さわ子「恥ずかしい理由でも構わないわ。私は大人なんだから、隠さずに話してちょうだい」
唯「私、あずにゃんに……欲情していた」
唯「いつものスキンシップだけじゃ……満足できなくなって……もっと色々なことしてみたくなって」
唯「でも、あずにゃんはそんなこと許すはずがないから……」
唯「毎日毎日もどかしくて……どうしたらいいか分からなくて……」
唯「もう、性欲の我慢の限界で……あずにゃんを犯しちゃうしかないと思った……ごめんなさい」
さわ子「そう……ねえ、唯ちゃん」
さわ子「あなた、梓ちゃんのこと好きでしょう?」
唯「……え?」
さわ子「梓ちゃんのことが好きだから、犯してしまいたいと思ったんでしょう?」
唯「……あずにゃんのこと……好き? ……私が?」
さわ子「そうよ。あなたが梓ちゃんに対して欲情しているのは、性欲もそうだけどそれだけじゃないわ」
さわ子「元々、梓ちゃんを好きな気持ちがあったからこそなのよ」
唯「うそ……」
さわ子「もし唯ちゃんの中に溜まっていたものが性欲だけだとしたら、何も梓ちゃんじゃなくても良かったはずでしょう?」
さわ子「りっちゃんや澪ちゃんやムギちゃんだったかもしれないし、もしかしたらその辺を歩いている女の子だったかもしれない」
さわ子「でも、あなたは梓ちゃんに対してエッチなことをしたいと思った。梓ちゃんのことが好きだから」
さわ子「恥ずかしいことなんかじゃないわ。私だって、好きな人とエッチしたいと思ったことあるもの」
唯「さわちゃんも……?」
さわ子「ええ。まあ、実際にしたことはまだないんだけどね……ここだけの話よ」ぼそっ
さわ子「私だけじゃないわ。どんな人にだって、好きな人とエッチしたい気持ちはある」
さわ子「ただ、その気持ちを抑えられずに爆発させてしまうのは駄目」
さわ子「合意のないエッチは犯罪だから。無理矢理好きな子を犯すなんて、絶対にやってはいけないことなの」
唯「ああ……」
さわ子「事の重大さを理解してきたみたいね……」
さわ子「幸い今回は、未遂に終わったみたいだから保健の先生以外には報告していないわ」
さわ子「途中で止めに入ってくれたりっちゃん達に感謝しなさい」
唯「うっ……はい……」
さわ子「じゃあ……もう一つ質問」
さわ子「梓ちゃんは、あなたのことをどう思っていると思う?」
唯「たぶん……もう顔も見たくないと思っていると思う……ぐすっ」
さわ子「そうじゃなくて、普段の梓ちゃんのあなたに対する態度のことよ」
唯「……嫌いだったと思う。スキンシップしても……嫌がってばっかりだったし」
さわ子「……いつもティータイムで見ているから分かるけどね、あの子はあなたを嫌ってなんかいないわ」
唯「そんなの、嘘だよ……」
さわ子「嘘じゃない。嫌いどころか、軽音部の誰よりもあなたのことを好きなはずよ」
唯「どうして……どうしてそんなことが分かるの?」
さわ子「梓ちゃんはね、唯ちゃんに対して素直になれないだけ」
さわ子「スキンシップにも慣れていないから、抱きつかれてもつい反射的に憎まれ口を叩いちゃうのよ」
さわ子「実際、唯ちゃんがいない時の梓ちゃん、唯ちゃんの話ばかりしているわ」
唯「……知らなかった」
さわ子「こういうのは、当事者同士にはなかなか分からないものよ」
さわ子「でも、いつもあなたたちを見ている私にははっきりと分かる」
さわ子「多分、りっちゃんも澪ちゃんもムギちゃんも、あなたたちの気持ちを知っているわ」
さわ子「今回は唐突な出来事だったから、少しショックだったかもしれないけどね」
唯「じゃあ……私は……」
唯「あずにゃんの気持ちも知らないで、何てことを……」
さわ子「済んだことを後悔したって仕方ないわ」
さわ子「まず、きちんと梓ちゃんに謝罪しなさい」
さわ子「もしかしたらさっき唯ちゃんが言ったように、もう顔も見たくないって言われるかもしれない」
さわ子「それでも、謝りなさい。心の底から、誠意を込めて」
唯「すっ……はい」
さわ子「それからどうするかは……あなた自身で考えなさい」
さわ子「私があなたに言ってあげられることは、ここまで」
さわ子「以降私は、教師としての立場を全うするわ」
さわ子「梓ちゃんが精神的苦痛で学校に来れないなんてことになったら、学校に事情を話すし、あなたの両親にもこのことを話す」
さわ子「ここからは本当にあなた次第よ」
唯「ありがとう……さわちゃん」
唯「私……あずにゃんのところに行ってくる」
さわ子「……頑張りなさい。部室の鍵は閉めておくわ」
保健室
梓(んっ……ここは……)
梓(白いベッド、アルコールの臭い……保健室……?)
梓(何で保健室に……ぁ)
梓(……思い出した)
梓(唯先輩……どうしてあんなこと……)
梓(あなたにとって私は……性欲の対象でしかなかったの?)
梓(私の気持ちは……全部無駄だったの?)
