決闘場所は芸術会館だが全く来た事なかったので予定時間を大きく狂わせた。結局、試行錯誤してる間に憂の闇宮の和が見つけて案内してくれた。和は前回の服装とは違ったこれが戦闘服というのを着ていた。つまり、澪もゴスロリではなく戦闘服なのだろう。

ホールに入ると和が扉を閉める。真っ暗になるホール。そして妹の声が聞こえた。

憂「待ってたよお姉ちゃん」

唯「ういー。もうちょっ分かり易い地図買いよ~」

憂「あわわ、ごっごめんね、お姉ちゃん」

普通の仲良し姉妹の会話が出来た。しかし、それもすぐに終わった。

憂「じゃあお姉ちゃん。こっち来て。大丈夫、奇襲はしないから。戦い方を教えるだけ」

ステージに立つと唯の元に澪が寄って来た。しかし、声を掛けても反応しない。

憂「じゃあ説明するね。和ちゃん心を殺して」

いつの間にか隣にいた和は心を殺した。証拠に瞳が輝いてない。

憂「操糸術」

憂は和の大糸を指に絡める。

憂「普通は糸操る時、相手は抵抗するからうまく操れないけど、心を殺してる場合は抵抗もなく操れるんだ。心糸はだめなんだ。心を操っても出来ない事は出来ないんだ。だからこうやって操るんだよ。そうすれば限界を無視できて多少の怪我でも無理やり治したり、極糸で心臓や肺を動かせばかなりの損傷でも戦えるんだ。まさに人形そのものなんだよ」

