梓「ゆ、唯先輩!」

唯「ん?」

梓「ちょっと話が…」

律「おぉーっ!?ついに愛の告白かー?」

梓「ちっ、違いますよ」

唯「ごめん、先に行っててー!」

律「ちぇーっ…」

バタン

唯「なに?」

梓「あ…あの」

う、うわぁ…何だこの雰囲気…


唯「…おっきくなったね」

梓「え?」

唯「身長、ちょっと伸びたんじゃない?」

梓「そ、そうですかね…」

梓「……」

梓「あ、」

唯「?」

梓「あの!」

梓「今まで…ありがとうございました……!」

唯「いきなりどしたの?」

梓「いや、今のうちに伝えておこうかなって……あはは」

唯「こちらこそ素敵な思い出をありがとう」

唯「来年楽しみだなぁ…」

唯「あずにゃんの軽音部」

梓「もし…誰も入ってくれなかったらどうしますか?」

唯「それは残念だよー」

唯「でも別にそれでもいいや」

唯「あずにゃん誰かに取られたりしないもん」

梓「……」

唯「な、なんてねっ!あはは」

唯「その時はその時だよ!別に怒ったりしないよー」

梓「そうですか…」

梓「でも私、本当は不安なんです」

梓「逃げ出したくなるんです」

梓「本当はずっとずっと先輩たちとこうしてたいんです!」

唯「それは…私も一緒だった」

梓「唯先輩も…?」
唯「…うん」

唯「こんな日常がずっとずっと続けばなー、なんて…」

唯「でもさ、違ったんだ」

唯「日常は終わらないんだ」

唯「ずっとずっと続いていくんだよ!」

唯「いいじゃん、またそうすれば」

梓「?」

唯「またここで皆でお茶したりお菓子食べたりすればいいんだよ!」

唯「それに困ったこととかわからないことあったらもっと頼っていいんだよ?」

唯「わたし、こんなのでもあずにゃんの先輩だもん!」


唯「って…あはは、ちょっとカッコよすぎたかな……」


梓「………グスッ」ギュッ

唯「………」

梓「また…先輩たちと笑える日が来るんでしょうか…」

梓「また…放課後が待ち遠しくなる日が来るんでしょうか……」

唯「大丈夫だよ、あずにゃん」ナデナデ

梓「……ヒグッ」

唯「一人じゃないもん」

唯「きっときっと、素敵な未来が待ってるよ!」

唯「でもそのためには未来に行かなきゃ!」

唯「きっと虹色の日常が待ってるはずだから!」

梓「ふふ…虹色の日常ですか……グスッ」

唯「お、可笑しい?」

梓「はい……とっても……!」

梓「…信じますよ?」

梓「唯先輩の言葉」

唯「うん!」

梓「……ってなんかすいません」フキフキ

梓「あはは…」


唯「あずにゃん」ナデナデ

唯「わたし、待ってるからね」

唯「だから頑張るんだよ、部長さん!」

梓「はいっ!」


梓「あっ、あともう1つ」

唯「ん?」

梓「私のことはずっとずっと"あずにゃん"って呼んでくれませんか?」

唯「言われなくてもそんなことわかってるよ」

唯「何歳になってもあずにゃんはあずにゃんだもん!」

梓「ふふ……よろしくお願いします」

梓「あっ、ちょっとトイレに…」


唯「じゃあ電気消してくねー」

カチッ

唯「鍵も閉めて、っと」

シュンッ

梓『……はぁはぁ』

唯「あ、あずにゃん!」

梓『いや、体調良くなったんで部室行こうとしたんですけど……もう遅かったみたいですね』

梓『ていうか、今誰と話してたんですか?』

唯「……クスッ」

唯「なーいしょ!」
梓『はぁ?』

唯「だって日常は虹色なんだもん!」

梓『意味がわからないんですけど…』

唯「ねぇ、あずにゃん。ちょっと提案があるんだけどね…」

梓『はい?』

シュンッ

紬「あ!」

唯「帰ってきた!」

紬「どうだった?」
梓「もう大丈夫です」

梓「だから約束通り元の時間に戻ります」

紬「…そう」

ミシッ

梓「…どうやらこれもあと一回くらいで壊れそうですしね」

唯「あーもう!行き忘れたバーゲンあったのになー」

紬「我慢しなさい」

唯「うぅ……」

唯「あの頃のムギちゃんの方がいいなぁ…」

梓「先輩、」ムギュ

唯「ちょっ、え?どうしたのあずにゃん」

梓「!」

唯「え?」

梓「……クスッ」

梓「いえ…なんでも!」

梓「じゃ、そろそろ行きますね」

