律「んー……」

梓「どうしました? 難しそうな顔して」

唯「りっちゃん?」

澪「珍しいな律が悩むなんて。お前そういうキャラじゃないだろ」

律「うるせーほっとけ! んなことよりさ。なんか違和感感じねー?」


澪「は? 何に?」

唯「! りっちゃんのおでこ広くなった!」

律「嘘!? え、え…うわぁ」

梓「変わりないですよ」

律「だ、だよな。 唯のアホっ。真面目に心配しちまったろ!」

唯「ぶー」

澪「で、結局何なんだよ?」

紬「あのー、みんなちょっといい?」

唯「ムギちゃん?」


紬「その…眉毛少しだけ剃ってみたの」

唯「あれ!? ホントだ」

澪「急にどうしたんだ?」

紬「実は前から気になってはいて…だから」

律「思いきって剃ってみたわけか。いいんじゃねー? 悪くないよ」

梓「はい、似合ってますよムギ先輩」

紬「ふふ、ありがとう」

梓「もしかしてムギ先輩の眉毛が違和感のもとですか?」

律「んー、たぶんな。元々特徴あった眉毛が変わったわけだから、それでムギの雰囲気も変わって私が変に感じてたのかな」

紬「前の方が良かったかしら…」

律「いやいや! 別に悪いとは言ってないよ。ていうかむしろ前より可愛く見える…かも」

紬「ホントに!?」

澪「元も良かったんだし、人気出るんじゃないか?」

唯「ムギちゃん可愛いよぉ」

梓「でもまだ何か慣れませんね」

澪「すぐに慣れるだろ。大丈夫だよ」

紬「かわいい…ふふ、うふふっ」


さわ子「おいーっす。さぁ今日のお菓子は何かしら~♪」

唯「あ、さわちゃん」

梓「それ、一応の顧問としてはどうかと思う発言です…」

律「それ言うのも今更なんだけどな。あ、さわちゃん! 今日の軽音部、何かいつもと違う感じがしたりしない?」

紬「り、りっちゃん」

律「いいから、いいから」

さわ子「違う感じ?」


さわ子「それって部屋の感じが変わったとか?」

律「ノンノン。もっと…あー、ほら! 雰囲気とかさ! 部屋に限らずに」

澪「ずいぶんと回りくどいな」

さわ子「雰囲気? 何、あんた達のことを言ってるのかしら? …んー、香水撒いた!」

唯「私達からいい匂いしたの?」

さわ子「いや、特には」

律「当てずっぽうは無し!」


梓「はぁ…先生。ムギ先輩の顔をよく見て下さい」

律「あぁっ! すぐに言うかフツー!?」

さわ子「ムギちゃん? …確かにいつもと違うわねぇ」

紬「…/////」

唯「マユゲ~マユゲ~」

さわ子「まゆ…ああっ! 眉毛細い! えー、どうしちゃったのよコレ!」

紬「その、実は―――」


さわ子「…ふーん、成る程ねぇ。まぁ、いいんじゃない? 悪くないわよこういうムギちゃんも」

澪「だってよ、ムギ。もっと自信持っていいんだからな」

梓「です」

紬「あ、うん!」

律「一応女子高生なんだしさ、イメチェンとか試みても不思議じゃないとは思うぜ?」

唯「あ、じゃあじゃあ! この際りっちゃんもカチューシャ取って前髪おろしてみたらどうかなぁ」

律「何で私!? つーか私はこのままが一番なの。それに髪おろしたらおろしたで鬱陶しいし…それに」

唯「それに?」

律「…お、おかしいし」


澪「そうか?」

梓「若干唯先輩とイメージ被りそうですね」

唯「あ! じゃあお揃いだねっ」

紬「うふふ」

律「だ、だからしないって言ってんだろ。 はいはい! 今日の部活動はしゅ~りょ~!」

梓「練習は!?」

律「却下!」

澪「おい!!」


さわ子「終了って、それじゃあ私なんの為にここに来たのよ」

律「ティータイムはまた明日にな、さわちゃん」

梓「ホントなんの為の部活ですか」

澪「全くだよ」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ」

唯「6回だね」



帰り道!
律「ん~今日はどこ行こっか」

澪「遊び前提の早上がりかよ!?」

紬「確かに時間有り余ってるわねぇ」

唯「ウチに帰ってもまだ憂帰って来てないと思うし」

律「な?」

