平沢家リビング
ピロピロピロ
律「お、ムギからメールだ。・・・今すぐ、澪ちゃんの家に来て下さい。お菓子あり。だって」
唯「おおっ。行く前に、向こうからお呼びが掛かったよ」
律「結局さ、私達の力が必要だって事なんだよ」
唯「出ちゃう?私達の隠されてた能力が発揮されちゃう?」
律「されちゃう、されちゃう。いやー、参ったな。ムギがそこまで言うなら、行くしかないか」
憂「ロールケーキ出来たよ。・・・ムギさんに呼ばれたって聞こえてきたけど」
唯「憂、ありがと♪私達、澪ちゃんの家に行ってくるね。だって私達、必要とされてるから」
律「もう、私達じゃないと駄目なんだって感じだよ」
憂「ふふっ。律さん、頑張ってきて下さいね。お姉ちゃんも♪」
唯「憂、お姉ちゃんはやってくるよ♪」
律「待ってろよー、澪。私達の本気って奴を見せてやるぜ」
秋山家、澪の自室
澪「・・・」 じろっ
律「よ、よう。調子はどうだ?」
唯「・・・なんか、重くない?」
律「気のせいだ。気にしたら負けだ」
唯「でも澪ちゃんに睨まれてると、石になりそうなんだけど」
律「ぐっ。そ、それで、歌詞はどのくらい出来た?」
澪「・・・夢オチって知ってるか」
律「へ?」
澪「話の最後に、「じつは全部夢でした」ってオチになる事だ。つまりさ今は、全部夢の中の出来事。目が覚めれば、私達は明日から高校生なんだよ。律、私達は同じクラスになれるかな」
唯「私の予想だとね。1年は同じで、2年が別々。3年で、また一緒になると思うよ」
律「話は良く分かったから、二人とも今すぐ顔を洗ってこい」
紬(この突っ込み、待ってましたっ♪)
カチャ
唯「お待たせー」
澪「ふー、少しさっぱりした」
律「よーし、まずはみんなで深呼吸だ。行くぞー」 すーはー、すーはー
唯「リラックス、リラックス」
紬「ほら、澪ちゃんも」
澪「ん、ああ」 すーはー、すーはー
梓(満喫、満喫♪) くんかくんか
5分後
澪「うーん、むーん。あー」 ぐったり
梓「結局、元に戻っちゃいましたね」
律「真面目な奴は、これだから困る」
唯「あずにゃんは大丈夫?」
梓「私はそこまで思い悩んでませんよ」
唯「よかった。それを聞いて、お姉ちゃん安心したよ」
梓「誰がお姉ちゃんなんですか。・・・まあ、その。お気遣いありがとうございます」 ぽそっ
紬「うふふ♪」
律「よー、澪。改めて、調子はどうだ」
澪「見ての通りだ」
律「鮭とイルカ?水族館がテーマか、今度の曲は」
澪「良いから、少し静かにしてろ」
律「はいはい」 もみもみ
澪「何してる」
律「肩揉んでる」
澪「頼んでないぞ」
律「私が勝手にやってる事だよ」
澪「・・・勝手にしろ。・・・もう少し右」
律「へいへい」
梓「ムギ先輩が言った通り、少し和んできましたね」
紬「唯ちゃんとりっちゃんのお陰よ。二人とも、ありがとう」
梓「唯先輩は、何もしてませんけどね」
唯「あずにゃん、しどいよ。・・・これ、今度の曲の譜面?」
紬「ええ、主旋律しか出来てないけど」
唯「・・・なんか、難しそうだね。私のパートはじゃじゃーんとか、だだーんとか。簡単なのでお願い」
梓「駄目ですよ。たまには唯先輩がサイドギターで、リズムも取って下さい」
唯「ひ、ひぃ。あずにゃんお慈悲を。お慈悲をっ」
紬「そういう事も含めて、みんなで話し合おうか」
唯、梓「おーっ♪」
律「私達って、バンドやってるんだよな」 もみもみ
澪「急に、どうした」
律「昔はテレビで観て、ただ感動してただけじゃん。格好いいなとか、上手いなとか」
澪「ああ」
律「それが自分の楽器を持って、それを演奏して。曲まで作っちゃってさ。時が流れたなって思っちゃった訳」
澪「何才なんだよ、一体」 くすっ
律「全くだ」
澪「確かに、急ぎすぎる事も無いか。・・・ありがとう、律」
律「ん?澪ちゃん、何か言った?」 ぐいっ
澪「気のせい、だ」
