ココ普通に座ってください」
唯「うん」
梓「んしょ……」
唯「で、なぁに? 起き上がりたかっただけ?」
梓「唯先輩……私……」
唯「ちょ、ちょっとまってあずにゃ……なに、なにその怪しい感じ」
梓「私……」
梓「い、いいですよね……しても」
唯「なにがっ!?」
梓「自分からしようとしたじゃないですか」
唯「キスのこと!? ま、まってまって! さっきあずにゃんはいいムードで!って言ったよね」
梓「そんなのもういいです……」
唯「怖いっ、なんかあずにゃん怖いよ」
梓「誰かに奪われちゃうくらいなら……」
唯「奪われないから……大事にしとくからさぁ」
梓「ダメなんですか?」
唯「ダメっていうか……」
梓「冗談だったんですか?」
唯「ちがうけど」
梓「じゃあ……」
唯「あ……う……私、迫られるのは……予想してなかった」
梓「唯先輩が悪いんですよ」
唯「本気?」
梓「目をみてください」
唯「う……さっきは合わそうともしなかったくせにぃ」
梓「あれ? 唯先輩私の目見れないんですか? おかしな話ですね」
唯「ずるいよあずにゃん……」
梓「そういえば、私のことならなんでもしってる一級整備士だって豪語してましたよね?」
唯「うん……」
梓「なら私がいまどんなこと考えてるかも当然わかりますよね?」
唯「わ、わかるようなわからないような……です」
梓「教えてあげましょうか?」
唯「『うん』って言ったら……しちゃうの?」
梓「…………唯先輩、目閉じてください」
唯「あ……えっと……う……うん」ギュム
梓「……唯先輩」
唯「……あの、あずにゃん? あの……」
梓(かわいい。一生懸命ギュって目つぶって……顔真っ赤にして)
唯「……あずにゃん?」
梓(待ってるんですよね。私のチューをいまかいまかと)
梓「……くすっ」
唯「えっと……?」
梓「いきますね……んー」
ガチャッ
「あっ! 梓いたいた! ちょっと! 次体育なんだから早くし……あっ……」
梓「……!」
唯「ほえっ!?」
純「あ、あの……憂のお姉ちゃん……え? あれ、あはは……あ」
梓「じゅん……」
純「お、お取り込み中でしたか……アハハ……アハ。す、すいませんでしたああっ!!」ダバダバ
梓「……」
梓「……」
唯「……あふ」
梓「ど、どうしよう……よりにもよって純に見られちゃいました!!」
唯「だ、大丈夫! 未遂だから! 決定的証拠にはっ!」
梓「いや未遂だろうとなんだろうとそういうことしてた事実は覆せませんよっ!」
唯「あーあ、もうちょっとでチューできたのに」
梓「なにのんきなこと言ってるんですかっ」
唯「あずにゃんどうして焦ってるの?」
梓「だってそれは……いろいろまわりに誤解されるっていうか」
唯「誤解なの?」
梓「えっ、誤解……じゃないですねよく考えたら」
唯「うん、だからさー。もういいじゃん、そんな気にしなくて」
梓「いいんですか?」
唯「いいよー、だってなんだかいまさらでしょ?」
梓「いまさら……あ、やっぱり前まえからそういう風に周りから思われてたんですか私たちって」
唯「知らなかったの? そりゃあんだけむやみやたら抱きついてるんだもん」
梓「知ってたのにやってたんですか」
唯「だってそしたらあずにゃんに手をだす人はいなくなるでしょ? えっへん」
梓「……計算高いんですね」
唯「あつあつほかほかでいようよ」
梓「ほんとに……いいんですか?」
唯「え?」
梓「私、結構いままでいろいろおさえてきただけに……その」
ギュウウウ!
