バタン!

唯「たっだいま~!」

律「お、おう。お帰り」

紬「ごめんなさい、待たせちゃって」

澪「いいよ、しょうがないんだから」

唯「いいからお茶しよー。お茶!」

紬「そうね、今………きゃあっ! りっちゃん、何読んでるの!?」

律「ふえ? うわっ、ヤベー!!」

澪「ば、馬鹿!」

唯「なになにー?」


律「ごめん! この通り!」

紬「」ヒック…ヒック

律「ムギ、ホントにゴメン!!(まさか泣くとは…)」

澪「ムギ、も、もう許してやってくれないか?」

唯(どんな漫画なんだろー。でもムギちゃん嫌がってるし、読ませてもらえないだろうなぁ…)

紬「ひっく……でも、2人とも引いちゃったでしょ…?」ヒック

澪「そ、そんなことないよ、なあ!」

律「ああ! ムギはムギなんだから! どんな趣味を持ってても大切な仲間だよ!」

紬「ほ、ほんとう……?」ヒック

澪「も、もちろん!」

律「当たり前だろ!」

紬「ほ、本当に私がレズでも、仲良くしてくれる…?」

澪律(衝撃の告白キタ――――――――!!)

澪「も、もちろんだよ!、ムギ」

律「ムギはムギなんだから!」



紬「み、みんな……」ウルウル

唯「ふぇ!? ムギちゃん、レズだったの!?」

律(うわ、唯の馬鹿)

澪(頼むから空気を読んでくれー!)

紬「…うん。黙っててごめんね」

唯「駄目だよ、そんなの!」

澪律(アホ―――――――!!)

唯「ムギちゃんはお姫様なのに、それじゃあ王子様と一緒になれないじゃん!」

律(などと、意味不明の供述を繰り返しており…)

澪(高校生にもなって何言ってんだよ、唯! 混乱してんのか?)

紬「そうね……ホントそうね……」

澪「ムギ…」

律「おい、唯!」

紬「いいの。唯ちゃん……聞いて。私、自分がこうだって気づいたの、子供の頃だったの…」

唯「う、うん」


紬「そのとき、凄く悩んだわ。ううん、今でもずっと悩んでる。なんで私は報われることなんてないのに、女の子を好きになっちゃうんだろう? どうして私は普通じゃないんだろう? って」

澪「ムギ…」

唯「ムギちゃん…」

紬「いけないことだってわかってる。きっと私は親を悲しませてしまうわ。私は幸せにはなれないかもしれないって泣いたこともあったの。でも、この気持ちを変えることはできなかった…!」

律「ムギ、もういいよ!」

唯「ムギちゃん、違うの! ムギちゃん、綺麗だし優しいし、きっと素敵な王子様が現れてムギちゃんを幸せにしてれるんだろうな、って思ってたからつい言っちゃっただけなんだよぅ」

紬「唯ちゃん…」

唯「だからそんなつもりじゃなかったの! だから泣かないで。な、泣いちゃ、うぅ、うえぇぇぇ~~~ん!」

律「だからってお前が泣くな!」

紬「唯ちゃん、もういいから」

唯「ごべんなざぁ~~~~い!!」

紬「もういいの。気にしてないから。だから泣き止んで」ナデナデ

唯「ムギぢゃ~~~~~~~~~ん!!」

澪「まったく…」ホッ


律「ムギ、改めて言うけど私達は大切な仲間だ。そんなことぐらいでムギに対する態度を変えたりしないから!」

澪「うん、私も同じだよ」

唯「うんっ!」

紬「みんな……ありがとう」ウルウル

律「って、ちょっとクサかったかな?///」

唯「あははは」

紬「もう、りっちゃんたら」



唯の家!

 ~♪~♪~♪

唯「ふぅ。これで間奏のトコも弾けるようになったかな……って、もうこんな時間! お風呂入って寝なきゃ」



唯「ふぃ~。あったかあったか」

唯(ムギちゃん、女の子が好きだったんだ……)

唯(……………)

唯(いつか……女の子の恋人作るんだよね……)

唯(ムギちゃん、凄く可愛いもん……恋人なんてすぐできるよね)

唯(女の子同士でキスとかするのかな……)ドキドキ

唯(………………………………)ドキドキドキドキ



唯「……のぼせた」キュウ



つぎのひ!