澪「じゃあ練習してればよかったろ」

律「気分って大事じゃね?」

澪「お前はいつ気が向くんだよ!」

梓「グダグダすぎです」


唯「とりあえずファミレスに来てみました!」

梓「先輩誰に話してるんですか?」

唯「さぁ?」

律「さてと、ここですることと言ったら決まってるだろ」

紬「ドリンクバーを頼んで長々とお喋り~」

澪「じゃあいつものティータイムと変わらないな」

律「気分って…」

澪「はいはい」



数時間後!
唯「でねぇ、お父さんが」

律「マジかよ~」

澪「そういえばこの前聡と久しぶりに会ったんだけど」

梓「…皆さんよく話しますね。澪先輩も何だかんだで混じってるし」

紬「梓ちゃん、飽きてきちゃった?」

梓「いや、そういうわけじゃないですけど」

紬「あ、コップ空ね。良かったら一緒に新しいの取ってこない?」

梓「ええ、行きましょう」

律「……」


律「行ったか」

唯「へ?」

澪「どうした急に?」

律「いや、な。今更だけどさ…ムギの眉毛って本当にアレで良かったのかなって」

澪「おいおい、良いって言ったばかりじゃないか」

唯「そーだよ! 可愛いよ!」

律「別に悪く言おうだなんて気はねーよ。たださ、よく考えてみろよ。ムギのあの太い眉毛はあいつにとっての魅力の一つだろ」

澪「まぁ…最初見たときは結構インパクト大きかったしな」

唯「たくあん」

律「ぶっ!?」


澪「わあっ!? 噴き出すなよ!」

律「ごほっ、わ、悪い…。てか今のは唯が全面的に悪い!」

唯「えぇっ、何で!?」

律「何でも! とにかく話戻すぞ。やっぱみんなそれぞれでアレには印象抱いてるだろ?」

澪「そうだけど、本人がしたくてやったことなんだから私達がどうのこうの言うのは違うだろ」

律「…まぁな。ごめん、変な話ふって」

唯「でも今のムギちゃんに話しかけるときってちょっぴり緊張しちゃうかなぁ。雰囲気ちょっと変わったからかな」

澪「唯、その話はもう終わり」

唯「う、ごめんなさいっ……あれ?あれ!?二人ともあっち見て!」

澪・律「? うおお!?」


律「ムギが男に声かけられてる!」

澪「帰りが遅いと思ったら…あ、あれってナンパかな。だよな?」

律「なんだよこのタイミングの良さは!? やっぱ、眉毛の影響…」

唯「かなぁ? …あ、でもムギちゃんって男の人より女の人が好きって感じがする」

澪「憶測でそんなこと言っちゃ駄目だろ! あ、ほら、戻ってくるぞ」

紬「お待たせー」


律「お帰りムギ! お前さっきのアレって」

梓「…お察しの通りだと思いますよ」

律「やっぱりそうなのか。って、梓は何拗ねてるんだ?」

梓「す、拗ねてませんよ! 変なこと言わないでくださいっ」

澪「梓にはふれなかったみたいだな」

梓「 」



唯「でもムギちゃん凄いね~♪」

紬「そうかな? でもお誘いはお断りしてきたわ」

律「さすがにお嬢様はガードが固いか」

紬「そういうわけじゃなくて、もともと男の人に興味って湧かなくて」

唯「あ、ほらねー!」

澪「ば、ばか!」

紬「?」


律「さーて、今日はこの辺でお開きとしますかー」

唯「ん~飲んだねぇ! りっちゃん課長」

律「うぃー…ひぐ、明日は二日酔いに悩ませられるなぁ」

梓「何言ってるんですか?」

澪「ほっとけ」

紬「それじゃあ私こっちだから」

唯「また明日ねームギちゃん♪」

澪「私達もだ。ほら課長行くぞ」

律「それなんか言われて嬉しくねーな」

梓「唯先輩。それじゃあです」

唯「りっちゃん、澪ちゃん! あずにゃんもバイバイ~」



平沢家!
憂「お帰り~お姉ちゃん。今日はグラタンだよ」

唯「グラタン!やったぁ~」

憂「今日は遅かったね。部活?」

唯「ううん、ファミレス。あ、でもドリンクバーだけだよ」

憂「そ、そうだったんだ。じゃあ夕飯作ってて正解だったかな」

唯「うん~。いただきまーす♪ …ん!これとっても美味しいよぉ~憂」

憂「本当? 良かったぁ」

唯「うまうま…あ、そういえばねー憂聞いてよぉ」

憂「何かあったの?」

