澪「暑いな…」

律「暑いっていうから暑いんだよ!いちいち口に出すな!」

梓「黙ってても暑いです…」

紬「みんな、冷たいレモンティーが入ったわよ♪」

唯「やっほーい!さすがムギちゃん!」

律「ゴクゴク…あーうめえ!最高!」

澪「いつも悪いなムギ…律もちゃんと感謝しろよ!」

律「ムギあざーす!」

梓「軽いですよ…」

紬「いいのよ!みんなが喜んでくれるなら私は嬉しいから」

唯「あ、そうだ!ムギちゃん?」

紬「なあに唯ちゃん?」

唯「これあげるよ!後で食べようと思って買ったんだけど…」

紬「あらクッキー?いいの?」

唯「うん!いつもたくさんお菓子とかお茶もらってるし…お返しだよ!
 いつもホントにありがとうねムギちゃん!」

紬「……!」ドキッ

律「自分で作ったならもう少し感動もあるけどなあ…」

唯「いいでしょー!こういうのは気持ちが大事なの!」

梓「ま、先輩にしては気が利いてるほうですよ」

澪「唯がお返ししたなら私たちも後で何か…ムギ?どうした?」

紬「……」

唯「ムギちゃん?ボーッとしちゃってどうしたの?」

紬「う、ううん?な、何でもないわ!ありがとう唯ちゃん、後でいただくわね!」

梓「ムギ先輩、顔真っ赤…」

澪「ムギも暑さにやられたのか?気をつけないと熱中症になるぞ」

紬「う、うん…」

紬(どうしたんだろ私、クッキーもらっただけなのに…)

澪「じゃあ練習始めるか!」

唯「暑くてやだなあ…」

律「唯、私はもっと大変なんだぞ!」

梓「まあやってるうちに気にならなくなりますよ!…多分」

澪「だといいけど…ムギはキーボードだけど、やっぱり暑いと大変か?」

紬「……」

澪「ムギ?」

律「よし、じゃあいくぞ!1・2・3・4!」

唯「あ…あれ?ムギちゃん?」

紬「……」

梓「ムギ先輩?」

紬「あ、ごめんなさい!な、なあに?」

梓「いや、もう練習始まってますよ?キーボード…」

紬「あ…ごめんなさい!私ついうっかりしてて…」

澪「ムギ?ホントに大丈夫か?どこか具合悪いんじゃないのか?」

紬「そ、そんなことないわ!大丈夫!」

澪「ならいいけど…」

唯「ムギちゃん、あっついから気をつけてね?」

紬「うん…あ、ありがと…」

紬(言えない…さっきから唯ちゃんのことが気になって集中できないなんて…)


ムギの家

紬(ふう…なんだか今日はあまり調子よくなかった…)

紬「あ、そうだ」

紬(唯ちゃんがくれたクッキー…食べてみようかしら)ゴソゴソ

紬「モグモグ…おいしい…ふふ、明日なにかお礼しなくっちゃ♪」

紬(唯ちゃん、私のお茶をいつも喜んでくれてたんだ…うれしい…かも…)

紬(はっ!私、ずっと唯ちゃんのこと考えてる!?)」

紬「……」カアアアア…


ガチャ

斎藤「お嬢様、夕食の用意が…」

紬「え?あ!夕食!?今行くわ!」

紬(な、なに考えてるの私…唯ちゃんはそういうのじゃ…)


翌日

唯「今日も暑いよう…」

紬「ゆ…唯ちゃん?」

唯「ん?なあにムギちゃん」

紬「昨日のクッキーのお礼にアイス持って来たんだけど…よかったらどうぞ?」

唯「え!いいの?」

紬「ええ、とてもおいしかったわ…ありがとう!」

唯「ムギちゃんありがとう~!」

紬「う…うん…ど、どういたしまして…」

紬(あ、赤くなっちゃダメ…赤くなっちゃダメ…)

唯「ん~!おいち~い!」

律「あー!唯だけずるいぞ!私の分は~?」

紬(でも唯ちゃん、すごくうれしそう…よかった!)

