和「どうも、唯のことになると憂とは話が噛み合わなくなることがあるわ」
憂「それだけお姉ちゃんが魅力的だってことじゃないかな?」
和「そうね」
憂「あ、そうだ!」
和「どうしたの?」
憂「和ちゃんが折角来てくれたんだから、和ちゃんに勉強教えてもらいたいなって」
和「そんな、唯じゃないんだから。憂だったら充分今の勉強についていけてるでしょ?」
憂「中学の勉強はね。でも、さすがに高校の範囲になってくると難しくって」
和「あなた中学生じゃない」
憂「お姉ちゃんは高校生だよ」
和「憂が言おうとしてることが、なんとなくわかったわ」
憂「さすが和ちゃんだね! 飲み込みが早い」
和「妹に勉強教えてもらってる姉を親友にもって、私も誇らしわ」
憂「そんな、お姉ちゃんのこと誉めすぎだよ~」
和「憂こそある意味どこかの大病院にかかった方がいいのかもね」
・ ・ ・ ・ ・
和「もうお腹いっぱいだわ。ご馳走様でした」
憂「お粗末さまでした」
和「さて、残り物はさっそく詰めさせてもらうわね」
憂「……どうぞ」
和 サッサッ
憂(なんか手際がいいなぁ)
和 サッサッ
憂「じゃあ、私洗い物済ませちゃうね」
和 サッサッ
憂「必死だな」
和「あ、ごめん、何か言った?」
憂「ううん、洗い物するねって言っただけだよ」
和「そう。私はまた、憂が私に対して哀れみの一言でも発したもんだと思っちゃって」
憂「ついつい言ってしまった失言を、あえて気づかない振りをするってのも優しさだよね」
和「そう思うわ」
和「さて、詰め終わったことだし、私も洗い物を手伝うわね」
憂「いいよ、お客さんなんだからゆっくりしてて」
和「でも……」
憂「そのかわり、しっかりと家庭教師お願いします」
和「わかったわ。厳しくいくから覚悟しててね」
・ ・ ・ ・ ・
和「で、なんで唯の部屋で勉強してるの?」
憂「だ、だってね、私の部屋の机じゃ二人で勉強しづらいし」
憂「お姉ちゃんの部屋ならこうやってテーブルがあるから」
和「だったらリビングで勉強すれば……」
憂「平沢家の決まりで勉強はみんなが平等に寛ぐリビングではしないって決まりがあるの!」
和「そんな空想家訓を作ってまで唯の部屋で勉強したいのなら止めることはないわ」
憂「和ちゃんがものわかりのいい人でよかった」
和「親友の妹が己の欲望に忠実なのはあまりよろしくないけどね」
憂「そうなんだ、じゃあ私、何か飲み物持ってくるね」
和「そうね、私もそうやっていつも唯の戯言はスルーしたりするわ」
・ ・ ・ ・ ・
憂「おっねっえっちゃんのへっやで~♪」
憂「のっどっかっちゃんと、おっべんっきょう~♪」
憂「お姉ちゃんが留守なのは寂しいけど、その分、久しぶりに和ちゃんに甘えちゃお」
憂「お待たせ~♪」ガチャ
和「えらくご機嫌ね」
憂「だって、和ちゃんと二人っきりなんてあんまりないから」
和「そうね、いつもは必ずと言っていいほど唯がいるものね」
憂「だから、たまにはこうやって和ちゃんと過ごすのもいいかなって」
和「あら、意外ね。私がいても唯がいなきゃ駄目なんじゃないかと思ってたけど」
憂「お姉ちゃんとは離れて気づく大切さみたいなものを実感するのもいいかなって」
和「まるで遠距離恋愛中の恋人みたいなこと言うのね」
憂「障害があればあるほど燃え上がるんだよ!」
和「私のことを障害あつかいにしてない?」
憂「オレンジジュースでよかった?」
和「そんな無視のしかたも嫌いじゃないわ」
憂「はい、和ちゃんはサンキストオレンジみたいなハイカラなやつじゃなくって、昔ながらのポンジュースだね」
和「あぁ……、水で薄めていない100%ポンジュースは久しぶりだわ」
憂「?」
憂「どうぞ……って!? ああっ!?」
ガシャン!!
憂「ご、ごめん! 和ちゃん! 手が滑っちゃって」
和「大丈夫だから、とりあえず拭くもの持ってきてもらえる?」
憂「う、うん! すぐ持ってくる!」
和「お願いね」
憂「うぅっ……、なんだか、はしゃぎすぎちゃった……」
憂「和ちゃん、服までべっちょりだったし……」
憂「とにかく、早く拭くもの持って行かなくちゃ!」
ガチャ
憂「ごめんね、和ちゃん。お風呂ももうすぐで沸くから」
和「ええ、気にしてないわ」
憂「!?」
憂(な、なんで和ちゃんがお姉ちゃんの汗染み付きTシャツを着てるのっ!?)