梓(分からない……分からないよ……人間不信になりそう……)
梓「うっ……」
先生「あら……?」
しゃーっ
先生「……起きたみたいね」
梓「先生……」
先生「事情は全部聞いたわ……山中先生にもこのことは伝えた」
梓「あの……ゆ、唯先輩と……他の先輩たちは?」
先生「琴吹さんや他の先輩たちは帰ったわ」
先生「平沢さんは、山中先生と話をしているはず」
梓「そう……ですか」
先生「ここに来た時よりは大丈夫そうだけど……どう? どこか気持ち悪かったりしない?」
梓「……大丈夫で……うっ」
先生「……まだ少しショックが残っているみたいね」
梓「唯先輩は……どうなってしまうんですか?」
先生「……最悪の場合は、退学ね」
梓「そんな……」
先生「さわ子先生の計らいで、今のところ学校にはこのことを話していないの」
先生「でも今回の件を話せば、加害者側の平沢さんには必ず何か処罰が下ると思うわ」
梓「唯先輩が……唯先輩がいない軽音部なんて……私、どうしたら……」
先生「……中野さん、あなた……」
がらっ
梓「!」
唯「はっ、はっ……」
先生「ひ、平沢さん?」
唯「はっ……あず、にゃん……」
先生「山中先生と話をしていたんじゃないの?」
唯「もう終わりました……」
唯「あの……お願いします! 梓ちゃんと二人で話をさせて下さい!」
梓「……!」
先生「……残念ながら、今あなたを梓ちゃんに近づけることはできないわ」
唯「謝罪に来たんです。信じてもらないかもしれないけど……」
唯「もう、梓ちゃんには絶対に手を出したりしりません。だから……お願いします!」
先生「……いいえ、保健の先生という立場上それを許すわけには……」
梓「私も……少しだけ平沢先輩と話をさせて下さい」
先生「中野さん……」
先生「……分かったわ、私は廊下にいるから」
先生「中野さん、何かあったら大声を出しなさい」
梓「……はい」
先生「少しでも異変を感じたら……悪いけど部屋に入らせてもらうわ」
唯「……分かっています」
がらっ
ぴしゃっ
唯「あずにゃん……」
梓「それ以上、近づかないで下さい」
唯「」ぴくっ
梓「私は……唯先輩を許したわけではありません」
梓「少し聞きたいことがあったから、先生に出てもらっただけです」
唯「うん……分かっている」
唯「私があずにゃんにどれだけ酷いことをしたか、どれだけあずにゃんを傷付けたか」
唯「あの後少し落ち着いてから、さわちゃんの話を聞いて……よく分かった」
梓「……」
唯「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! ……全部、私が間違っていた」
梓「何を……今さら……」
唯「許してもらえないことなんて分かっている……でも、とにかく謝らせて欲しい」
唯「本当にごめんなさい」
梓「……一つ聞かせて下さい」
梓「唯先輩にとって私って……何だったんですか?」
梓「ただの性欲の対象でしか……なかったのですか?」
唯「違う……そうじゃない」
唯「今まで気付かなかったけど……今日のことがあって、初めて分かった」
唯「私は、あずにゃんが好きだから」
梓「えっ……」
唯「あずにゃんのこと好きすぎて……自分の欲望を抑えきれなかった」
唯「……ごめんね、悪いことした上に好きとか勝手に言っちゃって」
唯「もう私の顔も見たくないだろうから……行くね」
唯「もしかしたらもう二度と会えないかもしれない……今までありがとね、あずにゃん」
梓「ま……待って!」
唯「……あずにゃん?」
梓「まだ話は終わっていません……自分だけ一方的に話して帰らないで下さい」
唯「で、でも……」
梓「……唯先輩は、私の気持ちを考えたことありますか?」
梓「抱きつかれているとき、私がどんな気持ちだったか知っていますか?」
梓「……嬉しかったんですよ? 抱きつかれて」
梓「口では嫌がってましたけど……本当は抱き返したいくらいだった」
唯「うそ……」
梓「私も、唯先輩のこと……好きだったんですよ?」
梓「なのに、なのに……あんな無理矢理、犯すなんて言うから……ううっ」
梓「唯先輩のバカ……! 普通に、好きって言って欲しかったのに……」
唯「あず、にゃん……ごめんね、本当に……私、鈍感で……」
梓「鈍感すぎなんですよ……! バカ、ううっ……」
唯「あずにゃん、私……」
梓「……もう……いいですよ」
唯「えっ……?」
梓「抱きしめてもいいですよって……言ってるんです」
唯「あずにゃん……うん」
ぎゅっ
梓「……もう、絶対にあんなことしないって約束して下さい」
唯「約束する……あずにゃんを傷付けるようなこと、二度としないよ」
唯「エッチなことも絶対にしない……だから、これからもこうやって抱きついてもいいかな?」
梓「はい……でも、エッチなことをしちゃ駄目とは言ってないですよ?」
唯「え……?」
梓「私は無理矢理犯されるのが嫌だったのであって……その……」
梓「合意の上なら……全然していいんですよ?」
唯「あずにゃん……」
梓「順序さえ踏んでくれれば……私は唯先輩とエッチなことだって……」
唯「……もしかして、あの時少し気持ち良かった?」
梓「……ちょっとだけ」
唯「えへへ……なんか嬉しいな」
梓「もう……とにかく、暫くの間エッチなことは禁止です」
唯「しばらくって、どれくらい?」
梓「そんなの分からないです」
唯「私……抱きつきだけじゃまた我慢できなくなるかも」
梓「……キスくらいならいいですよ」
唯「ほんと?」
梓「たまになら」
唯「……今、していい?」
梓「……ちょっとだけですよ」
ちゅっ
おしまい
最終更新:2011年04月13日 20:25