律「ムギ~?」

紬(あ、口の周りがベタベタ…)

律「ム~ギ~!」

紬「ゆ、唯ちゃん、お口の周りがベタベタ…拭いてあげるわね?」ゴシゴシ

唯「ふぇ…ありがとう!」

紬「い…いいのよ!」

紬(か、かわいい…)

律「…澪、ムギが無視する!」

澪「それはいいとして、確かにムギの様子がおかしいな」

律「いやよくないだろ!…ていうか妙に唯を気にしてる!絶対怪しい!」

梓「ま、まさかムギ先輩、ついに目覚めたんじゃ?」

澪「な、何に…?よし、一応聞いてみるか」

紬「唯ちゃん、シフォンケーキもあるわよ?」

唯「わーい♪いただきます!」

澪「なあ、ムギ?」

紬「フンフフーン♪なあに?」

澪「あ、あのさ…律が言ってたんだけど…唯のこと、なにか気になるのか?」

紬「え?わ、私が!?」

律「私がさっき何回話しかけても唯のことばっかで反応しないし…怪しいぞ~!」

梓「ムギ先輩、まさか唯先輩のことを?」

紬「え、えっと…」

澪「どうなんだムギ?まさか本当に唯のことを…?」

紬「そ、そんなことないわ!さっきは唯ちゃんがアイスこぼしてたから気になってただけよ?」

律「ホントか~?お前、前から女の子好きだったし…」

紬「わ、私は女の子同士が仲良くしてるのを見るのが好きなのよ!そう、見るだけ!」

澪「そうなのか…なら問題はないか」

梓「微妙に問題あるような気もしますが…まあいつも通りのムギ先輩ですね」

律「だな…でもアイスはくれよ~?」

紬「え、ええ…皆の分もあるから…」

紬(私、やっぱり唯ちゃんのことを気にしてるように見えたんだ…)

唯「ゲップ…」

紬(でもこれは恋とかそういうんじゃない…母性愛みたいなもので…)

唯「ムギちゃーん」

紬「ど、どうかした?」

唯「ムギちゃんもケーキ食べなよ!すごくおいしいよ!」

紬「うん…いただくわ!」

紬(そうだ…唯ちゃんに恋愛感情なんて抱くわけがない…抱いていいわけがないもの…)


別の日

律「花火大会に!」

唯「行こう!」

澪「花火大会?」

律「ほら、もうすぐ近所であるだろ?みんなで行こうぜー?」

唯「わたあめ、唐揚げ、たこ焼き、焼きそば、チョコバナナ、かき氷…えへ、えへへへへへ…」

梓「花火じゃなくて出店を楽しみにしてるんじゃないですか!しかも食べ物ばかりだし!」

律「もちろんムギも行くよな?」

紬「うん、楽しみだわ♪」

唯「みんな浴衣着てきてね~?私も着てくるから!」

紬(唯ちゃんの…浴衣…)

澪「どうしたムギ、顔赤いぞ?もしかして浴衣着るの嫌なのか?」

紬「そ、そっ!」

澪「…そ?」

紬「そんなことないわ!絶対に着てくるから!」

澪「変に気合い入ってるなムギ…」

梓「いつものことじゃないですか?」

紬(浴衣か…唯ちゃん、かわいいんだろうな…あ、もちろんみんなもだけど!)

唯「ムギちゃん!」

紬「な、なに!?」

唯「花火大会楽しみだね!」

紬「ええ…そうね!」


当日

紬「浴衣、どんな柄のを着て行こう…?迷っちゃうな…」

紬(唯ちゃんは…どんな色が好きなんだろう…赤とか?)

紬「って!だからなんで唯ちゃんのことを考えるの?自分で決めればいいだけなのに!」

紬「……」

紬「も、もうこれで…うん、きっとこれでいいのよ!」

紬(ダメ…唯ちゃんのことばかり考えちゃダメ…私は皆を見てるだけでいいんだから…)


会場

律「おーいムギー!」

澪「こっちこっち!」

梓「ムギ先輩、こんばんは」

紬「こんばんは!三人とも浴衣似合ってるわ♪…唯ちゃんは?」

律「まだだ…いつも通り遅れてくるんじゃないか?」

紬「そう…」

紬(私の浴衣、変じゃないかな…あ、あれ?なんで私こんなに緊張してるの…?)