唯「でも……」

憂「使えない人形は代える。それが闇宮の人形の使い方なんだよ」

唯「おかしいよ!!」

唯は駆け出そうとするが澪がそれを制する。

憂「ダメだよ。姉妹で喧嘩しても糸が視えてキリがないよ。だからお姉ちゃんは澪さんを使って勝負だよ。これが糸遣いの戦いなんだ。澪さん、心を殺してください」

澪の手がだらんと下がる。目は輝きを失っている。

憂「じゃあ勝負だよ!お姉ちゃん!お姉ちゃんは私を狙っていいよ。私もお姉ちゃんを狙うから……でも先に澪さんから片付けるよ」

その前に憂を倒す。そう決めて駆け出そうとした直後に和が澪の前に立つ。

憂「えい!」

和が腕を振り上げる。慌てて澪の糸を掴んで和の拳を躱す。躱さなかったら澪の頭が飛んでいた。

憂「上手いよ!流石だね!お姉ちゃん!!」

憂は指をさっきより早くさっきより複雑に動かして和ちゃんを操る。

憂「ちなみに、本気で倒すなら頭一発をお勧めするよ。押さえ込んでもあらゆる糸を操れば簡単に脱出出来るからね。とにかく和ちゃんの体を壊してでも勝たないと……」

唯「………」

憂「まあ和ちゃんは人形だし、主人には逆らえないからね」

唯「ふざけやがって!!憂は澪ちゃん達を何だと思っているの!?」

憂の顔つきが鋭くなる。憂は和を自分の元に戻した。

憂「お姉ちゃんにはどうしても理解できないよね。仕方がないか。もうパパッと終わらせるよ」

憂が腕を振り上げると和が人間では有り得ないくらい高く飛ぶ。そのまま唯に目掛け落ちる。

憂「お姉ちゃんの間接を外しちゃうよ。それで勝負ありかな。嫌なら澪さんを盾にしてね」

澪を盾にする。そんな事は唯には出来ない。唯は澪の糸を解放して、匕首を出し和に迎え撃つ。

憂「お姉ちゃん……」

憂が悲しそうな顔をする。和が静かに唯の前に降り立った。

憂「人形を盾にすれば良いのに……まだ抵抗してるの?」

唯「澪ちゃんは人形じゃないよ!憂は澪ちゃんの好きな物とか知ってるの!?」

憂「知らない。澪さんは私には全くお願い事はしてこなかったから……」

唯「澪ちゃんはこんな関係のせいで人形にしか生きられなかったんだよ!澪ちゃんだけじゃなくてえっと…名前忘れた!」

憂「和ちゃんだよ。まあお姉ちゃんならちゃん付けでも良いけどね。でも闇宮は人形しか生きていけないんだよ」

唯「そんな事ない!!変わり者はいるよ!私だったり澪ちゃんだったり!澪ちゃんのノートを読んだ事あるの!!!」

憂「ないかな。澪さんがノートに何か書いてたなんて始めて知ったもん。……それで?」

唯「澪ちゃんはね!甘いもの食べてるときの顔は可愛いんだよ!ノートの詩だってふわふわ時間やふでペンなんとかすっごくいい詩なんだよ!!」

憂「う~ん。お姉ちゃんは何が言いたいの?」

唯「澪ちゃん!澪ちゃんは人形じゃないよ!!」

憂「そろそろ。静かにしようよ。お口チャックしようね」

和が唯の腕を掴もうとする。目で追えない速さで腕が迫る。そこに風が吹いた。

唯「!!」

唯を掴もうとした和の腕を第三の腕が掴んでいた。

憂「そんな…」

澪「唯は私が守る!!申し訳ありません憂様」

唯「澪ちゃん…」

憂「澪さん、主人は私だよ!」

澪「私は唯に仕えると決めました」

憂「人形の癖に!」

澪「唯、私は人形か?」

悲しそうに尋ねる澪。唯は首を振り答える。

唯「違うよ」

強く断言した。

澪「じゃあ私は人形じゃないな。後な唯、ふわふわ時間(じかん)じゃなくてふわふわ時間(タイム)な」

唯「すみましぇん」

憂「……めんどくさい事になったなぁ」

憂は糸を操り澪の体を押す。

澪「ここは任せてくれ!」

唯「わかった」

唯は憂に向かって駆け出す。憂は糸をすばやく操る。和の腕が閃く。もの凄いスピードで拳を繰り出す。それを澪は諸手で受けた。

憂「なっ!!」

澪「私と唯のラブパワーを舐めるなぁあああ!!!」

澪は懐に入り和を思いっきり投げる。

憂「そんな…」

憂は糸を解いて懐から包丁を取り出し構える。

唯「闇宮流葬技――雅一閃!!」

叫びとともに包丁を持つ右手を切りつける。一瞬憂は面を喰らったが唯の攻撃が空を切った事によってすぐに体制を立て直す。

憂「冗談勘弁してね」

包丁で切りつけようと腕を振るう。が、包丁は地面に落ちた。

憂「え?」

ついでにもう片腕を切りつける。慌てて憂は距離を取るが、バランスを取れずに倒れる。

憂「なんで?どういうことなの?」

憂は動かそうともがくが全く動く気配がない。

唯「糸を切ったからね」

憂「やっぱりお姉ちゃんが…知ってたの?お父さんが闇宮だって事を……」

唯「知らなかったよ。かまければ動揺すると思ったんだ」

憂「そっか。お姉ちゃんの方が優れてるもんね。それに全然雅一閃には見えなかったし……。やっぱりお姉ちゃんには糸が切れるほうが普通か。ちなみにその匕首はお父さんの愛用なんだ。澪さんに預けたらこうなったんだね」

