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純「まあまあ…色々好みがあるのは分かるけど、早く結婚して両親を安心させてあげなよ」

憂「うん」ショボン

純「ほらほら元気出して。今日も紬王子のお城に遊びに行くんでしょ?」

憂「うん!今日も紬さんと一緒にお料理するんだー」

純「うーん、あんまり王子様の趣味っぽくないなあ」

憂「その前にこの森に寄っていこう?良い山菜が取れるかもしれないから」

純「この森は危ないよ。野生の獣がいるし」

憂「狩るよ?」

純「それに呪われたお城があるって噂だから……」

呪われたお城とは律姫のねむるあの城のことでした

生きた人のいなくなった城は、百年のうちに木々に覆われひとつの森になっていたのです

100年経つうちに眠り続ける姫のことは忘れ去られ

いつしか亡霊の出歩く呪われたお城として恐れられるようになっていたのです


憂「あはは、純ちゃん。呪いなんてないよ」

勇敢な憂リアム王子はしかしそんなうわさなどものともせずに森に足を踏み入れました

王子の狩りの腕は見事なもので次々に獣を仕留めてゆきます

かごに積み上げた山菜もたいへんな嵩になりました

純「ずいぶん取ったねー」

憂「ちょっとやりすぎちゃった…紬さん、待ってるかなあ」

純「早くこの森を出ようよ」

憂「うん。あれ?」


憂リアム王子の耳には不思議な声が聞こえてきました


純「どうしたの?」

憂「いま誰かに呼ばれたような…」


王子は声のする方に行ってみました

普段は木々が密集してふさいでいる道も

憂リアム王子が足を延ばすと木が自ら横に退いてゆきます

それというのもこの森には和妖精の魔法がかかっていて、

王子が姫のもとに来るまで城を守るようになっていたのです

憂リアム王子はとうとう森のいちばん奥深くのお城にたどりつきました

憂「これが呪われたお城?」

純「憂王子、待ってよー!」

王子は好奇心を抑えることができず、その城の中へ足を踏み入れます

異様な光景に、思わず勇敢な憂リアムも息をのみました

純「なにこれ……人間?」

お城の中には、人々が100年前と同じ姿で眠っていました

憂「なんだか苦しそうなかおだね」

純「あ、ここ!この人ダイイングメッセージを残してるよ!」

純「なになに…犯人は眼鏡」

憂「どうやらここはものすごい虐殺現場のようだね…おそろしい」

純「うーん…」


和「ちょいちょい、鈴木さんいらっしゃい」コソコソ

純「和妖精さん!」

和「静かに、憂にばれないようにいらっしゃい」コソコソ

和「今まで潜入ご苦労さま。見事憂をこの城に連れてくることができたわね」

なんと王子のお付きの純は律姫にお祝いを述べた妖精の一人だったんです

純「はっ、そういえば私は妖精だったんだ」

和「思い出した?」

純「なんだか記憶が曖昧なんですが」

和「そりゃあ私が殴って洗脳したからね」

純「え?」

和「なんでもないわ」

和「ともかく、あとは憂が律姫にキスをすればみんな目覚めるから。そこまで上手くやってちょうだい」

純「うまくと言われても…」

和「ちなみに、もし上手くいかなかったら眠ってる人々の賞味期限が切れて、えらいことになるから」

純「賞味期限!?」

和「冗談よ」

純「な、なーんだ」ホッ

和「まだ冗談のうちになんとかしてちょうだい」

純「どういう意味ですか」

純「やれやれ、和妖精は意外に人遣いが荒いんだから…」

純「ともかくうまいこと憂にキスをさせなくちゃ」

憂「……はい、もしもし?警察ですか?」

純「って憂ー!?なにやってるの!!」

憂「なにって、警察に電話を……」

純「ファンタジーの王子様が携帯なんか持っちゃダメ!これは没収!」

憂「え、でも…」

純「ほらほら、そんなことよりもうちょっとお城を見て回ろうよ!特にあっちの高い塔とか!」

憂「純ちゃん、さっきまで帰りたがってなかった?」

唯「zzz」

玉座の間には唯王がつっぷして眠っていました

憂「あれ?この人…」

純「どこ行くの憂リアム王子、そっちじゃないよ」

憂「なぜだか知らないけど無性にこの人にキスをしたくなるような……」

純「!?」

憂「……足が勝手に」ふらー

純「それは王様だよ!ほら、いいからこっちに来なさい!」

憂「なんで引っ張るのー?」

純「こっちにも事情があるの!」


憂「(純ちゃん、どうしたんだろう……まるで悪魔に使役されてるかのようだよ)」


憂リアム王子は心配になりましたが、とりあえず純ちゃんに従うことにしました


二人は塔のてっぺんにやってきました

かつてさわ子妖精がすみついていたあの部屋に、律姫はあの日の姿のまま

いえ、100年眠るうちによりいっそう美しい姫となって横たわっていました

黙っていればお転婆もわからないものです