律「あ、来た…おーい唯!遅いぞー!」

紬「…!!」

唯「ふええ…遅れてごめーん…」

澪「どうせ浴衣憂ちゃんに着せてもらってたんだろ?」

唯「その通りです…あ、みんな浴衣かわいいねえ!」

律「だろー!」

澪「律、もっと謙遜したらどうだ…?そういう唯も似合ってるぞ」

唯「へへーありがとう!あ、ムギちゃん…」

紬「な、なに!?」

唯「浴衣すごく似合うよ!あ、今日はポニーテールなんだね?かわいいよ~」

紬「!!」

紬(かわいい…かわいい…かわいい…かわいい…かわ…)

梓「ムギ先輩?どうしたんですか?」

紬「か、かわい…うふふ…ふふふふふふふふふ…」

律「川相?」

澪「む、ムギ…?どうした?」

紬「はっ!!わ、私…ありがとう唯ちゃん!唯ちゃんもすごく、ものすごく…か、かわいいわ!」

唯「ありがと~!あ、あと今日は髪縛ってみたんだけどどうかな?似合う?」

紬「に…似合うわ!とっても!ばっちり!」

唯「わーい!ありがとうムギちゃん!」

律「ムギのヤツ、どうしたんだ?テンションが急に…」

澪「なあムギ、今日はどうした?またなんか変だぞ」

紬「え?あ、いや…み、皆の浴衣姿が見られてとても嬉しいの!だからつい…」

澪「そうなのか?まあムギらしいけど…」

律「そんなに見たけりゃどんどん見ていいぞ?ほれほれ!」

紬「あ、ありがと…」

紬(私、また唯ちゃん見て動揺しちゃった…気をつけなきゃ)

律「よし!じゃあ花火が始まる前に店回るぞ!」

澪「でも人多いし、5人で回ると大変じゃないか?」

律「そうだな…じゃあ二手に別れて回ろう!澪と梓は私についてこい!唯はムギと回れ!」

紬「え、えぇ!?」

唯「ラジャ!」

梓「別にいいんですが…なんで私たちが律先輩と?」

律「お前らは私が引っ張ってやらないと盛り上がらないからな!
 さあ行くぞ!まずは金魚すくいだ!」

澪「ちょ、ちょっと律!ホントに引っ張るな!裾がほつれる!」

梓「ちょっと待ってくださいよう!」


唯「あっという間に行っちゃったねえ」

紬「そ…そうね…」

紬(ど、どうしよう…唯ちゃんと二人でなんて…)

唯「ようし!じゃあ行こっかムギちゃん!」

紬「う…うん…!」

紬(お…落ち着かなきゃ…いつも通りに…唯ちゃんは友達なんだから…)

唯「…ムギちゃん?」

紬「え、なあに?」

唯「もしかして、私と一緒じゃ嫌だった?」

紬「そ、そんなことないわ!ただ私、こういう場所初めてだから…」

唯「なんだ~よかった!なんか楽しくなさそうだったから…
 あ、たこ焼き食べない?おいしいんだよ~?」

紬「えぇ、買いましょう!」

紬(そうだ…悩んでないで楽しまなきゃ!)

唯「うぅ…ごめんなさいムギちゃん…」

紬「い、いいのよ、お財布忘れたんなら仕方ないじゃない!」

唯「後でお金は返すからね?…あ、かき氷おいしい~」

紬「うん、たこ焼きも唐揚げもチョコバナナも焼きそばもおいしかったわ!」

紬(ふう…やっと唯ちゃんと自然に話せるように…)

紬「あ…あれ?唯ちゃん?どこ?は、はぐれちゃった…」

ギュッ

紬「きゃっ…」

唯「ムギちゃんごめーん!危うくはぐれるとこだったよ」

紬「唯ちゃん…私こそごめんなさい、ボーッとしてて…
 でも急に手握られたからびっ…くり…しちゃ…」カアアアアアアアア

唯「はぐれないように、このまま手つないで歩こう!」

紬「……ハイ」

唯「ムギちゃん?どしたの?顔真っ赤だよ?」

紬「な…何でも…」

紬(ど…どうしよう…ドキドキしちゃって唯ちゃんの顔見られない…)

唯「あ、そろそろ花火始まるねえ!どこかいい場所ないかなあ」

紬「そ…そうね……」

紬(なんで…なんでこんなに…?ただの友達のはずなのに…
 どうしてこんなに唯ちゃんのことを意識しちゃうの?)