唯「お父さんのなんだ」

憂「はぁ~あ。残念だな。和ちゃんとなら統堂を完全に立て直すことができたと思ったんだけどな」

憂はゆっくり立ち上がり和の元に行く。そして和に呟くと和は瞳に輝きを戻した。

唯「憂…」

憂「負けは負けだよ。お姉ちゃんは帰っても良いし、帰らなくても良い。好きにしてよ」

唯「憂は?」

憂「さあ?帰る場所がないんだ」

唯「じゃあ私の家来なよ」

憂「お姉ちゃんはこんな酷い私にでも優しくしてくれるなんて嬉しいよ」

唯「じゃあ来なよ!大歓迎だよ!!」

憂「でもゴメンね。お姉ちゃん」

唯「え……」

唯が突然崩れるように倒れる。それをすぐに澪が抱き支える。振り向くと和が手刀を放っていた直後だった。

澪「何するんだ!?」

憂「安心してください。襲うつもりはありません」

澪「だったら何で」

憂「私は負けたんだよ。負けは死なんだ。だからお姉ちゃんには何処かに行ったと伝えて置いてください」

澪「本当にそれで…」

憂「はい」

澪「……わかりました」

憂「ありがとうございます。お姉ちゃんを悲しませないでくださいね」

そうニコッと笑う憂。澪はゆっくり唯をおぶってこれからこの世界から旅立つ2人の前から姿を消した。



♯エピローグ

澪「起きたか?」

ゆっくり目を開けると正面に澪の顔がどアップで映った。慌てて飛び起きたかったが澪の頭と衝突する。

唯「いたたた。……ここは?」

澪「唯の家近くの公園」

ゆっくり起きて周りを見ると確かに自分の家の近くの公園である。今気づいたが、ずっと膝枕されてた事に今気づいてちょっと頬を赤くした。

唯「憂は?」

澪「……身を潜めるってさ。また会えるよ」

唯「……そっか」

少し休んでから2人で律の寝床に行った。が、今はいないのか糸が視えなかった。

律「何しに来たんだ?」

柱の影から律が姿を現す。

唯「私は用はないんだけど澪ちゃんが……」

本当はそのまま家に帰る予定だったのだが、律に用があると澪が言うので連れてきたのだ。

律「なんだ?」

多少警戒態勢の律。だが、澪はすばやく頭を下げた。

澪「ごっごめん!憂様の命令とは言え手を出したから謝るのは当然だ///」

真っ赤な顔した澪が謝る。律はというとくすくす笑い出す。

律「いや、私も悪かった。まさか澪は闇宮の癖にあんなにファンシーだったとは……」

澪「は?」

律「いやな。腹減ったから唯の家に食いもん頂戴しに行ったんだわ」

そう言えば最近やたら食べ物減るスピードが速かったと唯は今頃気づく。

律「唯もすまん。で、机の上のノート見たら…くははは。ほんとにすまん!!はははやっぱりだめだ」

耐え切れずに声を出してげらげら笑う。澪はというと顔を真っ赤にしてするのも限界だったららしく……

澪「りぃいいいつぅうう!!!」

ゴチン

律「いだー」

澪の鉄拳が律の頭に直撃する。何故か律の自動防御反応は作動せず、律は転げまわる。更に澪は追撃するかのように追いかける。これは殺し合いじゃなくただのじゃれあいだ。そう唯は感じ取った。

しばらく追い掛け回して澪が満足した頃、疲れたから下にいると行って席を外した。唯はこれからの事を聞こうとしたら先に律が答えた。

律「私はもうちょっとここにいるよ」

唯「神の手だっけ?」

律「そ」

唯「何かあったら言ってよ」

律「そうさせてもらうな」

澪「おーいゆいー」

下から澪が呼んだ。長居は出来ないとの事。いや、澪ちゃんがさせないのかも知れない。

唯「それじゃあねりっちゃん」

律「おう。また食いもん貰い行くからな」

廃ビルを出ると澪が待っていた。

唯「じゃあお腹減ったしどこかに食べに行こう。ご褒美だよ!」

澪「ありがとう」

律と一緒に食べたファミレスで食事をする。食べている時澪が口を開いた。

澪「私は唯に仕えて本当に幸せだよ。まだ夢で朝起きたら唯がいなくなってるんじゃないかと思うよ」


唯「夢じゃないよ」

食事も終わってゆっくり帰ってる時、唯は澪に言った。

唯「そう言えば流しの残飯にたくさん食べ物のゴミがあったんだけど」

澪「それは…手料理ってやつ唯に食べてもらって戦って欲しかったんだが……」

唯「じゃあ家事でも覚えよっか」

澪「うう…お願いするよ」

アパートに着いてから澪は集合ポストを見に行った。そして督促状を持ってきた澪を見て現実に引き戻される唯。
でもこれが日常でお母さんやお父さんがいなくなっても唯には澪がいる。もうトラブルには律の頼みごと意外起こらないのだ。起こったとしてもう澪は裏切らない。ずっと隣にいてくれる。
明日は遅刻しないようにそう思いながら唯はドアを開けて澪と家に入った。

終わり。






最終更新:2011年04月20日 23:01