唯「実はムギちゃんが―――」



琴吹家!
斉藤「お帰りなさいませ。紬お嬢様」

紬「ただいま。斉藤…どうしたの斉藤? 目が泳いでいるわよ」

斉藤「お嬢様、失礼と存じて言わせていただきますが…眉を」

紬「ええ、剃ったわ。朝のうちから気づいてはいたでしょう? 言い出せなかったのかしら? 言っておくけどこれからもこの形のままでいかせてもらうから」

斉藤「そ、それは少々困ります。あの太く、凛々しい眉毛はもはや琴吹家の家紋同然。あの眉なくしてお嬢様は―――」

紬「そういうのはうんざりなの! 斉藤、私知ってるの。私の太かった眉毛が裏で馬鹿にされていたことを。色々聞いてきたわ、心が痛むほどに」

斉藤「何と!? …で、ですが」

紬「……分らず屋っ!」

斉藤「お、お嬢様っ」


斉藤「部屋に閉じ篭もられてしまったか」

メイド「困りましたね。ですが、お嬢様の言うことも分からなくもありません」

斉藤「うむ…しかし、あの眉は必要なものなのだ」

斉藤「説得してこれからも今まで通りにしていただくしか…」

メイド「あの様子だと言ったところで通じていただけるか難しいかと」

斉藤「…困った。 そもそもあの眉毛を馬鹿にする輩がどうかしているのだ。あのキュートなチャームポイントに」

メイド「独特ですから。流りになってみたりすれば少しは見方が変わるのでしょうかね」

斉藤「だから家紋同様だと言っておるだろうに……いや、待てよ。これは…良いかもしれん」

メイド「何か良いアイディアが?」

斉藤「ああ、ただし…琴吹家ご自身の力をお借りすることにはなるが。旦那様に相談してみよう。至急連絡を―――」



数週間後!
唯「ムギちゃんおはよー」

紬「おはよう唯ちゃん。あら、りっちゃんはまだなの?」

唯「そーなの。もうすぐホームルーム始まっちゃうのに」

紬「どうしたのかしら…あ、噂をすれば!」

唯「りっちゃーん! 遅かったね…って、あれ?りっちゃんでよかったよね?」

律「…あ、ああ。ちょっとカチューシャどっかにやっちゃったみたいでさ」

唯「へ~。…あ、ホントはちょっとイメージ変えてみたかったからじゃないのー?」

紬「やっぱり前髪をおろしていると女の子っぽく見えるわぁ」

律「それっていつもは男らしいってことかよ!?」

唯「えー、うん」

律「ばっさりだな…まぁ、いい。とにかくこれは仕方がなくやってんだからな、仕方がなく!」

紬「ずいぶんと念押しするのね」


……

梓「憂、純って今日お休み?」

憂「うん、そうみたいだよ。風邪かな?」

梓「理由聞いてないの?」

憂「メールで簡単に知らせてきたから」

梓「そっか、心配だね」



放課後!
澪「今日はお前のせいで遅刻しかけたんだからな」

律「根に持つなぁ…朝謝ったじゃねーか、仕方がないだろ」

唯「カチューシャのこと?」

澪「ああ、迎いに来てみたらまだごちゃごちゃやってたんだよ。まったく」

梓「ホント前髪おろしていると誰なのか見分けつけにくいですね」

紬「ちょっとね」

律「仕方がねーんだもん…」


梓「…何だか今日の律先輩は不調です」

唯「りっちゃんの元気の源はおでこなんだよ! おでこで日の光を浴びてりっちゃんパワーを取り込んで」

律「やめろ。それマジでやめてくれ」

澪(たしかに萎びてる)

紬「この調子なら今日も練習は無しかしら?」

梓「今日どころかここ最近ずっとですけどね」


澪「これじゃあ腕が落ちていく一方だぞ」

唯「まだ大丈夫だよ~」

澪「さぁ? どうだか」

唯「う、何だか心配になってきた…」

唯「それじゃあ今日ぐらいは練習やろっか!」

律「決定権は部長の私だろ」

澪「無理矢理でもなきゃやらないだろ? 多数決! はい、練習したい人ー」

梓「勿論です!」

紬「そろそろキーボードにも触れておきたいし」

唯「はーい」

澪「律、お前除いて全員は練習派だぞ?」

律「…わかったよ」


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最終更新:2010年01月13日 01:26