梓「色々とお世話になりました!」

紬「いってらっしゃい」

唯「う~あずにゃーん」

梓「はいはい、大好きですよ唯先輩!」

梓「じゃ!」

シュンッ

唯「えっ…えっ?」

唯「き、聞いた?今私のこと……!」

ガチャ

律「わるい!遅れたー!」

澪「お前が鍵なんか忘れるからー!」

唯「そしてなんというグッドタイミング…」

律「…で、梓は?」

紬「ふふ……」

紬「…もう行っちゃったわよ」

唯「あーそうだ。後で桜高の桜見に行こうよ!」

澪「お前毎日見てんだろ?」

唯「いいじゃん!それに皆で見たいの!」

律「ついでにさわちゃんにも会いに行くかーっ?」

紬「それいい!」

唯「なんで休みの日までさわちゃんに会わなきゃいけないの……」

紬「まあまあ」

ガチャ

唯「あ!」


――――

シュンッ

梓「はっ…」

梓「……」キョロキョロ

梓「なんだ夢か……ってどんな夢なんだよー」

梓「いやいやさすがにねー、あはは」

梓「はぁ……ふふっ…」

梓「ふぅ……」

梓「……」

純「えぇ……」

梓「!」

純「梓…大丈夫?」

梓「へっ…」

憂「もうそろそろ時間なんだから準備しないとー」

梓「なに…してるの?」

純「はあ?」

憂「もー梓ちゃーん?」

梓「……変わって……る?」


純「だーめだ、こりゃ」


憂「梓ちゃんが誘ってきたんじゃーん」

梓「そ、そうだっけー?あはは…」


憂「お姉ちゃんにもずーっとお願いされたんだよ?」

梓「唯先輩にも?」

憂「うん、あずにゃんを助けてって」

梓「そうなんだ…」


憂「相談したんじゃなかったの?」

梓「えーと…」

純「まっ、まさかこの人本物の梓じゃないんじゃ…」

純「別の時空から来た梓とか!」

純「いや、梓を乗っ取った宇宙人だったりして!」

梓「は、はい?」

ガチャ

さわ子「そろそろ出番らしいわよー!」

純「あーっ、さわちゃん」

さわ子「あなたまでそうやって…」

梓「もうそんな時間か…」

憂「あーなんか緊張してきちゃったなー…」

純「憂緊張してんのかよー」

純「だ、大体こんなんで緊張するとかかかー?素人まままるだしでしょー!」ガクガク

梓「隠しきれてないし…」

さわ子「って本当にもう行かないと遅刻しちゃうわよ?」

梓「!」

梓「い、急げー!」タッタッタ

憂「おーっ!」タッタッタ

純「あ、待ってよー!」タッタッタ

さわ子「……クスッ」

さわ子「いってらっしゃい!」

あれは夢だったのかな…

だってタイムマシンなんて出来てたら今頃世界は未来人だらけにーなんてこともあり得る訳で


だとしたら今現在が在るべき姿と考える方がいいのかもしれない

あの夢はきっと過去ばっかり振り返って前に進もうとしない私への当て付けだったんだ

ただあれが夢だとしたら、私は夢でも現実でも誰かに助けられてることになる

私は一人じゃ何もできないのかな…

いや…確かにそうかもしれない

最初から一人じゃ何もできなかったんだ

そこに誰かが居てくれたから私は笑っていられたんだ


このタイムスリップはきっと未来を変えるためだったんじゃない

きっと私自身を変えるため

一人で何もかも背負いこむ私を

過去の思い出に浸ってばかりいる私を

私もきっと、唯先輩と一緒で軽音に人生を変えてもらった一人なんだ

それならこれからはちょっとずつでも恩返しをしていこう

私の人生を変えてくれた皆に

私を支えてくれる皆に

そして今度は私が誰かの人生を変えていく番なんだ


いつかまた誰かがこの桜を見て微笑むことができるように

始まりの日をいつまでも恋しく思ってくれるように

タッタッタ

梓「走れーっ!」

憂「おーっ!」

純「うおーっ、ってうわー転ぶー!」

そういえば唯先輩の言っていた虹色の日常ってなんだろう

……でもいつかきっとわかる日が来るよね

そしていつかきっと、またこの桜を皆で懐かしみながら見る日が来るんだ


一色だった私の未来は徐々に色づき始める


それはそれは綺麗な色に


行こう。


梓「せーのっ!」


君の待つ、



――――虹色の未来へ。


おしまい



最終更新:2011年04月16日 04:31