澪「唯っ、おはよう!」

唯「あ~、澪ちゃん、おはよう。今日も寒いね~」ブルブル

澪「あはは、唯は相変わらずだな~」

唯「朝会うのは久しぶりだね…(なんだろ? テンション高いけど)」

澪「私、唯に見せなきゃいけないものがあるんだ!」

唯「ん~、なに~?」

澪「新曲の歌詞だよ! 昨日完成したんだ!」

唯「おぉ~! それでかぁ! 見せて見せて~」

澪「こ、これなんだけど…」

唯「どれどれ~」

………………
………………

澪「ど、どう?」

唯「……イイ」ボソ


澪「えっ!?」

唯「いいよ、これ! 凄くいい! やっぱり澪ちゃんの歌詞は最高だね!」

澪「ほっ、ほんと? へへ///」

唯「うん! 気に入りました!」

澪「じゃ、じゃあ、明日辺りからボーカルも入れて練習だな! 唯、ちゃんと歌えるようにしとけよ!」

唯「えへへ、今度も私が歌っちゃっていいんだね?」

澪「あはは、当たり前だろ! 私はもうあんなのゴメンだし!」

唯「えっ!?」

澪「あ、いや、でも唯に押し付けるわけじゃないよ。ハモりとかはちゃんと入れるからね」

唯「う、うん…」

澪「それじゃ、また!」

唯「うん、また…」






ひるやすみ!

律「どうしたんだ、唯。澪に内緒で集まって欲しいって」

紬「何かあった?」

唯「あのね、新曲なんだけど……例えば私が1番を歌って、澪ちゃんが2番を歌って……とかアリかなぁ?」

紬「それは……歌詞にもよると思うわ。2つの視点から歌われるような歌詞なら、むしろアリだと思う」

唯「あ、これ、昨日澪ちゃんが完成したって」

律「どれどれ」

………………

律「はは…相変わらず独特のセンスをしてらっしゃる…」

紬「そうね……この歌詞じゃ、あまりボーカルを分ける意味がないかも」

唯「そっかー…」

律「どうしたんだ? 唯はこの曲歌いたがってたんだから、別に澪と2人じゃなくてもいいだろ?」

唯「あのね、今朝のことなんだけど…」

………………
………………


紬「それは……」

唯「なんか澪ちゃん、思ったよりもトラウマが酷いのかな、って」

律「あのパンツ事件か…」

紬「……あのライブ好評だったし、澪ちゃんにファンクラブとか出来たりして……私たち、ちょっとポジティブに考え過ぎてたかしら?」

律(普段が変わらないから気づけなかったけど、澪、もしかして恥ずかしがり屋が悪化したのか?)

唯「ど、どうしよう?」

律「う、う~ん……無理やり歌わせることにしても逆効果になりそうだしなぁ」

紬「澪ちゃんが納得してくれないと」

律「さっきの唯のアイデア、悪くはないと思うんだよな」

唯「ホント? じゃあ早速今日、澪ちゃんに言ってみるよ!」

律「いや、これはムギのアイデアってことにして、ムギから言ってみてよ」

紬「私?」

律「澪の奴、ムギの話を聞いて感心してたんだ。細かいところまできっちり意識して曲作りしてて凄いって」

紬「な、なんだか恥ずかしいわ」

唯「そっか! 私よりムギちゃんのアイデアだって言う方が説得力あるもんね!」

さわ子「でも無理強いしたら結局逆効果なんだから、引くときは引きなさいよ」

紬「はい、わかりました」

唯「うん、そのときはしょうがないもんね」

律「じゃあ、その線で行こう」

…………

唯紬律「って、うわあ!!」

唯「さわちゃん、いつの間に!」

紬「け、気配を感じませんでした」

律「忍者か? 忍者なのか!?」

さわ子「やーねぇ、悪巧みするときは私も呼んでくれないと」

律「人聞きの悪いことを言うなー!」

唯「言うなー!」



ほうかご!