紬「たまには、違う楽器を取り入れてみるのも面白いと思うのよね」
唯「でも私、ギターしか弾けないよ」
梓「右に同じです」
紬「そうかー。良いアイディアだと思ったんだけど」 しょんぼり
唯「・・・ちょっと待って。それ、良いアイディアッ」
梓「な、何がですか」
唯「違う楽器を取り入れるのが。ムギちゃんナイス♪」
紬「私、喜んじゃって良い?」
唯「私が許します」
紬「わーい♪わーい♪」
梓(なに、この幸せ感♪)
唯「りっちゃん、りっちゃん。ちょっと、こっち来て」
律「ん、なんだ?」
唯「「ムギちゃんが、ナイスアイディア賞を受賞したよ」
律「全然意味分からん」
唯「違う楽器。今度の曲、違う楽器を使うから」
律「楽器だ?私、ドラムしか叩けないぞ」
唯「その突っ込み、待ってましたっ」
紬「・・・もしかして?」
梓「ドラムとは別な打楽器って事ですか?」
唯「そう、それっ。勿論ドラムとは演奏法が違うから難しいだろうけど、間奏や前奏で取り入れるのは良いかなと思って」
律「なるほど、な。それは確かに、面白いかも」
梓「タンバリンなんてどうですか?買っても安いですし」
唯「良いね。タンバリンを叩きながら踊るりっちゃんなんて」
紬「私、ビデオ撮らなきゃ♪」
律「おいおい、盛り上がりすぎだろ♪」
紬「後は澪ちゃんが、もう少しリラックスしてくれると良いんだけど」
梓「・・・私、一つ提案があります」
唯「はい、中野さんっ」 びしっ
梓「え、えと。その。今回は、歌詞無しというのはどうですか?」
律「インストルメンタルか。・・・それはそれで、面白そうだな」
紬「澪ちゃんの負担は減るわよね。ただ、逆に気を悪くしないかしら」
梓「ええ。・・・そこは私が、澪先輩に」
唯「まあまあ。あずにゃんや、肩の力を抜きんさい」 もみもみ
梓「え」
唯「心配しなくても大丈夫だよ」
梓「唯先輩」
唯「そういう事は、りっちゃんが言ってくれるからね」
律「私に振るんかいっ」 ぽふっ
紬、梓「あはは♪」
紬「それは冗談にしても、だったら歌詞に代わる何かが必要よね」
梓「・・・例えば、ハミングとかどうでしょう」
唯「湧き出てくるね、あずにゃん」
律「いっそ、全員タンバリンとハミングとかな」
紬「振りも付けて、踊ったり?」
梓「でも澪先輩が、軽音部っぽくないって怒りませんか?」
唯「いや。これは絶対楽しい曲になるよ。だから私達のやる事は、絶対軽音部なんだよ」
梓「唯先輩♪」
澪「・・・やっぱり、もう少し和歌を紐解いてみるか。・・・かがやけるー♪ひとすじの道ー♪」
律「・・・吟じ出したけど、大丈夫か」
唯「音楽は悩む物じゃない。楽しむ物だって、澪ちゃんに改めて分かってもらおうよ」
梓「あまり悩まないのもどうかと思いますけどね」
唯「うぐっ」
紬「まあまあ。和歌だけに、澪ちゃんも梓ちゃんも分かってくれるわよ」
唯「ムギちゃーん♪」
律「茂吉先生も真っ青だな、おい」
律「となると、天の岩戸作戦か」
紬「誰かが服を脱ぐって事?」 きらきら
唯「あずにゃんが、まさに一肌脱ぐのかな」
梓「えっ」 びくっ
律「いや、誰も脱がないから。そうじゃなくて、楽しい事をやって澪の気を引くって意味さ」
唯「楽しい事。・・・やっぱり、あれ?」
律「そう。セッションだ」
梓「でも、澪先輩のベースしかありませんよ」
唯「あずにゃん、心だよ。楽器とは、心で奏でるのだよ」
律「少しイラっとくるが、唯の言う通りだ。つまりは、エアプレイさ」
梓「エア?」
紬「プレイ?」
律「要は、アクションだけで演奏するって事。例えばギターなら、・・・ギュイーンッ。ギュギュギュイーン」
紬「わぁ、面白そう♪私もギターやって良い?」
律「おう、やれやれ。梓も入って来いよ」
紬「私、サイドギターやりまーす。ギュン、ギュギュ。ギュン、ギュギュ」
唯「私、和太鼓ー。ドンドドッコ、ドンドドッコ」
梓(エアギターって、口で音を出すんだっけ?)