律姫はあれで意外と乙女なところがあるもので、

夢の中で王子様が来るのを待ち望んでいました


律「……」

憂「この人は…」

律「……」どきどき

純「この人はこの城のお姫様だよ」

憂「お姫様?」

純「さあ、憂リアム王子、いますぐこの人にキスして」

律「(きゃー///)」

憂「え?なに言ってるの純ちゃん?」

純「えっ」

律「(えっ)」

憂「死体にキスなんてできないよー」

純「さっき王様にキスしたがってた人が何言ってるの!?」

憂「それはそうだけど」

律「えっ」

純「あのね、この姫は死んでるように見えるけど、ほんとは眠ってるだけなの」

憂「いま、えっ、て言ったような…」

純「それで王子がキスしたら目覚めることになってるのよ」

憂「……純ちゃん、落ち着いて」

純「かわいそうな人を見るような目!?」

憂「純ちゃんの言ってることよくわからないよ…」

純「とにかくそういうことになってるんだってばー!」

純「ほらほら、この姫きれいでしょ!憂リアム王子が目覚めさせたら姫と結婚できるんだよ」

憂「うーん……でもお互いの人となりを知ってからじゃないとそういうのは」

純「そんなリアルなつっこみいれないでよ!」

憂「でもお…」

純「……ねえ、この姫をよく見てごらん。さっき言ってた理想の人に、ちょっと似てない?」

憂「!」

純「茶色の髪!ボブヘアー…ではないかもしれないけど、長すぎず短すぎずの絶妙な長さ!」

憂「そう言えばそうかも!」

純「きっとこの姫は暖かくて人に抱きつくのが好きな女の子だよ!」

憂「そうかなあ…」

純「もう、目が覚めたら王子にすぐさま抱きついちゃうよ!」

律「(ええ~!///)」

憂「そうかな!」

純「そうだよ!運命の人だよ、これは!」

憂「よし、じゃあ純ちゃんを信じてキスしてみるね!」

律「!」

憂「…フンス」

律「……」どきどき

憂「……」どきどき

純「ふう」どきどき

憂「……ちゅ」

律「////」ぱちり

純「おお、姫が目覚めたぞ!姫が目覚めたぞ!」

律「(王子様に抱きつかなきゃ!)」ガバッ!

憂「きゃっ!?」ごつん

律「(頭ぶつけた~!?)」

憂「うう、いたた」

律「ごごごめんなさい!」

姫はわりとテンパっておりました

無理もありません

王子様との結婚はお姫様にとって一生に一度の晴れ舞台

それに100年間来る日も来る日もずっとこの日を待ち望んでいたのですから

あと律姫は態度はでかくても、根は小心でした


和「ほらほら、何やってるの」

憂「あなたは?」

純「紹介するよ、こちらは和妖精さん」

憂「妖精?」

純「いままで騙してたけど、私もほんとうは妖精なの」

憂「……」

純「だからかわいそうな人を見る目で私を見ないで!」

憂「いや、夢を見るのはいいけど、さすがにその歳で妖精はきついよ…」

純「ほんとだもん!」

和「いいから、憂リアム王子も律姫もいらっしゃい。王様とお妃さまが待ってるわ」

律「ゆいー!」

唯「りっちゃーん!目が覚めたんだね!」

澪「うう…心配かけさせて」

律「みおー…」

澪「ぐすっ、母上と呼びなさい!」

唯「あそこの人は」

律「あの王子様が私を目覚めさせてくれたんだぜ!」

澪「そうか、じゃあお礼を言わなきゃな」

憂「いえ、私はそんな」わたわた

澪「私たちをあの魔女の呪いから救ってくれてありがとう!」

唯「ぜひともお礼をしなきゃ」

憂「いえ、その……あ」じー

澪「ん?」

唯「?」

律「王子さま?」

憂「……」じーっ

純「ちょっと、憂リアム王子、どうしたの?」

唯「あのー…」


憂「王様、私と結婚してください」


唯「えっ」

澪「えっ」

律「えっ!?」


♪リンゴーン、リンゴーン


紬「ここが憂リアム王子の結婚式会場かしら?」


純「あ、紬王子!席はこっちですよ!」

紬「ありがとう、お付きの純ちゃん。それにしても憂リアム王子、花嫁姿がきれいね~」

純「ええ……ほんとうに」


憂リアム王子は律姫の眠りを覚ました功績によって、

唯王と結ばれることとなったのです


憂「ありがとう、みんなー!」

唯「いやあ、照れますなあ~」


律「うわーん、唯に王子様をとられたー!」

澪「泣くな、律。私だって夫を……」

律「みおー……」

澪「これからは母子二人で慰め合って暮らそう……」

律「うう、母上ー!!」


純「紬王子ー、来賓席はこちらですよー」

紬「はーい、きゃっ」ドンッ

澪「あいてっ」

紬「失礼、ご婦人がた。お怪我はありませんか?」

律「……」

澪「律?」

律「すてきな殿方……」ぽー

澪「えっ」


おしまい



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最終更新:2011年04月28日 22:15