≪じぃ~≫

憂「純ちゃんはスタイル良いから分からないんだよ……」

≪もじもじ≫

純「まだ言うか……でもまぁ、気をつけてはいるかなぁ」

憂「ちなみにどんな風に気をつけてる?」

純「……なんとなく? これ以上食べたらヤバイかなぁ……って感じで」

憂「ホントに? それだけ?」

純「うん」

憂「それだけでそんな立派に……」

≪じぃ~≫

純「じ、じっくり見ちゃ駄目だってばっ」

≪まるまりっ≫

純「むぅーっ」

憂「えへへ♪ あ、それで……聞きたいことって何?」

純「あ……うん……」

憂「?」

純「えっと、その……さ」

憂「聞きづらいこと?」

純「そうじゃないんだけど……」

憂「…………」

純「憂」

憂「う、うん」

純「音楽……始めてみて、どう? 楽しい?」

憂「…………」

純「…………」

憂「えっと……」

純「…………」

憂「…………」

純「…………」

憂「……うん、楽しいよ」

純「…………」

憂「うん、楽しい♪」

純「ホントに?」

憂「楽しそうに見えなかった?」

純「見えた」

憂「? じゃぁ、どうして?」

純「だって、憂っていつもにこにこしてるんだもん。時々分かんなくなる時があるんだよ」

憂「そう……なんだ」

純「あ、それが悪いって言うんじゃないよ?」

憂「うん」

純「でもさ……え~っと、ほら……梓って来年大変でしょ?」

憂「軽音部?」

純「うん……でさ? あたしは音楽好きだし部活やってるから、梓の気持ちをちょっとは分かってるつもりなんだよ」

憂「うん」

純「深く考えないで梓のこと手伝ってるけど、憂はどうなのかなぁ……って」

憂「…………」

純「憂は優しいし、梓は友達だし、その……何ていうか……」

憂「……ひょっとして、義務感とか同情だけで手伝ってると思ってた?」

純「ちがっ……う、けど……ちょっと……ちょっとだけ疑ったかも……しれない……」

憂「…………」

純「でもでもっ! 『もしかしたら?』とか『可能性もあるかも?』とか、そーいう……えっと……あー、うぅ……」

憂「…………」

純「待って……待ってね……ちゃんと考えるから……」

憂「うん」

純「…………」

憂「…………」

純「……あたしはさ……音楽が好きなんだよ。で、憂も梓も好き」

憂「う、うん」

純「だから、憂にも音楽を好きになって欲しいって思ってる……楽しいって感じて欲しいって思ってる」

憂「うん」

純「でも時々、憂のこと分かんなくなる時がある。結構知ってるつもりなんだけどね」

憂「…………」

純「楽しそうに演奏してるなぁ……でもホントにそうなのかなぁ……いやいや、きっと好きになってくれるよ……とか、たまに考えちゃう」

憂「うん」

純「あたしのキャラじゃないのは分かってるんだよ? でも梓と軽音部が大変な時だし、憂は優しいし」

憂「…………」

純「もしかしたら無理やりつき合わせちゃってるのかなぁ……とか、仕方なく手伝ってるのかなぁ……とか」

憂「…………」

純「時々……ホント~に時々だけど、考えちゃう時があるんだよ」

憂「うん」

純「そんなことをさっき、ふっと思い出しまして……確認した次第であったりなかったりなんてねてへへ」

憂「うん」

純「…………」

憂「…………」

純「えと……い、以上です」

憂「うん」

純「…………」

憂「…………」

純「……ぅ」

憂「?」

純「うっわぁ~……駄目じゃんこれ。言葉にしてみてハッキリ分かったよ……これ、全部あたしの我侭だぁ」

憂「…………」

純「はぁ……何言ってんだろ、あたし……ダメダメ過ぎる」

憂「…………」

純「憂が音楽とかをどう思うか、憂が決めることだもんね……」

憂「……ぁ」

純「?」

憂「ふふっ……あはっ あはははっ♪」

純「へ?」

憂「あはははっ♪ もうっ 純ちゃんってば♪」

純「な、何? あたしそんなに面白いこと言った?」

憂「違うよ♪ そうじゃなくて……あははっ♪ ご、ゴメンね? 笑ったりして……ふふっ♪」

純「別にいいけど……何かツボに入った?」

憂「ふふっ……うぅん、そうじゃないよ」