唯「国崎最高ーっ」
律「うん、そのAIRじゃないから」
澪(・・・私、何やってるんだろう。曲を作るため?でも何のために曲を作ってるんだろう。結局は自己満足。私の独りよがり・・・)
唯「ぴーひゃららー、ひーぴゃららー」
梓「ポンポロリン、ポンポロリン」
澪(私は一体・・・)
律「ベンベン、ベンベン」
紬「ジャーン、ジャーン、ジャーンッ」
澪(・・・一体、何が起きてるんだ?)
律「澪、今度の曲は歌詞いらないから」
澪「え?」
律「その代わりに、違う楽器に挑戦だ。その練習するから、澪も来いよ」
澪「来いって、、どこへ」
唯「セッション、セッション。エアセッション」
澪「意味が分かんないし、私は今・・・」
紬「澪ちゃん、楽しみましょ♪」
澪「楽しむ?」
梓「やってやるですっ」
澪「・・・そうだな。私もやってみるか。でも一体、何をどうすれば」
唯「自分がやりたい事を、やりたいようにすれば良いんだよ」
澪「私のやりたい事・・・。それはやっぱり」
澪「・・・ボーン、ボーン。ボボーン」
律「結局ベースかよ」
紬「でも、そういう所澪ちゃんらしいわね」
梓「はいですっ♪」
律「楽しいか、澪」
澪「今日だけだからな、こんな事するのは。明日からはまた歌詞を考えて、練習もちゃんとして」
律「全く、真面目な奴め」
澪「真面目のどこが悪いんだ。・・・明日からじゃない。今日は徹夜で歌詞を考えるぞ」
律「おうおう、張り切っちゃって」
澪「お前も一緒に考えるんだ」
律「ちぇー♪」
唯「私も一緒に考えるよ」
梓「及ばずながら、頑張ります」
紬「だって、みんなの曲だものね♪」
律「澪、聞いたか」
澪「う、うるさいな。・・・そ、その。これからは、行き詰まったらすぐみんなに相談するよ」
紬「うふふ♪」
律「澪も素直になった事だし、まずは鮭とイルカの意味について教えてもらうか」
澪「これはこれで良いんだよ。次の次の曲には、絶対採用する」
梓「・・・冗談、ですよね」
澪「梓。今まで私が、冗談を言った事なんてあるか?」
梓「は、はは。あはは」
紬「なんだか、楽しくなってきたわね♪」
律「私は、めまいがしてきたよ」
唯「でもその歌詞は澪ちゃんっぽくて。軽音部っぽくて、良いと思うよ」
澪「ありがとう、唯♪禍転じて福となす。これからは、動物ネタで押していくぞー♪」
律「勘弁してくれよー」
紬、梓「あはは」
終わり
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
私のイメージでは澪が努力型で、今回のように悩みに悩んで作り上げるタイプ。
対してムギは天才型。気付いたら作曲が完成しているタイプですね。
ちなみにテーマとしては、「エアプレイって何」でした。
最終更新:2011年04月28日 20:16