唯「ほえ?」
梓「きっと、こういうことしちゃいますよ?」
唯「……うん!」
梓「……えへへっ」
キーンコーンカーン
唯「あ、予鈴」
梓「……」
唯「ほら、行かなくちゃ。着替えないといけないんでしょ?」
梓「ですね」
唯「また放課後にね」
梓「……はい」
唯「名残惜しいね?」
梓「名残惜しいです。せっかく、少しだけ素直になれたのに」
唯「でもこれから毎日ず~っとこうしていいんだよ?」
梓「それは……とても嬉しいです」
唯「うん! でも私も抱っこするほうが好きだから交代交代ね?」
梓「いいですよ」
唯「じゃあ戻ろ?」
体育
梓「ってわけでね唯先輩がね、とっても可愛くってね」
純「だー、わかったわかりましたっ! 邪魔した私が悪かったです」
梓「ききなよ。唯先輩はね、普段は積極的絡んでくるくせにいざ私が」
純「ちょっと憂ー、なんとかしてよー」
憂「でね、お姉ちゃんはね、あったかくてね、ふわふわでもう愛らしいっていうか」
純「こっちも!?」
梓「わかるわかる、なんかもう全身が愛に包まれてるよね。愛のかたまり!」
憂「うんうん!」
純「気が狂いそう……」
梓「えへへっ! えへへ」
憂「わー、梓ちゃんとガチお姉ちゃんトークができる日がくるなんて~えへへ~」
純「やっぱりそういう進展があったんだ……ま、素直におめでと」
梓「えへへっへへへっへへ」
純「憂はいいの? あんたのお姉ちゃんとられちゃったよ?」
憂「え? うーん。でもお姉ちゃんはお姉ちゃんだし」
純「は?」
憂「梓ちゃんにメロメロなお姉ちゃんも可愛いよ?」
純「はぁ……そういうもんなの?」
憂「家で梓ちゃんの話をしてるときのお姉ちゃんはとってもキラキラしてるんだよ!」
梓「どうも、ふつつかものですが」
憂「こちらこそ、お姉ちゃんをよろしくね? だらだらうだうだしてるときは思い切って叱ったほうがいいよ」
梓「いつも叱ってる……」
純「犬か」
憂「今晩うちに来る?」
梓「いいの?」
憂「徹夜でお姉ちゃんトークしようよ! アルバムもいっぱい見せてあげる!」
純「憂……そこはふたりきりの時間を提供しなさいよ」
梓「いくいく! 是非!」
教室
唯「でねっ! あずにゃんがねっ! こう素直にギュウ~って」
和「へぇ」
唯「うっひゃ~、可愛い~って感じ、わかるでしょ!?」
和「そうなんだ」
唯「ねぇ和ちゃん! こっち向いてよ!」
和「唯。今授業中、前」
唯「ねぇねぇ姫子ちゃん! あずにゃんわかる? 私の後輩っ!!」
姫子「あはは、唯……先生に睨まれてるって」
唯「あ……うん」
唯「……」ソワソワ
唯「……にひひ、あずにゃん」
唯「あずにゃん……早く会いたいな」
唯「あずにゃん……」カキカキ
唯「あ、結構似てる……うふふ」
唯「放課後はお茶してー、練習してー」
唯「そのあとあずにゃんと遊ぼっと」
唯「あずにゃんウチくるかな~?」
唯「誘ったらきっとくるよね」
唯「あ、そのあとセクハ……じゃなくてメンテナンスの続きしなきゃ」
唯「あずにゃんまたきっと口ではイヤイヤ言いながらどっきんどっきん、アハハ可愛いなぁ~」
唯「うへへへお嬢ちゃん、どこを調べてほしいんだい?」
唯「いやーん、唯先輩そんなとこだめですぅ~~」
唯「なんちゃって、えへへへへへへ」
唯「おっと忘れないうちにメモしとかないと」
唯「あずにゃんをていくあうと、っと。これでおっけー」
唯「憂には晩ご飯あずにゃんの好物つくってもらおっと」
唯「ねるのはどうしよう、リビングにお布団? それともベッドで一緒に?」
唯「やーん、もうあずにゃんったら~」
和(後ろでずっとなんか言ってる、怖い……)
~~
梓「はやく放課後にならないかなっ! いますぐにでも唯先輩に会いたいっ!」
純「ちょっと! 声高に叫ぶのやめなって!!」
唯「えへへ、これから楽しみだなぁ~! えへへへっ♪」
さわ子「平沢さん! 静かにしなさい!」
ねる
おしまい
最終更新:2011年04月06日 04:59