和「どうしたの?」
憂「そ……そのTシャツ……」
和「ああ、もう服までベッチョリだしベトベトだったから
この唯のベッドに広げてあったTシャツにとりあえず着替えさせてもらったわ」
憂(そ、そうだ! あの国宝級のTシャツは更なる価値を高めるために
一晩お姉ちゃんのベッドに寝かせて、お姉ちゃんの匂いを染み込ませようとしてた最中だった!)
和「さすが100%のポンジュースね、ベトベト具合も半端じゃないわ!」
憂「あ……あぁ……」
和「それに、このTシャツ、唯が昨晩着てた寝間着よね?」
和「あの子、昔から寝汗が凄いからまだちょっと湿ったままね」
憂「!?」
和「これじゃあ、あまり着替えた意味が……」
憂「うわぁぁぁぁぁ!!」
和「ちょっ!? 憂!? どうしたの!?」
憂「お願い! 和ちゃん! 今すぐ脱いで!!」
和「えっ!? やっ! やめて!」
憂「刻一刻と価値が! そのTシャツの価値がっ!!」
和「な、なんなの!? ちょっと!?」
憂「バンザーイしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
和「嫌よ! 脱がせる気でしょ!」
憂「だったら力尽くでぇーっ!!」
和「あ、あなた本当に今日は家に誰もいないからって私を誘惑してたの!?」
憂「お姉ちゃんよりおっぱいが大きいから引っかかって脱がしにくいよぉぉぉぉ!!」
和「私がナイスバディなのは認めるわっ!! だから落ち着いて!」
憂「これが落ち着いていられるかぁぁぁ!!!!」
和「い、いやぁぁぁぁぁっ!!」
憂「口では嫌がってても、体は正直やでー!!」
和「わかった! わかったから!」
憂 フンス!! フンス!!
和「お願いだから……優しく、して」
憂「!?」
和「自分で脱ぐから……あまり、乱暴にしないで……」ヌギヌギ
憂「和……ちゃん……」
和「そ、そんなに見ないで……////」
憂「き、綺麗……」
和「そ、そうなんだ//// じゃあ、明かり消すね////」
お姉ちゃん一筋だった私ですが
このときだけは彼女のことが喉から手が出る程欲しくなってしまったのです
『のどか』だけに……
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唯「なんてことになってたりして」
律「んなわけないだろ」
澪「自分の妹と幼馴染をなんだと思ってるんだよ」
紬「でも、ありじゃない?」
律「ねーよ」
唯「まぁ、和ちゃんはまだしも憂はちょっとおかしいところがあるよ」
澪「あんなに出来た妹じゃないか」
唯「寝間着の件だって本当は私気づいてたもん」
紬「すり替えられているってことに?」
唯「そう。だけどわざと気付かなかったのは、私からのささやかな贈り物なんだ」
唯「私の寝汗が染み付いたTシャツという名のね」
唯「今まで憂が私のために頑張ってくれたお返しなんだ」
澪「にわかに信じがたいな」
律「あれだけ世話好きだったら、それだけ変態でも私ならOKだけどな」
紬「むしろ、特典よね?」
唯「今頃、憂は私が着たTシャツを使って一人であんなことこんなこと」
澪「へ、変なこと言うなっ!」
律「あれあれ? 澪さんはそのあんなことこんなことがどんなことかわかると?」
澪「そ、それは……さっきの話の流れからいくと……」
唯「洗濯とかだよ! なんてったって憂は綺麗好きだから!」
澪「……」
紬「大丈夫よ、澪ちゃん! 私も澪ちゃんと同じようなこと思ってたから!」
律「その励まし方もどうかと思う」
澪「と、とにかく! 明日の午後にはもうここを出なきゃいけないんだから
早く寝て明日に備えないと」
律「そうそう! 早く寝て、また明日も朝から海水浴!」
唯「おーいえー!」
澪「練習だ! 結局ここに来てからまともに練習してないだろっ!」
紬「もう、寝ちゃうの?」
澪「ムギは日中あれだけはしゃいで眠くないのか?」
紬「だって、夜にこうやって友達同士でお話するなんて滅多にないから」
律「よ~し! じゃあ、今日は寝ずに話尽くすぞ~!」
紬「うん! ずっとお話しよ~」
澪「お、おい。ちょっと」
律「いいじゃん、ちょっとくらい~」
澪「じゃなくて……」
唯「ZZZzzzzz……」
律「寝付き良すぎだろ」
翌日
唯「あ~、合宿楽しかったなぁ~」
唯「……とはいうものの、やっぱり憂は寂しかったよね」
唯「今日は、多少変なところ触られてもたっぷり憂とスキンシップしよっと」
ガチャ
唯「憂~! たっだいま~!」
憂「お姉ちゃんお帰り!」
唯「ごめんね~憂、一人で寂しかったでしょ?」
憂「……そのことなんだけどね」
唯「ん?」
憂「お姉ちゃんにお話があって……」
唯「話?」
和「唯、お帰り」
唯「あ、和ちゃん来てたんだ」
和「ええ」
唯「で、話って?」
憂「う、うん。あのね……」
和「それは私から言うわ」
唯「?」
和「これからは唯のことを『お義姉さん』と呼ばせてもらうわね」
憂「////」
唯「……え?」
おしまい
最終更新:2011年04月11日 21:17