ザザーン……

ザザーン……

クァア……クァア……

唯「海……だね」

和「海……ね」


和「……」

唯「……はあ」

和「!」

和「」ウルウル

和「じゃあね、私……生徒会行くからっ」

唯「和ーナビちゃんが防波堤を乗り越えようとしてる!? って駄目だよ和ーナビちゃん危ないよ!」

和「こんなポンコツ海の藻屑と消えればいいのよ! 生徒会と言う名の荒波に飲まれてしまえばいいのよ!」

唯「落ち着きなよ和ーナビちゃん!」

和「だって……喫茶店一つたどり着けないカーナビなんていらないじゃない……」

唯「……そうだね、確かに和ーナビちゃんは方向音痴さんだね。私が言うのもなんだけど」

和「そうよね……ポンコツよね」

唯「カーナビとしては役に立たないことこの上ないよね」

和「そうよね……生徒会長よね……」

唯「でもね……和ーナビちゃんはカーナビじゃないもん」

和「えっ……?」

唯「和ーナビちゃんは和ーナビちゃんだから。道に迷ったっていいんだよ。
そしたらまた二人でのんびり歩きながら探せばいいんだよ」

唯「私はこうやって和ーナビちゃんの隣をずっと歩いてたいな」ニコッ

和「唯……」

和「私頑張るわ! もう絶対に泣き言なんて言わないから」

唯「その粋だよ和ーナビちゃんっ!」

和「行きましょう、唯」
唯「うんっ」ぎゅっ


和「(頑張るって決めたもの、唯の為にも絶対喫茶店にたどり着いてみせるわ!)」



和「すいません、駅ってどっちですか?」
唯「(うん、やっぱりカーナビじゃないよね。カーナビは人に聞いたりしないもんね)」


港の人「そりゃおめぇ反対側だぁ。って言うか桜が丘の制服着てるのにわからないのかぇ?
おめぇさ方向音痴か?」

和「……」プルプル
唯「和ーナビちゃんファイトだよ!」

和「あ、ありがとうございました……」
唯「良くできましただよ!」

唯「再び町に戻って参りました!」

和「駅はこの近くらしいけど……」

唯「あっ! 踏切があるよ!」

和「ということは……!」

和「音声案内を開始するわね」
唯「おぉっ! 久しぶりの音声案内だね!」ぎゅっ

和「ここを直進します」ビシッ
唯「……」

和「これで確実に駅まで行けるわね!」ノドンッ

唯「和ーナビちゃんのルート案内は線路も入ってるんだね……。
でも危ないからやめようね」

唯「ついたー! やったよ和ーナビちゃん!
駅だよ駅!」

和「唯、油断は禁物よ。目的地につくまでが和ーナビよ」クイッ

唯「でもここまでくれば大丈夫だよぉ。和ーナビちゃんもいるし」

和「(ふぅ、ようやく私のルート案内に信頼を寄せるように……)」

唯「へいタクシー! この辺りに最近出来た喫茶店まで!」

和「なってなかったわね!うん!」

和「ちょ、ちょっと待ちなさいよ唯!」

唯「どうかしたの和ーナビちゃん?」

和「あなた私というナビがありながら他のナビに浮気するつもりかしらっ!?」

唯「違うよ~」

和「なにがよ!」

唯「タクシーに和ーナビちゃんが乗ります」ささ乗って

和「え、あ、えっ?」

運転手「喫茶店までね?」

唯「はーい」

和「ゆ、唯?」

唯「そして和ーナビちゃんがタクシーの運転手さんをナビすれば……!?」

和「ちょっと唯!!!」

唯「!」

和「それ最強じゃない……!」

唯「でしょ~?」

和「車の速さ+私のナビ……! これでもう怖いものなんてないわね!」

唯「さあ和ーナビちゃん! 思う存分タクシーの運転手さんをナビするんだよっ!」

和「任せなさい」クイッ

和「運転手さん、50m直進後、左折」キラリッ



運転手「そっち違うよ。私場所知ってますから大丈夫ですよお客さん」

和「……あ、はい」

唯「(タクシー乗って良かった~)」


──

唯「ぷはぁ~食べた食べた!」

和「」ショボン

唯「どうしたの和ーナビちゃん?」

和「唯、私ってやっぱり方向音痴なのかしら……?」

唯「今気がついたの!?」

和「やっぱり……。町の喫茶店一つ行けないなんて……どうしようもないわね、私」

唯「和ーナビちゃん……」

和「ちょっとやれば直るなんて……方向音痴舐めてたわ、私。
こんなことにわざわざ付き合わせてごめんね、唯」

唯「和ちゃん……」

唯「……! 大丈夫だよ和ーナビちゃん!
和ーナビちゃんが方向音痴じゃないこと私が証明してあげるから!」

和「さっきトドめさしたのはあなたなんだけど……」

唯「いいからいいから~♪」カキカキ

唯「はいっ! ここに行ってください!」

和「ここは……!」


唯「いこっ! 和ーナビちゃん!」

和「……ええ」

『桜が丘高校生徒会室』

唯「ほら、ついたよ」

和「そうね。でも当たり前じゃない。何度も何度も来てるんだから」

唯「ん、そうだね。何度も何度も来てるもんね」

唯「だから他のところだって何度も何度も行けばきっとたどり着けるんだよ、和ちゃん」

和「唯……」

唯「だからこれからも……大学生になっても……一緒に色々なところに行こうね。約束だよ」ニコッ

和「ふふ、そうね。例え迷っても唯と一緒なら楽しいもの」ニコッ


商店街──

唯「通いなれた道はいいよね~」
和「ちょっと唯……もういい加減離れたら?」

唯「駄目だよ和ーナビちゃん! 走行中はシートベルトの着用が義務付けられているんだよ!」

和「はいはい……」


憂「あっ、お姉ちゃんと和ちゃん」

唯「憂! 今帰り?」

憂「うん。今日はカレーだよ、お姉ちゃん」

唯「カレーとな? それは早く帰らねば!
和ーナビちゃんダッシュ機能だよ!」

和「ないわよそんなの」

憂「わぁああ……」キラキラ

和「どうしたの憂?」

憂「えっと…ね、その……お姉ちゃんいいな~って」

唯「ふっふっふ、憂も乗りたい?」

憂「うんっ!」

唯「じゃあおいで! 和ちゃんカーは二人乗りだからね!」
和「ちょっと、私は乗り物じゃ……あぁもう憂まで!」
憂「えへへぇ」ぎゅっ

両サイドに平沢姉妹を連れながら夕焼けの道を歩いて行く。

和「全く……ほんとあなた達は」

知らない道を一人で歩くのは少しだけ怖い。これから大学生になり唯とは別々のルートに分岐される……けど、大丈夫。

唯「そろそろ私達の家だね~」
憂「うんっ!」

和「ふふ、目的地周辺よ、二人とも」

合流ポイントはいつだって、ここにあるのだから。


おしまい




おまけ!


唯「やっぱり和ーナビちゃんいいよね~!」

憂「うんうん和ちゃんナビ可愛いよね!」

和「そうよね」

  ・・・
和「ノドカーナビいいわよね」


和「一家に一台、あなたもそう思わない?」

P.S.まさかワーナビとかふざけた読み方してた人はいないわよね?


おしまい



最終更新:2011年04月18日 02:21