澪「唯、譜割りを確認したいから、練習の前にアカペラで歌ってみてくれないか?」

唯「いいよー(ムギちゃん)」

紬「(はい!)ごめんなさい、その前に提案があるの」

澪「ん? 何?」

紬「この曲なんだけど、唯ちゃんと澪ちゃんで交互に歌ったらとっても素敵な感じになると思うの」

澪「えっ!?」

律「あー、それいいかもな。ムギ、ナイスアイデア!」

唯「ホント? じゃあ私も賛成!」

澪「うぅ……わ、悪いな、この曲はベース弾きながら歌うの難しいんだ!」

律「(そうくるか…)じゃあ、ふわふわ時間みたいに1番と2番のバッキングを変えちゃうって手もあるぜ」

澪「ひぃぃ!! 何でそんなに私に歌わそうとするんだぁ! 絶対歌うのは嫌だからね!」


紬「み、澪ちゃん…(ひぃぃ、って…)」

律「も、もったいないなー。澪のボーカル、評判よかったのに…」

澪「やだ!!」

唯「ぜ、全部じゃないんだよ? 半分こなんだから…」

澪「やだ!!」

律(駄目か…)

唯「(しょうがないね……)み、澪ちゃん、わかったよ。私が全部歌うから」

澪「そうか!? 唯はこの曲歌いたがってたもんな! それが一番いいよ!」パァァ

律(げ、現金な奴め…)

紬「そ、そうね。そうしましょう」

澪「あはは! 決まりだな!」



ぶかつご!

律「よし、帰ろうぜ~」

紬「ごめんなさい、私ちょっとおトイレに…」

澪「じゃあ昇降口で待ち合わせしよう」

紬「ごめんね」タッタッタ

律「よ~し、音楽室の鍵閉めるぞー。唯、忘れ物はないな?」

唯「うぅ~、どうして私だけに訊くかなぁ?」

澪「あはは」

唯「あっ!」

律「なんだよ、やっぱりあったのか?」

唯「私もトイレ!」

澪律「おいおい」

澪「じゃあ昇降口でな」

律「唯、ギター持ってってやるよ」

唯「ありがと、りっちゃん!」



おといれ!

がちゃ

紬「!」ヒック

唯「! ムギちゃん、泣いてるの!?」

紬「あ、これは違うの」

唯「どうしたの? 誰かにいじめられたの?」オロオロ

紬「唯ちゃん、聞いて。そんなんじゃないの!」

唯「じゃあ、どうして……」

紬「嬉しくて泣いちゃったの」

唯「嬉しくて? ……あっ!」

紬「? どうしたの?」

唯「ごめん、ムギちゃん、その前におしっこ!」

紬「ふふっ、唯ちゃんったら///」

唯「それで、嬉しくて泣いちゃった、って?」

紬「さっきね、澪ちゃんのためにみんなで色々考えたり、内緒で作戦立てて実行したり、凄く仲間っぽいな、って思ったの」

唯「当たり前じゃん! 私たち、仲間だもん!」

紬「うん…………昨日のことがあったのに、私は変わらず仲間でいさせてもらえるんだな、って思ったら……」ポロポロ

唯「む、ムギちゃん……」

紬「やだ、止まらなくなっちゃった……澪ちゃんとりっちゃんが待ってるのに」ヒック

唯(泣いてるムギちゃん、可愛い……)ドキドキ

紬「? 唯ちゃん?」

唯「ムギちゃん……」ドキドキ

紬(えっ!?)ドキドキ

唯(ムギちゃん、近くで見ると睫毛長くて凄く綺麗……)ドキドキ

紬(えっ? えっ? えっ?///)ドキドキ


ちゅ…

紬「ゆ、唯ちゃん…?(嘘……キス、しちゃった///)」ドキドキ

唯「はっ!?」

紬「…………」ドキドキ

唯(わ、私、何てことを……)

紬「あ、あの……///」ドキドキ

唯「ごめん、先に行ってるね!」

紬「えっ!?」



紬「唯ちゃん……」ドキドキ


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最終更新:2010年01月13日 00:50