純「じゃぁ、何でそんなにウケてるの?」

憂「うん……純ちゃんらしいなぁって思って」

純「えぇ~? あたしが言うのもアレだけどさ……全然あたしらしくないなぁって思ったんだけど?」

憂「そんなことないよ。純ちゃんらしいと思う」

純「そうかなぁ」

憂「だって、心配してくれたんでしょ? わたしのこと」

純「…………」

憂「音楽が好きで、友達のことが大事で、キャラじゃないなぁって思いながらも悩んで」

純「…………」

憂「わたしや梓ちゃんの事もちゃんと分かってて、気を使ってくれる」

純「…………」

憂「だから、純ちゃんらしいなぁ……って思ったんだよ」

純「そう……かな」

憂「まぁ、真剣に考えて……ってところはちょっとだけ意外だったけど、時々考えるってところが純ちゃんらしいよね♪」

純「むぅ……真面目な考え事なんてのは、たまにするくらいで丁度良いんだよぉ」

憂「そうなの?」

純「だって、いっつも難しい顔して考えたりしたら、楽しい事とか見逃しちゃうかもしれないじゃん」

憂「あははっ そうかも♪」

純「また笑った」

憂「だって、さっきの純ちゃんもそうだけど……真面目だったり照れてたり、忙しそうで可愛いんだもん♪」

純「ぅ……ぐ……」

憂「ほら、また照れた♪」

純「照れてないっ」

憂「あははっ♪」

純「笑うなーっ」

憂「ごめ~ん♪」

純「もうっ」

憂「ふふっ……じゃぁ、質問にちゃんと答えるね」

純「質問?」

憂「音楽を始めて楽しい? って質問の答え」

純「それさっき答えなかった?」

憂「きちんと答えたいんだよ」

純「…………」

憂「えっとね……本当に、凄く楽しいって思ってるよ」

純「……うん」

憂「実はね? 結構前から憧れてたんだよ」

純「音楽に?」

憂「うぅん……純ちゃんと梓ちゃんと一緒に演奏すること……純ちゃんと梓ちゃんと一緒に何かをやるってこと」

純「…………」

憂「覚えてる? 去年、家に泊まりにきた時のこと」

純「う、うん」

憂「色々あって、最後に軽音部で演奏したよね」

純「うん」

憂「あの時からかなぁ……三人で何かをやるってことにハッキリと憧れ始めたの」

純「…………」

憂「それまでは『純ちゃんと梓ちゃんって良いなぁ』って思ってる程度だったんだけどね」

純「良いなぁ?」

憂「うん。だって二人には音楽っていう共通点があるんだもん」

純「まぁ……ね」

憂「わたしにはそういうのなかったから……でもあの時、純ちゃんが『セッションしようよ』って言ってくれて」

純「…………」

憂「それまでも友達だったけど、なんていうか……もっと仲良くなれたって言うか……」

純「うん」

憂「一体感っていうと……生意気かな? えへへ」

純「うぅん、そんなこと……ない」

憂「ふふっ よかった♪」

純「うん」

憂「あの日、あの部室で……それまで以上に、純ちゃんと梓ちゃんに近づけた気がしたんだ」

純「そっか」

憂「うん♪ だから今はすっごい楽しいよ。一緒に演奏できて」

純「うん」

憂「以上が、純ちゃんの質問に対するわたしの答えです♪」

純「うん、ありがと」

憂「いえいえ♪」

純「…………」

憂「純ちゃん?」

純「ん?」

憂「どうしたの? 元気ないみたいだけど」

純「ん」

憂「?」

純「…………」

憂「えっと」

純「憂のせいじゃないよ」

憂「…………」

純「えと……あたしが勝手に…………へこんでるだけ」

憂「え?」

純「ちょっと、ね……思い出しちゃっただけだよ……色々……」

憂「純……ちゃん?」

純「…………」

憂「あの……大丈夫?」

純「ん」

憂「…………」

純「あのさ……」

憂「う、うん」

純「ちょっと聞いてくれる?」

憂「うん」

純「今のお泊り会の時の話なんだけどさ」

憂「うん」

純「その……何ていうか」

憂「…………」

純「いじけてたんだよね、あたし」

憂「え?」

純「あの日さ? 学校にいる時から唯先輩からメール着てたでしょ?」

憂「うん。修学旅行先からのやつだよね?」