唯「ふう…ここなら人あまりいないし丁度いいね!澪ちゃんにメールしなきゃ」

紬「……」

紬(唯ちゃんの手…柔らかくって温かかったな…)

唯「澪ちゃんたち、10分くらいでくるって!」

紬「うん…」

紬(私…もしかして…でも、やっぱり…そんなのダメ…だって私は…)

唯「花火まだかなあ~早く見たいなあ~」

紬(そうだ…唯ちゃんに、友達だよって言ってもらえば…きっと…)

紬「ね、ねえ唯ちゃん?」

唯「ん?なあに?」

紬「唯ちゃんは私のこと…」

ヒュルル~パァン!

唯「あ、始まったよムギちゃん!」

紬「う…うん…」

唯「うわぁ~きれいだね~ムギちゃ~ん」

紬「う…うん…きれい…」

唯「あ、さっきなにか言いかけてなかった?」

紬「ううん…やっぱりいいの!澪ちゃんたちまだかしらね?」

唯「そうだね~」

紬(そう…私たちは友達…聞かなくたってそんなこと分かりきったことだし、
 バカなこと考えるのはもうやめなきゃ…)

唯「あ!」

紬「な…なに?」

唯「忘れるところだった!はいこれ!こないだ買っていつ渡そうかと思ってたんだけど…」

紬「唯ちゃん…これヘアピン…?」

唯「いつも私が使ってるヤツの色ちがいだよ?よかったら使ってね?」

紬「ど…どうして…?」

唯「こないだのクッキーのお礼にもらったアイスのお礼!
 私、ちゃんとムギちゃんにお礼したいからさ!」

紬「あ…」

紬「あ…ありがとう…」

唯「いいっていいって!ムギちゃんにはいつもお世話になってるし!…今日もだけど…
 ムギちゃん、もう一回言うね!ありがとう!」

紬「うん…」

紬(やっとわかった…こんなにドキドキするのは…唯ちゃんのことが、好きだからなんだ…)

バッ
律「うふふふふ♪僕りつえもんです!」

唯「わあ!そ、その声は…さてはりっちゃんだな!」

澪「お面かぶってはしゃぐとか小学生か…」

梓「今どき小学生でもやらないですよ…」

律「なにやらいい雰囲気だねえ唯くん!なにがあったんだい?」

唯「お…重いようりつえもん!何でもないよね~ムギちゃん!」

紬「う…うん!何でもないわ!」

澪「どうしたムギ、なんかすっきりした顔してるな」

紬「うん…私、やっとわかったから」

澪「わかった?何が?」

紬「ふふ…何でもいいの!」

澪「変なムギ…」

紬「あ!みんな!花火がきれいよ!」

紬(今日はありがとう唯ちゃん、唯ちゃんのことが好きだってわかってよかった…)


ムギの家

紬「はあ、今日は楽しかった…ふふ、そっか、私、唯ちゃんのことが好きなのね…」

紬(…それで?それで私はどうしたいの?)

紬「告白して付き合う…とか?」

紬(でも、私がそんなことしたら軽音部は…)

紬「好きだって思ってるだけでもいいわよね!…はあ、もう寝なきゃ!」

紬(そうだ…それでいいんだ…だって…)


また別の日

紬「おはよう♪」

律「おうおは…ムギ!?」

唯「おはようムギちゃん…あ!ポニーテールだ!」

紬「うん…ちょっと気分を変えてみたくて…」

律「へえー…花火のときだけかと思ってたけど…でもなんで急に?」

紬「え?あ、いや…その…」

唯「あ!私がほめたから?」

紬「う…うん…まあ…」

紬「ど、どう?制服には似合わないかしら?」

唯「そんなことない!すごく似合うよ!」

紬「あ…ありがとう…」

律「後で澪や梓にも見せてやらないとな!」

紬「うん…」

紬(一番見てもらいたいのは…唯ちゃんなんだけどな…)



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最終更新:2010年01月02日 12:28