純「うん……メールがくる度に憂と梓、楽しそうにしてたじゃない?」

憂「う、うん」

純「さっきの憂の話じゃないけど……二人とも良いなぁって……」

憂「…………」

純「あ、別に僻んでたりしたわけじゃないよ? ただ、楽しそうだなぁ……良いなぁ……って思ってね」

憂「そうだったんだ……ゴメンね?」

純「待った待った、謝んないでよ。あたしが勝手にそー思ってただけなんだしさ」

憂「でも……」

純「それに、最初っからいじけてたわけじゃないんだよ」

憂「…………」

純「でも気にはなってた……かな。憂の家に来て、また唯先輩からメール着て……それで一気に爆発しちゃったんだと思う」

憂「そっか……」

純「自分でも嫌だな~って思ってたんだよ? うじうじしてる自分って、あたしは嫌だし」

憂「…………」

純「でもどうしていいか分かんなかった。憂も梓も唯先輩も、誰も悪くないのにね」

憂「…………」

純「だからさっさと布団に入って考えるの止めちゃった」

憂「もしかして、純ちゃんあの時……」

純「えへへっ 寝たふりでした♪」

憂「そう……だったんだ……」

純「まぁ、すぐに本当に寝ちゃったけどね」

憂「…………」

純「あたしは寝れば大抵気持ちが切り替わるんだけど……あの日は無理だったなぁ」

憂「…………」

純「朝になっても全然気持ち変わらなくてさ」

憂「うん」

純「歯を磨いてる時も意地になっちゃって……憂が新しいのくれるって言うのに、絶対二人と同じの使ってやるんだー、とか」

憂「…………」

純「ホント、馬鹿みたいだった」

憂「純ちゃん……」

純「今の憂の話を聞いてて……その時の気持ち思い出しちゃってさ。ゴメンね? 変な話しちゃって」

憂「うぅん……でも、その……」

≪スッ ふにっ≫

憂「んゅ?」

純「しぃ~」

憂「ひゅんひゃん?」

純「こればっかりはホントに謝らないでね? 本気の本気であたしが悪かったんだから」

憂「ひぇも……」

純「今でさえカッコ悪いところ見せちゃったのに、これで憂に謝らせたらもっとカッコ悪くなっちゃうよ」

憂「…………」

純「だから……お願いっ 謝んないで?」

憂「…………」

純「ね?」

憂「ぅん」

純「ありがと♪」

≪スッ≫

憂「ふぅ」

純「とっさに指当てちゃったけど……憂の唇って柔らかいね」

憂「ぁぅ」

純「赤くなっちゃって、愛い奴よのぉ……憂だけに」

憂「も、もぅっ」

純「あはははっ♪」

憂「……ふふ♪」

純「それにさー? その後、うじうじしてたのが馬鹿馬鹿しくなるくらい、気持ちが晴れちゃったし……今となっては良い思い出だよ」

憂「そうなの?」

純「ほら、三人でやったセッション」

憂「う、うん」

純「演奏し終わったらさ……『な~に下らない事で悩んでたんだろー』ってなっちゃってね」

憂「なんで?」

純「さっき憂が言った一体感? 多分そういうの感じたからかも。自分でもよく分からないけどね」

憂「そっか」

純「変に気後れしないで、自分から近寄っていけば良いんだー……って気持ちになってたんだよ」

憂「自分から……か」

純「そそ♪ だから一緒に演奏してくれた憂と梓にも感謝してる。ありがと♪」

憂「そんな……わたしの方こそありがとうって言いたいよ」

純「いえいえ~♪ どういたしまして~♪」

憂「いえいえ、こちらこそ~♪」

純「…………」

憂「…………」

純「ぷっ」

憂「ふふっ」

純「あははは♪」

憂「えへへへ♪」

純「アレかな? こーいうのを青春してるっていうのかな?」

憂「う~ん……そうかも?」

純「何にしてもさ、あたし達ってまだまだお互い知らないこといっぱいあるね」

憂「そうだね」

純「今度、梓も一緒に一晩かけてお喋りでもしようか?」

憂「うんっ それいいかも♪」

純「ふっふっふっ……その時は憂の全てを教えてもらおうかな」

憂「う」

純「あははは……って、そうだ」

憂「ん?」


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最終更新:2011年04月13日 23:16